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vol 35: 自分の気持ち
大樹の何かのまじないのせいで、すっかり寝不足の朝。
窓から射すような真白い光が部屋に入る。
この光・・・太陽の光とちゃう。
パパや。
(我が子よ。声が聞こえるか。)
俺は両目を閉じて笑みを浮かべた。
懐かしい声。
(うん。聞こえとぅよ。元気にしてた?)
(おぉ、我が子。愛しい我が子よ。)
真白な光は俺の体を包み暖かい。
地球時間計算でいうたら16年ぶり。
最近になって記憶が戻ったんやもん。
体にまとわる光に触れ、
(パパ・・・。)
(我が子よ、黄泉の国の神を愛しておるのか!)
「へっ?」
俺はその言葉に目を丸くして固まった。
(先程、黄泉の国のお前と黄泉の国の神を見た。
お前と共に行った蛇の子だ。
ただの友人だと言っていたでわないかっ!)
ちょーまち。
なん?この会話。
まるで娘の恋人出現に超心配症な父親の会話やん?。
「カン~!もう7時過ぎてるよ!
早うせんと、遅刻するよ!」
1階のオカンの声が聞こえる。
「あ、おー!わーっとる!」
とりあえず、まとわりつく光を手でパタパタ払い、
制服に着替えて鞄に教科書を詰め込みバタバタする。
(どうなんだ!そうなのか?!)
「いや、ちゃうよ。」
咄嗟に答えて鞄を肩に掛け、
(違うんだな!)
念押しするように言われた事に、俺は動きを止めた。
違う。
違う?。
愛しく思う。
『・・・カン?』
『ちゃんと・・・好いとうよ?』
昨夜の夢の俺の言った言葉が光景が浮かぶ。
でも、俺ら・・・恋人?。
間違いでもエッチはしたらしい。
(何っ!!)
「え?」
「カン~!。」
「やば、遅刻する。」
俺はそのまま部屋を出て階段を駆け下り、バターの塗ったトーストを、
オカンから受け取って靴を履き、外へ出ると自転車に跨って学校に向かう。
片手運転しながら、パンを片手に一口・・・二口。
俺と大樹の関係って、今でも友達なん?
この時すでに、パパの事を忘れてた親不孝な子供なり。
上の空で授業を受け、昼休み。
「あぁあ!。」
「どーしたの?カン。」
「昼飯・・・持ってくるの忘れた。」
「バーカ。あはは。」
お弁当を少しあげようかと言ってくれる子や、
菓子パンを1個あげると言うてくれる子。
女子が群がる。選りどりみどり。
「・・・ありがとう。でも、ええわ。」
ヘラっと笑って断った。
なんや、食欲あらへん。
いつものように屋上に向かう。
本当は立ち入り禁止なんやけど。だから誰も来んからええねん。
屋上の扉を開けると、先着1名。
「か~んぅ~。」
泣きそうな顔で名前を呼ぶ大樹。
大樹の周りには光がまとわりついている。
パパ・・・。
「はぁ~。」
俺は大きな溜息を吐きその場にしゃがみ込む。
「ね、この光なに?朝から急に現れてずっとこうなんだ。」
大樹は不気味で不安そうに問い掛けて俺の前にしゃがみ込む。
「・・・聞かんほうがええと思うで?」
「え・・・なんでさ。気になるし言ってよ。」
「・・・。」
俺は大樹と視線を合わせた。
大樹はゴクリと生唾を飲み込む。
「天界の神・・・俺のパパや。」
「天界の神?カンのパパ・・・なんだ、カンの・・・お、おおおお父さん!」
大樹は後ろに尻もちついて口をアワアワさせとる。
せやから言うたのに。聞かんほうがええて。
「お、おおおおおお父さん、コンニチワ!」
自分にまとわりつく光に向かって挨拶を始める大樹。
しかも・・・緊張のあまり片言になっとる。
(お父さん!私が何故こやつにお父さんと呼ばれなくてはならんのだ!)
