鉱山跡を探す

Lost Mine///鉱山跡探索のHow To

鉱山跡の魅力

-はじめに-

日本にはかつて2,000か所以上の鉱山があった。金や銀、銅、硫黄や石炭などを地下深くから採掘し、
そこには大きな街があり、そして多くの人々が暮らしていた。
各金属の独自の特性を生かし、合金として我々の生活にとって親しみ在りそして必要不可欠となった鉱物。
しかしながら、採掘しつくしたり海外鉱物との競合でほとんどの鉱山はこれまでに閉山し街と共に棄てられてきた。

観光用に再開発されたり、産廃処分場と化したり、奇跡の再開発を遂げた場所もあるが、
これら鉱山跡は歴史に埋もれ、誰の目にも留まることなく朽ち果ててきている場所が多い。

このような鉱山跡は一般に紹介されるケースが少なく、到達してみるまでそこがどんな風景なのかわからない場合が多い。
そしてそれらがどこにあるのか中々解らなく、地味な机上調査を経て現地をハイキングすることになる。

鉱石採集や廃墟の写真撮影、場合によっては水質検査や地すべり等の土壌調査等を目的として訪問される方もいらっしゃるが、
本サイトの探訪目的は、棄てられた産業遺産に思いを馳せつつ、あくまでも非日常のアドベンチャーを体験すること、これに重きを置いている。


「落ちるかも」「登れないかも」といった保障されない探検はケイビングやロッククライミング等にも相通じるのかもしれないが、
そこは自然に対して謙虚に向き合い、場合によっては撤退し、可能であれば装備と経験でそれらを克服するのも魅力の一つである。


-鉱山跡とは何か、その実際-

棄てられた鉱山跡であってもかつての大資本を持つ企業や自治体、個人が現在も管理している場合がある。
これらは得てして立入禁止であり、入構には関係機関の承諾や制約の上での了解等が必要となる。
山中深く、だれの管理かさえ不明な場所も多いがあくまでも個人の責任において入構することを前提とし、
もちろんトラブルが発生した場合でもすべて自己責任となる。

そして鉱山跡は千差万別に富み、再訪しても以前と同じ状況とは限らない。
以前は歩けた道も土砂崩れで進めなかったり、スズメバチヒグマのおかげで撤退を余儀なくされることも多い。
そして、机上では確認できた鉱山跡が現地では見つからない、または見えているのに近づけないなどいうこともある。

また、問題ある鉱水がいまだに湧水し、その中和処理のためにプラントがあり作業者が常駐している場合も在る。

台風や積雪での撤退や片道300kmのアクセスをもってしても、すでに整地治山後のため何も発見できないこともある。
それでも尚、予想以上の大型物件や、巨大遺構に出会うことがあるのが最大の魅力だ。


廃墟と化して苔むした巨大な建築物、そこに繋がるレイルと小さなトロッコ。
脇には精錬施設や焙焼炉が草木に埋もれて残存している。昭和の初めにタイムスリップしたような不思議な感覚。
いつかは繁栄したこれら廃祉に、今一人で到達したことがささやかな冒険なのである。


大規模銅山の坑口と積込施設       閉ざされた坑口のみ残存          病院の廃墟が残る              沈殿池と製錬施設 

-鉱山跡サバイバル-

トレイルランが流行っている。これは山中を駆ける競技的な登山だが、反対にのんびり山歩きを楽しむ方も多い。
眺めの良い海岸沿いの尾根を歩いたり、深い積雪の中をスノーシューで登ったり、
マイペースで周辺の自然を楽しみながら眺め、登山ガイドには出てこない未踏の山中を歩くのもまた楽しい。
あの尾根の向こうは・・・この川の上流には・・・と未知への憧れを抱き、名もない深い渓谷やの出現に驚くこともある。

