独断的JAZZ批評 287.

MARTI VENTURA
南欧発、硬派のジャズ
"PAS DEL TEMPS"
MARTI VENTURA(p), MIQUEL ANGEL CORDERO(b), LUIS RIBALTA(ds)
2003年12月 スタジオ録音 (SATCHMO JAZZ RECORDS SJR CD 00077J) 

かつて「北欧発、硬派のジャズ」(JAZZ批評 243・)というのがあった。今度は南欧、スペインだ。ややもすると、リリカルだとか透明感だとか甘いとかいうイメージが強いヨーロッパのジャズにあって、硬派のジャズというのは新鮮である。ジャケットを見る限り若いグループのようだ。
特に、サイドメンが硬派である。ベースの音色は硬く引き締まっている。いい音だ。ビート感もある。何より、ピチカートが強い。ドラムスはちょっと異質な感性を持っていて面白い。パッカーショニストのような趣もある。これらに上手く調和するようにピアノが歌っている。
A、B、F、Hを除くすべてがVENTURAの書いた曲。

@"NIT EN BLANC" 
どちらかというと無骨で土の匂いのするグループである。音符の数も少なめだ。
A"EVERY LITTLE THING SHE DOES IS MAGIC" 
STINGの書いた曲。やはり、曲がいい!。重厚なサポートの上を軽やかなピアノが踊っていく。
B"MR I" 
泥臭くてユーモアのある曲。
C"PAS DEL TEMPS" 
タイトル曲。ベースとピアノのユニゾンで始まる哀愁を帯びた曲。ドラムスがラテン・リズムに乗ってパーカッションのように装飾を加えていく。

D"KLOWN" 
なんともひょうきんな曲。テンポがゆっくりになっていったと思ったら、徐々に元に戻ったり、忙しい。若干、懲りすぎの面も否めない。面白くないと思ったらパスすることだ。
E"FOOL OF FEEL" 
余分なイントロの後に美しいワルツのテーマに入る。強いベースのピチカートが快い。
F"MY ONE AND ONLY LOVE" スタンダードの名曲。僕の大好きな曲のひとつである。流麗とは程遠い演奏であるが、重低音を活かした一音一音が心に訴えてくる。アドリブに入ると4ビートを刻み躍動感が湧き上がってくる。アルコ弾きのベース・ソロが長めに配置されているが、個人的な好みで言えばピチカートにして欲しかった。味わい深い1曲。

G"PEL RAFA" 
ゴッツン・ベースの真骨頂。
H"NATURE BOY" 初めて聴いたときに、驚いた!ブリキのバケツを叩いたようなドラムスの2ビートで始まる。この曲にはSTEFANO BOLLANIの名演(JAZZ批評 210.)があるが、それとは対照的なアプローチが面白い。無骨なドラムスとリリカルなピアノとの妙と言ったらいいだろうか。このアルバムのハイライト。南欧発、硬派のジャズの本領発揮。
I"CURT 
J"POTSER SORT"  
最後は軽めにボサノバ調。

なんといってもFHの2曲で「一丁あがり!」という感じなのだ。あとは、おまけといったら言いすぎだろうか。この2曲、とても新鮮に耳に響くのだ。聞き古されたスタンダード・ナンバーを独自の切り口でアプローチしてみた、そういう感じ。決して、奇を衒ったという印象ではない。

このアルバムはDISK UNIONの新宿店を覗いたときに店内に流れていたので、即ゲットした。同じ頃、仙台のDISKNOTEのネットショッピングにも載っていた。その後、まったく見かけなくなったが、次の入荷待ちか?こういう輸入盤は入荷量も少ないのだろう。ちょっと良いアルバムだと直ぐ売り切れてしまう。入荷待ちの時間が長いのが玉に瑕だ。
アプローチの新鮮さと面白さで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。
   (2005.08.15)



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