政令指定都市を考える
相模原市議会議員 小 林 正 明
I 地方自治と都市制度
(1)地方自治の仕組み
@自治(住民自治と団体自治)
A自治体の種類
@ 普通公共団体=都道府県と市町村(二層構造)
A 特別地方公共団体=特別区・地方公共団体の組合・財産区等
※その他の団体=第三セクター(土地開発公社・住宅供給公社等)
B 特別区(都の23区)と行政区(政令市の区)の違い
※特別区は、「自治体」で、「区長」は公選の特別職であり・議会があり、議決権・決定権がある。
※行政区は、「行政の内部組織」で、議会は無く、「区長」は一般職の管理職の中から市長が任命し、市長の指揮命令下にあり、地域の「出張所長」のようなものです。
(2)都市制度
@経過
@ 昭和22年=特別市(県の区域外・完全独立)
A 昭和31年=指定都市
B 平成6年=中核市(政令で指定する人口30万人以上の市)
※相模原市は、平成15年中核市に移行=保健所設置
C 平成12年=特例市(条件を満たす都市)
A指定都市の要件
@ 政令で指定する人口50万人以上の市
A 都市としての諸機能、規模能力等=他の都市より格別の実体
B 行政の内容=質量ともに他の都市とは異なるもの
※ただ人口要件を充たしたのみでは、直ちに本条の適用があるものではなく、既存の指定都市同様、本条掲記のような事務を自ら処理する必要が認められ、また、それらのすべてを能率的に処理するだけの能力を持たねばならない。
(逐条地方自治法・松本英昭・学陽書房P1160〜P1161)
B県下の自治体
@ 政令指定都市(横浜市・川崎市)
A 中核市(相模原市・横須賀市)
B 特例市(平塚市・茅ヶ崎市・厚木市・大和市・小田原市)
C県内各市の公営事業
@ 水道事業(横浜市・川崎市・横須賀市)
A 市立病院(横浜市・川崎市・横須賀市)
B 地下鉄(横浜市・川崎市計画中)
C バス(横浜市・川崎市)
D 市立高校(横浜市・川崎市・横須賀市)
※長崎市は、人口45万人でも、水道・市立病院・市立高校あり!
問われているのは、教育最優先に対する相模原市の政治姿勢(やる気のなさ)です。
D指定都市の事務
@ 都道府県の事務の一部移譲(18項目+施行令)
A 各個別法の規定
例・道路法17条(指定区間以外の国道管理・県道管理事務)
E財政上の特例
@ 地方交付税補正
A 地方道路譲与税
B 石油ガス譲与税(都道府県並みに譲与)
C 自動車取得税交付金の増額(地方税法699の32のA)
D 軽油引取税交付金の増額(地方税法700の49)
E 宝くじ発売(売上金収益:協議配分)(当せん金不証票法4)
U 政令指定都市の実態
(1)政令市の数
@平成14年(12)
A現在(17)=合併特例(さいたま・堺・新潟・浜松・静岡)
(2)政令指定都市の実態(平成14年)
@一人当たりの投資的経費(城山町の4倍)
・城山町(2万2363円)VS政令市(8万9011円)
A一人当たりの地方債残高(城山町の5倍)
・城山町(16万9764円)VS政令市(80万8179円)
B一人当たりの積立金残高(城山町の三分の一)
・城山町(9万2857円)VS政令市(3万1304円)
C自主財源比率(城山町は、指定都市・中核市平均上回る)
・城山町(66.7%)VS政令市(58.8%)、中核市(57.4%)
D財政力指数
城山町(0.79)以下の政令市=半数
=12市中6市(札幌・京都・広島・北九州・福岡・神戸)
(3)深刻な財源不足
@「豊な財源」財政上の特例効果何処?
A連結性の原理(ドイツ連邦憲法)
国から自治体に事務移譲を行う場合は、財源保障が伴わなければならないとする考え方=「事務移譲(仕事)と財源」の対応関係の一致
B深刻な財源不足
政令指定都市に豊かな財源保証なし
市民福祉充実より公共事業の拡大
C経済界(建設業界等)の期待
@ 公共事業の拡大(ハコモノ行政の復活)
A 地元優先(県発注から市発注)
V 相模原市の問題点
(1)財政問題
@収入増加
@ 県税交付金等(概ね60億円から80億円)
A 宝くじ販売収益金(県・市間協議の為、試算未了)
A負担増加
@ 人件費(約150人分から170人分=15億円から17億円)
A 国・県道の整備・維持管理費(試算未了)
B 上記の県債償還費(過去7年分から全額?)
C 県補助率の低下
B財政不足解消策(人件費削減・福祉削減等の市民負担転嫁)
C市民は、政令指定都市実現より福祉の向上希望
D企業の撤退(セントラル・日金工・カルピス・帝人)=法人税等減少
(2)政令指定都市要件の疑問=大都市機能皆無
@人口要件のみを合併特例(姑息な手段)でクリア
A大都市特有の都市の諸機能、規模能力等・行政の内容=質量不足
B市立高校・市立病院・公共交通(市電・地下鉄・市バス等)皆無!!!!
(3)偽装政令指定都市の誕生
@目指すべきは、政令指定都市の機能・能力の充実強化
A充足後に、検討(想定人口=150万人)するのが正論
B実態のない政令指定都市=偽装政令市の誕生
C検討・検証抜きの市民不在の政令指定都市
D不利な条件・拒否不可能?
E拙速合併・拙速政令指定都市
F県の事務の移譲=県と市の分業の在り方にすぎない
G市民福祉の向上・市民自治の充実より団体自治の拡大・権力志向?