ゼロからの調査で机上確認した廃坑跡に、藪漕ぎや登攀、沢登りを経て到達した達成感は何ものにも代えがたい。


ザイルを用いて坑口へ            沢登りを経て坑道へ             崩れた坑道内を登攀              スノーシューで隧道跡へ 

鉱山跡を探す

-どうやって鉱山跡を探すか-

ここからは実際の鉱山跡をアナログ的に探してみよう。本サイト表面上には出てこない、非常に地味な作業となる。
各地方によって鉱床や地域性の違いが顕著なため、今回は北海道での鉱山探索と仮定する。
まずは地方の図書館や郷土資料館等に訪れることから始まる。ここで地誌を確認する。
これは例えば「長万部町史」とか「富良野市史」などの各市町村で編纂したその地の歴史を取りまとめたものだ。

この中に「産業史」の項目があり、そこにはおよそ「鉱産」「鉱物」の項目がある。

郷土誌に鉱山名と写真。             地誌に写真と簡単な歴史。 

ここで編集されているのはその地の鉱山名と簡単な歴史程度で、詳しい位置まではまず特定できない。

他には鉱産誌や鉱床総覧、水質検査の報告書、鉱石採集のガイドブック、旧いロードマップなどで鉱山名称を特定する。


鉱産誌に記載。                鉱床総覧に記載。                水質検査報告書に記載。           昭和47年のロードマップに記載。 

鉱山名を確認したら、次に地名大辞典などでその鉱山名を検索すると、もう少し詳しく素性と位置が理解できる。
そしてここから場所の特定に至るわけだが、図書館の蔵書等で国土地理院の当時(昭和20年頃)の地形図を確認する。
これに記載されていれば、現状の地形図と照らし合わせ位置をプロットする。

地名大辞典に同項目の記載。          昭和25年当時の地形図に記載。     現在の地形図で比較確認。  

ここまででおおよその位置は確認できたが、その施設の配置や坑口の位置までは解らない。
ここからは更に専門的に、鉱床図や地質図幅を確認する。これらは図書館レベルでは入手困難で、
地質研究所や大学付属の資料室での閲覧となる。
このような場所は敷居が高いかもしれないが、一般に開放している施設も多い。

これらのように、下調べのウエイトが実は大きく、この段階で現地がどうなのか予想するのも面白い。


鉱床図に坑道が記載。             鉱床調査資料に添付の地質図。  

詳しい位置の特定に至ったら、GPSに位置をプロットし、また紙の鉱床図コピーをラミネートしたものを準備する。

GPSにマーキング。             ラミネート加工した防水鉱床図。  

主な参考文献

北海道地下資源調査資料  昭和35年  北海道開発庁
地質学雑誌           昭和35年  日本地質学会
北海道の鉱業          昭和35年  北海道商工部資源課
北海道の鑛業          昭和18年  札幌鑛山監督局
鉱山地質            昭和36年  日本鉱山地質学会
採鉱採炭ハンドブック      昭和37年 
  日本地方鉱床誌         昭和48年 
地下資源調査報告書             北海道道立地下資源調査所
日本鉱産誌           昭和32年  工業技術院地質調査所

    
鉱山跡を訪れる

-鉱山跡へのアクセスとその状況-

得てして山中深い鉱山跡へは、街から林道を抜けてできるだけ現地に近づくこととなる。
林道は国有林、地方自治体所有林、私有林の中を通りほとんどは未舗装の地道である。
森林資源開発、治山、工事用とその目的は多種あっても整備が行き届いているとは限らない。
規格も多種で1.8m幅、3.6m幅、4.0m幅になると行き違いも駐車もしやすいが、乗用車では困難な道も多い。
地図上は山深く進む道も下流のゲートであっけなく通行止めの場合もある。

スタックに備えてのスコップや倒木に対してのノコギリなど、十分な装備の車両が望ましい。
また、ゲートから鉱山跡までが徒歩になる場合、その距離が重要である。
およそ3km/時間でアクセスを計算しないと、現地で写真撮影が困難となったり、下山時に闇が訪れることとなってしまう。

-四季の探索-

北海道は四季がはっきりしている。
8月、9月は激藪で、発見できるはずの遺構も見過ごしてしまう。またブヨなどの害虫が大量発生する場所もある。
ただ、沢登りを中心とする探索はこの夏季が良いかもしれない。

