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『ラブシーンの掟』を読んで | |||||
石川三千花 著<文春文庫> | |||||
チネチッタ高知の管理人お茶屋さんから、そのサイトコンテンツのなかで「●性愛王=『間借り人の映画日誌』サイトの掲示板で、来客者がヤマちゃん(管理人)に授けた称号。映画の中の性愛表現への名解釈ぶりと女優の姿態等への心酔ぶりが受けて授けられた(と思う)。」などと紹介されている割には、ラブシーンのディーテイルそのものは、実はあんまり覚えていないことを知らされたようで、なかなか面白かった。 2004年時に著者がピックアップした48作品は、最初の『男と女』から順に、『ベティ・ブルー インテグラル(未見)』 『カーマ・スートラ 愛の教科書』 『ハモンハモン(未見)』 『ぼくの美しい人だから』 『ワイルド・アット・ハート』 『硝子の塔』 『マイ・ビューティフル・ランドレッド』 『チューズ・ミー』 『スリーサム(未見)』 『流されて…』 『ライブ・フレッシュ(未見)』 『ホット・スポット(未見)』 『ニュー・エイジ(未見)』 『8Mile(未見)』 『バウンド』 『郵便配達は二度ベルを鳴らす['81]』 『シェルタリング・スカイ』 『ドライ・クリーニング』 『ロリータ(未見)』 『ゲッタウェイ['94](未見)』 『アリゾナ・ドリーム』 『ボーイズ・ドント・クライ』 『インビジブル』 『蘭の女(未見)』 『ダメージ』 『電話でアモーレ(未見)』 『旅立ちの時』 『ドアーズ(未見)』 『ことの終わり』 『ランブリング・ローズ(未見)』 『アメリカン・サイコ(未見)』 『トゥルー・ロマンス』 『ポワゾン(未見)』 『白いドレスの女(未見)』 『バニラ・スカイ』 『マルホランド・ドライブ』 『キリング・ミー・ソフトリー』 『恋におちて(未見)』 『スパイダーマン』 『Dr.Tと女たち』 『チョコレート』 『まぼろし(未見)』 『雁の寺(未見)』 『天国の口、終りの楽園(未見)』 『007/ドクター・ノオ』 『氷の微笑』 『赤い航路』。半分弱の20本が未見作品だったが、逆に言えば、半分以上観ているのに、ディーテイル部分で膝を打った作品が思いのほか少なかった。 これでは、称号も返上するほかないなぁなどと思いながら、著者は女性だし、ちょっと目の向け方が違うのかもしれないと思ったりもした。ふんだんに盛り込まれた絡みのイラストに添えられたコメントが、格別どうってこともない内容なのに、なかなか面白かったのは、その抽出センスなのだろう。作品選びにも通じているように感じた。 文庫版あとがきに「私がいくらポップに描いたつもりでも、セックスをしているイラストつきの本を人前で読むのは恥かしいに違いない。告白すると、私は自分の本はすべて両親に送っていたのだが、この本だけは見送っていた。やっぱり、なーんか恥ずかしくてねー。描きたくて描いたくせに、テレてどうするのよ私!」(P238)と書いてあるとおり、イラストに味のある本だ。 著者の挙げたラブシーンBest3映画は、『氷の微笑』『マリアの恋人』『旅立ちの時』。本書を読んで、かねてより気になっている未見作品で改めて観たいと僕が思わされた第一の作品は『ハモンハモン』だった。あとは『ホット・スポット』『ベティ・ブルー インテグラル』。 著者によれば、『ベティ・ブルー インテグラル』は、「カレと一緒に楽しいビデオ・タイム、なーんて感じで『ベティ・ブルー』を見てしまった人は、きっとビックリしたはずだ。」(P12)という作品のようだが、若い女性にすごく人気の作品らしい。「疲れて眠ってしまったジャン・ユーグの着てるものをぜんぶ脱がせてから、『おやすみ、カタツムリ君』かなんか言って、彼のムキダシのそいつにチュッとやるんである。なんというか、生活と密着したエッチって感じで、絶えず体を触ったりキスしたりする。まあね、同棲の初期においては、こういうことがまたうれしいんだよな。」(P14)というあたりが支持されているようなのだが、この“カタツムリ君”ネタを読む限り、「私は自分の本はすべて両親に送っていたのだが、この本だけは見送っていた。」のも頷ける気がした。 | |||||
by ヤマ '11. 8.26. 文春文庫 | |||||
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