3者の緊迫感と緊密感溢れるインタープレイが実にスリリング!
加えて、抜群の躍動感で唸らせるのだ!
"MI RITORNI IN MENTE"
STEFANO BOLLANI(p), JESPER BODILSEN(b), MORTEN LUND(ds)
2003年4月 スタジオ録音 (STUNT RECORDS STUCD 03182) 

ヨーロッパのベーシストがリーダのアルバムというと、最近作ではJAZZ批評 179.のBREND HEITZLERのトリオを思い出すが、この作品はピアノ・トリオの視点でみるとほんの少し物足りない部分があった。
今回のこのアルバムはピアノ・トリオの視点からみても秀逸なアルバムと言えるだろう。ピアノにSTEFANO BOLLANIが入っている。このピアニスト、最近ではヴォーカルまでやっている作品があるが、「イケメン」ピアニストとして軟弱な扱いを受けていて同情を禁じえない。どうもそういう面ばかりが誇張されている。僕自身にとっても試聴はしても購入するまでには至らないピアニストだった。このアルバムはBOLLANIの素晴らしさが前面に出た作品だ。そのピアノは美しくもスリリングであり、躍動感もある。

リーダーのベースのJESPER BODILSENはデンマーク人で、STEFANO BOLLANIとは2002年にENRICO RAVAのグループで共演した経験を持つ。地味だけどしっかりとしたベース・ワークが持ち味のベーシストだ。
ドラムスのMORTEN LUNDはLARS JANSSONや"SCANDINABIAN CONNECTION"を主宰するベーシストの森泰人との共演がある。
以上の3人による緊迫感と緊密感、美しさと躍動感が溢れんばかりの演奏を堪能いただきたい。

@"NATURE BOY" この曲を聴く限りSTEFANO BOLLANIというピアニストは只者ではない。これほどのピアニストが何故、今まで耳に留まらなかったのか不思議だ。特に、バッキングにおいてその冴えを見せ付けてくれる。3者の緊迫感と緊密感溢れるインタープレイが実にスリリング!加えて、抜群の躍動感で唸らせるのだ!

A"HOW DEEP IS THE OCEAN" ゴリゴリバリバリのピアノのイントロで始まる。ミディアム・ファーストの4ビートに乗って、全員がスウィング。ベース・ソロ〜8小節交換を経てテーマに戻る。
B"SE NON AVESSI PIU TE " 一転、スローなバラード。BOLLANIはスローにおいても確かなテクニックを披露している。
C"SOMEDAY MY PRINCE WILL COME" ベースのソロで始まる。テーマの後に再びベースのソロ。ブラッシュ・ワークの軽快なソロで曲を閉じる。

D"MI RITORNI IN MENTE" アルバム・タイトルの美しい8ビートの曲。3者のインタープレイが聴きもの。なかなか高揚感のある演奏だ。
E"DARK VALLEY SERENADE"
 

F"BILLIES BOUNCE" C. PARLER作の有名なブルース。ここではピアノのアドリブも泥臭くブルージーに演奏している。エンディング・テーマのアレンジが面白い。
G"THE SUMMER KNOWS" 良く知られたM. LEGRANDの美しい曲。ベースも良く歌っている。
H"LITEN KARIN" これも美しいテーマのワルツ。ベースのシングル・トーンが美しい。

このアルバムはベースが前面に出たトリオ・アルバムではない。あくまでも主役はピアノにある。そのピアノは、STEFANO BOLLANIがその才能の豊かさを見事に見せ付けてくれた。
9曲中Fを除く8曲が美しいテーマを持った曲だが、甘さだけに流されず躍動感の溢れる演奏になっている。3者のインタープレイも楽しめる。「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2004.07.25)



.
JESPER BODILSEN

独断的JAZZ批評 210.