vol 32: 悪魔のやり方



神がいれば基本的に悪魔が存在する。
霊・悪霊・悪魔
この3つは全て違う。
霊は良し悪し関係ない霊体。
悪霊は怨み、怨霊とも言う。
悪魔・・・彼等は悪しき事の上にいる存在。
神に対抗し、怨みが根本だが、それを上手く利用する。
悪魔は元は神使い。
神使いと同じ力を持っている。

最近はこの類の本ばかり集めて読んでいる。
シロは手を出すなって言うけど、神を知れば、
自然と悪も知らなければならない。
必ず通る道だと思う。

カンは滅入ってる感じ。
何をすればいいのか解らないって。
俺はこんなことを調べてるって、カンに話したら、
カンは同じ事はやりたくないって。
我儘なんだから。
でも、そこが可愛いんだ。


今、弥勒と文通してる。
今度は文通にハマったみたいで、カンは面倒くさいって送り返さないから、
俺の所に週3通は手紙が来る。
弥勒も、現代を楽しんでる様子。
思っていい事なのかは解らないけど、平和を感じる。

今日この日までは。






携帯が鳴る。着信名を見るとカンだ。
俺は急いで電話に出た。

「カン?」

『大樹か!今すぐ家来て!早く!』

「ちょ、カン?!」

電話が切れた。
カンの焦った声に俺は家を飛出て車に乗ってカンの家に向かう。
インターフォンを押すも誰も出ない。
ドアは開いていたから、慌てて中に入りカンの部屋のドアを開けた。

「カンっ!」

すると目の前に現れた光景。
カンは床で座り込んでいる。
部屋の空気、なんて暗くなんて重いんだ。

「・・・何があったの?」

ゆっくりカンに近付き、腰を下してカンに問い掛ける。
するとカンは疲労感を露わにした顔を上げ、

「大樹・・・疲れた。」

「霊?」

「・・・。」

カンは小さく左右に首を振る。

「霊じゃないの?」

「大樹に逢いたかったんや。」

「え?」

そう言ってカンは俺の首に両手巻き付け抱きついてきた。
俺は目を見開き、数回瞬きをする。

夢?

カンの背中に触れると軟らかい。
夢じゃない。

「カン、何かあったの?」

俺は嬉しい反面、あのカンがと不思議に思う。

「なん?・・・俺が逢いたい言うたら嫌なん?」

「ちがっ!」

カンは顔を上げ、眉尻下げて何とも悲しげな顔を見せた。
俺はいろいろな欲求が爆発しそうになるも、必死で理性を抑える。

「なぁ、大樹?ええよ?大樹の好きにしぃや?」

「す、好きにって・・・そんな事したらカン怒るじゃない。」

「怒らへんよ。俺は大樹のもんやろ?昔からずっと。」

甘い声。
カンの声・・・こんなに甘かったかな?

カンの唇は俺の唇に触れる。
俺は甘い声とカンの表情に理性は無くなった。
ベッドで戯れる。裸になって。
でも、何だろう。この重い空気は変わらない。
終わった後、カンは眠ってしまった。
寝顔はやっぱり可愛くて、やっと結ばれた。
幸せだと感じながら俺も眠くなり気付けば眠ってしまう。

夕方になって、ふと目を覚ました。
目を開けると目の前にはカンが寝ている。
そっとカンの前髪を指で上げてやると、カンが目を覚ました。

「・・・たいじゅ?」

「良く寝たね。疲れた?」

俺は笑顔で問い掛けた。するとカンは・・・、

「なんで居るん?」

ボーっとするカンは俺に問い掛けた。

「やだな。寝呆けて。」

笑う俺。
カンは不思議そう。布団を捲り自分と俺が裸の事に気付くと顔を青褪めた。

「な、な、お前何してん!」

カンが勢い良く起き上がる。
俺は目が点。

「何って・・・覚えてないの?」

自然と相手の態度に言葉が出る。
カンは青褪めたままで俺を睨んでいる。

「俺も裸。なんでお前も裸やねん!」

「それは・・・。」

俺はカンに説明をした。
それを聞いたカンは大声で叫んで俺に枕を投げる。

「カン!カンが誘ったんじゃない!」

その言葉にカンはブチ切れモードで、誘ってないと言いきる。
とりあえず服を着てカンはベッドで胡坐をかいて腕組み、
俺は床で正座状態。
この展開、何?

