捨て犬の十戒
僕を迎えてくれた時の事は忘れません。
暖かい家族の中で幸せでした。ご主人様との楽しい思い出は決して忘れません。
ご主人様が望んでいるようには振舞えなかったかもしれません。
僕はあまり可愛らしくなかったかもしれません。
でも、ご主人様に喜んでもらいたくて、精一杯頑張った事だけは本当です。
ご主人様がいなくなっても、きっと迎えに来てくれると思っています。
側にいられなくなった訳は良くわからないけど・・・
僕を嫌いになったからじゃないと自分に言い聞かせています。
僕を生んでくれたお母さん、お父さんに、ありがとうって言いたい。
こうして楽しい思い出を宝物にできたのも、命を与えてくれたからです。
生きているから味わえたのです。
ありがとう。
今は、たくさんの仲間たちと一緒に暮らしています。
でもみんな悲しそうです。
僕もなぜか寂しい、物足りない気持ちでいっぱいです。
多くの仲間たちは、連れていかれ二度と顔を見ることもない毎日です。
そのときの悲しそうな目を見たことがありますか。
一部の仲間たちは、たまに新しいご主人様が連れて帰ります。
ご主人様が迎えに来てくれないなら、僕も新しいご主人様に連れて行かれるかもしれない。
優しいご主人様だったら嬉しいけど・・・
僕にはご主人様を選ぶ事はできません。
でも僕を迎えてくれるご主人様が、どこかにいるかもしれない。
もしそうなったら、今度はもっともっと機に入られるように頑張ります。
ご主人様、早く僕を迎えに来てください。
そして今度こそずっと側に置いてください。
それだけが僕の願いです。
ご主人様、これだけは覚えておいてください。
僕だって生きているという事を。
心だってちゃんと有るという事を。
天に召される最後の時まで、ご主人様に尽くしたいと思っている事を
動物にも人間と同じく暖かい血が流れていて、
喜んだり、悲しんだり、怒ったりするけれど
動物たちは人間を裏切りません。でも人間は平気で動物たちを裏切ります。