3人から生み出される音楽は何倍かのパワーを持って僕らの心を揺り動かすに違いない
"UP FOR IT"
KEITH JARRETT(p), GARY PEACOCK(b), JACK DeJOHNETTE(ds)
2002年7月 ライヴ録音(ECM 1860 038 317-2)

KIETH JARRETT、久々のスタンダード特集だ。
最近の作品はフリー・インプロヴィゼーションに近い演奏で(JAZZ批評 35.104.)スリリングさ(緊迫感)と高揚感を同時に味合わせてくれた。しかし、誰にでも聴けるという代物ではなく、聴く人をかなり選んだはずだ。

今回のアルバムはご覧の通り、演奏曲目は今までに何回となく演奏してきたスタンダード・ナンバーがずらりと並んでいる。しかしながら、どの曲も新鮮な響きに満ちている。さながら「帰ってきたKEITHのトリオがまた王道を歩み始めた」と言うところだろうか。
特にB、DやFの聞き古されたスタンダードに、熟成された濃密な演奏を味わうことが出来る。今更、この3人の持つ卓抜な技量と豊かなイマジネーションには触れるまでもないことだが、3人から生み出される音楽は何倍かのパワーを持って僕らの心を揺り動かすに違いない。

@"IF I WERE A BELL" いつもこういう4ビートを聴きたいと思っているんだよね。
A"BUTCH & BUTCH" アップテンポのブルース。縦横無尽のDeJOHNETTEのドラミングが素晴らしい。参っちゃうね。

B"MY FUNNY VALENTINE" 一転して、スローなバラードへ。テーマでのベースとドラムスの絡み方がいい。その後、徐々に高揚していくが、その高揚感が堪らない。ここでもドラミングが凄い。まるでメロディ楽器のように歌っているのだ。

C"SCRAPPLE FROM THE APPLE" CHARLIE PARKERの曲。指を鳴らしながら聴いて欲しい。

D"SOMEDAY MY PRINCE WILL COME" のっけから息をもつかせぬベースソロが入る。その後、DeJOHNETTEの快い4ビートのシンバリングに乗ってピアノがスウィング・・・。このあたりで、アルコールでも一杯入ったら、もう、ご機嫌。幸せになれること間違いなし。

E"TWO DEGREES EAST,THREE DEGREES WEST" 今は亡きJOHN LEWISの曲。

F"AUTUMN LEAVES〜UP FOR IT" DeJOHNETTEの太鼓にPEACOCKのベースというこれ以上はないと思われるバックアップがあるから、KEITHだってこれだけの演奏ができるというものだ。この3人なくしてこの素晴らしいJAZZは完成しない。

惜しむなくはジャケット・デザインが陳腐だ。このジャケットからはこのアルバムに収められている濃密な音楽の片鱗さえも聞こえてこない。いい音楽にはいいジャケットが付き物という定説(?)を覆す凡作といわざるを得ない。

またしても、KEITHのこのアルバムを「manaの厳選"PIANO & α"」に追加することになった。6枚目。  (2003.05.25)



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KEITH JARRETT

独断的JAZZ批評 135.