「だーかーら、俺は嘘なんか吐いてないよ。」

「俺が誘うか、どアホ!」

「そ、そりゃあ俺も驚いたよ?あのカンが・・・ね、ほら。」

真赤になる俺にカンは額に青筋を浮かせまくり。
結局、話はつかないまま俺は帰宅。
カンは怒ったまま。
ベッドに横になる。

「ハァ~・・・。」

せっかく、いい気持ちだったのに。
でも覚えてないって飲酒でもしてたのかな。
シロがいない。

「カン・・・。」

抱いた時のカンを思い出すと愛しさが込み上げる。

(叶えてやろうか?)

「・・・。」

(カンをお前のものにしてやろうか?)

「嘘っ!」

声が・・・聞こえる。
霊の声。
でも、部屋は重い。カンの部屋みたい。

「誰?」

声は聞こえるが姿は見えない。
いつもと間逆だ。

(私は神。お前の願いを叶えてやれるよ?)

神?

(そう、神。カンを愛しているんだろう?
男であっても。カンを女にしてしまおうか。)

「そ、そんなこと・・・。」

(出来るよ?神だから。それとも、今のままのカンをモノにする?)

その言い方にムッときた。

「モノって・・・。神なのに下品な言葉使うんですね。」

俺が不機嫌な態度をとると、頭に痛みが走った。

(カンを欲しくないの?)

「あのさ、欲しいとか欲しくないとかじゃないと思うんだけど。
俺だけが想っていてもカンも同じ気持ちじゃないと。」

(カンも同じだよ。だからさ、叶えてあげるから。ね?)

「ねぇ、君、誰?。神の誰?神様ってこんな言い方するの?」

(・・・人間のくせに生意気な・・・。)

部屋がどんどん暗くなる。
これは神とは思えない。

「神様がそんな事言う?変だね。」

俺の言葉に怒ったのか俺の目の前に灰色の煙が漂い、

(ヤらせてやったのによぉ。感謝して欲しいくらいだぜ。
ハッ!まぁ、もうお前はカンに嫌われた。)

灰色の煙はカンの姿になっていく。

(大樹は俺を犯したんや。サイテー。あんな奴が神の子なわけないやん。
俺は男やのに。あぁ、せや。この際、女の子と付き合うか。
大樹なんか全く興味あらへんしー。)

犯した?俺が・・・カンを?

(そや?カンは記憶ないやろ?
それはなぁ・・・俺がカンの体を支配してたからや。
お前は俺とヤってん。ガハハ!この俺と。
まぁ、肉体はカンの体やさかいに?)

「やめろ・・・カンはそんな話方でもそんな顔でもない。」

相手のカンを真似る態度に言葉。
俺は怒りが込み上げた。

「お前は誰だ。何の為にこんな事をする。」

(それは、お前を仲間にする為。)

「仲間?」

(そう。レイプしたお前は俺達の仲間だ。)

灰色の煙はカンの姿から知らない白人の男に変わる。

「俺は・・・レイプなんてしていない!」

(カンの気持ちを無視してヤったのにか?)

違う・・違う違う違う!
頭を抱えて蹲る。

「痛っ!」

足首に咬まれた痛みが走った。
足首を見るとシロが噛んでいる。俺と目が合うとシロは足首から口を離し、
俺の体を這って上がり肩に乗ると舌で俺の頬を舐めた。

「シロ・・・。」

(たかが蛇に何が出来る?)

シロは肩から跳び下りると体を大きな白大蛇に姿を変えて歯を剥き出した。

(ヒィ!)

灰色の煙の男は煙に姿を変えてシロの威嚇に姿を消した。
ここで漫画なら戦いになって術を使うんだろうけど、
現実は地味。

「シロ・・・俺・・・。」

シロは俺に振り向いた。その目を見るのが辛い。
目を逸らすと携帯が鳴る。

「・・・もしもし。」

『・・大樹。』

「か、カン?」

電話がかかってくるとは思ってなかったから驚いた。
すごい間抜けな俺の声。

『あのな・・・。』

とても話辛そうな声。

「うん・・。」

『俺の部屋で何か感じた?』

そう言えば・・・。

「カンから電話がかかって来て、部屋はとても空気が重かった。
そしたらカンが床に座ってて、具合が悪そうで・・・。」

『実はな、大樹に電話する前に灰色の煙のな、神とかぬかす奴が来てん。
話聞いてたら甘い事ばっかりぬかすんや。
しまいになんや気が遠くなって・・・気付いたらベッド。』

