BFJ (ブリティッシュジャズ=英国ジャズとほんの少しのニュージーランドジャズ) ホームページ コンテンツ#5 JAGUAR −英国ジャズのマイナーレーベル B−

☆☆ トップページへ ☆☆


[本ページの最終チェック日 : 2023/10/10]



(2007年4月26日アップロード)

JAGUAR
−英国ジャズのマイナーレーベル B−


これまで、本サイト上のコンテンツで掲載するアイテムは、すべて自己で所有していることを第1の条件としてきた。すなわち現物を手に取ったことがあり、少なくとも(最低でも)1回は聴いたことがあるものを紹介してきたわけだ。

マイナーレーベル紹介シリーズの第3弾は、JAGUARレーベルを取り上げるが、確認できた次の7タイトル中、赤字の3タイトル(リストの2,4,6)は未所有(未見)であることを最初に告白しておこう。ただし、「未聴」ということになると、2タイトル(4,6)になる。その理由は後述。

リリースリストは次のとおり。

1. HOWARD RILEY - SOLO IMPRINTS (CS1) (1972,73) (カセットテープ)
2. BECK, MATHEWSON, HUMAIR TRIO - ALL IN THE MORNING (JS1) (1972) (カセットテープ)
3. GYROSCOPE - ONE, TWO, THREE ... GO! (JS2) (1974) (カセットテープ)
4. MAJOR SURGERY - SAINT VITUS DANCE (JS3) (カセットテープ?)
5. JOHN TAYLOR SEXTET - ...FRAGMENT (JS4) (1975) (カセットテープ)
6. JOHN WALTER'S LANDSCAPE - THURSDAY THE 12TH (JS5) (カセットテープ)
7. GORDON BECK - ONE FOR THE ROAD (JR101) (1976) (LP)


JAGUARは1972,3年頃から数年間程度活動したレーベルらしい。英国ジャズを代表するピアニストの一人、ゴードン・ベックが中心となって主宰したようだ。特色はカセットテープによるリリースが主体だったことで、リリース順にいうと最後の1タイトルのみLPで発表された。カセットが選ばれた理由は製作経費の問題であろうか。

1は、タイトルどおり、ハワード・ライリーのソロピアノアルバムである。ソロとしては、たぶん、記念すべき第1作目ではないかと思う。

2は、ゴードン・ベック、ロン・マシューソン、ダニエル・ユメールのトリオ。’Gordon Beck Discography’と称するウェブサイトによれば、このカセットリリースがオリジナルらしい。普通、オリジナルといわれているのは、'JAZZ TRIO' のタイトルで同年にリリースされた伊DIRE盤で、もちろんLP仕様(コンテンツ#2参照)。のちにユメール名義で仏MUSICAからも再リリースされている。私も「音」についていえば、「再発盤」ですでに聴いている。というわけで、「未見」ではあるが「未聴」ではない。

次は3である。ジャイロスコープというと、1968年録音のゴードン・ベック・トリオのアルバムタイトルが思い出されるが、ここではグループ名として使われているようだ。ベックをリーダーとするクインテットである。マシューソン、トニー・レビンに、フランク・リコッティー、スタン・スルツマンというラインナップである。英国ジャズファンにとっては、はなはだ興味深いメンツが揃っている。CD化を希望したい。

未聴の2作品は後回しにしよう。

5は、ジョン・テイラーの作品の中では、もっとも知られて(聴かれて)いないものの一つであろう。クリス・ローレンス、レビン、ケニー・ウィーラー、クリス・パイン、スルツマンとのセクステットである。これまた、「はなはだ」、といっていいメンバーではある。ここでのテイラーは、エレクトリックピアノもやっている。これもCD化を大いに希望しておこう。

7は、唯一のLPで、たぶんJAGUARの最終リリースだと思う。ベックのソロ作。多重録音による作品で、アコースティックとエレクトリックのピアノのほか、リングモジュレータ等を使用した電子音楽風の演奏も聞かれる。95年にベックにより「セルフリメイク」されている。

さて、未聴の2作品である。他の本レーベルの作品の多くが英国ジャズ界の有名どころがラインナップされた、比較的「オーソドックスな」ジャズアルバムであるのに対して、この2作はかなりマニアックなジャズロックバンドの作品である(らしい)。

