晩酌であれ、居酒屋であれ、男の一日を締めくくるにはどうしても欠かせないのが酒。 男の料理もそれに合った酒があれぱ、さらに真価を発揮するというものです。 ここでは私の行きつけで、埼玉県蓮田市にある「今宮酒店」のラインナップを中心に、 男の夜を演出するにふさわしい、私お勧めの厳選地酒銘柄を紹介します。


田酒

田酒

醸造元

叶シ田酒造 青森県青森市

杜氏

細川 良浩

お勧めの1本

純米大吟醸

コメント

 利き酒をしてAとBの違いを当てろというのは結構出来ますが、全国に5,000あると言われる日本酒の銘柄の中から、 飲んだお酒を特定するという芸当は到底できるものではありません。しかしラベルを 見なくても、「これはたぶん○○だなと」かなり高い確率で言い当てられる銘柄があります。 ひとつは「神亀」もうひとつがこの「田酒」です。
 吟香や味わいを表現するとき、メロン、 バナナ、りんご、洋梨等の表現がよく使われますが、私の田酒感はオレンジです。フルーティ な香りと酸味、わずかに感じるオレンジの皮のような苦味が渾然一体となり独特の味わいを 醸し出しており、ジューシーという言葉がもっともピッタリくる銘柄のお酒です。ちなみに 私は毎年ここの限定品「純米吟醸」(H20年からは「純米大吟醸」)を飲むのが一年の楽しみ。
 「今まで飲んだ酒で1番好きな1本を挙げろと」言われるとちょっと困りますが、 「5本選んでみろ」と言われれば、確実にこれを入れると思います。
 この蔵のスタンダードである「特別純米」は、燗して良し、冷でよし肴も選ばず、 居酒屋酒の王道ではないでしょうか。

酔右衛門

酔右衛門

醸造元

(資)川村酒造店 岩手県石鳥谷町

杜氏

高橋 勝男

お勧めの1本

特別純米美山錦(火入れ)

コメント

 多田信夫、辻村勝俊などのカリスマ杜氏を擁し、世界一の勢力を誇る杜氏集団「南部杜氏」。 その本拠地である岩手県石鳥谷町で醸されているのがこの「酔右衛門」です。川村直孝という くそ真面目そうな顔をした若社長の風貌からは全く想像できないような、実にアグレッシブな 酒をつくっています。
 酔右衛門でまず味わってもらいたいのは「特別純米」。美山、山田、雄町と酒米によって 3種類がありますが、いずれもインパクトのある酸味をしっかりとした旨みが受けとめると いった味の構成で、味わいに立体感というものを感じます。(山田がやや落ち着いた感じ)
 合わせる料理ですが、照焼など濃い目の味にベストマッチかと思います。また、この 「特別純米」には「生原」もありますが、こちらは力のある酸味にフレッシュさと微発泡が 生み出すキレが加わり、マリネなどオリーブオイル使った料理と好相性です。 この蔵は酒造りに勢いがあります、次世代のスター候補でしょう。

鯉川

鯉川

醸造元

鯉川酒造梶@山形県東田川郡庄内町

杜氏

池田 嘉克

お勧めの1本

純米吟醸

コメント

 今最もレベルの高い酒造りをしている地域はどこか?どうでもいい戯れでありますが、 2010年現在、私なら「様々な個性の蔵がそれぞれに高いレベルで競いあっている山形県」と 答えます。静岡県も銘醸蔵が多いのですが、やや低酸系の香り吟醸に偏る傾向が強く、 多様性においては山形県に大きく譲るという印象があります。たとえば今宮さんにある出羽桜 とこの鯉川などは、同じ山形にありながら味わいという点では対極にある銘柄ですが、双方 高い評価を受けており、多様性を証明する一例と言えます。
 鯉川のお酒は派手さがないのですが、なんとも言えない「落ち着き」がいいですね。 「デーハーなチャンネーよりやっぱり家のカミさんが一番だよ」という人にぴったりのお酒 です。私がお薦めする純吟などは、冷でも燗でもいけますし、肴を選ばない幅の広さも 備えています。いわゆる「ハレの酒」ではないのですが、晩酌酒としては極めて優等生というの がこの鯉川なのです。

羽前白梅 俵雪

羽前白梅 俵雪

醸造元

羽根田酒造梶@山形県鶴岡市

杜氏

安西 正一

お勧めの1本

羽前白梅 俵雪 上澄み

コメント

 私、行きつけの酒屋である今宮酒店の扱っている酒で「何がお勧め」かという質問を 知り合いからうけることがあります。その方の好みが分かっていればそれなりのものを薦める のですが、よく分からない時はこの「羽前白梅 俵雪 上澄み」を薦めることが多いのです。
 厚みがありながら、柔らかく品の良さを感じさせる味わいは、何やら蔵のある鶴岡市出身で、 私の敬愛する藤沢周平氏の小説に出てきそうな武家の奥様を想像させます。もちろん足軽や 中間などではなく、最低でも150石や200石くらいの高禄をいただいているであろう、 由緒正しい家格の上品な奥様です。藤沢小説によく出る稚鯛の湯引きや小茄子の漬物を肴に 一杯やれば、更に雰囲気が出てくるというものです。女優にたとえるなら、綺麗なだけでなく 風格も備えた鈴木京香さんといったところがピッタリでしょう。

〔1〕 〔2〕 〔3〕 〔4〕 〔5〕 〔6〕 next