将門は、唇をかみしめたらしい。わずかに血が滲んでいる。
 蔦に拘束されながらも、必死に後ろにいる桔梗を見あげていた。その目の光が薄らいでいくような気がしたが、杏珠にはそんなことをかまっている暇はない。
「これでもまだ逝かないなんて、どんだけ遅……」
「ち……なんじゃ?」
 耳ざとく桔梗が聞きつける。
「いや。こっちの話。では、次いきます!」
 杏珠は、蔦の入ったままの瓶子を両手で振った。ちゃぽちゃぽと音を立てる。
「桔梗の前。コレなんだと思いますか?」
「何とは、“ささ”であろう?」
「そう。ただの“お酒”。でも“百薬の長”とか“荒淫之源”とも呼ばれています。それにこの蔦の樹液が混じると何が出来るでしょう。答え媚薬です!!」
「びやく……とはなんじゃ?」
「ご覧になれば判りますとも。では、これは小次郎さまに飲んでいただきましょうね」
「だ、……誰が、そんなもの飲むか」
 呻くように将門は、言った。もはや怒鳴りつける力も残っていないらしい。
「上のお口からでなくても、こっちのお口がありますよ」
 言うが早いか杏珠は、瓶子の蔦を小次郎の菊門に押し込んだ。
「うぉっ!」
 小次郎がのけぞった。先の細い蔦でさえ、なかなか中には入らない。
 焦れた杏珠は、酒と樹液の混じった液体を塗りこめて指を沈めた。
 固い蔦よりも、あっけなく杏珠の指を飲み込んでいく。

 イリアにだって、こんなことしたことないのに……複雑な気分。
 杏珠は、なんだか複雑な気分で桔梗の前を見ると、興奮のためかわずかに目のふちが赤らんでいる。
 小次郎によく似た目がこちらを見据えている。
「どうした。早く続けよ」
「桔梗の前は、なさらないの?」
「下はおぬしに任せる」
「……シモって……」
 小次郎の中は、熱かった。
 指が締め付けられて、千切られそう。それでも第二関節ぐらいまで沈めて、かき回すとぐちゅっと水気の多い音がした。
 よし、うまく媚薬は入っているようだ。
「……くはぁっ…あっ……あぁぁっ…」
 ぐったりしていた小次郎が声をあげる。
 なんだか色っぽい。
 眸の色に意識が戻ってきたのかも?
 自分がされていることにも、ようやく考える余裕がでたのか。暴れるように身じろぎする。そんなことしても蔦が絡まって動けないんだろうけど。
 身体はともかく、心は屈服できないらしい。
 しっかり勃ってるし……。