実体なき、偽装政令市
相模原市議会議員 小 林 正 明
政令市の要件
政令市(政令指定都市の略)の要件を、地方自治法上は@政令で定める「人口50万人以上の市」と定めています。
人口要件を充たしただけで、政令市になれるのならば、全国的にはとっくに政令市になれた市(岡山市・熊本市・鹿児島市・船橋市)があるはずです。
ですから、単に人口要件を充たしたのみでは、直ちに適用があるわけではありません。
政令市の要件として、A都市としての諸機能・規模能力等が他の都市より「格別な実体」B行政の内容が他の都市とは「質量ともに異なる」ものを有していることが必要なのです。
資料
「ただ人口要件を充たしたのみでは、直ちに本条の適用があるものではなく、既存の指定都市同様、本条掲記のような事務を自ら処理する必要が認められ、また、それらのすべてを能率的に処理するだけの能力を持たねばならない。」
(第2次改定版逐条地方自治法・松本英昭・学陽書房P1160〜P1161)
中核市以下、一般市並み!
県内の政令市(横浜市と川崎市)では、水道・市立病院・バス・市立高校があり、地下鉄を横浜市で、川崎市ではその計画があります。
横須賀市では、水道・市立病院・市立高校がありますが、同じ中核市である相模原市には、いずれも皆無です。
驚くことに、人口20万人以上の特例市(平塚市・茅ヶ崎市・厚木市・大和市・小田原市)や、一般市(藤沢市)に設置されている「市立病院」さえないのです。
これで、我が相模原市が他の都市より「格別な実体がある」、「行政の内容が質量ともに異なる」と言えるでしょうか。
合併という姑息な手段で人口要件のみをクリアし、相模原市の実体・力量を顧慮することなく、「政令市ありき」がまかり通っています。
これでは、小学生がダブダブの大学の学生服を着て、まるで大学生になったような気分になり、自己満足し、世間から、評価は愚か無視される裸の王様ではないでしょうか。
いま何をなすべきか
しかし、今目指すべきは、中核市や特例市並の「都市機能や能力」の充実強化・基盤整備です。
背伸びして見るのは、海峡だけで十分です。
着実な行政の充実・充足後に政令市の検討が必要であり、検討・検証抜きの市民不在の実体なき「偽装政令市の誕生」では、後世に禍根を残すことは必至です。
権力志向の団体自治の拡大より、市民福祉の充実・向上に重点を置くべきです。
極めて限られた状況ですが、議会・職員・市民の中で、街づくりの原理原則に基づく議論が展開されることが、今こそ求められています。