量的緩和政策はひびの入った骨董品


量的緩和政策はひびの入った骨董品

2%インフレ目標政策失敗への途
そして、その失敗を隠している

TANAKA1942bです。「王様は裸だ!」と叫んでみたいです   アマチュアエコノミスト TANAKA1942b が経済学の神話に挑戦します        If you are not a liberal at age 20, you have no heart. If you are not a conservative at age 40, you have no brain.――Winston Churchill    30歳前に社会主義者でない者は、ハートがない。30歳過ぎても社会主義者である者は、頭がない。――ウィンストン・チャーチル       日曜画家ならぬ日曜エコノミスト TANAKA1942bが経済学の神話に挑戦します     好奇心と遊び心いっぱいのアマチュアエコノミスト TANAKA1942b が経済学の神話に挑戦します     アマチュアエコノミスト TANAKA1942b が経済学の神話に挑戦します
2013年5月8日

趣味の経済学 アマチュアエコノミストのすすめ Index
経済学の神話に挑戦します ベースマネーの増加により、マネーサプライが増加するという神話=岩田・翁論争の過ち
知恵ものたちが選んだベストアンサー 戦後最大の金融事件は進行中
FX、お客が損すりゃ業者は儲かる 仕組みの解明と適切な後始末を (2011年11月1日)

………は じ め に………
その失敗を隠している  2013年3月に就任した日銀首脳は量的・質的金融緩和政策により2%のインフレを2年以内に達成させる、と明言した。しかしこれは失敗するだろう。Tanakaは2005年秋から2006年夏にかけて「ベースマネーの増加により、マネーサプライが増加する、という神話」と題して、量的緩和政策の失敗を検証した。ベースマネーは増えたけれども、マネーサプライは増えなかった。
 Tanakaが「2年以内に2%のインフレを達成することは不可能」と主張する理由は2つ。
 @インフレ目標政策は「マネタリーベースを増やせば、トランスミッションメカニズムが働き、マネタリーベースの貨幣乗数倍(例えば8倍)のマネーストックが増える。通貨流通量が増えれば貨幣価値が下がってインフレになる」という神話に基づいている。銀行は融資のための資金は十分あるので、日銀が買いオペを進めてマネタリーベースを増やしても、それによって銀行が融資(信用創造)を増やしマネーストックが増加するわけではない。それは2001年3月19日から量的緩和政策(当座預金残高目標5兆円に)を採用してから2006年3月9日に解除するまでを振り返ってみればハッキリする。つまり、日銀が買いオペを進めてマネタリーベースを増やしてもトランスミッションメカニズムは働かず、マネーストックはマネタリーベースと同じ程度しか増加せず、CPIは大きく変わることはないであろう。
 昭和20〜30年代の経済発展途上時代とは違って、今は「ゆたかな社会(The Affluent Society)」なので銀行には十分貸付用の資金があり、債券市場も整ってきたので必要なら手持ちの国債を債券市場で売ることもできる。学生時代に当時の経済状況を勉強してそれが頭にこびりついている人たちは、頭を切り替えることにしましょう。
 A日銀が「2%のインフレを起こす」と宣言すれば、銀行は貸付金利を上げ、景気を冷やす。現在長期プライムレートは1.20%、住宅ローン変動タイプ(三菱東京UFJ銀行)は0.875%。銀行は貸付金利を期待インフレ率以上に設定する。もしも物価が2%上昇する時にそれ以下の貸付金利を設定したら、実質マイナス金利になるからだ。それでも金利を上げないとすれば、それはどこの銀行も「日銀は2%のインフレにすると言っているが、それは失敗するだろう」と日銀の発表を信用じていないからだ。市場から信頼されない政策が効果をあげるとは考えられない。 そして景気が良くなりインフレ期待が高まれば、銀行は貸付金利を上げ景気を冷やすことになる。
 2001年からの量的緩和政策ではインフレ期待が高まるまでの効果を上げることさえ出来なかった。
 ただし、今後政府・日銀首脳の発言による「依存効果」(dependence effect)(アナウンス効果)により「顕示的消費」が増大する可能性もまったくは否定できない。
各種経済指標から推移を追ってみましょう ミルトン・フリードマンはこう言っている。インフレはいつ、いかなる場合も貨幣的現象である(Inflation is always and everywhere a monetary phenomenon.) と。この言葉を尊重すれば、マネーストックが増加してインフレが起きることになる。従って、CPIが2%に近づくその前兆としてマネーストックの増加が観測されるはずだ。政府・日銀首脳は「マネタリーベースを増やせば、マネーストックが増える」という神話を信じているので、買いオペを進めてマネタリーベースを増やそうと必死になる。為替相場の変化・日経平均の動きは直接的にはインフレに影響しないのだが、長期金利に影響を与えたり、この動きから銀行貸出が増えることがあるかも知れない。経済学教育業界では「貨幣乗数」「ハイパワード・マネー」「トランスミッションメカニズム」という言葉を使っているが、金融の現場ではそれに代わるのが「オーバーローン」という言葉だ。つまり、預金額と貸出額に注目している。そしてインフレ期待が高まれば、貸出金利は上昇する。そうした動きでCPIがどうなるか?こうした各種経済指標を拾い出してみた。
 政府・日銀首脳の主張が正しいか、アマチュア・エコノミストの読みが正しいか?前回は量的緩和政策が失敗してから、それを検証したものだが、今回は政策の進行を時間と共に推移を追いかけてみることにした。アマチュア・エコノミストの主張が間違っていて、景気が上向きになると良いのですが、どうなるでしょうか?これは好奇心と遊び心で作っている趣味のホームページです。視野狭窄にならず、余裕をもった気持ちで、各種経済指標を読みながら、ハラハラドキドキしてみましょうよ。 経済を見るのことが面白くなってくると思います。「趣味は経済学です」という人が増えてくると楽しいですね。ただしTanakaの大腸癌の具合によっては中断もあるかも知れませんので、この点はお許しください。(2013年5月8日)
数字を読んでイッパイ感じて下さい。何も感じない人は、ごめんなさい、さようなら
 各 種 経 済 指 標 
<表1 マネタリーベース マネーストック 所要準備額 CPI 等関係表>
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 <●!----->
年月 ベース 伸率 ストック 伸率 当預 準備 超過 長プ 短プ 預金 貸出 CPI コア コアコア 為替 日経平均
2012.10 127.9 22.1 1,129.0 2.0 37.6 7.7 29.9 1.25 1.475 587.4 422.3 -0.4 -0.2 -0.6 78.97 8,928.29
