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平成20年5月8日 小林正明 考え

政令指定都市・線引き反対

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市民不在の拙速行政

政令指定都市・線引き反対

検証抜きの政令市移行


相模原市議会議員 小 林 正 明

地方自治体の仕組み

地方自治体は、広域自治体として都道府県、基礎自治体として市町村の二層構造になっています。

更に、市レベルでは、普通市以外に特例市・中核市・政令指定都市(政令市)の三種類の大都市制度があり、県事務の一部が代行されることになり、政令市に一番多くの事務が移譲されます。

事務の拡大を、権限の拡大と錯覚!?

政令市になれば、今まで県が行っていた事務を、市が担当することになりますが、事務の内容(サービスなど)が変わるものではなく、結局、県と市の分業のあり方にすぎないのです。

現在、県に代わって市では保健行政を行っていますが、合併前の津久井郡4町では、県の保健所があり、県で保健行政を担当していましたが、格別不便はありませんでした。

どうやら、権力志向の発想から、「事務」の拡大を「権限」の拡大と錯覚しているようです。

豊かな財政の保証なく、厳しい財政を予測

政令市になれば、市の財政が豊かになるわけではありません。

確かに、交付税補正・宝くじ発売・県並みの地方道路譲与税等の財政上の特例があり、一見有利、豊な財源の保証ありと思えそうです。

しかし、平成14年現在の政令市の半数(12中6)が、旧城山町より財政力指数が低かった現実をみても、政令市になれば財政が好転することはないのです。

寧ろ、国道・都道府県道の管理・河川管理の負担、しかも過去の関連債務まで県から引き受け、大変な財政負担となります。

ドイツ連邦憲法には、「事務移譲=財源移譲」「仕事(事務)と財源の対応関係」を求める考え方(連結性の原理)が、確立していますが、残念なことに日本では未確立です。

事務の増加により、増加する財源では賄えず、「持ち出し」が常態化し深刻な財源不足に陥る恐れが強いのです。

不利な条件、拒否不可能?

早々と政令市の「財政分析・市民的議論」抜きで、県・国に態度表明後は、如何に不利な条件でも呑まざるを得ないのが、現在の市の立場です。

今回の合併は、旧相模原市にとっては、政令市行きの「特急券」獲得手段であり、拙速行政の歪みは必至です。


実体なき、偽装政令市


政令市の要件

政令市(政令指定都市の略)の要件を、地方自治法上は@政令で定める「人口50万人以上の市」と定めています。

人口要件を充たしただけで、政令市になれるのならば、全国的にはとっくに政令市になれた市(岡山市・熊本市・鹿児島市・船橋市)があるはずです。

ですから、単に人口要件を充たしたのみでは、直ちに適用があるわけではありません。

政令市の要件として、A都市としての諸機能・規模能力等が他の都市より「格別な実体」B行政の内容が他の都市とは「質量ともに異なる」ものを有していることが必要なのです。

=資料=

「ただ人口要件を充たしたのみでは、直ちに本条の適用があるものではなく、既存の指定都市同様、本条掲記のような事務を自ら処理する必要が認められ、また、それらのすべてを能率的に処理するだけの能力を持たねばならない。」

(新版逐条地方自治法・松本英昭・学陽書房P1204〜P1205)

中核市未満、一般市並み!

県内の政令市(横浜市と川崎市)では、水道・市立病院・バス・市立高校があり、地下鉄を横浜市で、川崎市ではその計画があります。

横須賀市では、水道・市立病院・市立高校がありますが、同じ中核市である相模原市には、いずれも皆無です。

驚くことに、人口20万人以上の特例市(平塚市・茅ヶ崎市・厚木市・大和市・小田原市)や、一般市(藤沢市)に設置されている「市立病院」さえないのです。

これで、我が相模原市が他の都市より「格別な実体がある」、「行政の内容が質量ともに異なる」と言えるでしょうか。

合併という姑息な手段で人口要件のみをクリアし、相模原市の実態・力量を顧慮することなく、「政令市ありき」がまかり通っています。

これでは、小学生がダブダブの大学の学生服を着て、まるで大学生になったような気分になり、自己満足し、世間から、評価は愚か無視される裸の王様ではないでしょうか。


政令市になれば

財政負担大幅増

年間100億円超(推計)


