"NEW YORK STYLE"
AKIKO GRACE(p), LARRY GRENADIER(b), BILL STEWART(ds)
2003年スタジオ録音(SAVOY COCB-53050)
AKIKO GRACEの第3作目をネットで知ったのは数日前のことだ。これはいても立ってもいられない。ということで、翌日の帰宅途中でHMVに寄り、試聴するのももどかしく購入してきたアルバムだ。
前作、"MANHATTAN STORY"
(JAZZ批評 101.)は
ぶっ飛ぶほどの驚きと感動を提供してくれた。その時と同じメンバーによるトリオ演奏。これで期待できないわけがない。
第1作目はベースがRON CARTERだったが、2作目からはLARRY GRENADIERに替わった。これが正解!「小手先のベース」か、
「渾身のベース」かの違い。言うまでもなく、LARRY GRENADIERの
強靭なピチカートとBILL STEWARTの
センシティブ&大胆なドラミングが演奏を引き締めている。3者に共通したタッチの強さがジャズのあるべき方向性を示していると僕は思う。タッチの強さから生まれる
躍動感と緊迫感を満喫して欲しい。
@"JUMP" 8ビートの、まさしくジャズ。こういった音楽の中でもエレキ・ベースよりもアコースティック・ベースの方が音が締まっていて良い。
A"CHOMAZONE" イントロから聴かせる。躍動感満載のAKIKOのオリジナル。
B"GREEN SLEEVES" フォーク・ソング「グリーン・スリーヴス」。これは甘くないぞ!
C"SMILE" このアルバムで一番興味を抱いた曲。最近ではJACKY TERRASSONが"SMILE"
(JAZZ批評 120.)の中で弾いている曲。この曲を聴き比べてみたいと思った。同じ曲とは思えない解釈の違いが面白い。高らかに歌い上げるAKIKOと軽妙洒脱に歌うTERRASSONの味わい。ウ〜ン、AKIKOに
軍杯かな。
D"CARAVAN" これは凄いぞ!ピアノ、ベース、ドラムという三つの楽器の圧力に圧倒される。ベースの唸りも凄いけど、そこで鋭く刻まれるシンバリングも凄い。その上をピアノが圧倒的迫力で押し寄せてくるのだ。まさに
怒涛の攻撃なのだ。降参!
E"SICILIANO THROUGH MY EYES" これはピアノとベースとドラムスの
会話である。
F"SCARBOROUGH FAIR" この「スカボロ・フェア」はそんじょそこらのものと訳が違う。
G"PRAY SONG〜FOR GROUND ZERO" AKIKO作の感動を呼ぶテーマ。
「グラウンド・ゼロ」の鎮魂歌である。
H"SIXTH SENSE" 珍しくGRENADIERの
アルコ弾きが聴ける。
I"TRANSITION" 3者が繰り広げる、まるで
格闘技の世界。
J"BREATHE OUT" これもAKIKOのオリジナル。
K"BODY AND SOUL" 敢えてブロック・コードを使用しない、
シングル・トーンだけのピアノ・ソロ。
第2作に比べると同じメーンバーによる心の通う安心感があり、選曲にも演奏にも余裕が出来た。その分、このトリオの幅が広がったと思う。
このグループがこのまま長く続くなら、KEITH JARRETT〜GARY PEACOCK〜JACK DeJOHNETTE の
次の時代を担うトリオになると信じて疑わない。長くこのユニットが続くことを熱望する。
文句なく
「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。 (2003.07.27)