消費税では簡易課税制度を適用しない事業者(「一般課税事業者」といいます)は、仕入税額控除の適用を受けるためには消費税法に規定する帳簿書類の記載内容及び帳簿書類の保存要件を充たさないと認められません。
以下記載内容及び保存要件について説明します。
帳簿書類の記帳内容及び保存
「帳簿」とは、例えば総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳などをいいます。
なお、「伝票会計」を採用している場合は、下記のような事項が記載されていれば課税仕入れを行った事業者が自らその事実を記録したものですから、この伝票を勘定科目別、日付別に整理し、これに日計表、月計表等を付加した伝票綴りは「帳簿」になります。
「書類」とは、棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書、請求書、納品書などをいいます。
参考までに国内取引における帳簿・請求書等の記載事項等を掲げておきます。
帳簿とは、次の事項が記載されているものをいいます。
- 摘要
- 課税仕入れの相手方の氏名又は名称(正式名称で記載しなければなりません。正式名称が不明な場合は、相手方が特定できるように記載しなければなりません。ただし、相手方を記載しなくてよい場合があります())
- 課税仕入れを行った年月日
- 課税仕入れに係る資産又は役務の内容
- 課税仕入れに係る支払対価の額
請求書等とは、次の書類をいいます。(消費税法30条9項)
- 事業者に対し課税資産の譲渡等を行う他の事業者が発行した請求書、納品書その他これらに類する書類で次に掲げる事項が記載されたもの(ただし、取引の実態を踏まえ、税込みの支払額が30,000円未満の場合には、請求書等の保存を要せず、法定事項が記載された帳簿の保存のみでよいこととされています。しかし法人税、所得税の税務調査では、売上原価や費用・支出に不正等がないかどうか調べますので、消費税法では保存を要しないとしていても、結局、保存しなければいけないことに留意してください)。
- 書類の作成者の氏名又は名称
- 課税資産の譲渡等を行つた年月日(課税期間の範囲内で一定の期間内に行つた課税資産の譲渡等につきまとめて当該書類を作成する場合には、当該一定の期間)
- 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(取引の内容をいいます)
- 課税資産の譲渡等の対価の額(当該課税資産の譲渡等に係る消費税額及び地方消費税額に相当する額がある場合には、当該相当する額を含む。)
- 書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称(小売業等の場合は不要)
例えば、請求書に取引明細が記載されていれば、納品書の保存は要りません。
- 事業者がその行った課税仕入れにつき作成する仕入明細書、仕入計算書その他これらに類する書類で次に掲げる事項が記載されているもの(これは、自らが書類を作成し、取引の相手方より確認されたものをいいます)。
- 書類の作成者の氏名又は名称
- 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
- 課税仕入れを行つた年月日(課税期間の範囲内で一定の期間内に行つた課税仕入れにつきまとめて当該書類を作成する場合には、当該一定の期間)
- 課税仕入れに係る資産又は役務の内容
- 課税仕入れに係る支払対価の額
たとえば、クレジットを利用し購入した場合、クレジット会社が発行した利用明細は「請求書等」の書類には該当しません。なぜなら、クレジット会社が利用状況を確認するための書類であり、取引の相手方が発行したものではないからです。
自動販売機での購入、鉄道やバス等の乗車券や入場券・搭乗券等の相手方に回収されることになっている場合などは、「請求書等の交付を受けなかったことにつきやむを得ない理由があるとき」に該当しますので、保存がなくても認められます。
また、法定事項を帳簿に記載することに代えて、それらの記載事項の全部又は一部が記載されている取引関係書類を整理・保存すること(帳簿代用書類)がありますが、この帳簿代用書類は、消費税法第30条第8項《仕入れに係る消費税額の控除》に掲げる帳簿ではありませんので仕入税額控除は認められないことになります。
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「帳簿書類」の保存期間は5年。
- 「帳簿」の保存期間は7年。
事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等(支払対価の合計が3万円未満の場合は、帳簿)を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、課税仕入税額控除は認められないことになります。
ただし、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかつたことを当該事業者において証明した場合は、除かれます。
また、簡易課税適用事業者は除かれます。理由は、簡易課税の場合、控除対象仕入税額はみなし仕入率を使用して算出することになるためです。
誤って帳簿等を廃棄した場合は、但し書きの「災害その他やむを得ない事情」には該当しません。税務調査が終わったから、もう帳簿書類は要らないだろうと考え廃棄する方々が見受けられますが、これは間違った考えです。なぜなら、国税当局は、であれば何度でも質問検査権を行使できるからです。
Ⅰ. 原則
紙による保存です。電子計算機で作成した帳簿書類についても、原則として電子計算機からアウトプットした紙により保存する必要があります。
会計ソフトを利用して記帳している場合、次のⅡ.の方法の税務署長の承認を受けずにハードディスクやDVDなどの記録媒体に保存したままの場合には、法人税法127条1項又は所得税法150条第1項の規定によりの要因となります。ハードディス等に保存しておいて、これらが壊れ出力できないという最悪の状況になっても、それは取消対象を免れる理由にはなりません。 必ず紙にアウトプットし保存してください。
また、6年目及び7年目は一定の基準を満たすマイクロフィルムリーダ又はマイクロフィルムリーダプリンタを設置することによりマイクロフィルムによる保存することができます。
Ⅱ. 電磁的記録による保存方法
電磁的記録による保存は、あらかじめ税務署長の事前の承認が必要です。
- 自己が電磁的記録により最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する帳簿書類で一定の要件を満たすものはサーバ・DVD・CD等に記録した電磁的記録(電子データ)のままで保存することができます。電磁的記録による保存の場合は、バックアップコンピュター等を持っておくことが大切です。
- 次の種類はスキャナ読取りによる保存ができます。
- 棚卸表、貸借対照表及び損益計算書並びに計算、整理又は決算に関して作成されたその他の書類
- 取引の相手方から受け取った契約書、領収書等及び自己の作成したこれらの写し(記載された金額が3万円未満のものを除く)
- 電子計算機出力マイクロフィルム(COM)による保存
自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する帳簿書類について、一定の基準を満たすマイクロフィルムリーダ又はマイクロフィルムリーダプリンタを設置することによりその電磁的記録の電子計算機出力マイクロフィルム(COM)により保存することができます。
Ⅲ. 電子取引をした場合の保存方法
電子取引をした場合には、その電子取引に係る電磁的記録を、一定の要件を満たす方法により保存する必要があります。税務署長の事前承認は必要なりません。
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