CARSTEN DAHL
動と静、緩と急、美と醜の織り成すコントラストが印象的なアルバム
"MOON WATER"
CARSTEN DAHL(p,percussion,boomerang sampler), ARILD ANDERSEN(b),
PATRICE HERAL(ds,percussion,voice,live electronics),
2003年3月 スタジオ録音 (STUNT RECORDS STUCD 03132) 

既に掲載したCARSTEN DAHLのライヴ盤(JAZZ批評 221.)の批評の最後に僕はこう書いた。
「CARSTEN DAHLというピアニストはイマジネーションもテクニックも豊かなプレイヤーだと思う。ただし、この、組み合わせが必ずしもベストとは言い切れないだろう。違うサイドメンとの演奏も聴いてみたいものだ
このCARSTEN DAHLというピアニストにはぴかりと光る感性を感じたものだった。こんなものではないだろうという期待感が確信として実感できた。
それから暫くして、スタジオ録音盤として発売されたのがこのアルバム。前回のライヴというシチュエーションとは違って演りたい放題、自由奔放の印象は影を潜め、味わい深い作品に仕上がった。メンバーも更に粒が揃った感じで、特に、ベースのARILD ANDERSENは噂に違わず素晴らしい演奏を聴かせてくれる。前作からは2ヵ月後の録音にあたり、全曲、彼らのオリジナルもしくは3人の競作である。

@"ECOUTER ET JOUER U" 
「鏡面の湖に一石を投じてできた波紋の拡がりの如し」
A"EGYPTIONARY"
 長めのドラムスのソロの後、テーマに入る。秩序だった演奏とフリーな演奏が入り乱れる。フリーが苦手なリスナーはパスしても良いのでは?
B"PASSING THOUGHT" 一転してバラード的インタープレイ。
C"ONE SONG" ANDERSENのベースが何とも言えない陰影を創り出していく。HERALのヴォイスも効果的だ。そしてピアノが絡む。美しく躍動し、更に深遠である。

D"RUSH BRUSH" フリーな演奏。この手の演奏が全く受け付けられない人はパスしても良いと思うが、この曲は次の曲への伏線だと思って1分30秒を我慢するのもいいかも知れない。
E"HYMNE" この美しさを際立たせるために前の曲があった・・・と思えるほど美しく躍動している。心の琴線を刺激する1曲。
F"EOUTER ET JOUER T" 実はこの批評を書いてしばらくしてわかったのだがこの曲は@とタイトルが微妙に1字違う。てっきり、同じ曲のTとUと思ってしまったのだが、勿論、曲も違っている。しかし、曲想は似ている。従って、「鏡面の湖に一石を投じてできた波紋の拡がりの如しのその2と言ってもいいだろう。波紋が波紋を呼び、大きなうねりとなって貴方を襲ってくるに違いない。15分半。

G"DISEMBODIED"
 
H"AFTER CRAWL" 超高速の4-ビートにもかかわらず余裕さえ感じさせる2分半。この技量は凄い。
I"MOON WATER" 幻想的なバラード。
J"JOY"  この中では非常に聞き易い調子の良い曲。
K"THE DAY" 親しみ易いバラード。

動と静、緩と急、美と醜の織り成すコントラストが印象的なアルバム。いわゆる4ビート・ジャズではないがヨーロッパの香りのする秀作であると思う。
このSTUNT RECORDSというのは要注目レコード会社だ。プレイヤー視点に立った制作が際立つ。演奏後のプレイヤーの満足そうな顔が目に浮かぶ。既に紹介し、5つ星を提供したJAZZ批評 JAZZ批評 243.JAZZ批評 210.もそうだ。
「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2005.01.22)



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独断的JAZZ批評 246.