ALDO ROMANO
美しさと鋭さ、緊密感と躍動感が横溢したアルバムである
「心憎い!」というのが偽らざる僕の心境だ
"THREESOME"
DANILO REA(p), REMI VIGNOLO(b), ALDO ROMANO(ds)
2003年11月スタジオ録音 (UNIVERSAL MUSIC SAS 982 221-8) 
                    
前掲のJEFF HAMILTONと同様に、ドラマーのALDO ROMANOがリーダを務めるアルバム。ALDO ROMANOというと、僕はドラマーというよりもコンポーザーとしての印象が強い。端的な例が、JAZZ批評 82.の4曲目"DO"のコンポーザーとしての魅力だ。この曲ではベースのMIROSLAV VITOUSの心を掻き乱すような切ないベース・ソロと相俟って強烈な印象を残してくれた。
そのROMANOのアルバムというので躊躇無しに購入した。
前掲のJEFF HAMILTONを「陽」
とすれば、相当、内省的だ。かと言って「陰」ではない。切れ味も鋭い。
ピアノのDANILOとベースのREMIは相当の使い手だ。タイトルにあるように、まさに"THREESOME"なのだ。3本の紐がひとつに収斂する一体感、緊密感がある。3者から湧き出る技量と感情の迸りを感じさせる。緊迫感溢れる演奏だ。
このアルバムはジックリと時間をかけて聴いてい欲しい。誰にも邪魔をされずに没入できれば、なおのこと良い。一部に抽象画的な演奏があるし、水彩画のような美しさに溢れた演奏もある。一部で聞けるアブストラクトなピアノは充分スパイスとして効いている。美しさと鋭さ、緊密感と躍動感が横溢したアルバムである。そして、全ての曲がROMANOの書いた曲である。
                    
    

@"ABRUZZI" バラード調〜ボサノバ調〜クラシック調の3部構成。
A"GHOST SPELL" ファンキーな定型パターンをバックに、アドリブでは"MY ONE AND ONLY LOVE"のフレーズが飛び出す。これも、実に、面白い!3者の活き活きとした演奏が素晴らしい。
B"FLEETING" ベースの力強いフリー・ソロで始まるが、後に、ドラムスと美しい旋律のピアノが絡む。心憎い演出だ。ROMANOのコンポーザーとしての真骨頂。最後はアップテンポの唱歌のような曲想で終わる。この曲も@と同様に、複数のテーマで成り立っていると考えた方が自然だろう。「心憎い!」というのが偽らざる僕の心境だ。

C"BLUES FOR NOUGARO" タイトル通りのアーシーなブルース。ベースがバリバリとソロをとる。自由奔放、枠をはみ出すピアノを聴け!まったく異次元のブルース!
D"MANDA" 美しいワルツ。
E"MURMUR" この曲も美しい。
F"THREESOME" フリー・インプロビゼーション(?)で始まる3者の演奏がひとつに収斂していくさまがスリリング。

G"PARADISE FOR MICKEY" 極めて透明感の強いピアノの音がテーマを奏でる。
H"TOUCHED!!" ストレートな4ビート・ジャズ。
I"SONG FOR ELIS"
 美しいバラード。ALDO ROMANOノコンポーザーとしての力量を見せつけた1曲。

ピアノのDANILO REAは、今、話題のピアニストだという。なるほどと納得させる切れ味を感じさせる。要注目。このピアニストといい、ジャズ批評 210.のSTEFANO BOLLANIといい、ジャズ批評 168.のANDREA BENEVENTANOといい、イタリアには優れたピアニストが目白押しだ。ベースのREMI VIGNOLOも強いビート感を持つ素晴らしいベーシストだ。
御大、ALDO ROMANOは若き二人に挟まれてあくまでも"THREESOME"にこだわった。アブストラクトは絶対イヤ!という方にはお奨めできないが、実に味わい深い演奏であると思う。
前掲のJEFF HAMILTONのアルバムとは180度違う好対照のアルバム。これも、良し!美しさ、躍動感、緊密感の横溢したアルバムだ。「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。
   (2004.08.22)



独断的JAZZ批評 215.