11月から4月までは積雪だが、この時期はスノーシューで山深く入り込める。もちろん冬山の知識と装備が必要だが、
夏路の無い山も多いので、普段は入れない場所も入山可能な場合がある。
但し、北海道の冬の夕暮れは早く、15:30以降は夕焼けが始まる。

10月から積雪期までは藪や害虫も少なく、冬ごもり前のヒグマの動向が気になるが、
秋口が2番目に探索しやすい時期である。
しかし、前述の日の入り時間を考慮しないと、写真撮影や下山に支障を来たすこととなる。

探索のベストシーズンは、やはり積雪で押された藪が跳ねる前の4月から5月の期間だ。
例年この時期は、山中奥まで見通せることが大きく、再訪した遺構で新たな発見が相次ぐ。

-鉱山跡の状況と探索テクニック-

<地形図が語る>
国土地理院の2.5万分の1地形図では1cmが250m。等高線は10m間隔。
つまり距離100mで10m登ればその角度は5.7度。(tanΘ=10/100・・・atan(0.1)=5.7)
でも距離50mで20m登れば更に急で角度22度。(atan(20/50)=21.8)
角度を数字で見てもわかりにくいが、地形図を見ながら山を歩くと斜面のイメージが湧いてくる。

前述のように旧い地形図を確認しても、何も記載が無い場合も多い。
この時には目を凝らして、地形図を眺めるのである。

例えば山中の荒れ地に神社のマーク、「金山川」「銅山川」などの名称、山中の長方形の池(=沈殿池の可能性)、
などによりかつての鉱山位置を推理するのである。


荒れ地に神社/高塔/廃坑のマーク。  「銀山沢」及び「鉛川」そして神社。   山中に人工的な長方池。 

<現在位置と目的地>
探索には地形図とコンパスを利用したオリエンテーリングは必携だ。

@目的地を探す
地図上の北とコンパスの示す磁北の差を確認する。
 (西偏○度○分と記載された数値に従って地形図に西に傾いた斜線(磁北線)をあらかじめ入れておく)
現在地から目的地に向かって平衡にコンパスを置く。
コンパスのリングを回して、磁北線と矢印を平行にする。
体の正面にコンパスを持ち、コンパスの針とリングの矢印が重なる位置まで体を回す。その正面が目的地である。



A現在地を探す
遠くの山頂など2か所以上の地形図上で確認できる目標物を探す。
その一つ目の目標にコンパス先端を向け、コンパスの針と矢印が重なるようにリングを回す。
地形図上のその目標にコンパスの先端角を置き、リングの矢印と磁北線が平行になるまでコンパスを回し、合致した箇所でコンパスの側辺に沿って線を引く。
もう一つの目標で同様の作業を行い、引いた直線の交点が現在地となる。


<歴史が語る>
その土地の地誌や町史、鉱床調査の記録や金属鉱山研究史には鉱山の歴史的背景がかなり細かく記載されている。

「金堀沢川の上流には藪に埋もれた精錬所跡が残る。」とか「1950年に〜氏が焚火をした火が近く岩石に燃え移り、鉱床を調査〜
1965年に〜鉱業が1号坑を開坑、1967年に〜鉱山に約35tの鉱石を売鉱、1969年に探鉱・採鉱を中止し休山を迎える。」
などの沿革等の記述である。これらから沢や谷を現地形図で追い、また閉山後の経過年数を確認するのである。

そしてその鉱床の地質から、金・銀・銅・硫化鉄などのそれぞれの特色にてどのような遺構が残存するのか想像するのである。
露天掘り中心の鉱床に坑道は余り存在しないし、買鉱し精錬は外注した鉱山に大規模な精錬所は残存していないはずだ。


緒言、沿革、地質、位置及び交通などが記載


-装備について-

<ウエア類>
基本、藪漕ぎと膝下の水没は通例なので、藪に引っかかりにくく、破れにくいアウターを着る。
いつもは綿とアクリル混合のマウンテンパーカーを利用し、冬季はゴアテックスを用いたアルパイン用のアウターを使用している。
もちろん、夏場でも長袖長ズボンで肌の露出は徹底して控える。