4は、テナーサックスのドン・ウェラー率いるメジャー・サージェリーのたぶんデビュー作。このバンドは77年に以下に示す第2作をリリースしており、この時のバンド構成は、ウェラーと、ギター、ベース、ドラムスからなるピアノレスのカルテットであった。

a. MAJOR SURGERY - THE FIRST CUT (NEXT! 1) (P1977)

このバンドには、ゴードン・ベックが参加していたクインテットの時期もあったようだが、JAGUAR盤にベックが参加しているかどうかは確認できていない。ちなみに、フィリップ・ルノーの『ブリティッシュ・ジャズ・カタログ』(1995年)によればベックを含めたクインテットによる演奏とされ、一方、前記ウェブサイト、 'Gordon Beck Discography’ には、この作品はリストアップされていない。

なお、ウェラーは、オーソドックスなテナープレーヤーとして、コンボやビッグバンドによるリーダーアルバムを何枚かリリースしており、英国ジャズマンらしいバーサタイルなミュージシャンのようである。

6のランドスケープは、80年代にテクノポップのバンドとしてメジャーデビューを果たし、ヒットメーカーとして成功を収めたグループで、このカセットがデビュー作と思われる。JAGUAR盤の内容はわからないが、本カセットのリリース後、メジャーデビューの前に自主製作された次の2枚のEP盤から察するに、たぶんジャズロックをやっているように思う。

b. LANDSCAPE - U2XME1X2MUCH (EVENT HORIZON EVE137) (1977) (7インチEP 33RPM)
c. LANDSCAPE - WORKERS PLAYTIME (EVENT HORIZON EVE139) (P1978) (7インチEP 33RPM)


この2枚は明らかにジャズロック志向であるが、エレキを多用したサウンドはユニークで、メジャーデビュー時の変貌を伺わせないこともない。バンドはエレクトリックサックス、アルトフルートのジョン・ウォルターズをリーダーとし、エレクトリックトロンボーンとリズムセクションからなるクインテットであった。

EPリリースの翌79年には英RCAからメジャーデビューを果たすが、このときは同じメンバーながら、当時流行のシンセサイザーの音を前面に打ち出したテクノポップ、シンセポップ? のバンドに生まれ変わっていた。その後、80年代の前半にかけて、3枚のアルバムとヒット曲を含む多数のシングル盤をリリースした。

[ 2023年9月14日追記 ]
DISCOGS サイトで、これまで掲載の無かったアイテム 6 がスリーブ写真ともども紹介されていることに気付いた。その写真とそこに記された録音データ等を追録しておく。コンテンツ末尾の 追補 2 を参照のほど。

[ 2023年10月9日追記 ]
以前にも貴重な情報をいただいた I さんからのメールで、本年 7 月にランドスケープの 5 枚組 CD のコンピレーション盤* がリリースされたことを知った。このコンピレーション盤に上記の 2 枚の 7 インチ盤、アイテム b, c の全曲が収録されていることを確認した。 CD 化はたぶん初めてではないだろうか。
*LANDSCAPE - LANDSCAPE A GO-GO (THE STORY OF LANDSCAPE 1977-83) (COOKING VINYL COOKCD 861) (5CDS) (未見)
残念なことにアイテム 6 のジャガー盤はこのコンピレーションアルバムには収録されていないようだ。



[スリーブ写真をクリックすると、録音データなどが別ウィンドウで開きます。]

01. - H.Riley-Solo Imprints ***** 02. - Beck,Mathewson,Humair Trio-All In The Morning ***** 03. - Gyroscope-One, Two, Three...Go! ***** 04. - Major Surgery-Saint Vitus Dance ***** 05. - J.Taylor Sextet-...Fragment

06. - J.Walter's Landscape-Thursday The 12th ***** 07. - G.Beck-One For The Road


aa. - Major Surgery-The First Cut ***** bb. - Landscape-U2XME1X2MUCH ***** cc. - Landscape-Workers Playtime


(2007年4月)



[ 追補 1. (2022年5月8日アップロード − 7月7日更新) ]

15 年のブランクを経ての追補になるが、本文アイテム 5 がこのほど、かの JAZZ IN BRITAIN レーベルから CD 化されてリイシューされた。本文に書いた「希望」がかなえられたわけだ。
収録曲に変更等は無いようだ。スリーブに、二人だけの存命のメンバーになってしまった、当時 20 代後半だったスタン・スルツマンとクリス・ローレンスの録音当時のエピソードなどを交えたコメントが掲載されている。