県借金の負担増

政令市になれば、国・県道の管理が県から移管され、相模原市関連の国・県道の借金も負担することになります。

過去10年分県の借金は、1332億円で、これに利子を含めたら1640億円です。

先行政令市同様、過去7年分引き受けると、元利合計で1148億円となり、今後20年間は年間57億円の負担増です。

更に今後は、圏央道・広域道路などの負担が莫大となります。

人件費負担増

政令市移行の為に、150人から170人職員が不足し、1人1000万円と計算すれば、15億円から17億円の負担増です。

区役所の建設費・維持費増

区割りの結果では、少なくとも2ヶ所の区役所の建設費・維持費が必要です。

イバラの道

政令市にならなければ、不必要な負担増加額は、現時点で推計すれば、年間100億円超の財政負担が増加することになります。

これでは、豊かな財政どころか、政令市の前途は「バラ色」ではなく、「イバラ」の道です。

解消策は、行革の嵐

財政負担は、推計で100億円超過となり、その解消策として、市長は、徹底的な行革に取り組むと3月議会で答弁しました。

社会環境の変化に対応する政策転換を本質とする市民本位の行革ではなく、政令市の財政負担増加解消のための行革は、行革論としても本末転倒であり、何より市民サービスの低下を招くことは、必至です。


政令市になっても

市民サービスかわらない


担当者の交代にすぎない

政令市になれば、県担当事務の一部が、市に移管されますが、担当者が「県職員」から「市職員」に替わるだけで、事務の内容(行政サービス)は同じです。

短期的には、経験豊かな専門職(県職員)の足元にも及びません。

急遽、4月からの移動で福祉専門職などを中心に県に派遣しても、実務家が独り立ちするには、少なくとも5年は必要で、経験不足による相談業務の混乱が目に見えるようです。

私達は日常生活の中で、今までの県担当の事務についてそんなに不便・不都合を感じたことはありません。

中核市になって、「保健所」が県から市に移管されましたが、市の保健所の行政サービスが、県の担当時と比較して特段向上したでしょうか。

政令市になれば、きめ細かいサービスができるようになると盛んにいわれます。

しかし、相模原で昨年発生した母親の障害者兄弟殺人事件では、市長が相談体制の不備を認め、障害者団体の要望が出て、本年4月から市保健所に社会福祉士を2名増員することになりました。

政令市に移行すれば、全てバラ色・完全解決ではありません。

市民に必要なし

担当者がかわるだけで、提供される行政サービスは同じで、変わらないのですから、無理に推計年間100億円を超える財政負担をしてまで政令市になる必要・理由がありません。

費用対効果の観点と行政サービスを受ける市民の視点からも、今回の政令市移行は無意味です。

しかも、県から移管されるのは、県事務の30%未満、これで県並みの自立都市とは「カタハライタシ」です。

今行政が目指すべきは、権力志向の団体自治の拡大より、市民福祉の充実・市民サービスの向上ではないでしょうか。


根拠なき工場誘致

現実は、工場撤退続出


証明抜きの淡い願望・幻想

政令市になれば、政令市であることを最大の魅力として企業誘致できるのなら、現在政令市を表明している相模原市から、髪の毛が抜けるかの如くに、「セントラル・帝人・カルピス・日金工」等の工場が相模原市から何故撤退するのでしょうか。

政令市移行が、ガマの油のように「撤退(出血)がピタリと止まる」即効薬にはなりえないことは明らかです。

そもそも、政令市と企業誘致には、関連性はなく証明抜きの淡い期待・願望・幻想にすぎません。

地道な地域おこしを

ご存知のとおり、現在全国の商店街では「シャッター通り」が深刻な課題になっています。

しかし、福岡市・北九州市などの政令市にも「シャッター通り」は同様に存在します。

残念なことに、相模原市でも「西門商店街」を見れば明らかです。

商店街の活性化は、政令市移行ではなく他力本願ではなく、地道に地域おこしをする以外に解決の早道など無いのです。

市民の信頼向上を

市のイメージアップは、市民からの行政に対する信頼感の日常的な積み重ねが重要であり、市外評価に力点を置く対外的なイメージアップより、市内評価を重視した市民の信頼向上に努力すべきです。


線引は、政令市の手段

合併協議違反・ペテン市


合併協議決定事項は下記のとおりなのに、何故。

土地利用の扱い

「土地利用の取扱い(都市計画区域及び区域区分等)につきましては、土地利用の規制の急激な変化を避けるため、現行のまま新市に引き継ぎ、合併後の新市において、住民の意向を踏まえた中で検討します。」


??? 急激な変化を避ける ???

??? 住民の意向を踏まえ ???

過疎地区に線引き不必要・逆効果

区域区分とは、一般的には「線引き」といい、市街化を促進する区域(市街化区域)と市街化を抑制する区域(市街化調整区域)とに分け、土地利用上の区分をすることです。

区域区分は、土地利用上権利の制限が伴いますから、厳密に検討されるべきで、区域区分の要否等の判断は、「無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図る」のが目的です。

@人口増加などによる市街地の拡大の可能性やA都市的土地利用の拡散制限の必要性がなければ、区域区分の必要性はありません。

人口増加による無秩序な乱開発を防止する為にこそ、土地利用上の線引き(区域区分)をするのですから、過疎化(人口減少)の旧3町地区(旧津久井町・旧相模湖町・旧藤野町)には、線引きの必要性はないのです。