足元において過去には濡れない工夫を色々行ったが、現在は濡れても寒くない装備で探索している。
それはネオプレーン素材(ウエットスーツ)の靴下に登山靴、スパッツの併用だ。
日に複数個所の探索を行うので、足元はブーツを含め常に2セットの予備を持つようにしている。

頭部は通常キャップだが、坑道内は必ずヘルメット着用で入坑する。
落石の危険というより、掘削面が凸凹の天井は急に出っ張った部分があり非常に危険だ。
LEDのヘッドランプを取り付けて、足元を照らすようにしている。

グローブは皮と綿併用のアウトドア用の指なしグローブを使用。
冬季もラッセルすると暑いので、皮の作業用グローブを使用している。
やたらとカメラ撮影が多いので、指は露出しているが意外とケガはしない。

ブーツは登山靴で良いがビブラム底にゴアテックスブーティのものを使用している。
斜面に突っ込んで登攀することが多いので、爪先が堅いものが望ましい。
中敷きにはアルミ製の踏み抜き防止用のものを挿入している。


丈夫で壊れにくいウエア類          坑道内ではヘルメット必携         冬季はアルパインウエア           豪雪時にはスノーシューで

<探索用品類>
山で宿泊はしないのでテントやシュラフは持たないが、エマージェンシーの軽量サバイバルシートは万が一のため持参している。
山中深く、工程も長いときはツエルトを装備するが、探索の妨げになるので普段は持たない。

ストック(ステッキ)は斜面でバランスを取ったり、藪を倒したりといつも持参している。
二輪で入山の時は昼食時、簡易に菓子パンなどですませる時も多いが、時にはコンロとコッヘル、水を持参し昼食を取ることも多い。
車両を離れてから探索完了するまで最長でも5時間程度なので、水筒は必ず1Lのものを満タンにして入山する。

日中であっても廃墟の地下室や坑道内、谷間の日陰の岩場などではライトが必要なことが多い。
無ければ帰還に影響するので、電池の予備を持ち、複数個を併用している。

探索中も意外と筆記用具は必要な時がある。細かくはデジカメで記録しても、坑道の配置を描いたり、知り合った方との情報交換などにも使用する。
氷点下でも圧をかけて記載できるボールペンと、土木用の防水レベルノートを使用している。

ザイルはUIAAをクリアしたφ9mm/12mのものを使用している。
これまで上国富鉱山では谷下の坑口に降下する際に、J鉱山では竪抗を跨ぐ際に、
ある煙道では斜坑を下る際など、多数の舞台で流用し無くてはならない存在だ。
結束は南京結び他数種で十分事足りる。

防塵マスク、非常食、ウエットティッシュ、ファーストエイドキット(絆創膏、虫刺され薬等)、ライター(吸血ヒルを剥がす)、サバイバルナイフ、
爆竹(羆除け)、ビニール袋(雨具にしたり鉱石を採取)、マーキングテープ(可能な限り回収)、雨具、酸素濃度計、ビバーク用品、熊鈴、デジカメ予備機等
また車両には「入山中」と緊急連絡先記載したシートをダッシュボードに置いて入山するようにしている。
最悪1泊できる、そしてもしもの際に備えた準備をしている。


照明類と探索用品               南京結び                    酸素濃度計は18%以下で警報が作動  デジカメ類は防水・耐ショックのものを

<身に着ける装備>
どんな時も手放さない大きめのウエストバックには、頻度高い装備を収納している。
防滴のGPSにサバイバルツール、LEDのライトと蜂撃退用スプレー、熊鈴、デジカメ/三脚、スケール(レイルの軌間計測など)と前述の筆記用具、
これに少量の非常食をパックする。携帯電話にはPDF化した鉱床図などを入力。
以前は一眼レフも使用したことがあったが、機動性を優先して丈夫なコンデジを現在は使用している。

常備するウエストバック             デジカメは三脚と共に結束     

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