「灰色の煙?!」

さっきの奴。

『せや。灰色の煙。なんで?』

「俺のとこにも今まで居たんだ、そいつ。
カンの体を奪って俺を誘ったって。
俺が抱いたのは・・・灰色の煙の奴だって言われた。」

情けなく悲しい話。

『ハァ?!お前、あんな奴とエッチしたっちゅーんか!』

大声が受話器から漏れる。

「い、いやだから!俺はカンとシたつもりだよ!」

きっと受話器の向こうでカンは固まってる。

「ごめんね、カン。俺、君をレイプした事になるんだよね・・・。」

そうは思いたくない。なのに、あの男の言葉が耳につく。

『俺はさ・・・俺はお前を信じる。』

「え?」

『何回も言わせんな!・・信じるって言うてんねん。
ただ、何で俺と違うって解らんかってん?それがムカつくんや。』

「確かに空気はおかしいし、いつものカンじゃなかったよ?
でも・・カンにあんな風に言われたら・・・。」

俺の情けない声にカンは受話器に向かって溜息を吐いた。

『とにかく、俺らの使命忘れんな。ええな?』

「うん。ごめん。」

『ほなな。』

電話は切れた。

携帯を持ったままベッドに寝転ぶ。

俺らの使命。

俺の使命はカンの力になる事。
それに、カンを愛してる。

カンは?
いつもはぐらかされる。昔から。

携帯のメール音が鳴った。

「カン?」

≪件名:アホへ。≫
≪本文:俺以外と次ヤったら承知せんからな!凸(*▼▼)。≫

「ハァ・・。だから俺はカンとヤったつも・・・え?」

本文を読み直す。

俺以外?
これって、カンとなら良いって事か?

顔が赤面するのと同時に嬉しさが込み上げた。

≪件名:カンへ。≫
≪本文:うん!カン以外としない!今回もカンとしたつもりだから。≫

この後、勿論返事は来ない。
きっと照れてるんだ。

改めて今回の出来事を振り返る。

灰色の煙は確かに俺を仲間にと言っていた。
嘘もついていた。
アイツは神なんかじゃない。
はっきり聞く前に消えてしまったし。

でも、リュカオーンの時と似てる気もする。
あの時も、カンが操られていた。
悪魔の仕業か?
リュカオーンは悪魔の使者だった。
カンを引きづりこもうとしてたんだ。
もし、これもそうなら・・・次は間違いなくカンに行くだろう。
俺をダシにして。

でも、なんだろう。この幸せ感。
怖いくらいに。

俺は神として失格かな。
意識がなかったカンだとしても、カンを抱いたんだ。
その喜びはとても大きい。

そう考えると、神のくせに矛盾してる。
あの煙が言ったように、俺もアイツらの仲間か?

罪悪感よりも喜びが勝なんて。

シロがひらがな表を咥えてきた。

「何?シロ。」

シロはひらがなを指す。

「かみも・・にん・げんと・・おな、じ?
りょうほうの・・ここ、ろ・・が、ある。」

両方の心?

「それって、神でも欲くがあるって言いたいのかい?」

シロは縦に頷いた。
慰めてくれてるのか。

「だといいけどね。ありがと、シロ。」

俺は笑顔をシロに向けた。


明日は学校。カンと会える。
どんな顔をしようか。
カンはどんな顔をしてるのか。




授業開始の予鈴が鳴った。
職員室を出て次の担当クラスに向かう為に廊下を歩く。
階段にさしかかった時、上から体育であろうジャージ姿のカンが降りてきた。

その顔は、俯き真赤で・・・つい、

「ぷっ!」

吹き出して笑ってしまった俺。

「わ、笑うなや!」

「ごめんごめ・・だって真赤・・ふはは。」

その顔が可愛くて我慢できない。

「たいじゅ~!」

まるで沸騰したヤカンがピーって音を立てて湯気が出るみたなカン。

「いてて、ごめんって。」

「アカン!まだ笑ろうとる!」

俺の片腕を掴み1本背負いをしようとするカン。
周りの生徒は、何をやってるんだと笑ってる。
心配したけど、カンは照れてるだけで大丈夫そうだ。
良かった。


悪魔は毎回騙しにやってくる事が2度目で解った。
元々人間を唆したのが悪魔なんだから、そんなものか。

彼等がこの先、どうこの世に影響していくのか、
それが俺の今の課題となった。










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花手毬