鎌倉 昔工藝
ご注意
骨董品の収集は楽しいものですが、贋作品や傷直し品を隠して売られている物が昔から多くあります。壊れて使用や鑑賞に堪えないものを健全な姿に直す仕事を職業として行っている昔工藝から見ても、嘆かわしい品物や売られ方を多く目にすると悲しくなります。
こんな場合はご注意を。
1.肩書き(銘・箱書き)、登録証(火縄銃・刀剣)、鑑定書(甲冑・刀剣・焼き物・書画等)にまれに怪しい物が存在します。偽銘や偽鑑定書はともかくとして、公的機関発行の登録証も信頼出来ぬとなると困ったことですね。登録証のすり替えテクニックもあります。
2.ネットオークションで「ノークレーム・ノーリターン」の条件をよく見かけますが、品物に自信があれば返品を受け付け、再販売出来ます。それが出来ない、したくないのにはどんな理由があるのでしょうか?
3.掘り出し物など滅多にありません。骨董品の価格は有ってないようなものと言われますが、経験を積んだ骨董商の間では自ずから相場が形成されています。極端にお買い得価格なのは、それ相応の品物だからです。相場の1/10以下で売られていたら、まず偽物だと思います。何割も値引いてくれる品物は、元々掛け値してあったかと思います。
4.ネットオークションの出品者が素人なのか業者なのか判らないことが多いのも不安ですね。信頼出来る店で買いましょう−−−とこれが中々難しいのが骨董の世界です。
贋作火縄銃(登録証付き)の特徴
1.数が少なく値段が比較的高い馬上筒に贋作が多い。
小筒を切り詰め、馬上筒に改造する。全体的にアンバランス。銃身の目釘座のピッチが相対的に広い。銃口部が不自然。
銃身・銃床・カラクリはもともと江戸時代の物が多いが、銃身以外が贋作もある。
2.短く、太くて丸銃身の中筒・大筒に贋作が多い。
作りやすく高く売れる。平和島の古民具骨董祭りで数百万円で売られていたのを見たことが有ります。
全体が下手な贋作。なんでこんな物に登録証が付くんだ!!!
逆に作りづらい細くて長い小筒に贋作は少ない。
3.本物の銃身と本物の銃床の後家同士を組み合わせた物。一概に偽銃とは言えない。
いつの時代に組み合わせたかは判らない。
一品生産品のため簡単に組み合わせは見つからない。
4.カラクリ一式が後補品
下手な製作が多い。カラクリ一式や台一式の製作は許可されていません。
5.最近、全体が贋作の短筒が増えてきました。
全体が贋作の火縄銃は、全てが掟破りの下手な製作です。専門家ならば1m先から数秒見れば判別できるレベルです。全体のバランスが悪く、各部品の形状もでたらめです。台木の木目が水平でないのも有ります。幼稚で下手な象眼や家紋、銘切りも全くなっていません。本物を見ながら作ったとはとうてい思われません。まともな職人は、贋作づくりに手を出しません。素人に毛の生えた輩が写真を参考にして作ったのでしょうか。
火縄銃の鑑定
最近、修理に持ち込まれる火縄銃や、ヤフオク・ネット通販の写真を見ると偽物(贋作密造銃)が多く見られます。玉が発射出来ないレプリカ品はともかくとして、正規の登録証が付いた物に偽物が多いことは困ったことです。
刀剣と甲冑には権威ある団体が発行する鑑定書が有りますが、古式銃・火縄銃にはそのような団体が有りません。なお、偽鑑定書や登録証・鑑定書のすり替えも有りますのでご注意を。
登録証が付いているから合法的に所持出来るとの考え方も有りますが、偽物を持っていても楽しくなく、転売も難しいと思います。一番の問題は銃の価値と購入価格が釣り合わないことです。
骨董商のほとんども火縄銃に関する専門知識を持ち合わせていません。
贋作火縄銃を購入してしまった場合の対応策
登録審査した教育委員会に対し、審査に対する異議申し立てをする道はありません。申請費用が発生しますが、再審査を申請します。
本来は、登録証記載の県に持参しますが、居住地が遠い場合は地元の教育委員会で予備審査をしてもらえることがあります。本審査は登録県で行いますが、本人は出向かなくても良いかもしれません。
再審査で贋作の評価が出れば良いのですが、教育委員会や審査員が率直に鑑定ミスを認めるかどうかが問題です。贋作の評価が出ると、教育委員会からその旨の通知が来て、登録番号は抹消されます。警察に火縄銃と登録証を持参し提出します。銃は没収・廃棄されます。
販売者に返金を要求します(もっと前の段階でも良いですね)。ネットオークションでは「ノークレーム・ノーリターン」の条件がほとんど付いています。簡単には返金に応じてもらえません。「正規の登録証が付いていたのだから自分は本物と思って売った」などと言い訳します。
