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6. 放置状態の数学的問題
ここに掲げてある問題だけが放置されたというわけではないが...
思いついたが,解決できないまま放置してしまった問題も多い.
そもそも問題が悪くて,定式化も十分にできなかったものもある.
また,部分的には解けたが,いろいろな事情で関心が薄れて,そのままになったものもある.
そのような問題をいくつか示しておこう.
このような問題であるが,
関心を持っていただけたら,あるいは,一緒に考えてもらえたら,さらには,先に進めてくださったら,幸せである.
そのような際には, yoshikaw (at) math.kyushu-u.ac.jp
まで(問題を指定した上で)ご連絡いただけるとありがたい.
a. 陰関数の定理
北大における小竹武教授の集中講義に示唆されたもの.講義のテーマは,
Nash-Moser の陰関数定理を用いての Riemann 多様体の等距離埋め込みであった.
Nash-Moser の陰関数定理は Holder 空間の階梯と,正則化作用素の組み合わせから成る.
両者の巧みなバランスを反映した近似によって陰関数定理が証明されるのである.
Hormanderによる解釈は,ほとんどBanach空間に対する抽象的な補間空間による階梯の形であり,
正則化作用素による近似は,平均空間(実補間空間)の議論とほとんど同じように見える.では,
正則化作用素によって定義される平均空間がBanach空間の階梯を定めるとしたらどうか.
こういう立場で考えてはみたが,満足なところまで進まないまま,放置されている.
詳しくは,関連ファイル(pdf)をご覧いただきたい.
b. 平均値と平均合成積
数年前に,京大数研の研究集会で講演した予稿(pdf)がある.詳しくは,それをご覧いただきたい.
平均合成積の扱いが真の問題である.定義らしいものが提案できて,いくつか命題は導ける.
しかし,解析の道具として縦横に使いこなすために必要な評価を伴う議論ができておらず,
課題は,そのような議論の体系を作り上げることである.
c. Sobolev 空間から多項式空間への射影
Sobolev は Sobolev 空間を扱った古典的著作で,Sobolev 空間から多項式空間への射影を論じている.
同様の考察は,有限要素法関連の Bramble-Hilbert の補題といわれるものでも現れる.この間の様子については,
最終講義でも問題提起をしたが,わたくしの不勉強もあって相当にいい加減であった.考え直してみても釈然とした
わけではないが,スプライン関数や節点変数に跳び付く前に検討すべきこともあるように思われ,
考察を試みた.
予想外に長文(pdf)になってしまったので,目次や索引まで付けたが,論文としての完成度があるとは言えない.
8月に改訂稿と差し替えてあるが,本質的な進歩があるとはまだ言えない.問題点ははっきりしては来たと考えている.
しかし,問題としてはまだ明確に述べてはいない.
一応,この項に入れておくが,Legendre 多項式の表現公式,むしろ,導出の原理について思うところがあり,
その趣旨の稿を用意した.より大きな文脈の一部のつもりなのだが,さて・・・.記事自体は難しくはない.ご笑覧もので
あるが,水準的には(かつての)修士論文級ではあると考えている.
d. 作用素のガンマ関数について
バナッハ空間の線形作用素のある種の族に対し,そのガンマ関数の定義の試みを論じた報告を昨年何箇所かで
話したが,問題の整理がきちんとできているわけではない.昨秋の東京理大におけるセミナー稿(pdf)を載せておく.
e. より具体的な問題
今回は見送る.別の機会にしたい.
f. 初等的なコメントとして,微積分学の基本定理について.
勤務先学園祭協賛行事の予稿として,2次方程式と知的な誠実さなる稿を用意した.参考までに.