11 124.4 -3.0 1,130.4 2.0 35.5 27.8 1.20 590.0 423.0 -0.2 80.79 9,446.01
12 128.1 18.2 1,136.7 4.4 42.9 7.8 35.1 595.7 428.7 -0.1 -0.3 83.58 10,395.18
2013.01 128.8 6.8 1,137.6 2.3 37.7 7.9 29,8 593.7 426.9 -0.3 -0.8 89.16 11,138.66
02 132.8 44.4 1,136.7 4.0 38.9 31.0 1.15 596.7 428.8 -0.7 -0.9 93.17 11,559.36
03 138.9 72.3 1,144.6 3.3 47.9 40.0 613.3 436.1 -0.9 -0.5 -0.8 94.79 12,397.91
04 146.1 82.3 1,146.8 2.4 58.6 8.0 50.6 1.20 613.9 436.6 -0.7 -0.7 97.70 13,860.86
05 157.0 137.7 1,152.0 2.5 62.9 54.9 1.25 615.9 430.7 -0.3 -0.1 -0.4 101.08 13,774.54
06 164.6 75.5 1,155.0 2.5 74.1 8.1 66.0 1.30 618.3 434.2 0.2 0.3 -0.3 97.33 13,677.32
07 168.9 37.1 1,156.3 1.8 72.6 64.5 1.35 610.8 434.0 0.7 0.5 -0.2 99.75 13,668.32
08 173.7 40.3 1,159.5 2.7 78.3 70.2 1.30 610.4 434.6 0.9 0.7 -0.1 97.87 13,388.86
09 181.5 69.4 1,162.6 3.6 87.2 79.2 616.6 439.0 1.1 0.6 0.0 99.28 14,455.80
10 183.8 16.0 1,167.8 4.1 90.5 82.4 1.20 612.0 435.5 0.8 0.2 97.82 14,327.94
11 192.5 74.7 1,171.0 2.7 89.8 81.7 616.1 438.2 1.5 1.1 0.5 99.79 15,661.87
12 187.6 5.8 1,174.9 3.7 96.8 8.2 88.6 1.25 620.3 443.0 1.6 1.2 0.6 103.41 16,291.31
2014.01 201.5 70.6 1,178.1 3.5 98.7 90.5 617.4 440.8 1.4 1.3 0.7 103.94 14,914.53
02 210.9 56.8 1,177.7 1.0 101.7 93.5 1.20 619.3 440.8 1.5 0.8 102.16 14,841.07
03 213.1 33.6 1,174.5 0.8 114.9 106.7 634.0 446.9 1.6 0.7 102.27 14,827.83
04 215.9 23.1 1,178.8 2.4 120.8 8.3 112.5 630.5 442.1 3.4 3.2 2.3 102.51 14,304.11
05 220.5 37.4 1,182.5 2.5 122.5 114.2 629.1 442.6 3.7 3.4 2.2 101.64 14,632.38
06 226.8 32.9 1,182.9 2.5 137.2 128.9 631.8 443.8 3.6 3.3 2.3 102.05 15,162.10
07 236.3 42.6 1,185.2 2.7 138.5 130.2 1.15 623.7 442.6 3.4 101.73 15,620.77
08 243.1 34.2 1,188.6 3.3 138.2 129.9 625.3 443.5 3.3 3.1 102.96 15,424.59
09 244.7 21.2 1,192.6 3.7 147.3 139.0 631.4 448.0 3.2 3.0 107.24 16,173.52
10 256.6 47.3 1,197.5 4.0 153.5 8.4 145.1 625.9 446.3 2.9 2.9 2.2 108.06 16,413.76
11 268.6 44.3 1,204.6 5.1 153.1 8.5 144.6 635.0 442.9 2,4 2.7 2.1 116.21 17,459.85
12 268.0 32.4 1,207.9 3.2 162.1 8.6 153.5 1.10 638.6 453.9 2.5 119.31 17,450.77
2015.01 277.3 50.2 1,207.6 2.0 164.6 156.0 1.05 636.9 451.1 2.2 118.30 17,674.39
02 285.7 43.2 1,210.0 2.4 166.5 8.5 158.0 1.15 638.9 452.2 2.2 2.0 2.0 118.56 18,797.94
03 289.6 17.9 1,212.6 2.6 182.0 8.6 173.4 653.2 457.8 2.3 2.2 2.1 120.39 19,206.99
04 294.4 21.6 1,215.4 2.5 189.9 8.7 181.2 651.1 452.8 0.6 0.3 0.4 119.55 19,520.01
05 303.2 42.1 1,222.0 6.3 192.5 183.8 655.1 454.3 0.5 0.1 120.69 20,563.16
06 307.2 17.0 1,222.5 0.9 206.2 197.5 655.0 456.6 0.4 0.6 123.75 20,235.73
07 313.1 25.6 1,226.1 3.7 204.5 196.2 650.1 457.7 0.2 0.0 123.24 20,585.24
08 322.1 41.0 1,230.5 4.5 210.8 202.1 639.5 457.6 -0.1 0.8 123.23 18,890.48
09 332.5 46.3 1,230.6 0.1 218.0 209.3 1.10 652.9 462.1 0.0 0.9 120.29 17,388.15
10 338.9 16.2 1,228.2 1.9 223.5 214.8 649.1 460.2 0.3 0.7 120.06 19,083.10
11 343.7 43.5 1,234.6 1.9 221.7 213.0 654.9 462.5 0.1 0.9 122.53 19,747.47
12 346.4 7.9 1,235.0 0.4 230.6 8.8 221.8 654.6 467.2 0.2 0.8 121.92 19,033.71
2016.01 355.1 32.1 1,239.6 3.1 232.2 223.4 653.3 466.2 0.0 0.0 0.7 118.31 17,516.30
