vol 30: 昔話天界主編



人間は既にこの世に存在し、あの世には2つの世界がありました。

2つの世界は、天界と黄泉の国とに分かれていて、
お互いの世界が、お互いを神だと認めていませんでした。

此処は天界です。天界には宇宙の神の一人でもある神が、
地球を守る役割を与えられた神の治める大きな国です。


私は天界の父の息子。
父の子として天界に生まれました。
様々な勉強をし、父に地球や下界の事を教わりました。
まだ、黄泉の国が出来てはおらず、
天界も父の創った神使い(ミツカイ)しか存在しませんでした。
下界の人間は命を終えると無になっていた時期です。
戦を何度も行い、自分たちの架空の神を創り出し、
それに父は悲しみに打ちひしがれ、やむおえず選ばれた人間と、
選ばれた生き物のつがいのみを船に乗せ守り、
他は全て消したのです。
そして、選ばれた人間に再び下界を託しました。
しかし、選ばれた人間は我々に忠実だとしても、
子孫は同じとは限りません。
我々はそれでも、慈悲の心で見守ったのです。
しかし、いろいろな民が増え力が全てとなりました。
父の悲しみに成長した私は自分から下界に降り、
人々に教えますと志願したのです。
父は、私に言いました。

「息子よ。人間は悲しき生き物。いくら再度立て直す機会を与えても、
すぐに駄目になってしまう。今の人間達に何を教えると言うのだ。」

「我が父よ。人間は我々と同じ。きっと悟れるはずなのです。
どうか、ご慈悲を。」

父は暫く考えました。

「息子よ。覚悟するが良い。
お前をまだ女となっていない人間に産ませよう。
そして、人間として暮らし、大人になり、お前の使命を授ける。
だが、その使命は遥かに耐えがたい苦しみを迎えるであろう。
その耐えがたい苦しみの効果で、人間に慈悲を与えようではないか。
お前はそれを全うするか?」

「はい。どの様な苦しみであろうと、私は父の愛する人間を、
愛しています。愛で救いましょう。」

「良いであろう。息子よ。では、降りる準備を。」

私は下界に降り、一人の女になってはいない人間の赤子として宿り、
大工の息子として育ちました。
いろいろな至難を乗り越えました。
神の息子という記憶はなく使命のみが解る人間。
闇からの誘惑・恐怖、そして人々の裏切り。
それは神に守られていると解っていても、
寂しく恐ろしい毎日でした。
恋にも落ちました。
人間として人間の女を愛したのです。
自分が人間の罪を背負って死して人間に解らせる事を知った時、
愛した人には自分の死後、辛い思いをさせるのが一番の辛さ。
人間の体の脆さ、苦痛、悩み、幸せ、楽しさ。
この感情を味わい、またとても良い人間達の死後、散りとかす事に、
私は悲しみを覚えました。
人間として人間の罪を全て背負い、私は死を迎えた。
私の血で、不治の病や怪我は癒され、人間は神の存在を改めて感じました。

その時、私は父に言った。

全ての罪を背負いました。
どうか、死後の世界をお創りください。
そして、全ての生き物に不死の命をお与えください。

父は私の一生を天界でご覧になられている間、
自分の愛しい息子の苦しみを同じく身で感じておられた。
私の申し出を許可し、天使が生まれたのです。
下界も人間が増え過ぎた為に、混乱を招くようになりました。
父は人間を分けました。
肌の色も目の色も髪の色も言葉も住む場所も。

黄泉の国が誕生した時、黄泉の国にも神を与えました。
黄泉の国を治めるのは、宇宙の神の一人、大日如来です。
大日如来の元、いろいろな神が現れ、黄泉の国が大きな国となりました。
しかし、父の思いとは関係なく、始めの神使いだった者が、
父に対して不満を持つようになり、黄泉の国の住人に、
天界は黄泉の国の神を認めていないと言いふらしに行ったのです。
そして黄泉の国の神は信じませんでしたが、
住人は信じてしまい、天界の天使達と争い、
亀裂が生まれたのです。

私が下界に降りる少し前に、私も欲しかった妹を父が創られた。
妹は赤子で創られ、金色のくりくりとした髪の女の子。
良く遊びましたが、直ぐに下界に降りた為、帰って来た頃には、
赤子から人間で言う、15、6の女の子になっていました。
兄妹というのはやる事も似ているのか、
私が下界を救うように、妹は黄泉の国を救おうとしていた。
天界と黄泉の国を一つの気持ちにまとめようと。

妹は小さな心で考え苦しみ、それでも信じて頑張っている。

天界に戻った今、私も妹を手伝おうと思いました。
そしてまた、妹の考えは間違っていないからです。
黄泉の国と天界の出来事は、大日如来や父、私以外の者達は、
闇の者の嘘だとは知らないでしょう。
簡単に、

「あの者の仕業なのですよ?」

そう言えば済む事なのですが、
父も大日如来も、皆を試しているのです。
自分たちでおかしいと気付く者がどれ程居るのか。
黄泉の国の阿弥陀如来や釈迦如来、他の如来や菩薩達は、
気付いている様子。
それでも自分の弟子にも話さないのです。
それに対しての意味は、深く大きなものとなるからです。

私は、妹が黄泉の国に行っている間、
天界を任されました。

さぁ、どうしたものか。
キッカケを作り、皆自身で気付かせようか。
難しい選択です。

まずは神使い達から始めましょう。

私は神使い達、一人一人の所へ出向き、話をしました。

「お聞きなさい。お前はなぜ黄泉の国を嫌うか?
我々は地球を救う為に闇と闘っている。
しかし、黄泉の国は死者を守っている。
そして、我々同様に人間を愛しているのです。」

一人、また一人に同じ言葉を言いました。



妹よ。学びなさい。
相手に伝える難しさを。
相手が信じる心を養う期間を与えなさい。
相手の気持ちも理解してあげなさい。
否定を我慢しなさい。
身をもって後悔させ、身をもって感じさせるのです。
妹よ。愛しなさい。
どの様な事を言われ思われても、愛しなさい。
愛する事程、簡単であって難しく困難なことはありません。
ですが、愛は強い。
どうしても愛せない時も、また意味があり大切なのです。
嫌う事も生きている証。
嫌ってこそ、見えてくる事もあるのです。
そうすれば、本当の自分と向き合えるでしょう。
そしてまた、愛せるようになるでしょう。
私は罪人は嫌いです。
しかし、罪人が罪人でなくなった時、
全てを愛しましょう。
父やお前や生き物全てと同じように。

良きも悪しも、紙一重なのです。













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