SUP.1. JOHN TAYLOR SEXTET - FRAGMENT (JAZZ IN BRITAIN JIB-32-S-CD) (C2022)


[ 追補 2. (2023年9月14日アップロード) ]

本文アイテム 6 が DISCOGS サイトの下記ページに紹介されていることをこのほど「見付けた」!。 5 か月くらい前に新たに投稿されたらしい。

https://www.discogs.com/release/26654489-John-Walters-Landscape-Thursday-The-12th

半分くらいその「存在自体」を疑っていたので、スリーブ写真もしっかり載っているその記事には少なからず驚くとともに、「貴重な」情報が得られたことに「感激」した。現物を手に入れることができれば、もちろんもっと嬉しいけれど。
スリーブ写真及びそのスリーブに記載された録音データ等を本文に追録しておいた。
次はアイテム 4 が紹介されることを期待しよう。



SUP.1. - J.Taylor Sextet-Fragment (CD)



☆☆ トップページへ ☆☆

☆☆ コンテンツ#1 --- 「ニュージーランドジャズの知られざる新旧ピアノアルバムなど」へ ☆☆

☆☆ コンテンツ#2 --- 「英国『ニュージャズ』114選 −1970年前後のアルバムから− 」へ ☆☆

☆☆ コンテンツ#3 --- 「MOSAIC −英国ジャズのマイナーレーベル @− 」へ ☆☆

☆☆ コンテンツ#4 --- 「CHILTERN SOUND −英国ジャズのマイナーレーベル A− 」へ ☆☆

☆☆ コンテンツ#6 --- 「英国ジャズ 新140選 −続・1970年前後のアルバムから− 」へ ☆☆

☆☆ コンテンツ#7 --- 「英国ジャズ 新・新98選 −続続・1970年前後のアルバムから− 」へ ☆☆

☆☆ コンテンツ#8 --- 「アナログで聴くニュージーランド『モダン』ジャズ」へ ☆☆

☆☆ コンテンツ#9 --- 「NONDO −英国ジャズのマイナーレーベル C− 」へ ☆☆

☆☆ コンテンツ#10 -- 「OGUN −英国ジャズのマイナーレーベル D− 」へ ☆☆

☆☆ コンテンツ#11 -- 「SPOTLITE −英国ジャズのマイナーレーベル E− 」へ ☆☆

☆☆ コンテンツ#12 -- 「『スモールレーベル』 その1 −英国ジャズのマイナーレーベル F− 」へ ☆☆

☆☆ コンテンツ#13 -- 「ZYZZLE −英国ジャズのマイナーレーベル G− 」へ ☆☆

☆☆ コンテンツ#14 -- 「VINYL / VIEW −英国ジャズのマイナーレーベル H− 」へ ☆☆

☆☆ コンテンツ#15 -- 「トレバー・ワッツ −英国ジャズのマイナーレーベル I− 」へ ☆☆

☆☆ コンテンツ#16 -- 「CD時代の英国ピアノトリオアルバム」へ ☆☆

☆☆ コンテンツ#17 -- 「ルイ・スチュアート −英国ジャズのマイナーレーベル J− 」へ ☆☆

☆☆ コンテンツ#18 -- 「TERRACE / IMC −アイルランドジャズのマイナーレーベル」へ ☆☆

☆☆ コンテンツ#19 -- 「IMPETUS −英国ジャズのマイナーレーベル K− 」へ ☆☆

☆☆ コンテンツ#20 -- 「『スモールレーベル』 その2 −英国ジャズのマイナーレーベル L− 」へ ☆☆

☆☆ スペシャルコンテンツ#1 --- 「CDリリースガイド」へ ☆☆

☆☆ スペシャルコンテンツ#2 --- 「NATO と数列」へ ☆☆

☆☆ スペシャルコンテンツ#3 --- 「英国ジャズの国内盤」へ ☆☆

☆☆ スペシャルコンテンツ#4 --- 「英国ミュージシャンが登場するドイツのオムニバス盤 − NDR, JG など」へ ☆☆

☆☆ スペシャルコンテンツ#5 --- 「ショートコンテンツ インデックス」へ ☆☆



[ ☆☆ 管理用のページ ----- 「更新履歴」 ----- 「サイトマップ」 ----- 「BFJ LISTS」 ☆☆ ]




このページのトップに戻る






★☆★ コメントありましたら ★☆★


Copyright ©2007-2023 NISHIZAWA Kunikazu. All rights reserved.