02 365.9 36.6 1,242.5 2.8 234.0 225.2 1.00 663.1 464.1 0.3 0.8 115.09 16,026.76
03 371.7 20,6 1,245.4 2.9 245.9 8.9 237.0 0.95 679.3 469.7 -0.1 -0.4 0.7 113.07 16,758.67
04 374.1 8.2 1,253.7 2.8 254.1 9.0 245.1 682.7 464.9 -0.3 0.5 109.97 16,666.05
05 379.7 19.6 1,255.7 5.7 256.0 9.1 246.9 684.8 465.1 -0.5 109.06 17,234.98
06 386.8 24.8 1,258.2 2.4 272.2 263.1 683.6 467.1 -0.4 105.49 15,575.92
07 392.6 19.4 1,260.9 2.8 269.3 260.2 0.90 680.1 467.2 -0.5 0.3 103.65 16,569.27
08 400.8 28.3 1,263.4 2.3 272.9 263.8 0.95 681.2 467.8 -0.5 0.2 101,27 16,887.40
09 406.5 18.6 1,267.1 3.6 279,4 270.3 684,8 472.2 0.0 101.94 16,449.84
10 412.2 17.9 1,270.8 3.5 284.9 9.2 275.7 686.1 470.5 0.1 -0.4 0.2 103.82 17,425.02
11 420.2 26.0 1,275.7 4.7 282.1 9.3 272.8 693.5 473.1 0.5 0.1 107.62 18,308.48
12 429.8 28.1 1,278.8 2.8 297.5 9.4 288.1 694.6 478.1 0.3 -0.2 0.0 115.90 19,114.37
2017.01 436.4 20.1 1,282.8 3.8 294.1 284.7 695.0 475.3 0.4 0.1 0.2 114.75 19,041.34
02 441.4 14.7 1,287.0 4.1 294.2 284.8 697.1 476.0 0.3 0.2 0.1 113,07 19,118.99
03 444.8 9.6 1,290.5 3.3 307.0 9.5 297.5 710.0 480.9 0.2 -0.1 113.01 18,909.26
04 448.5 10.5 1,291.1 2.2 317.2 9.7 307.5 714.6 477.3 0.4 0.3 0.0 110.06 19,197.74
05 454.1 16.1 1,293.3 2.1 314.2 304.5 715.0 477.0 0.4 112.26 19,650.57
06 453.0 -2.9 1,297.7 4.1 321.9 312.2 713.4 478.0 110.91 20,033.43
07 454.5 4.2 1,301.8 3.8 319.2 309.5 1.00 711.8 477.8 0.5 0.1 112.39 19,925.18
08 466.1 35.1 1,304.8 2.9 322.2 312.5 713.0 477.2 0.7 0.7 0.2 109.91 19,646.24
09 470.9 13.1 1,309.0 3.9 326.0 316.3 713.5 481.0 111.90 20,356.28
10 473.6 7.1 1,312.8 3.6 326.1 9.8 316.3 716.4 479.0 0.2 0.8 112.96 22,011.61
11 476.3 4.7 1,316.5 3.4 320.6 310.8 721.6 480.7 0.6 0.9 0.3 112.99 22,724.96
12 479.3 6.8 1,315.6 -0.6 326.6 9.9 316.7 719.8 485.4 1.0 112.95 22,764.94
2018.01 477.6 -4.1 1,318.1 1.9 322,3 312.4 720.8 484.0 1.4 0.4 110.77 23,098.29
02 481.5 10.1 1,319.9 1.6 320.6 9.8 310.8 723.0 483.5 1.5 1.0 0.5 107.90 22,068.24
03 484.3 7.3 1,321.8 1.8 329.7 319.9 734.8 488.7 1.1 0.9 106.00 21,454.30
04 483.3 -2.5 1,326.2 4.1 338.7 10.1 328.6 743.7 487.5 0.6 0.7 0.4 107.52 22,467.87
05 489.9 17.6 1,329.7 3.2 334.1 324.0 742.9 486.1 0.7 0.3 109.70 22,201.82
06 488.3 -3.7 1,332.5 2.5 341.9 331.7 740.4 489.8 0.8 0.2 110.03 22,304.51
07 489.2 2.3 1,334.7 1.9 339.2 329.1 738,9 489.6 0.9 0.3 111.48 22,553.72
08 497.1 21.2 1,337.1 2.1 341.3 10.0 331.3 737.8 489.3 1.3 0.9 0.4 111.06 22,865.15
09 497.2 0.2 1,340.5 2.9 342.3 332.3 740.5 493.9 1.2 1.0 111.98 24,120.04
10 501.0 9.6 1,342.4 1.7 344.4 334.4 739.4 491.5 1.4 0.4 112.78 21,920.46
11 506.0 12.7 1,343.0 1.0 338.5 328.5 744.6 494.2 0.8 0.9 0.3 113.38 22,351.06
12 501.0 -4.2 1,343.9 1.1 337.5 327.5 743.7 498.5 0.3 0.7 112.57 20,014.77
2019.01 500.8 -0.4 1,345.8 1.5 335.3 10.1 325.2 741.6 495.6 0.2 0.8 0.4 108.92 20,773.49
02 503.5 6.5 1,348.2 2.4 333.3 10.0 323.3 742.3 495.6 0.7 110.35 21,385.16
03 503.0 -1.0 1,350.7 3.3 340.9 10.1 330.8 756.0 501.9 0.5 0.8 111.21 21,205.81
04 500.8 -5.2 1,355.2 4.3 346.6 10.3 336.3 757.7 502.0 0.9 0.9 0.6 111.66 22,258.73
05 507.1 16.3 1,359.3 4.0 346.8 336,5 757.8 499.6 0.7 0.8 0.5 109.85 20,601.19
