クロスオーバ・ネットワーク

-24dB/oct 直線位相 IIR-FIRフィルタ

直線位相な-12dB/oct IIR-FIRフィルタ同様2次Butterworth LPFのインパルス応答をダンプしてIIRフィルタとダンプデータの時系列を反転した係数のFIRフィルタとで直線位相 -24 dB/octフィルタのTAS3108用コードを作成し、これを再びシミュレータにかけインパルス応答をダンプしてみました。

2次のButterworthの減衰係数ζ (= 1 / 2Q )1 / √2 < 1ですのでインパルス応答は減衰振動します。よってこのフィルタのインパルス応答にもリンギングがあり、プラスの値とマイナスの値を行き来します。下図ではY軸を対数化していますが、負の値は対数にできませんので絶対値の対数をとっています。符号の違いは線の濃淡で区別しています。


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FIRフィルタに頼らない直線位相フィルタ

応答の半分をIIRフィルタに任せることで実行サイクル数を減らすことが可能になりますが fCに反比例してリソースの消費が増えていき3-Way以上のWoofer帯域では採用へのハードルとなります。

そこで脱FIRフィルタを目指しBesselフィルタのPCM DAC用Post LPFへの応用での手法をディジタル・フィルタに適用してみました。 Besselフィルタの次数は Q = 1 / √2 = 0.7071(2次ButterworthフィルタのQ)により近い8をベースにします。 Biquadフィルタの群遅延はすでに求めました。

PCM DAC用ポストLPFとの大きな違いは、ディジタル・ディレーで遅延させた元の信号からLPFの信号を引き算してHPFを実現していることです。このた2次のフェーズ・シフタを大量に付加して fCのほぼ3オクターブ上まで群遅延のフラット化を図っています。

下のグラフはカスケード接続されたカラフルな各段の Biquad フィルタの群遅延とそれらを加算したマゼンタのトータル群遅延と、またそれを100倍にズームしたシアンの群遅延特性です。


Group Delay

Cutoff Frequency:    Sample Rate:    X(Frequency)-Axis:



下のグラフもIIR-FIR直線位相フィルタ同様TAS3108用のコードを作成しシミュレータでメモリをダンプして得た Biquadフィルタ各段でのインパルス応答と、シアンの太線のカスケード接続された Biquadフィルタのトータルでのインパルス応答です。



下のグラフの青の線はインパルス応答をDFT(離散フーリエ変換)して得たLPFの周波数特性です。 シアンの線はインパルス応答をDFT(離散フーリエ変換)して得た位相特性です。ちょうど応答の対称軸に相当するディジタル遅延信号との位相差です。fCのほぼ3オクターブ上(8倍)あたりまで位相差がほとんどゼロになっています。

赤の線はLPFの応答の対称軸に相当する 0 dBFSのディジタル遅延信号からLPFの応答を引き算して得たHPFのインパルス応答をDFT(離散フーリエ変換)した周波数特性です。 マゼンタの線は上のグラフと同じHPFのインパルス応答をDFT(離散フーリエ変換)して得た位相特性です。このHPFは引き算により特性を得ているため、減衰するに従ってどんどん桁落ちが激しくなり、位相をコントロールするのがなかなか難しかったのですが、カット&トライにより位相の偏差をfCのほぼ3オクターブ下(1 / 8)あたりまで±1度以内に収めることができました。



このフィルタセットは fS 44.1 k / 48 k,  fC = 100 Hz 〜 1.25 kHz1 / 6オクターブに対応しています。

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