地元市役所の無料法律相談窓口で、弁護士に相談してください。場合によっては消費生活センターに相談するなどして返金要求するといいですね。
贋作銃を見分けるためのチェックポイント
下記にチェックポイントを示しましたが例外もあります。
贋作: 全体が贋作 台とカラクリが贋作 カラクリが贋作 筒と台が後家品組合せ
射撃目的の改造銃: 目当改造 鉄パイプ(スリーブ)挿入
偽銃: レプリカ銃を射撃できるように改造したもの
登録証
登録証が付いていても正真とは限らない
記載が焼け焦げ等で一部分読めない登録証はダメ(他の銃とすり替え)
登録年月日: 昔の登録証は漢字で表記されている
都道府県名
番号: 里帰り品は番号が赤字で贋作が少ない
全長: 誤差が多い
銃身長: 誤差が数ミリある
口径: 0.5〜2ミリ位誤差がある 穴入口の寸法で記載(真の口径でない場合が多い)
銘: 現代漢字で表記されているのがほとんど 略字・誤字・脱字が多い
壬申刻印: 火縄銃にはごく少ない
全体構成
アンバランス感 中筒(大筒)・馬上筒・短筒に贋作が多い
仕上程度: 贋作はほとんど下手
筒
筒: 筒のみ本歌で後は贋作の銃も多い
材質: ほとんどは鉄で、短筒のみ青銅製がある
全体形状: 贋作は一目見て違和感を感じる
断面形状: 贋作は丸銃身が多い
柑子: 切り詰め品は新作柑子が付いている 銃身部と滑らかに繋がっているか 切りっぱなしも有る
口径: 外形太さに見合っているか 細いものが多い
先目当: 形状 ダメな形状が多い
先目当: 位置
元目当: 形状 ダメな形状が多い
元目当位置
尾栓の形状(頭): 外せない銃もある ネジ径に対する大きさ 穴・筋割の有無
尾栓のネジ: 現代ネジでないか要チェック
火皿: 鑞付けはダメ 火穴の拡大はダメ
火蓋: 形状 火皿と大きさが合っているか 摘まみ形状
火蓋のピン: 篭棒に穴が開いているか
雨覆い: 形状 厚さは均一なこと 前と上側はアール形状のこと
雨覆いの楔: ダメな形状が多い
銘: タガネの使い方
象嵌の意匠: 鯉の滝登りや龍はダメ 家紋も要注意(葵紋はNG)
象嵌の技法: 贋作は布目象嵌が多い
台
形状: 贋作は一目見て違和感を感じる
材質: 本歌は樫がほとんど
木目の通り方: 水平に通っているか
色・仕上げ: 贋作は色の薄いものが多い ニス塗りはダメ
目釘のピッチ: 筒の目釘座と合っているか 広すぎず狭すぎず 個数
カルカ挿入穴: 奥まで開いているか 真円はダメ
カルカ穴の背割り: 背割りが無いのはダメ ただし短筒には無いものもある 贋作は筋書き入れも有る
カルカ材質: 樫 ただし本歌でも樫以外のカルカがある
カルカ太さ: 太さが均一はダメ
カルカ先端小穴: 布を縛り付ける糸穴 必ず開いている
カルカ後端(銃口側): 金属キャップが付いているのはダメ
地板押し出し穴(台尻部裏側): 贋作の台はこの取り外し用穴が無いものが多い
芝引金形状: 本歌は背バンドと一体の菱形がほとんど
飾り金具: 形状・意匠 後付け金具も有る
銘: 墨銘 台の銘入りは少ない
カラクリ
形式: 平カラクリ・外記カラクリ・一重ゼンマイカラクリ・二重ゼンマイカラクリなど
地板: 厚さが均一はダメ
火挟み: 形状 ダメな形状が多い
松葉金(毛抜き金): 形状 ダメな形状が多い
地板鋲: 形状 均一太さはダメ 本歌の太さは僅か先細り
引き金: 形状
贋作銃の登録県
全贋作銃と部分贋作銃の昔工藝調査結果 2022年現在
岩手県 7
福島県 1
新潟県 2
栃木県 3
東京都 1
神奈川県 1
山梨県 1
静岡県 1
長野県 1
大阪府 1
兵庫県 2
岡山県 3
広島県 1
香川県 2
愛媛県 3
高知県 1
徳島県 2
福岡県 1
長崎県 1
大分県 3
宮崎県 1
鹿児島県 2
上記41挺の調査結果は、登録証のすり替えで無く、登録審査ミスの件数です。この調査結果は氷山の一角だと思います。47都道府県の内、22都道府県に分布しています。岩手県がダントツですが、目利き審査員が居ると思われる東京・大阪・神奈川県にも贋作銃が存在します。登録時期は昭和30年代から最近まで分布しています。
当方では上記贋作銃の登録証番号と写真を保有しています。しかし、公開ははばかられます。
ヤフオクにはたくさん贋作銃が出品されていますが、有名なネットショップでも堂々と贋作銃が販売されていますのでご注意ください。特に取扱が多い店舗がありますが、店名の公開ははばかられます。贋作と判ってて売っているのか、店に見る目がないのか判りません。
ページの一番上に移動
鎌倉 昔工藝