06 510.1 7.2 1,358.7 -0.6 354.4 344.1 753.7 501.5 0.6 108.06 21,275.92
07 509.7 -1.0 1,360.7 1,8 349.2 338.9 0.95 753.8 500.8 0.5 0.6 108.24 21,521.53
08 510,0 0.7 1,363.4 2.5 348.1 337.8 753.1 500.9 0.3 0.5 106.27 20,625.16
09 511.9 4.7 1,366.7 3.0 351.6 341.3 754.8 503.6 0.2 0.3 0.5 107.48 21,755.84
10 514.8 6.8 1,365.5 2.0 354.6 344.3 757.8 502.3 0.4 0.7 109.12 22,977.04
11 518.6 9.3 1,372.7 3.8 347.7 10.4 337.4 761.8 504.3 0.5 0.5 0.8 108.79 23,293.91
12 516.9 0.5 1,374.5 1.7 347.9 337.6 758.5 507.5 0.8 0.7 0.9 109.15 23,656.62
2020.01 516.6 -1.9 1,377.0 2.2 344.8 10.5 334.3 760.8 507.0 0.7 0.8 0.8 109.28 23,205.18
02 521.1 12.4 1,381.3 3.8 344.7 10.4 334.3 762.8 507.3 0.4 0.6 0.6 109.97 21,142.96
03 517.7 -7.7 1,387.0 5.0 343.6 10.5 333.1 778.1 512.8 0.4 107.29 18,917.01
04 514.6 -6.8 1,395.5 7.5 353.5 10.7 342.8 794.1 522.0 0.1 -0.2 0.2 107.93 20,193.69
05 526.8 32.4 1,414.1 17.2 361.8 11.0 350.8 1.05 818.6 531.6 0.4 107.29 21,877.90
06 539.7 33.6 1,438.3 23.3 380.7 11.2 369.5 821.5 535.4 0.0 107.56 22,288.14
07 559.8 55.2 1,449.7 8.9 390.4 11.3 379.1 820.4 535.2 0.3 106.70 21,710.00
08 589.6 23.0 1,460.9 9.4 396.0 384.7 824.6 534.6 0.2 -0.4 -0.1 106.04 23,139.76
09 585.5 39.1 1,468.1 6.1 418.1 11,4 406.7 825.7 534.2 0.0 -0.3 0.0 105.69 23,185.12
10 597.9 28.7 1,471.5 2.7 425.9 424.5 825.7 533.2 -0.7 -0.3 -0.2 105.22 22,977.13
11 601.4 7.3 1,476.4 3.6 422.0 410.5 833.5 535.0 -0.9 -0.9 -0.3 104.43 26,433.62
12 610.1 22.1 1,479.0 2.5 431.9 11.6 420.3 832.2 534.5 -1.2 -1.0 -0.4 103.89 27,441.17
2021.01 613.0 5.8 1,488.3 4.9 430.5 11.7 418.8 834.9 534.2 -0.6 -0.6 0.1 103.59 27,663.39
02 619.7 14.1 1,495.0 5.3 429.9 418.2 837.9 536.0 -0.4 -0.4 0.2 105.37 28,996.01
03 625.2 11.2 1,489.6 7.9 449.6 11.8 437.8 854.0 537.0 -0.2 -0.1 0.3 108.65 29,108.80
04 647.9 53.6 1,508.2 7.8 464.0 12.0 452.0 859.3 535.6 -0.4 0.2 109.13 28,812.63
05 652.1 7.9 1,508.5 4.2 466.7 12.1 454.6 859.3 535.6 -0.1 0.1 -0.2 109.11 28,860.08
06 647.9 -7.4 1,511.6 3.0 468.2 456.1 856.8 533.4 0.2 0.2 110.11 28,791.56
07 644.4 -6.3 1,515.5 3.2 466.3 454,1 854.4 533.6 -0.3 -0.2 -0.6 110.17 27,283.59
08 653.3 17.8 1,517.7 2.4 468.4 456,1 855.5 532.8 -0.4 0.0 -0.5 109.84 28,089.54
09 648.8 -7.9 1,520.0 2.0 474.8 462.7 854.1 534.9 0.2 0.1 110.22 29,452.66
10 651,3 4.7 1,525.4 4.3 476.1 463.9 856.9 533.6 0.1 0.1 -0.7 113.13 28,892.69
11 652.5 8.8 1,523.1 2.2 479.1 457.0 834.9 534.3 0.6 0.5 -0.6 114.02 27,821.76
12 662.5 8.8 1,531,0 2.2 478.0 465.9 859.2 537.9 0.8 0.5 -0.7 113.61 28,791.71
2022.01 668,9 12.2 1,536.5 4.4 479.1 459.7 861.8 536.4 0.5 0.2 -1.1 114.85 27,001.98
02 670.5 3.0 1,541,1 3.3 468.9 456.8 863.8 538.6 0.9 0.6 -1.0 115.20 26,526.82
03 678.1 14.5 1,545,2 3.3 486.1 473.9 875.8 543.6 1.2 0.8 -0.7 118.51 27,871.43
04 683.1 9.1 1,549,0 3.0 492.2 12.5 479.6 883.5 542.4 2.5 2.1 0.8 126.22 26,847.90
05 674.3 -14.3 1,550,0 0.5 481.1 468.6 883.5 542.4 2.5 2.1 0.8 128.88 27,279.80
06 670.9 -6.0 1,555,1 4.3 485.6 473.1 1.2 882.0 547.0 2.4 2.2 1.0 133.80 26,393.04
07 663.5 -12.4 1,559,3 3.4 473.4 460.9 882.8 549.0 2.5 2.4 1.2 136.71 27,801.64
