STAN GETZ / KENNY BARRON
感動!
感嘆!
感涙!
"PEOPLE TIME"
STAN GETZ(ts), KENNY BARRON(p)
1991年3月 ライヴ録音 (GITANES JAZZ EMARCY 510 134-2) 

DISK 2
@"FIRST SONG (FOR RUTH)" 先ずはDISK 2 のこの曲から聴いて頂きたい。このアルバムの全てを凝縮したチューン。このライヴの3ヵ月後にこの世を去るGETZの絶唱でもある。人生の喜怒哀楽を溢れんばかりの哀しみで切なく歌った、感動、感嘆、感涙の1曲。
この曲はCHARLIE HADENが奥さんのために書いた曲で、JAZZ批評 6.のPAT METHENYとのデュオでも演奏されている。牧歌的な美しさに満ちたMETHENYのそれとは対照的に切なく哀しい。本人も癌であることを承知しており食事療法などを施していたという。いわば、己の死期を知りつつ、蝋燭の火のように最後の力を振絞って光り輝いたアルバムである。

A"(THERE IS) NO GREATER LOVE" BARRONの遊び心溢れるピアノが素晴らしい。
B"THE SURREY WITH THE FRINGE ON TOP" 軽快なミディアムファーストが快い。このデュオにはベースもドラムスも全く不用。というより、入り込む余地はない。BARRONの左手が4ビートとベースラインをなぞり、右手がピアノのバッキング。ここでもBARROのピアノは小粋でお洒落。大喝采。

C"PEOPLE TIME"  BENNY CARTERの書いたバラード。ピアノとテナーの絶妙なコンビネーションをお聴き頂きたい。
D"SOFTLY, AS IN A MORNING SUNRISE" JAZZ批評 147.のGEORGE ROBERT(as)とKENNY BARRONのデュオでも演奏されている。ピアノのイントロが似ている。勿論、アドリブは違うので若々しさと躍動感に溢れるGEORGE ROBERTと円熟と枯れたGETZの味わいを聴き比べてみるのも面白い。両者の素晴らしさに太鼓判を捺そう。

E"HUSH-A BYE" テナーとピアノのインタープレイが凄い。ドライブ感に溢れ緊密感もある。これぞ、JAZZと言っていいでしょう。まったく!BARRONは心憎いほどの演奏をしているのだ。
F"SOUL EYES" MAL WALDRONの書いたバラード。Dと同様に、これもJAZZ批評 147.で演奏されている曲。

DISK 1
@"EAST OF THE SUN (AND WEST OF THE MOON)" 
A"NIGHT AND DAY" COLE PORTER作。
B"I'M OKAY" 
C"LIKE SOMEONE IN LOVE" 
D"STABLEMATES" 
E"I REMEMBER CLIFFORD" BENNY GOLSONが書いた美しいバラード。
F"GONE WITH THE WIND" 「風と共に去りぬ」

このアルバムはSTAN GETZの最期の録音になったアルバムであると同時に、KENNY BARRONの凄さを世に知らしめた1枚である。この1991年3月を境にしたBARRONの活躍はご存知の通りだ。テナーとピアノという最小限のユニットでこれほどに濃密な演奏が聴けるなんて!
CD、2枚組みで約4000円。ピアノ・ファンなら、テナー・ファンなら、ジャズ・ファンなら、飯代や飲み代を抜いても買って損はないと思うのだが・・・。 勿論、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2004.11.14)



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独断的JAZZ批評 231.