「おおおお父さん、お日柄も良くいい天気です!」
パパは姿は光で表情は解らんものの、ご立腹の声。
声の聞こえん大樹は、真顔で天気の話。
(パパ、あのな・・・。)
「今日はこんなに良いお天気なのに、夕方から雨になるそうですよ。」
(何も聞きたくない。)
(・・・せやけど、聞いて。俺な・・・。)
「いや~、夜には雷とか。最近の天気予報は当たるんです!アハハハ。」
「って!やかましいわっ!ボケっ!」
「えっ!何?俺なんか失礼なこと言った?!」
状況の掴めない大樹は顔色を変えてアワアワしとる。
「・・・今、大事な話しよるねん。俺とお前の・・話。」
「か、カンと俺の?。」
次第に大樹の顔が真っ赤になり俯いて口に手を当てている。
「おい・・・なんで赤くなる?」
「だって・・・カミングアウトだろ。お父さんに。」
「か、カミングアウトて・・・。」
確かにそうや。俺の気持ちを言うつもり。
ただ、まだ俺的にはどないしたらええんか解らんのが正直な気持ち。
俺は人間界を救いに来た。せやのに恋だの愛だの。
「カン・・・。」
「・・・。」
大樹が光に向かって土下座をし始めた。
「たい・・じゅ?」
「お父さん!俺、カンを・・天の子を愛しています。
天界にいる頃からずっと。この世界に来てからも、ずっと!」
「お、おい。」
土下座して叫び出す大樹に俺は眉尻下げて肩に手を伸ばし指を触れさせた。
「お、俺は、俺は蛇です!ですが、彼女を愛してるんです!。
俺は役目が終えれば、天の子と契りを交わします。」
「たいじゅ・・・。」
(ぬぅぅぅ!許さぬ!その様な戯言を!)
「パパ!戯言と違う!俺も大樹が、ちび神を!」
「カン・・・。」
空が曇り真っ暗になると大きな雷が光り強い雨が降りだした。
「うわっ!大樹、濡れる。」
土下座する大樹を上から被さるように抱きしめた。
大樹は俺の腕を掴み下に引っ張ると俺は濡れた地面に膝がつき、
パパの怒りの雨に打たれて二人とも、すぐにずぶ濡れ状態で。
「・・・今の、確信していいんだよね?」
今まで見た事のない真顔で俺を見つめて問い掛ける。
俺はゆっくり瞬きして弱弱しい笑みで大樹を見つめた。
「うん。・・・そうみたいや。
まだ、戸惑ってるとこもあるけど、俺は大樹が好きや。
その気持ちに戸惑いはないよ。」
大樹の首に両手を巻き付けて抱きついた。
自分からこんな事したん初めてや。
気持ちええ。
心臓がドキドキして・・・でも、なんや幸せ。
「カン、大事にする。ずっと。」
大樹が強く抱きしめる。
大樹・・・。
真上の雲がゴロゴロと地響きをあげる音を鳴らしたと思ったら、
俺と大樹の少し離れた屋上の一部に雷がドーンって落ちた。
「うあっ!」
俺と大樹の体は落ちた瞬間跳ね上がる。
目を見開き、見詰め合った。
「もしかして・・・お父さん怒ってる?。」
「・・・うん。カンカンに。」
大樹の表情が再び青褪めて土下座して泣きながら何度も頭を下げ、
「おと~さん、おと~さぁ~ん。」
ヘタレめ。
まぁ、パパはさすがに怖いわな。
なんてったって、天界の神やもん。
屋上の雷の落ちた場所からモクモクと煙が立ち込め、
勢い良く屋上のドアが開き、数名の教師が煙に慌て、
「織田先生!無事ですか!」
「やばいぞ!消化器!」
教師らが慌てていると、炎上しだした。
パパ・・・やり過ぎ。
「おと~さぁ~ん!うぇ~。」
「ちょ、織田先生!何言ってるんですか!」
「おい、戌尾!織田先生を連れて行け。」
「はぁ~い。」
大樹をズルズル引っ張って校内へ。
これで、人気ナンバー1の大樹はヘタレ発覚で人気、がく下がり間違いなし。
「ねぇ、聞いた?きのうの落雷でさ、織田ちゃん泣いてたんだって。」
「えー!マジ?」
「マジマジ。おとーさぁ~ん!・・とか叫んでたらしいよ?。」
「ね?カン。」
「お、おう。そやで。ほんまアイツ、ダサダサやなぁ~。
やっぱ、人気ナンバー1は、この俺様。」
「キャー!可愛い~!」
「ハイ?」
「織田ちゃん、超可愛い!。」
「え、可愛いって・・マジ?。」
「マジマジ!やっぱり織田ちゃんがナンバー1だねぇ。」
「・・・なして?。」
「最近の・・・。」
「お、五百埼。」
「最近の女はヘタレが萌らしい。」
「・・・。」
俺の大樹の人気を下げる為に撒き散らした噂で、
大樹の人気はますます上昇中なり。
「って言うか・・・なんで織田と二人で屋上に居たんだ?。」
「え・・・。」
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