08 653.3 -16.9 1,543,2 3.1 458.3 445.8 882.8 550.7 3.0 2.9 1.6 135.24 28,091.53
09 629.2 -36.2 1,564,8 1.5 435.4 422.9 1.25 877.9 554.8 3.0 1.8 143.29 25,937.29
10 608.4 -33.0 1,565.6 1.0 428.3 415.8 884.3 556.2 3.7 3.6 2.5 147.01 27,587.46
11 616.5 17.0 1,570.3 3.5 422.7 12.6 410.1 892.6 557.7 3.8 3.7 2.8 142.82 27,968.99
12 623.0 -1.9 1,570.7 0.6 438.3 425.8 1.40 885.0 561.9 4.0 4.0 3.0 135.42 26,094.50
2023.01 643.1 43.8 1,572.9 2.3 450.0 437.4 890.0 561.5 4.3 4.2 3.2 130.34 27,327.11
02 646.4 -1.6 1,575.2 1.4 456.5 443.9 891.9 562.7 3.3 3.1 3.5 132.59 27,445.56
03 664.8 13.6 1,577.9 2.2 473.3 460.7 908.7 565.7 3.2 3.8 133.85 28,048.28
04 660.5 -7.5 1,580.3 480.2 467.3 915.8 565.9 3.5 3.4 4.1 133.33 28,856.44
05 660.1 -0.7 1,583.8 471.1 458.1 917.0 566.0 3.2 3.2 4.3 137.19 30,887.88
06 658.0 -3.8 1,586.6 2.3 475.7 13.0 462.7 1.30 910.8 567.5 3.3 3.3 4.2 141.16 33,189.04
07 651.1 -11.8 1,587.8 1.1 455.3 442.3 912.6 568.7 3.1 4.3 140.84 33,172.22
08 667.4 19.4 1,590.8 2.0 474.0 461.1 1.40 914.4 569.7 3.2 144.72 32,619.34
09 676.1 31.5 1,591.6 0.9 475.5 462.5 1.45 908.0 572.8 3.0 2.8 4.2 147.75 31,857.62
10 679.6 6.4 1,594.7 2.0 478.6 465.6 1.50 911.4 573.0 3.3 2.9 4.0 149.53 30,858.85
11 681.9 4.1 1,597.0 1.4 469.6 456.6 1.60 921.5 576.4 2.8 2.5 3.8 149.84 33,846.88
12 680.3 2.8 1,596.4 2.1 472.1 452.1 1.60 911.9 580.3 2.6 2.3 3.7 144.69 33,464.17
2021.01 673.0 -12.1 1,598.0 1.8 468.3 455.3 1.60 916.4 580.4 2.2 2.0 3.5 146.65 36,286.71
02 668.6 -7.6 1,593.2 467.3 454.3 1.50 918.4 582.4 2.8 2.8 3.2 149.39 39,166.19
03 670.6 3.6 1,606.8 486.8 13.1 473.7 1.60 936.5 587.3 2.7 2.6 2.9 149.63 40,369.44
04 676.6 11.4 1,612.8 1.6 495.2 13.2 482.0 1.70 943.8 587.8 2.5 2.2 2.4 153.43 38,274.05
05 668.0 -14.3 1,604.2 -1.6 482.2 469.0 940.7 589.7 2.5 2.5 2.1 156.13 38,487.90
06 664.2 -6.5 1,601.8 487.6 474.4 1.80 937.6 593.3 2.8 2.6 2.2 157.82 39,583.08
07 664.7 0.8 1,603.0 1.3 485.9 472.7 937.0 593.8 2.7 1.9 157.74 39,101.82
08 666.7 2.4 1,604.0 0.5 485.9 476.7 1.70 1.62 935.5 593.4 3.0 2.8 2.0 146.23 38.647.75
09 669.3 6.1 1,604.5 0.7 489.0 475.9 1.63 930.0 593.8 2.5 2.4 2.1 143.22 37.919.55
年月 ベース 伸率 ストック 伸率 当預 準備 超過 長プ 短プ 預金 貸出 CPI コア コアコア 為替 日経平均
 

↑ 日銀は当初目標とした2%インフレを達成した。
↑ 日銀はマネタリーベースを減らすという、量的緩和と反対の事を始めた。数字を見ないので誰も気付かない。


ベース=マネタリーベース 日本銀行関連統計 (平均残高・季節調整済、兆円)
伸率=マネタリーベース伸率 日本銀行関連統計 (前期比(月)伸び率、年率)
ストック=マネーストックM3 日本銀行通貨関連統計 (残高・季節調整済、単位・兆円)
伸率=マネーストックM3伸率 日本銀行通貨関連統計 (前期比(月)伸び率、年率)
当預=日本銀行当座預金残高・準備預金残高 日本銀行関連統計(準備預金積み期間中の平均残高・兆円)
準備=所要準備額 日本銀行関連統計(準備預金積み期間中の平均残高・兆円)
超過=超過準備額 日本銀行関連統計(準備預金積み期間中の平均残高・兆円)
長プ=長期プライムレート 預金・貸出関連統計 長期プライムレート(%)
短プ=短期プライムレート 預金・貸出関連統計 短期プライムレート(最頻値%)
預金=全国117銀行実質預金 全国銀行協会 全国銀行 預金貸出金速報(月末残高・兆円)
貸出=全国117銀行貸出 全国銀行協会全国銀行 預金貸出金速報(月末残高・兆円) 
CPI=消費者物価指数(consumer price index) 総務省統計局総合指数(前年同月比)
コア=消費者物価指数(consumer price index) 総務省統計局生鮮食料を除く総合(前年同月比)
コアコア=消費者物価指数(consumer price index) 総務省統計局食料・エネルギーを除く総合(前年同月比)
為替=USドル/円 USドル/円の為替レートの推移(円)
日経平均=日経平均 日経平均株価の推移(円)
「マネタリーベース伸率」に関して訂正値が発表されたので2014年分だけ(それ以前は単月不明)訂正しました。詳しくは「マネタリーベース(2014年12月)」(2015年1月) および「マネタリーベース計数の季節調整値改定について」を参照してください。