寧ろ、線引きの結果、人口減少傾向に拍車をかけることになり、人口増加策が求められる旧3町地区にとって、線引きは逆効果です。

何故なら、宅地開発が制限される調整区域は、その面積部分が、人口増加とは無縁の人口減少地区になるからです。

混乱の責任は、相模原市に有り

今、旧3町地区では、市街化を促進する市街化区域と市街化を抑制する調整区域を区域区分(線引き)が大問題になっています。

線引きで市街化区域に編入されれば、大幅増税(都市計画税・固定資産税・相続税)必至です。

線引きで調整区域に編入されれば、土地利用(宅地開発)が制限され、資産価値の下落を招きます。

結局、市街化区域であれ、調整区域であれ、市民にとっては、今までよりも不都合(不利益)な事実ばかりです。

私の故郷、九州の鳥栖市と近隣3町(田園地区)の1市3町の合併協議会は、鳥栖市から線引きが提案されたことが原因で、3町は協議会から離脱し、3町のみで合併しました。

線引きに伴う土地利用の制限に対する3町の町長の離脱の判断は、英断といえます。

相模原市は、合併協議会で「急激な変化を避けるために、現行のまま引き継ぐ」と決定して、旧3町の市民(旧町民)に「急激な変化はないもの」と誤信させて、意図的に安心させたのですから中核市ではなく「ペテン市」です。

城山町議会・合併特別委員会の席上、委員の質問に対して旧城山町の担当者は「10年位の検討期間が必要」と答弁していた事実があります。

誠実に協議の場に線引き問題を提起した鳥栖市に比べ、相模原市の態度は、不誠実超過の「衣(ころも)の下に鎧(よろい)」です。

相模原市の3月議会で、最大会派の某議員は「平成17年から政令市を目指していた」と発言し、今回の合併が当初から「政令市の為の手段(人口要件緩和)」であったことが鮮明になりました。

相模原市は当初から、政令市を目指していたのですから、政令市になれば線引きは都市計画法上必然であることを、旧3町に提案・説明すべき責任があったことは明白です。

現在の線引き混乱の責任は、旧3町の市民にはなく、全て相模原市にあります。

線引きは、政令市の手段

相模原市は、何故、線引きを急ぐのでしょうか。

相模原市は、合併で出来た1つの自治体としての「一体的なまちづくりから、区域の統合は必要で、無秩序な土地利用の拡散を防止し、効率的な公共施設の整備を行うため、線引きが必要」と説明しています。

しかし、旧3町と相模原市は、全く違う環境を承知の上で合併したのですから、今さら一体的になる必要性を殊更強調すること自体自己矛盾です。

更に、旧3町の人口は、今後とも過疎化傾向は必至で、無秩序な土地利用の心配は無く、人口増加地区同様の線引きの必要はないのです。

又、効率的な公共施設の整備は、下水道の分担金方式の様に線引きがなくても不可能ではありません。

相模原市の説明には、旧3町の現状・実態から、全く根拠がないことは明白です。

相模原市が政令市を目指すが故に、「線引き強行の暴挙」が発生するのであり、政令市を目指さなければ、不必要な混乱です。

「合併・線引き」が、政令市移行の手段にすぎないことが鮮明になったのですから、旧3町の市民は、政令市に驀進する相模原市の犠牲者ではないでしょうか。


市民の力で

政令市・線引を阻止しよう


「富士山には、月見草がよく似合う」と言ったのは、太宰治ですが、「相模原市には、政令市は似合わない」のです。

田舎人(いなかびと)が、都会人(とかいびと)に淡い憧れをもった時代の名残ならいざ知らず、表玄関もなく、公共交通も未整備なままの相模原市に、どこに大都市としての機能・実体があるといえるのでしょうか。

今目指すべきは、中核市や特例市並の「都市機能や能力」の充実強化・基盤整備です。

背伸びして見るのは、海峡だけで十分です。

着実な行政の充実・充足後に政令市の検討なら各別、検討・検証抜きの市民不在の実体なき「偽装政令市の誕生」では、後世に禍根を残すことは必至です。

権力志向の団体自治の拡大より、市民福祉の充実・市民サービスの向上に重点を置くべきです。

リンカーンの言葉「人民の、人民による、人民の為の政治」は、民主主義の基本原理です。

市民不在の拙速行政病に犯され重体の相模原市には、「市民の、市民による、市民の為の行政」の確立を目指す、外科手術として平成の市民革命が必要です。

極めて限られた状況ですが、街づくりの議論を地域で展開し、政令市・線引反対の雄叫びを相模原の大地に拡げ、市民の力で政令市・線引の野望を打ち砕こうではありませんか。

相模原市議会議員 小林正明 Mail:masaaki@kuh.biglobe.ne.jp 相模原市緑区町屋4-16-9 TEL:042-782-5969 携帯:090-4520-5447