クロスオーバ・ネットワーク
Butterworthフィルタ
n次 Butterworth フィルタ
n次の Butterworth LPF の周波数特性は以下のとおりです。
- ω << ωC のとき
- ω = ωC のとき
- ω >> ωC のとき の直線に近似
左下が偶数(6)次のときの極配置で、右下の図が奇数(7)次のときの極配置です。極(pole)として安定な左側のみが有効です。
![画像<Butterworth_pole.png>](Butterworth_pole.png)
![画像<Butterworth_Q.png>](Butterworth_Q.png)
次に2次の極は複素共役なので
したがって
加(減)算後の f特がフラットな 3次 Butterworth フィルタ
3次Butterworth LPFの伝達関数は
3次Butterworth HPFの伝達関数は
LPFとHPFを加算すると
これは2次のフェイズ・シフタです。
またLPFからHPFを減算すると
こちらは1次のフェイズ・シフタです。
1 次フェイズ・シフタを付加した 3次 Butterworth の 3-Way
3次Butterworthの3-Way(以上)でも1次フィルタのときと同じように2分割づつ行うのが基本ですが、1次フィルタのときとの大きな違いは、個々のLPFとHPFを加算(減算)したときの伝達関数が1ではなくフェーズシフタになることです。フラットな周波数特性を得るには、このフェーズシフタ特性を他の帯域にも付加することが必要です。以下3-Wayでの具体的な方法です。
3-Wayスピーカ・システムのウーファとミッドレンジのクロスオーバ角周波数を ωL ミッドレンジとトゥィータのクロスオーバ角周波数を ωH として
- ウーファ用デバイダの伝達関数をカットオフ周波数: fC = ωL / 2π の3次Butterworth LPFと ωH を時定数とする1次フェイズ・シフタの縦列接続します。
- ミッドレンジ用デバイダの伝達関数をカットオフ周波数: fC = ωL / 2π の3次Butterworth HPFとカットオフ周波数: fC = ωH / 2π の3次Butterworth LPFの縦列接続とします。
- トゥィータ用デバイダの伝達関数をカットオフ周波数: fC = ωL / 2π と fC = ωH / 2π の3次Butterworth HPFの縦列接続とします。
- これらをミッドレンジのみを逆相にして加算すると
各クロスオーバ周波数を時定数とした1次フェイズ・シフタの縦列接続なので周波数特性はフラットになります。
1〜4 の手順をまとめると、まずウーファとミッドレンジの分割をし、次にハイパス側をミッドレンジとトゥィータに分割します。もう一方のローパス(ウーファ)側にはミッドレンジとトゥィータに分割に相当する時定数のフェーズシフタを付加して完了です。
もちろん最初にミッドレンジとトゥィータに分割して、最後にハイパス(トゥィータ)側にウーファとミッドレンジの分割に相当する時定数のフェーズシフタを付加してもOKです。
2次フェイズ・シフタを付加した 3次 Butterworth の 3-Way
1次フェイズシフタの代わりに2次フェイズシフタを付加するとすべてのユニットを正相で接続できます。
- ウーファ用デバイダの伝達関数をカットオフ周波数: fC = ωL / 2π の3次Butterworth LPFと ωH を時定数とする2次フェイズ・シフタの縦列接続とすると
- ミッドレンジ用デバイダの伝達関数をカットオフ周波数: fC = ωL / 2π の3次Butterworth HPFとカットオフ周波数: fC = ωH / 2π の3次Butterworth LPFの縦列接続とすると
- トゥィータ用デバイダの伝達関数をカットオフ周波数: fC = ωL / 2π と fC = ωH / 2π の3次Butterworth HPFの縦列接続とすると
- 生成したウーファ、ミッドレンジ、トゥィータ用すべての信号を正相で加算すると
この加算結果は各クロスオーバ周波数を時定数とした2次フェーズシフタの縦列接続なので周波数特性はフラットになります。
ここでの問題なるのはアナログのチャンネル・デバイダにおいて2次のフェーズシフタをどのように構成するかということですが、ディジタル(IIR)フィルタならbiquadフィルタ1個で可能です。
![画像<biquad2ndPhaseShifter.png>](biquad2ndPhaseShifter.png)
調べてみて初めて知ったのですがOPアンプ1個でも2次のフェーズシフタは構成できるようです。