ここでは「マネタリーベース」は「季節調整済」を採用しています。このため実数に大きな変化がなくても、季節調整済で大きく変化したり、逆に実数の大きな変化があっても季節調整済で変化が小さくなる場合があります。「季節調整済」の意味をご理解下さい。
日本銀行のオペレーションに関しては、東京短資鰍フデータライブラリを参照してください。
公表後、訂正値が発表されても訂正しきれずに速報値のままの場合もあります。ご了承ください。

 推 移 を 追 っ て み ま し ょ う 
銀行はインフレになるとは判断していない  短期プライムレートよりも長期プライムレートの方が金利が安い。銀行は「日銀の買いオペがなくても、貸付資金は十分あり余っています。借りる人が少ないので長期借りる人を金利で優遇します。インフレは起きないと思いますので金利はこのままです」と判断しているようだ。 円安・株高の影響でこれから銀行貸出が増えるかも知れない。その傾向が高まれば金利が高くなるだろうが、今はそこまでの変化は見られない。   (2013年5月8日)
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「インフレ・ターゲット論は日銀への”嫌がらせ”」=小宮隆太郎  日銀あるいは政府、あるいは両者が、ゼロ%よりも上のインフレ・ターゲットを設定すべきだと主張する人が多い。現状では要するに日銀に対する”嫌がらせ”のようなものである、と私にはみえる。それは、現状では政府あるいは首相に、1%、あるいは2%以上の「経済成長率ターゲット」を設けよ、という主張と同じようなものである。 いずれもできそうもないからである。ターゲットを設けても守らなくても構わないのであれば何のことはないが、インフレ・ターゲット論者は、ターゲットを設けて「達成できなかったときには責任をとれ」と、身構えてターゲット論を主張しているわけである。
 金融政策に携わる人々は、インフレ率をゼロ以上にしたいと思い、政府の経済政策に携わる責任者達は成長率を少なくともプラスに、できれば2%か3%にしたいと思っているに違いない。しかしそのための方法がないのが現状である。そういう現状でゼロ以上のインフレ・ターゲットを設定せよというのは、要するに金融政策を担当する日銀に対する”嫌がらせ”に過ぎない。 インフレ・ターゲットをゼロ以上にせよと言っている人が提案している金融政策の具体案も、説得力のあるものではない。 (小宮隆太郎『金融政策論議の争点』296Pから)
 日銀にインフレ・ターゲットの設定を求める声が高いが、現在の日本では、それは総理大臣に「経済成長率ターゲット」の設定を求めるのと同様に、一種の「嫌がらせ」に過ぎない。物価上昇率をプラスにすること、実質成長率をせめて2%くらいにすることが望ましいことは、誰も百も承知のことだが、そのための手段がなかなか見つからないのが現状である。 (小宮隆太郎『金融政策論議の争点』310Pから)
『金融政策論議の争点』小宮隆太郎・白川方明・吉川洋・岩田規久男・岩田一政・香西泰・伊藤隆敏・深尾光洋他 日本経済新聞社 2002.7.8
マネタリーベースが高い伸び率を示している  円安・株高も進んでいる。今後の動きに注目しよう。(2013年5月15日)
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量的緩和策は「隠れた補助金」=小宮隆太郎  日銀の中長期国際買入れオペに「札割れ」がなく、応札倍率が結構高いのは、応札したものが落札すれば一般の流通市場で国債を売却するよりも有利だからで、そこに応札者にとって「妙味」があるからではなかろうか。現先取引等について「札割れ」が頻発するのは、日銀が「量的緩和」政策で余剰のリザーブを遮二無二供給しようとするときに、現先取引のような短期資金の貸借取引には、そのような「妙味」がないからであろう。 そして短期国債の買い切りオペは、両者の中間なのであろう、と推測する。
 以上のことから私が理解したもう一つのことは、現在の日本の短期金融市場の仕組みでは、長期国債の買い切りオペの金融政策上のメリットは、それによって差し当たり確実にリザーブが供給できる、ということであろう。 つまり長期国債の買い切りオペは少なくともこれまでのところ、1回も「札割れ」を起こしていない。これに対して短期の現先等による資金供給(オペ)は、頻繁に「札割れ」を起こしている。また短期のオペでは、満期がすぐに到来するから繰り返し頻繁にオペを実施しなければならず、その事務量が多大になり、日銀側にとっても民間の銀行・証券会社の側にとっても煩雑である、という問題もあるらしい。ただし、後者の場合「札割れ」の頻発は、一つには前者によって民間銀行の必要とするリザーブが供給されてしまうからであろう。 そして日銀が目指す「超過準備」の額があまり大きくなると、やがては長期債オペについても「札割れ」が生じるようになるかもしれない。
 もしいま述べた推測が正しいとすれば、「量的緩和」政策のもとで巨額の「超過準備」の供給・維持は、前記の応札者にとっての「妙味」、つまり一種の「隠れた補助金」(implicit subsidies)によって支えられているものである、と解釈される。もしそうであれば、それは有意義な「補助金」なのか、ということが問われるだろう。 (小宮隆太郎『金融政策論議の争点』287Pから)
『金融政策論議の争点』小宮隆太郎・白川方明・吉川洋・岩田規久男・岩田一政・香西泰・伊藤隆敏・深尾光洋他 日本経済新聞社 2002.7.8
 Tanakaは 2005年7月18日に 「量的緩和政策は不良債権処理支援策だった? そして馬は水を飲まなかった」 と書いています。
(2013年5月22日)
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経済学の教科書が説明する、信用創造のメカニズム 金融経済学で説明される「信用創造のメカニズム(トランスミッションメカニズム)」について書いてみよう。幾つかの教科書を参考に、「信用創造のメカニズム」を易しく書いてみる。

 たとえば日本銀行がA銀行に1,000万円を供給したとする。A銀行は1,000万円の10%である100万円を準備金として日銀当座預金に預け入れ、 残りの900万円をB社に融資する。 900万円の貸付を受けたB社は、それをC社への支払に充てる。C社は受け取った900万円をすべてD銀行に預けたとしよう。この場合法定準備率を10%と仮定しているから、D銀行は810万円を貸し付けることができる。 D銀行から810万円の融資を受けたE社はF銀行へ全額預けると、F銀行は81万円を準備金として日銀当座預金に入金し、729万円を融資することができる。 このような銀行の貸付行動により、預金通貨が創造されていく。
 1,000万円の本源的預金によって創造される派生的預金は、
  派生的預金=1000(0.9+0.9²+0.9³+……)
になる。ここで、( )の中は、初項0.9、公比0.9の無限等比数列の和だ。これを計算すれば、創造される派生的預金は9,000万円であることが導かれる。 これに本源的預金1,000万円を加えれば、預金総額は1億円になる。このケースでは、本源的預金の10倍の預金が創造されている。この倍数(ここでは、10)は信用乗数とか貨幣乗数と呼ばれている。
