KASPER VILLAUME
若々しさと同時に次の楽しみを提供してくれる期待感溢れるピアノ・トリオだと思う
"ESTATE"
KASPER VILLAUME(p) JESPER BODILSEN(b), MORTEN LUND(ds)
2002年1月 スタジオ録音 (MARSHMALLOW-RECORDS MYCJ-30143) 


前回に続いてMARSHMALLOW-RECORDSからのピックアップ。このレーベルは日本人の上不氏が主宰するレコード会社だが、なかなかミュージシャン・フレンドリーな作品を提供してくれて、心に残るレーベルだ。
極めつけがJAZZ批評 204."LES PARAPLUIES DE CHERBOURG"で、ややもすると「ゲテモノ」作品になりそうな映画音楽集を質の高いスタンダード・ナンバー集に見事、変えてみせた。このアルバムの素晴らしさは誰もが耳にしたことのある映画音楽を質の高いJAZZに仕立て上げたことだ。プロデューサーもさることながら、やはり、3人のプレイヤーの意気込みと楽しさの共有感が成せたわざだろう。このアルバムは2004年の「推薦盤」(JAZZ雑感(10))としてピックアップさせてもらった。

翻って、このアルバムであるが、最近のヨーロッパ・ジャズの2枚看板、JESPER BODILSENと MORTEN LUNDがサポートしている。ピアノのKASPER VILLAUMEはJAZZ批評 243.で硬質なタッチを披露してみせた。この時は、何といってもドラムスのJEFF TAIN WATTSの参加が大きく影響していると思った。今回は、それより遡ること2年前の2002年の録音だ。ドラムスはMORTEN LUNDである。最近、ベースのBODILSENとコンビを組むことが多い。
一方、BODILSENは、つい最近亡くなったヨーロッパ・ジャズ・ベーシストの雄、NIELS-HENNING ORSTED PEDERSENに師事したという。力強いベースワークとベースの持分をわきまえたサポートぶりに好感が持てる。ドラムスの MORTEN LUNDとの組み合わせではSTEFANO BOLLANIとの名盤"MI RITORNI IN MENTE"(JAZZ批評 210.)や"GLEDA"(JAZZ批評 264.)で共演している。これらのアルバムはSTUNTレーベルから
発売されている。

このアルバム"ESTATE"に採用された曲は名曲であると同時に、数多くの名演も生んでおり、ついでがあれば以下のアルバムも聴いてみて欲しい。その一端を紹介すると・・・


@"BLUES FOR MAIKEN" 
VILLAUMEのオリジナル・ブルース。
A"YOU AND THE NIGHT AND THE MUSIC" JAZZ批評 206.の辛島文雄。
B"ESTATE" 
C"HALLUCINATIONS" 
JAZZ批評 4.のKEITH JARRETT。
D"BLAME IT ON MY YOUTH" 
JAZZ批評 261.のCARSTEN DAHL、もしくはJAZZ批評 24.のBRAD MEHLDAU。

E"OUR LOVE IS HERE TO STAY" JAZZ批評 256.のMICHEL CAMILO。
F"IT'S ALL RIGHT WITH ME" 
G"I FALL IN LOVE TOO EASILY" 
JAZZ批評 24. の BRAD MEHLDAU。
H"BITCH & BUTCH" 
JAZZ批評 135.のKIETH JARRETT。
I"YOU MUST BELIEVE IN SPRING" 
JAZZ批評 119.のDON FRIEDMAN。
J"MY MAN IS GONE NOW" 
などなど・・・。

このピアニストはタッチの良さから言って、スローよりもミディアム・テンポ以上の速い曲の方がしっくりいく。
Eなどの躍動感溢れる演奏がピッタリ来る感じ。
ヨーロッパにあって、BODILSEN〜LUNDのふたりはJESPER LUNDGAARD(b)と ALEX RIEL(ds)の次を担う若手コンビとして期待感は高まる。LUNDGAARD〜RIELの野性味と逞しさが加われば、言うことなしだ。
VILLAUME〜BODILSEN〜LUNDのトリオは若々しさと同時に次の楽しみを提供してくれる期待感溢れるピアノ・トリオだと思う。   (2005.04.30)

<2005.06.22追記>
最近、購入した携帯デジタル・オーディオには最近の4.5★以上のアルバムをダウン・ロードして毎日聴いている。このツールはなかなかの優れもので132kbpsでの転送レートでもCDにして17枚前後は録音することが出来る。このCDもそうしていつも聴いている1枚。どの曲も水準以上で素晴らしい。有名曲ばかりを集めたので新鮮味には若干欠けるが、演奏内容はお奨めだ。シャッフル・モードで聴いていて、「おや!」と思うのはいつもこのアルバムの曲だ。トリオとしての緊密感も申し分ない。特にブルース・フィーリングたっぷりの@。美しいテーマのBとD。躍動感溢れるE。ベースが唸りをあげるHなどは極めつけと言えるでしょう。これは、やはり「厳選」入りということで、新たに「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2005.06.22)



独断的JAZZ批評 268.