初対面でもこれだけの演奏ができてしまうという、
まさに、「ジャズは即興演奏の極致」であると
感嘆の声を漏らさずにいられない
"TIMELESS"
DON FRIEDMAN(p), JOHN PATITUCCI(b), OMAR HAKIM(ds)
2003年10月 スタジオ録音 (EIGHTY-EIGHT'S VRCL 18817)
先ず、このメンバーが凄いではないか!こんな組み合わせ、誰が考えたのだろう。JOHN PATITUCCIまでは、未だ常識の範囲だ。だけど、ドラムスのOMAR HAKIMというのは凄い。誰もが考えない組み合わせではないか?
先日、用事があって御茶ノ水に行っていた。時間の合間にDISKUNIONに寄ってみたら、「本日、入荷」のステッカーが貼ってあったのがこのアルバム。FRIEDMANのファンとしては黙って見過ごすことは出来ない。もう1枚、RANDY
PORTERの新譜もあったので、2枚をゲット!こちらも近々のうちに紹介したいと思う。
OMAR HAKIMといえば"WEATHER REPORT"全盛時のドラマーだ。フュージョン系のドラマーとして名を馳せた。このドラマーとFRIEDMANの組み合わせがどうなるかというのは誰でも知りたくなるに違いない。ライナー・ノーツによれば、FRIEDMANと二人のリズム陣は当日、初めて顔をあわせたという。初対面にして、この演奏。いわゆる、スタンダード・ナンバーのオンパレードだが、スウィング感と緊迫感を堪能できる1枚。迷わず、購入した。
@"ALONE TOGETHER" 8ビートで始まるアレンジが面白い。この曲を、こういう演奏で聞くのは初めてだ。リズム陣の斬新なサポートが新鮮だ。心、ワクワクウキウキしてくる演奏を堪能していただきたい。こういうのを「瓢箪から駒」というのだろうか。HAKIMのバックアップは配慮が利いているし、ソロでの自己主張もしっかり出来ていてなかなか良い。
A"STAR EYES" アドリブでの4ビートに乗って快いスウィング感が堪能できる。PATITUCCIのベースも良く歌っている。そして、ピアノが踊り跳ねる。
B"BODY AND SOUL" この美しい曲を耳に快いボサノバ調で明るく陽気に演奏。
C"EMILY" ピアノのソロで始まるワルツ。その後、次第にスウィング感が高潮していく。
D"TURN OUT THE STARS" PATITUCCIのアルコ弾きのベースが泣かせるなあ!このベーシスト、こんな叙情的な演奏も出来たんだ!今までのイメージ・・・即ち、弾き過ぎ、独りよがりのイメージを払拭するに足りる演奏だ。このアルバム、全曲、PATITUCCIのベースが利いているのも事実だし、はっきり言って見直した。土下座。
E"WHAT IS THIS THING CALLED LOVE ?" COLE PORTERの書いた曲。切れ味が良くて多彩な色合いを感じさせるドラミングがGOOD!
F"BOUNCING WITH BUD" これを聴いたら誰でも指を鳴らしたくなるに違いない。パウエル的に右手のシングルトーンでアドリブを展開。良く歌うベースのソロも良いし、ドラムスの8小節交換も楽しい。HAKIMの切れのあるドラミングはこういう曲にこそ合っている。
G"'ROUND MIDNIGHT" 誰もが知っているバラードなのだけどアドリブに入るとノリの良い演奏となる。このへん、ドラムスのビートの刻み方の影響があるかも。だから、ベターッとしていない。
このアルバムに遡ること1年半、2002年の5月にFRIEDMANは往年の盟友、GEORGE
MRAZと息の合ったトリオ演奏を残している(JAZZ批評 119.)が、この時はパワフルでガッツ溢れるプレイを披露していた。
翻ってこのアルバムは、FRIEDMANの明るく陽気でお洒落な一面を引きずり出した好アルバムと言えるだろう。OMAR
HAKIMの参加が、明らかに新しい息吹を吹き込んでいるし、初対面とは思えない息の合った演奏が堪能できる。どの曲も指を鳴らさずにいられない。
一流のミュージシャンというのはこういうことを事も無げにやってみせる。
初対面でもこれだけの演奏ができてしまうという、まさに、「ジャズは即興演奏の極致」であると感嘆の声を漏らさずにいられない。勿論、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。 (2004.05.21)
DON FRIEDMAN