 これを貨幣供給の式として、M ,HM ,D ,Cp ,R ,m をそれぞれ貨幣量、ハイパワードマネー、預金、民間部門保有の現金、銀行準備、貨幣供給乗数とすれば、次のように示される。
  M=(1+Cp/D)÷{(Cp/D)+(R/D)}XHM=m・HM
 この式は、ハイパワードマネーHMが貨幣乗数mを掛けた数字だけ大きくなり、貨幣量Mとなることを表している。
 ミルトン・フリードマンはこう言っている。インフレはいつ、いかなる場合も貨幣的現象である(Inflation is always and everywhere a monetary phenomenon.) と。この言葉を尊重すれば、この様にしてマネーストックが増加してインフレが起きることになる。
 また貨幣数量説によれば MV=PY ・・・・・・ただし、M=貨幣量 V=貨幣の流通速度 P=物価水準 Y=実質国民所得
となり、M=貨幣量が増加すればP=物価水準を押し上げ、Y=実質国民所得を増加させる。

 このように教科書の説明では、「ハイパワードマネーの増減によってマネーストックが決まる。日銀は日銀当座預金残高を増減させることが出来るので、結果としてマネーストックを増減させることできる」 となっている。このため「日銀は買オペを増加させ、ハイパワードマネーを増減させ、インフレを2%に調整する政策を取るべきだ」とのインフレターゲット論が出てくることになった。
(2013年5月29日)
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Tanakaが説明する、信用創造のメカニズム  銀行が企業・個人に融資することによりマネーストックは増加する。その仕組みはつぎのようになっている。 先ずA銀行がB企業に10億円融資する場合を考えてみよう。教科書の説明と違って、日銀の資金提供とか預金受け入れは必要ない。 銀行が企業に10億円融資する場合は、企業の口座に10億円入金する。ただし現金は必要ない。企業の通帳に10億円入金と記入するだけだ。後は銀行の帳簿を操作する。
 銀行が貸出を行う場合、貸出金は、その銀行に設けられた借り手の預金口座に振り込む形をとる。すなわち、銀行から見れば、貸出とは、直ちには貸出額に相当する数字を預金口座にに記入することにすぎない。したがって、この限りでは紙とインクさえあれば、銀行は、いくらでも貸出を実行できることになる。 『金融{新版}』144P▲
 A銀行のバランスシートで、
 資産勘定で「B企業へ貸出 10億円」  負債勘定で「B企業の預金 10億円」 と変化する 
 つぎにA銀行は日銀当座預金に準備金を入れなければならない。その金額は10億円の約1.3%。 詳しくは 準備率▲ を参照のこと。
 A銀行は日銀当座預金に15日までに1,300万円を入金しなくてはならない。ただしこれはB企業が1ヶ月間ずっと預金したままの場合で、たとえば銀行営業日数20日の月に1日だけ入金し、すぐに引き出すと、準備金は1,300万円の20分の1、つまり65万円となる。 通常、企業は支払の必要から融資を受けるので、長く入金したままにしておくことは考えられない。(詳しい仕組み・計算はここでは省略)
 このケースでは10億円の融資に対して、その準備金=日銀当座預金に15日までに入金すべきは65万円でしかない。
 預金受け入れも日銀からの資金提供も必要とせず、10億円融資してもこの程度の準備金を半月遅れ程度で入金すればいい。そして日銀当座預金は利子が付かないので、銀行はなるべく必要な金額だけにして、余分な資金は入金したがらない。
 もしも、銀行が15日までに65万円用意できなければコール市場で借りればいい。その金利は年0.1%。ただし65万円を借りる事はできない。この市場での最小取引単位は5億円だからだ。65万円などという、はした金は取り引きすることができない。 銀行が行う融資の増減によりマネタリーベースの一部である日銀当座預金残高が増減し、その結果マネタリーベースが増減する。
 このため「貨幣乗数」という言葉を使うと、マネタリーベースが膨らんでマネーストックになる、と考えがちになるが、実際は逆、マネーストックの増加が準備率によってその何分の1かがマネタリーベースの一部、日銀当預としてして必要になるのだ。
  M=(1+Cp/D)÷{(Cp/D)+(R/D)}XHM=m・HM
 この式は、貨幣量Mの増減によってハイパワードマネーHM(マネタリーベース)が増減し、それが何分の1になったかを貨幣乗数mと表現することを表している。
「貨幣乗数」とか「ハイパワードマネー」とか「信用創造プロセス」「トランスミッションメカニズム」との用語は「マネタリーベースの増減によってマネーストックが増減する」との神話を説明する言葉であって、この神話が崩れると意味をなさなくなる。いずれこの言葉は忘れ去られるであろう。
 なお現在の準備率は1991年に改訂されたもので、1986年から1991年までの準備率は現在の約2倍、0.25〜2.5%。従って上記ケースで最高の準備率を適用すれば125万円必要となる。それでも準備率10%で説明するのは、あまりにも実際とかけ離れ過ぎている。 アメリカではFRBが8〜14%の間で決定する。従って「例えば10%」というのはアメリカの例を気安く引用したと考えられる。
『金融』{新版}池尾和人・岩佐代市・黒田晁生・古川顕 有斐閣         1993.2.20
株価の乱高下  日銀の買いオペによりマネタリーベースが増えているがマネーストックには大きな変化はない。「日銀が市場に資金を供給している」というのは誤りで、銀行に資金を供給している段階だ。従って「溢れた資金が株式に向かった」というのも誤り。バブルで膨らんだ株価がこのまま膨らんでいくのか、はじけるのか、それが貨幣的現象にどの様な影響を与えるのか、冷静に数字を追っていきましょう。
(2013年6月5日)
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日本の銀行はそんなに資金不足なのか?  教科書の説明する「信用創造プロセス(トランスミッションメカニズム)」では日本の銀行が資金不足で、いっぱい預金が預け入れられたり、あるいは日銀からの資金提供がなければ貸出ができないかのように思えてくる。 資金さえあれば、それを原資に貸出し、それが支払われた企業が預金し、そこでそれを原資に貸出が行われと、預金が入金されるたびに貸出が行われる。この考えに従えば、「銀行は貸出資金がないから融資ができない。資金さえあれば企業は金を借りる」となる。
 1980年代、まだ不動産投資の総量規制が始まる前、銀行は不動産担保で積極的な貸出を行っていた。このためマネーサプライの伸びは急激で、「それを抑えなかった日銀の責任でバブルが膨らんだ」との批判もあるほどだ。では銀行の融資の原資は誰が提供したのだろうか? 日銀が提供したのなら、日銀の責任は「マネーサプライの伸びを抑えなかった責任」ではなくて、「銀行に貸出資金を提供した責任だ」と非難すべきだ。そうではない、ということは日銀が貸出資金を提供したのではない、ということになる。 ではどうして、銀行は積極的に融資することができたのか?その資金はどこにあったのか?
