晩酌であれ、居酒屋であれ、男の一日を締めくくるにはどうしても欠かせないのが酒。 男の料理もそれに合った酒があれぱ、さらに真価を発揮するというものです。 ここでは私の行きつけで、埼玉県蓮田市にある「今宮酒店」のラインナップを中心に、 男の夜を演出するにふさわしい、私お勧めの厳選地酒銘柄を紹介します。


梅乃宿

梅乃宿

醸造元

梅乃宿梶@奈良県葛城市

杜氏

高橋 幹夫

お勧めの1本

純米吟醸 紅梅

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 この蔵のいいところはズバリ、コストパフォーマンスです。私の晩酌でもおそらく登場回数 はベスト3に入ります。特純クラスで2,300円台、純吟クラスで2,700円台、いずれも 米の旨みを活かした厚みのある酒です。
 また、大人気の梅酒に加え、ゆず酒、「月うさぎ」なんていう発泡酒まで商品のラインナップ も実に多彩ながら、決して雑になることなく、すべて高いレベルで供給し、実に安定感が あります。山廃、生もとも手掛けていますが、「どうだ、山廃だぞ!生もとだぞ!」という インパクト重視のタイプではなく、梅の宿らしさを残した穏やかな味わいの仕上がりです。 強烈な個性を主張するのが地酒といった風潮が強い昨今においては、ある意味、ちょっと つかみどころが無い銘柄なのですが、今宮さんにいってあれこれ迷った時、ついつい手が 伸びてしまう、不思議な魅力を持っています。
 レギュラー酒の本醸造も実に完成度が高く、何故この酒が1,701円なのかは日本酒界の 七不思議のひとつです。ここが日本で無くアメリカであれば、おそらくは ダンピングで提訴されることでしょうし、訴えられた場合の勝ち目は全くないと断言させて いただきます。

秋鹿

秋鹿

醸造元

秋鹿酒造(有)  大阪府豊能郡能勢町

杜氏

谷淵 英雄

お勧めの1本

純米吟醸にごり生酒 霙もよう

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 日本酒を食中酒として捕らえた時、酸の役割というのは非常に重要です、食中酒を志向している 多くの蔵では、酸味を活かした酒造りを念頭においているのだろうと想像します。この秋鹿も 酸味を活かした個性ある酒造りをしている蔵のひとつです。
 この蔵の酒は総じて酸度が高いのですが、同様の酒にありがちな荒々しさは感じさせず、 のど越しも中々いい、一種独特な雰囲気をもっています。
 お勧めの一本は発泡のにごり酒「霙もよう」です。開栓したときのフレッシュな味から1週間 くらいかけて落ち着きが出てきますので、その味の変化を楽しむのが面白く、このお酒が冷蔵庫 に入っている時は毎日帰りが楽しみになります。ただ開栓後は時々栓を抜いてガス抜きしないと、 栓が飛んで冷蔵庫中を酒びたしにする恐れがありますので管理には十分注意しましょう。
 また、米にこだわっているのもこの蔵の特徴です。最近は自家田でこだわりの酒米づくり をしている蔵をよく見かけますが、その先駆け的存在といっていいでしょう。

奥播磨

奥播磨

醸造元

下村酒造梶@兵庫県宍粟郡安富町

杜氏

高垣 克正

お勧めの1本

山廃 純米酒

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 たった600石の小蔵ですが、腰の入った酒造りで、「山廃純米」「超辛純米」 「生もと純米 誠保」「純米 ダブルエックス」など、米の旨みを活かした骨太で筋肉質の酒を 次々とリリース、日本酒界に強烈な存在感をはなっています。「手造りに秀でる技はなし」 というのが家訓と聞きましたが、酒質からも言葉通りの頑固さが伺えますね。
 多くの食中酒志向の蔵同様、全般に吟香は抑え目ですが、酸の量と質は造りごとにかなり異なり、 濃いめの味付けから淡白なものまで、多様な料理に併せられる幅広いラインナップを揃えてます。 600石の蔵でこれができるのも、機械的な生産ラインなどというしろものから無縁だからに 違いありません。
 私お勧めの一本は「山廃 純米酒」、Duncyuで燗酒ランキングのトップに輝いた酒です。 おなじ燗酒向きでも「大七純米生もと」などはタイプが違い、ややぬるめ燗で味の厚みとふくらみを 楽しみたいタイプ。山廃によくある渋みをあまり感じないので、個人的には常温でも悪くないと 思っています。私の個人的な酒の理想形として「鰈の煮付けと合う」というのがあるのですが、 まさしくその1本なのです。

鷹勇

鷹勇

醸造元

大谷酒造梶@ 鳥取県琴浦町

杜氏

曽田 宏

お勧めの1本

純米吟醸 なかだれ

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 厚みがあり骨格のしっかりした酒で知られる鷹勇、香り、甘み、酸味などどれをとっても突出した ところがなく、実にストイックなイメージ。ちゃらちゃらした感じはまったくありません、格調の高さ を感じさせる酒づくりが信条です。現代の名工に選ばれ名杜氏として誉れ高い前杜氏の坂本杜氏による ところが大きいいのでしょう。
 しっかりした酒質の酒は開けてすぐ飲むと味がのってないなと感じるものが多いのですが、 この鷹勇も例外ではありません。ほとんどの酒が開けたばかりでは硬く感じ、実力発揮までには 開栓から約1週間を要します。それがためにあまり初心者にはお勧めしがたいところもあるのですが、 空気に触れさせて十分な時間を経たものは、きっちり味ものって、しみじみ旨いなあと感じさせる力が あります。
 お勧めの一本「純米吟醸 なかだれ」は鷹勇にしては例外的に開栓当初からあまり硬さを感じさせず、 初心者にもお勧めの一本です。私はご贈答用としてもお勧めしています。
 それと、山廃にも感心させられました。多くの山廃が野性的な力強さを売物にしている中、鷹勇の 山廃は山廃らしからぬ端正なフォルム、どんな時でもヘアースタイルを崩さない男前な酒質を貫いている ところに鷹勇らしさを感じます。


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