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平成21年8月25日 小林正明 考え

生活保護

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生活保護


相模原市議会議員 小 林 正 明


利用しやすく、自立しやすい制度に

小林議員は、貧困の現状と貧困の解消を求め、安心安全の行政の確立を目指す立場から、6月議会で生活保護を市民が利用しやすく、自立しやすい制度にする為に、市長に対して一般質問を行いました。

市長は、「女性特有の相談や対応の視点からのケースワークの必要を認め、生活保護の市の負担(現行25%)を、20%に回復することを、国に要望したい」と答弁しました。


貧困の実態

「蟹工船」(小林多喜二著)が映画化され「蟹工船現象」・地域の商店街はシャッター通りに象徴されるように、日本は先進国の中で、アメリカに次ぐワースト2位の貧困率の国家です。

特に、シングル世帯(マザー・ファーザー)の貧困率は、アメリカを抜き世界で最高の貧困率です。

しかも、平成14年から平成20年夏までの戦後最長の景気上昇期間中も、新自由主義の悪影響で、大企業は人件費抑制策として、派遣社員等の非正規雇用を増大させました。


今なすべきは、貧困の解消策ではないでしょうか。


機能不全のセーフティネット

日本のセーフティネットは、@雇用A社会保険B公的扶助の3層構造ですが、現状は、このいずれもが機能不全に陥っています。

雇用の面では、大企業・経済界・政府は、その責任を放棄し、その結果ワーキングプア(働く貧困層)が増加しました。

今や、非正規雇用は、全勤労者の3人に1人、15才から24才までの若年層では、男性は46%、女性は53%ですから驚きです。

年収200万円以下の給与取得者が、何と1023万人に達しています。

これが、安心して結婚も、出産もできない少子化の現実です。

社会保険の面では、失業保険受給者がこの25年間で、3分の1に激減し、国民健康の保険加入者3400世帯の中で、年収200万円未満世帯が67%、100万未満が38%で、国民年金の未納者は374万人、未加入者27万人です。

生活保護の面では、生活保護基準以下の低所得者のうち、実際に保護を受けている割合(捕捉率)は、複数の研究者は15%〜20%と推計しています。

平成18年度の日弁連の調査では、ドイツ約70%、イギリス約90%で、日本の5倍以上の捕捉率です。

仮に、捕捉率15%〜20%では、400万世帯〜600万世帯、600万人〜850万人が、生活保護の公的扶助から排除されていることになります。

本来なら、最後であるべき生活保護が、最初で最後のセーフティネットになり、北九州市では、「水際作戦」で餓死・自殺事件が5年間で、5件も発生しています。

更に、年末には、日比谷の「派遣村」が生々しくTV放映され、全国の茶の間に衝撃が走りました。


水際作戦とは

困窮状態で福祉の窓口を訪問した人に対し、生活保護の申請をさせないで、窓口で相談者を追い返す対応のことを「水際作戦」といい、全国で蔓延しています。

結果的に、正当な保護受給要件のある人に、申請を断念させ、保護受給者を減らす役割を果たしています。


「申請します」の一言

生活保護を受給する為には、「生活保護を申請する」という「意思表示」が必要とされ、意思表示が無ければ、いつまでも「相談扱い」になります。


明らかに、訪問の目的は生活保護の「申請」の為であり、「相談」を受けるのが目的ではないのです。


しかし、訪問者は生活保護のキーワードが「申請する」(意思表示)との一言にあるとは、知る由もありません。


意思表示後の手続き

仮に、訪問者が最初から生活保護を「申請します」と言ったらどうなるでしょうか。

生活保護は、国民・市民の権利であり、生活保護の申請権に基づき「申請の意思表示」があれば、行政は、生活保護の申請を拒否できません。

生活保護法の本来の手続きは@申請の意思表示A書類の提出B生活保護の要否調査C結果の書面通知となります。

行政手続法(7条)で、行政庁は申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならないとされ、申請を「受理する・受付ける」行政の行為は不要です。


国民の権利・国の責任

憲法25条は、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と明言し、生活保護法で、無差別平等の原理・必要即応の原則の下、生存権を具体化しています。

憲法は、国家の国民に対する約束・義務を定めたものですから、生活保護は国民の権利です。

ですから、現状では、自治体が生活保護費の25%を負担していますが、全て国が負担すべきではないでしょうか。


行政の役割

残念なことですが、生活保護に対する誤解・無理解・偏見などが蔓延しています。

行政には、更に、市民に対し生活保護の正しい知識と理解を広め、保護申請の環境整備の充実が求められます。


相模原市の申請率

平成20年度の相談件数は、延べ3772件で、申請件数は1322件(申請率35%)、開始件数1231件(開始率33%)でした。

平成18年度の申請率(厚労省調査)は、千葉市(70%)、さいたま市(59%)、川崎市(55%)堺市(49%)、静岡市(42%)、横浜市(38%)、北九州市(30%)です。

政令指定都市の中で千葉市の申請率が1番高いのは、福祉全般に通じたOB職員を窓口に配置し、必要な場合は保護につなげている結果です。


相模原市の窓口対応

生活に困窮した人が窓口を訪れた場合、相模原市では「生活保護相談受付票」(以下、「相談受付票」といいます)に、住所・氏名・同居の家族を記入させられます。

申請意思をもった訪問者に対して、相談受付票で対応すること、即ち「申請の意思」に対し、敢えて「相談の意思」を用意することは、行政が無意識か意図的は別にしても、訪問者に対して、結果的に申請に至らない道を提示することになりかねません。

現行の相談受付票には、申請の意思表示の確認欄がなく、申請の意思確認が記録されませんから、後日の紛争防止のために訪問者でも確認できるように改善すべきです。


弱肉強食の新自由主義から脱却を

日本は、アメリカの新自由主義政策として市場原理を導入し、郵政民営化や指定管理者制度により、公共部門の民営化が進みました。

しかし、指定管理者制度の下では、非正規雇用が拡大するのみで、正規雇用では費用対効果が生じない欠陥構造です。

小泉・竹中の改革路線の結果、企業は空前の利益を上げ、空前の景気上昇が長期間続いたものの、痛みを伴うばかりです。

今こそ、市場原理主義路線から脱却し、福祉優先、市民生活重視のソフト路線の確立が求められます。

アメリカ型の社会を目指す政策ではなく、欧州型の福祉社会を目標にすることのほうが、現在の日本の現状に相応しいのではないでしょうか。



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