BOJAN ZULFIKARPASIC
力尽くのヘビ・メタ級の演奏とは好対照の叙情的な演奏もしっかりと加味されている
"TRANSPACIFIK"
BOJAN ZULFIKARPASIC(p), SCOTT COLLEY(b), NASHEEF WAITS(ds)
2003年6月 スタジオ録音 (LABEL-BLUE LBLC 6654) 

初めて聞く名前で、どんな演奏をしてくれるのだろうと思って購入してみた。ジャケットを見るとスキンヘッドの屈強そうな男が3人。(僕がゲットしたアルバム・ジャケットは上記の写真とは違う)何やら、怪しげではある。

@"SET IT UP" こう言っては失礼だが、如何にも、スキンヘッドの屈強な男どもが演りそうな音楽ではある。一部に電気ピアノも使用。
A"THE JOKER" この曲は、更にそういう思いを強くする。ピアノがぶち壊れそうだ。最初のインパクトは強くても、何回も聴いていると飽きる。そのうち、もういい加減にしてくれ!と叫びたくなってくる。5回も10回も繰り返し聴かなければ問題ないと思うが、50歳を超えた人間にはちと辛い。この手のジャズはライヴでガツンと一発・・・というのが良いのではないか?記録デバイスに録音して何度も繰り返して聴けるというのはどうも似合わない。
B"FLASHBACK" 憂いと哀しみを内包させた曲。
C"RUN RENE, RUN!" まるで鼠が駆け回るような慌しさ!まさに「走れ!走れ!」である。

D"BULGARSKA" そんなこと言ってる僕を見透かすように、曲想がマイナー調の美しい曲にガラッと変わった。180度の転換だ。「おいっ!一体演りたいのはどっちなんだ!?」と問いかけたくなる。多分、「両方とも演りたい音楽なのさ!」と平然と答えるに違いない。

E"Z-RAYS" 今度はスパニッシュ風の曲想。しっかりと躍動している。
F"GROZNJAN BLUE" これもEと同様、雰囲気を持った演奏。なかなか渋い。
G"SEPIA SULFUREUX" しっとり系バラード。
H"NINER" 戻ってきましたヘビ・メタ級サウンド。
I"PURPLE GAZELLE (ANGELICA)" スウィング感にあふれる陽気な曲。へーえ、こんな演奏も出来るんだ!まさにジャズの王道を行くような演奏。チンチカチンチカとシンバルを刻むスティックの音色が心地よい。このアルバムのベストと僕は思うけど、皆さんの評価やいかに?

このグループ、演奏が豪胆、力尽くな割りに仕掛けに凝っている。結構、計算し尽くされているのだろう。こういう演奏は王道と違う道を辿っているから、飽きられるのも早いかもしれない。そうさせない変化を適宜織り込んでいくことが大事だと思う。その辺は心得ているのだろう。力尽くのヘビ・メタ級の演奏とは好対照の叙情的な演奏もしっかりと加味されている。僕があと30歳若ければ5つ星を献上したかもしれない。   (2004.12.26)



独断的JAZZ批評 238.