玉割り
筒の口径に対する、玉の径を玉割りと称します。隙間が小さいと玉の装填が困難になり、大きいと威力が低下します。玉割りは、各砲術流派において秘伝とされていました。火縄銃の大きさは玉目、つまり玉の重さ(匁・分)で表現されます。
登録証記載の口径は銃口入り口で計測されていますが、腐食等で広がっている場合が多く、奥の寸法が正しい口径です。計測が難しいが、奥の寸法も併記するのが望ましいですね。
玉鋳型で製作したままの鉛玉は、型の合わせ目に生じるバリや型の製作精度の関係で真円ではありませんので、バリ取りと真円化作業が必要です。
火縄銃を射撃すると、黒いベットリした煤が銃口内に付き、数発目から玉が入りづらくなります。昔は劣り玉と言って口径の少し小さい玉を使用しました。現代ではパッチ(丸い小布)で玉を包み、毎回掃除しながら玉を押し込みます。
下記の表は井上流の玉割りで、グラフは当方で作成したものです。
玉目(匁) |
筒径(mm) |
玉径(mm) |
0.1 |
4.0 |
3.9 |
0.2 |
5.1 |
5.0 |
0.5 |
6.9 |
6.8 |
0.8 |
8.1 |
7.9 |
1.0 |
8.7 |
8.5 |
1.5 |
9.9 |
9.8 |
2.0 |
10.9 |
10.7 |
2.5 |
11.8 |
11.6 |
3.0 |
12.5 |
12.3 |
3.5 |
13.2 |
12.9 |
4.0 |
13.8 |
13.5 |
4.3 |
14.1 |
13.9 |
4.5 |
14.3 |
14.1 |
5.0 |
14.9 |
14.6 |
5.5 |
15.3 |
15.0 |
6.0 |
15.8 |
15.5 |
6.5 |
16.2 |
15.9 |
7.0 |
16.6 |
16.3 |
7.5 |
17.0 |
16.7 |
8.0 |
17.4 |
17.0 |
8.5 |
17.7 |
17.4 |
9.0 |
18.1 |
17.7 |
9.5 |
18.4 |
18.0 |
10.0 |
18.7 |
18.4 |
11.0 |
19.3 |
18.9 |
12.0 |
19.9 |
19.5 |
13.0 |
20.4 |
20.0 |
14.0 |
20.9 |
20.5 |
15.0 |
21.4 |
21.0 |
20.0 |
23.6 |
23.1 |
25.0 |
25.4 |
24.9 |
30.0 |
27.0 |
26.5 |
35.0 |
28.4 |
27.9 |
40.0 |
29.7 |
28.2 |
50.0 |
33.0 |
31.4 |
60.0 |
34.0 |
33.3 |
70.0 |
35.8 |
35.1 |
80.0 |
37.4 |
36.7 |
90.0 |
38.9 |
38.2 |
100.0 |
40.3 |
39.5 |
150.0 |
46.2 |
45.3 |
200.0 |
49.8 |
49.8 |
250.0 |
54.7 |
53.7 |
300.0 |
58.0 |
57.0 |
400.0 |
64.0 |
62.8 |
500.0 |
68.9 |
67.6 |
1000.0 |
86.9 |
84.2 |
火縄銃筒の寸法調査
筒の製作法には、鉄板を筒状に丸めて鍛接したうどん張のものから、この上に葛状の板を巻き付けた一重巻張・二重巻張などが有り、肉厚・重量に大きなバラツキがあります。「昔工藝」では、80挺の小筒・中筒・大筒・馬上筒・短筒の銃身寸法をグラフにまとめてみました。
口径に対する最大外径・最小外径の関係・・・肉厚の大小に関係します
口径に対する長さの関係・・・銃種に関係します
口径に対する重量の関係・・・肉厚の大小と長さによります
筒の口径に対する最大外径・最小外径
筒の口径に対する長さ
筒の口径に対する重量
登録証記載の口径と昔工藝測定値の差
登録証に記載されている全長・銃身長・口径寸法と、当方で測定した寸法には乖離が見られます。
グラフは70挺の小筒・中筒・大筒・馬上筒・短筒の口径誤差です。
一部にスリーブ入り改造銃とリーマ研磨された銃を含みますが、これらの作業が行われたのが登録前か後か判りません。
実態とかけ離れた寸法が、公的機関発行の登録証に記載されているのは問題と当方は考えます。
以下、追って公開予定
1.火縄銃の口径分布:数多くの火縄銃の口径を大きさ順に並べたグラフです。
階段状の分布が見られ、何らかの基準が有ったようです。
2.尾栓ネジの寸法:口径・雄ネジ外径・雌ネジ内径の関係を表したグラフです。
ほとんどは口径<=雌ネジ内径ですが、大口径銃では口径>雌ネジ内径のものもあります。
3.火縄銃の全長:短筒・馬上津・中筒・大筒・小筒・狭間筒を長さ順に並べたグラフです。
同じ銃種でも長さは大きくバラツキます。
4.カラクリと銃種:各種カラクリが小筒・中筒・馬上筒・短筒・大筒などにどんな割合で使われているかの統計です。
平カラクリはほとんどが小筒に使われ、高価な中筒にはほとんど使われていません。馬上筒・短筒に若干使われています。
外記カラクリもほとんどが小筒に使われ、中筒にも1割ほど使われています。
蟹目式一重ゼンマイカラクリは半分以上が中筒に使われ、馬上筒・短筒にも見られます。
蟹目無一重ゼンマイカラクリは数が少なく小筒に使われています。
二重ゼンマイカラクリは小筒が多く、次いで3割ほどが中筒です。
数の少ない大筒には蟹目式一重ゼンマイカラクリと二重ゼンマイカラクリが使われていました。
外バネ系カラクリ合計は67%、内バネ系カラクリ合計は33%の割合でした。
5.火縄銃口径と火縄銃全重量:小筒・中筒・大筒の重量グラフです・筒の肉厚と長さにより同じ口径でも倍くらいのバラツキがあります。
6.火縄の太さ:火挟みの貝口寸法(内寸)の大きさを順に並べたグラフです。
小筒・馬上筒・短筒は5〜6mmが大半、中筒は6mm位、大筒はやや大きく、射的筒はやや小さい寸法でした。
ただし、木綿の火縄は柔軟性があるのでほとんどの火挟みに使えます。
以上、サンプル数がもっと増えれば貴重なデータになるでしょう。
注、データの無断転載はご遠慮下さい
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