北川 潔
北川潔は世界でも指折りのベーシストの一人として数えられるに違いない
"PRAYER"
KENNY BARRON(p), KIYOSHI KITAGAWA(b), BRIAN BLADE(ds)
2005年5月 スタジオ録音 (ATLIER SAWANO AS 054)

このアルバムは、12月3日に行われた"ATLIER SAWANO CONCERT 2005"(JAZZ批評 310.)のコンサート会場で先行発売されたアルバムで、その時にゲットした。メンバーもコンサートと同じ、収録曲も一部同じである。

コンサートを聴くという行為はチケットを手配をするときから既に始まっていると思うのだ。チケットをゲットしてコンサート当日まで、どんな演奏をしてくれるのだろうかと期待感はどんどん膨らむ。もう既にして、リスナーのテンションは上がっているのだ。そして、コンサート当日は始まる前に一杯、アルコールでも引掛ければ更にテンションは上がっていく。謂わば、ライヴ・スポットのノリだ。そして、演奏が始まれば否応なくテンションはヒートアップする。こういう興奮状態で聴けばライヴは更に楽しい。音楽を聴くと言うよりもライヴという環境に身を置くと言った方が適切だろうか。僕は、これでいいと思っている。
音楽をジックリ聴くのはCDの方が適している。例えば、このCDであるが、先のコンサートの時よりも深くジックリと味わえたし、演奏内容も素晴らしいと思った。
ライヴはプレイヤーと共に時と空間と雰囲気を共有するためにあるのかも知れない。

このアルバムで、北川潔は更に自信に満ちた力強いプレイをしている。世界でも指折りのベーシストの一人として数えられるに違いない。先ず、音が良い!。ベースの箱が共鳴しているアコースティックな魅惑的な音色だ。これは重要なポイントだ。電気での増幅ばかりを当てにしていては絶対に得られない音色なのだ。
@BCDHが北川のオリジナル。コンポーザーとしての力量もしっかりと見せ付けた。

@"GUESS WHAT" 
A"BACK STAGE SALLY" W.SHORTERの曲をグルーヴィーに演奏。強いピチカートで発生する弦の跳ねる音が堪らない。バーボンのストレートでも呑みたくなる!
B"PRAYER" 11分を超える北川のオリジナル。
C"CATCH AND RELEASE" ここでは軽快に4ビートを刻んでいくBLADEのドラミングに注目!ウ〜ン、いいね。
D"ETUDE IN THREE" 今度はワルツだ。これも良い曲だ。3者の躍動感が堪らん!
E"EVIDENCE" 
T.MONKの曲。ベースのウォーキングが唸りを上げる!

F"OLEO" 
ベースとドラムスのデュオ。S.ROLLINSの書いた名曲をベースがテーマを取る。BLADEとのインタープレイが凄い。やはり、学者然としたB.BLADEは只者ではなかった。良く歌い、配慮の利いたドラミングを堪能頂きたい。
G"LONELY WOMAN" 
O.COLEMANの曲を少し重たいアルコによるテーマ演奏でスタート。その後、ベースが定型パターンを刻み、BARRONのピアノが跳ねる。
H
"A PLACE TO REMEMBER" 北川のオリジナル。良い曲だ。2分44秒と短いのが残念だ。

今回のアルバムも12月3日のコンサート同様に「ベース・トリオ」である。主役はベースにある。ベースの弾き過ぎという面も否めないが、そのマイナス点を引いても、有り余る魅力に溢れている。躍動感、緊密感、美しさに溢れたアルバムだ。名手、KENNY BARRONをも霞ませてしまう北川のエンタティナー振りに拍手。同じ日本人として誇らしく 「manaの厳選"PIANO & α"」に追加しよう。   (2005.12.18)



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独断的JAZZ批評 312.