会社は、自然人以外で法律により「人」とされています。これを「法人」といいます。自然人と同様、法律により権利義務の主体たる資格(権利能力)を認められた存在ということになります。 ですから、会社法等の法律の手続きによらなければ成立も消滅もしません。
法人は一旦成立すると休業等の状況にあったとしても法律上消滅はしませんので申告が必要であるということになります。休業又は休眠状態だから、申告義務がないというのは大きな誤りです。申告義務があります。個人の申告とは違います。
以下、無申告(調査による期限後申告を含む)であった場合や自主的に期限後申告をした場合の取扱いについて説明します。
また、も設けられています。下記の罰則は、代表者等に対するもので、法人に対するものではありませんので留意してください。
決定処分(調査による期限後申告の提出を含む)
- 法人税は、所得税、相続税、消費税等と同様に申告納税制度をとっています。申告納税制度は、納税者の自主的な申告と納税を期待している制度です。よって、これを担保するために申告を提出しなかった場合には、税務調査により「決定」処分することができることになっています。
- 「決定」とは、税務署長が、納税申告を行う義務があると認められる者に対して、納税申告書を提出しない場合、その調査により課税標準等及び税額等を確定する処分をいいます。
- 帳簿書類が不備で、帳簿書類の調査で所得金額等が計算できない場合には、財産若しくは債務の増減の状況(財産法という計算方法)、収入若しくは支出の状況(損益法という計算方法)又は生産量、販売量その他の取扱量、従業員数その他事業の規模によりその法人に適した合理的な方法により所得金額等を推計して決定処分をすることができることとなっています(これをといいます)。
- ただし、推計課税による決定処分を行う場合は、青色申告書を提出した内国法人を除かれます。よって、推計課税を行なう場合には、法人が青色申告の承認を受けている場合、青色承認の前提であるの備付、記録及び保存を義務付けた財務省令の規定に反している状況なので、先に青色申告の承認を取消す処分を受けることになります()。
- なお、決定しても納付税額及び還付金の額に相当する税額が生じないときは、その実益がないので、決定は行われないことになります(これは、国税の処分であり、地方税は違います。)。
給料等の支給がある場合には、別途源泉所得税の徴収義務が生じます(自主納付か徴収決定処分を受けるかになります。また不納付加算税が賦課される場合もあります。)。
- しかし、休業等の状況で決定処分がなされなくても、下記のの1.の規定により罰則が科される場合も考えられます(当職の私見)。
附帯税(無申告加算税)
- 納税額が生じている場合には、を除き、自主的に期限後申告書を提出した場合も、税務調査による決定処分(期限後申告書の提出を含む)でも無申告加算税が賦課されます。
- ただし、自主的な期限後申告の提出の場合と決定処分(調査による期限後申告を含む)の場合では無申告加算税の取扱いが異なります。
- 自主的期限後申告とは、その法人に対する臨場調査、その法人の取引先の反面調査等により、当該法人が調査のあったことを了知したと認められた(「決定があることを予知される」)前に確定申告書が提出された場合の当該確定申告書の提出がなされたものをいいます。よって、税務署から臨場のための日時の連絡があっただけでは、「決定があることを予知してなされたもの」には該当しないので、臨場調査等の前に提出されたものは自主的期限後申告となります。これ以外は、決定を予知してなされた期限後申告ということなります。
- 無申告加算税は次のようになります。
- 自主的期限後申告の場合、納付税額に5%の割合を乗じて計算した金額
- 所得金額の決定を受けた場合又は調査による期限後申告の場合、納付税額に対して50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合を乗じて計算した金額
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なお自主的な期限後申告の場合、次の要件をすべて満たす場合には無申告加算税は免除されます。
- その期限後申告が、法定申告期限から2週間以内に自主的に行われていること。
- 期限内申告をする意思があったと認められる次のいずれの場合に該当すること。
- その期限後申告に係る納付すべき税額の全額を法定納期限までに納付していること
- その期限後申告を提出した日の前日から起算して5年前までの間に、無申告加算税又は重加算税を課されたことがなく、かつ、期限内申告をする意思があったと認められる場合の無申告加算税の適用を受けていないこと
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災害、交通・通信の途絶その他真にやむを得ない事由があると認められたときは、期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があるとして無申告加算税は賦課されません。
2事業年度連続して法定申告期限内に申告書が提出されなかった場合には、青色申告の承認は取り消されます。法人税法127条1項4号の規定では、確定申告書をその期限までに提出しなかった場合は取消となっていますが、事務運営指針で2年とされています。
その外、取消の事由としては次のことが該当します。
- その事業年度に係る帳簿書類の備付け、記録又は保存が126条第一項(財務省令で定めるところにより、帳簿書類を備え付けてこれにその取引を記録し、かつ、当該帳簿書類を保存しなければならない。)に規定する財務省令で定めるところに従って行われていないこと。
- その事業年度に係る帳簿書類について財務省令で定めるところにより帳簿書類を備え付けてこれにその取引を記録し、かつ、当該帳簿書類を保存することに対する税務署長の指示に従わなかったこと。
- その事業年度に係る帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装して記載し又は記録し、その他その記載又は記録をした事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由があること(即ち、不正所得があった場合と推計課税に拠らなければならない場合です)。
- 連結納税の承認の取消しの規定により、連結納税義務者の承認が取り消されたこと
1. 正当な理由がなくて確定申告、連結確定申告、退職年金等積立金に係る確定申告書をその提出期限までに提出しなかつた場合には、 法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者でその違反行為をした者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。 (法人税法160条)
「正当な理由」とは、災害、交通・通信の途絶その他期限内に申告書を提出しなかったことについて真にやむを得ない事由とされています。
2. 故意に納税申告書を法定申告期限までに提出しないことにより税を免れた者(法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者)でその違反行為をした者は、5年以下の懲役若しくは500万円(情状により脱税額)以下の罰金又はこれらの併科する。(法人税法159条第3項)
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