TOMMY FLANAGAN
ピアノ・トリオの原点
ドラムスが跳ね、ベースが唸り、ピアノが歌う!
"TOMMY FLANAGAN PLAYS THE MUSIC OF HAROLD ARLEN"
TOMMY FLANAGAN(p), GEORGE MRAZ(b), CONNIE KAY(ds), HELEN MERRILL(
H:vocal)
1978年 スタジオ録音 (DIW DIW-486 ) 

「ごっつあんです!」と言いたくなってしまう極上アルバム。
御茶ノ水のDISKUNIONにぶらりと立ち寄ったときに、たまたま店内に流れていたのがこのアルバム。ドラムスが跳ね、ベースが唸り、ピアノが歌っていた。強いビートと艶やかで伸びのあるベースの音色はGEORGE MRAZに違いないと閃いた。であれば、ピアノはトミフラか!これはピアノ・トリオの原点と言うべきでしょう!今回のアルバムは全曲、HAROLD ARLENの書いた曲で構成されている。ついでに、プロデューサーはHELEN MERRILLが務めている。最後の1曲にボーカルとして参加しているのも嬉しい。

世間ではトミフラのベスト・アルバムと言うとJAZZ批評 37.の"OVERSEAS"がピック・アップされることが多いが、僕はそうは思わない。トミフラのベストはJAZZ批評 90.の"ECLYPSO"やこのアルバムのようにベースに盟友、GEORGE MRAZを迎えたアルバムにあると思っている。ここでもMRAZの素晴らしいベース・ワークを堪能頂きたい。強いビート、伸びやかで艶のある音色。こういう音色を出せるベーシストってなかなかいないものだ。FLANAGANも一番、脂の乗っている時期だろう。ナチュラルで美しいピアノ・タッチが特筆ものだ。ドラムスはCONNIE KAY。これがまた、ぴったりと嵌っているのだ。快活なドラミングが見事にマッチングしている。

@"BETWEEN THE DEVIL AND THE DEEP BLUE SEA" 
このウォーキング・ベースを聴いたら誰でも唸ってしまうはず。どの曲も素晴らしい演奏なので、一つ一つのレビューはこれ以上必要としないでしょう。あとはご自分の耳で確かめて欲しい。
A"OVER THE RAINBOW" 
B"SLEEPIN' BEE" 
C"ILL WIND" 
D"OUT OF THIS WORLD" 
E"ONE FOR MY BABY" 
F"GET HAPPY" 
G"MY SHINING HOUR" 
H"LAST NIGHT WHEN WE WERE YOUNG" FLANAGANのピアノをバックにHELEN MERRILLが唯一、ヴォーカルで参加した曲。

実に、気分が良い。こういうJAZZを聴けると心底からハッピーになれるものだ。是非、このアルバムを聴いてハッピーな気分に浸って欲しいと思う。
このレコードの原盤は今はなき「トリオ・レコード」であるらしい。こういう真面目な制作姿勢を感じさせるレコード会社がなくなってしまったのは残念でならない。プレイヤーの3人は制作側の意に応えて見事な作品に仕立て上げた。
そのアルバムが1週間前の店頭に並んでいたということは再発された証だろう。このアルバムの再発に努力された制作者の方たちに感謝し、惜しまぬ拍手を贈ろう。これは素晴らしいアルバムだ。トミフラのファン、いや、全てのピアノ・トリオ・ファン、全てのジャズ・ファンに聴いて欲しいアルバムだ。3食抜いても買う価値があると思うけど・・・。録音から27年経っても全く色褪せないその瑞々しさに敬意を表したい。
確信を持って、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。  (2005.07.09)

<2005.07.12 追記>
そうそう、忘れていたことがひとつ。この1978年という年はGEORGE MRAZにとって、記念すべき年でもある。それは、JAZZ批評 85.DON FRIEDMANの"LATER CIRCLE"を吹き込んだ年でもあるのだ。このアルバムはFRIEDMANの最高傑作と言っても良いアルバムで、長年、CDでの再発を待ち望んでいるものだ。トミフラとのアルバム同様、ピアノ・トリオの原点を行くアルバムで、是非とも再発して欲しいアルバムのひとつだ。幸いにして僕はLPのコピーCDを持っているが、多くの人に聴いて欲しいアルバムだ。レコード関係者の方、是非、再発をお願いしたい!因みに、ネットをいくら検索しても再発された様子はない。   (2005.07.12)



独断的JAZZ批評 280.