CARSTEN DAHL
痛快さあり、瑞々しさあり、グルーヴィあり、新鮮さありで
DAHLの才能の一端を見せつけてくれた1枚
"MINOR MEETING"
CARSTEN DAHL(p), JESPER LUNDGAARD(b), ALEX RIEL(ds)
2001年4月 スタジオ録音 (M & I MYCJ-30114) 

哀しいかな、このCDジャケットにはJAZZの匂いのかけらもない。このジャケットから素晴らしいJAZZの音色が流れてくるとはとても思えなかった。何というジャケット・デザイなのだ!何年か前にこのジャケットを見た記憶がある。が、当然その時は躊躇せずにパスだった。
今回、DAHLのアルバムを探していたらこのジャケットにぶち当たった。ジャケットはさておいて、メンバーを見て驚いた。JAN LUNDGREN(JAZZ批評 152. 185. 204.)のサイドメン、JESPER LUNDGAARDとALEX RIELが演じているではないか!これは興味を誘った。で、即、ゲット。

最近のお気に入りといえば、CARSTEN DAHLだ。CARSTEN DAHLといえばJAZZ批評 246.の"MOON WATER"が真っ先に想起される。これは素晴らしいアルバムだった。美しさと躍動感、緊迫感、緊密感を兼ね備えた優れもので、僕の愛聴盤だ。このところCD選びの不調が続いていたので、積極的、かつ、能動的に動いてみようと思った。探すならCARSTEN DAHLということで選んだのがこのアルバムともう1枚。もう1枚は近々紹介したいと思う。

@"DOWN WITH IT" B.POWELL(JAZZ批評 71.)のスウィンギーな曲。いきなりの4-ビートでゴリゴリとベースが唸り、ドラムスがサクサクとリズムを刻む。8小節交換を経てテーマに戻る。実に、痛快!本家本元のPOWELLの演奏が古臭く聴こえてしまう。
A"GOLDEN EAR RINGS" イントロ→イン・テンポ→ピアノ→ベース→ピアノ→ドラムス→テーマと進む。RIELのシンバリングが格好いいのだ!
B"BLAME IT ON MY YOUTH" 美しい曲。かつて、BRAD MEHLDAUが"ART OF THE TRIO VOL. ONE"(JAZZ批評 24.)の中で素晴らしい演奏をしていた。お互いの持ち味が生かされていて甲乙点け難い。DAHLのピアノは美しいタッチで実に瑞々しい

C"WORK SONG" N.ADDERLEYのファンキーな曲。ビシビシくるねえ。ピアノもベースも全員がグルーヴィ
D"SOFTLY AS IN A MORNING SUNRISE" 長めのイントロでドラムスが躍動する。・・・と言うよりも、跳躍するという言葉が相応しい。RIELのドラミングが見事。聞き古されたスタンダード・ナンバーに新しい息吹を吹き込んだ。
E"HERE'S THAT RAINY DAY" スタンダード・ナンバー。しっとりと温もりのあるイントロで始まる。ライナー・ノーツによれば、録音当日は小雨模様で、即興で演奏されたという。

F"I FALL IN LOVE TOO EASILY" 同じくMEHLDAUの"ART OF THE TRIO VOL. ONE"にも収録されているスローのバラード。アコースティック・ベースの音色にうっとり。
G"DANCELAND" B.POWELLの曲。これも本家の御株を奪っている。
H"PEACE" 
I"IN YOUR OWN SWEET WAY" D.BRUBECKのオリジナル。2ビートから4ビートに移るとグイグイ引っ張りこむような躍動感が体感できる。ビート感溢れるLUNDGAARDのウォーキング・ベースはいつも素晴らしい。

全曲オリジナルの"MOON WATER"と打って変わって、スタンダード・ナンバーとジャズの巨人達のオリジナルという選曲、JAN LUNDGRENのサイドメンの強靭なサポートと相俟って聴きやすいアルバムになった。
痛快さあり、瑞々しさあり、グルーヴィあり、新鮮さありでDAHLの才能の一端を見せつけてくれた1枚。豊かな歌心を感じさせながら充分に躍動しているし、3者の緊密感も申し分ない。アヴァンギャルドやアブストラクトは微塵もないので、どなたにも安心してお奨めできるアルバムだ。
それにつけてもジャケット・デザインがもう少しまともなら・・・。
尤も、流れ出てくる音楽とは関係ないので「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2005.03.26)



独断的JAZZ批評 261.