 答えは簡単。銀行は貸出資金に不安はない。沢山の資金を持っている。あのバブルが膨らんでいるときでも、「貸出資金が不足したので、持っている株や国債を売って。貸出資金の原資とした」などという話は聞かなかった。、
昭和20〜30年代に神話は誕生した  第2次世界大戦前、世界は保護貿易政策をとり、日本・ドイツ・イタリアは工業製品の売り込み先として植民地を拡大しようとし、日本は無謀な大東亜戦争へと突っ走り始めた。保護貿易政策の犠牲者であった日本が戦後自由貿易のお蔭で急速な経済成長を遂げた。ドイツ・フランス・イギリスに比べ高い経済成長を遂げたのは政府の干渉の少ない、比較的自由な経済であったからだ、というのがTanakaの見方だ。(これに関しては「官に逆らった経営者たち」「戦後復興政策 ヨーロッパ 西も東も社会主義」)を参照してください。
 戦後、高度成長が始まるまでは確かに「マネタリーベースを増やせば、マネーストックが増える」と言える状況であった。ドイツ・フランス・イギリスは政府主導の経済で、それに比べると比較的自由な企業活動が行われた日本では活発な設備投資が行われた。このため企業の資金需要は高いものがあり、それに応える銀行も積極的に融資を行った。しかし銀行は資金不足で、企業の借入要求に応えるために積極的に資金集め獲得に苦労した。当時は@預金獲得とA日銀からの借り入れが中心であり、「オーバーローン」が続く情勢であった。当時の経済状況に関しては、「敗戦直後の経済混乱時期を振り返る」を参照してください。
新金融調節方式  1962年(昭和37)11月以降、日本銀行は銀行のオーバーローンの累増を抑制することを目的として、金融調節の手段として債券オペレーションを活用するとともに、都市銀行に対して貸出限度額を適用することにした。これが当時、新金融調節方式とよばれたものであった。
 銀行は融資のための資金を預金獲得と日銀からの借り入れに頼っていた。それが新金融調節方式になり、成長通貨は日銀の買いオペにより供給することになった。つまり、日銀が買いオペを進め、マネタリーベースを増やし、銀行はそれを資金として旺盛な企業の借り入れ要求に応え、信用創造を行い、マネーストックを増やす。
 貨幣数量説によれば MV=PY ・・・・・・ただし、M=貨幣量 V=貨幣の流通速度 P=物価水準 Y=実質国民所得 となり、M=貨幣量が増加し、V=貨幣の流通速度が早まれば、P=物価水準を押し上げ、Y=実質国民所得を増加させる。
 このように「マネタリーベースを増やすことにより、マネーストックを増やす」という方式が確立した。
 その後高度成長期に銀行も資金を蓄え、日銀の買いオペに頼らずとも貸付資金を準備することが出来るようになった。それがハッキリしたのが、前回の量的緩和政策の失敗であった。しかし、経済学教育業界ではこのことを学んでいない。未だに「マネタリーベースを増やせば、マネーストックが増える」という神話にしがみついている。
 1962年(昭和37)11月以前、新金融調節方式になる前は、銀行が積極的に預金獲得し、個人がそれに応えて預金して、それを企業が借りて設備投資・在庫投資に活用し経済が成長した。貯蓄のパラドックス(paradox of savings)と反対のことが起きていた。貨幣数量説で説明すれば、「M=貨幣量はあまり増えなかったが、V=貨幣の流通速度が早まったので、Y=実質国民所得が増えた」と考えるのが良いと思う。
株価・為替が乱高下している  量的・質的金融緩和政策が経済にどのような影響を与えるのか、市場では読み切れずに株価・為替が乱高下している。一種のバブルなのだがそのまま膨らんでいくのか、破裂するのか?マスコミをはじめ、市場関係者も「銀行にではなく、市場に」資金が溢れていると勘違いしている。そのまま間違えに気づかなければバブルは膨らみ続けることになるだろう。
 長期プライムレートは少しづつ上がり始めている。
(2013年6月12日)
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前回の量的金融緩和政策の失敗を振り返ってみる  前回量的緩和政策が行われた2001年3月から2006年3月までの各種経済指標の数字を見てみましょう。これは2006年8月14日に<ゼロ金利・量的緩和という高価な実験によって、神話理論が崩壊した>として書いたものを転載したものです。いろんなことをいっぱい感じて下さい。何も感じない人は・・・さようなら。
<表2 マネーサプライ ベースマネー 日銀当預 関係表>  単位億円
年月 M2+CD ベースマネー 日銀当預 準備額 日銀券 実質預金 銀行貸出 保有証券 日銀借入 保有現金
2001-03 6,392,524 657,361 45,394 39,516 570,388 4,768,555 4,569,652 1,745,855 1,466 90,280
06 6,476,862 669,739 50,821 40,814 577,253 4,823,743 4,472,873 1,684,400 2,404 73,522
09 6,475,139 706,356 80,824 41,121 583,735 4,807,927 4,505,649 1,592,737 2,384 78,794
12 6,617,499 794,424 108,051 41,602 643,769 4,861,746 4,482,233 1,648,653 2,633 84,748
2002-03 6,631,545 871,493 175,518 42,065 653,759 5,028,712 4,406,096 1,559,846 2,991 94,964
06 6,694,343 854,332 150,415 42,785 661,411 5,050,716 4,318,420 1,647,399 1,934 70,932
09 6,684,367 857,469 152,045 42,681 662,761 4,990,165 4,262,056 1,657,259 1,934 85,690
12 6,758,583 949,444 197,901 42,838 708,145 5,016,306 4,316,425 1,620,779 1,931 91,663
2003-03 6,742,064 966,459 228,332 42,963 695,076 5,099,779 4,232,858 1,623,753 1,631 92,912
06 6,810,246 1,027,632 288,500 43,504 696,116 5,134,280 4,123,578 1,756,592 1,631 78,216
09 6,801,714 1,036,332 296,788 43,299 696,304 5,111,600 4,137,209 1,737,657 1,631 85,099
12 6,858,148 1,074,991 299,718 43,565 731,283 5,116,754 4,138,534 1,806,980 1,411 92,860
2004-03 6,858,369 1,081,238 330,488 44,163 707,069 5,192,079 4,116,938 1,923,526 1,411 85,062
06 6,926,679 1,072,957 326,309 44,449 702,819 5,185,855 4,017,865 1,967,308 1,411 77,714
09 6,937,774 1,085,201 329,292 44,886 711,848 5,163,104 4,044,047 1,970,174 1,411 83,120
12 6,992,657 1,119,769 326,367 45,152 748,668 5,186,815 4,040,009 1,941,763 1,111 88,603
2005-03 7,002,219 1,103,301 325,719 45,380 733,042 5,254,612 4,019,572 1,988,710 0 91,082
06 7,039,373 1,091,586 319,601 45,304 727,636 5,238,27- 3,954,656 2,018,525 0 79,900
09 7,080,678 1,103,950 329,000 45,960 730,651 5,277,71- 4,041,190 2,075,487 0 80,343
12 7,131,458 1,130,466 322,486 46,294 763,121 5,264,10- 4,085,480 1,976,262 0 80,978
2006-03 7,106,945 1,092,791 304,396 46,923 743,874 5,316,00- 4,107,589 2,048,537 300 82,507
『金融経済統計月報』『日本銀行統計』などから集計
ここでの銀行とは==都市銀行、地方銀行、地方銀行U、信託銀行、長期信用銀行
M2+CD=マネーサプライ平均残高  ベースマネー=ベースマネー平均残高  日銀当預=日本銀行当座預金平均残高   準備額=法定準備額  日銀券=日本銀行券発行高平均残高  実質預金=全国銀行預金月末高  銀行貸出=全国銀行貸出金月末高   保有証券=全国銀行保有有価証券月末高  日銀借入=全国銀行日銀借入月末高  保有現金=全国銀行保有現金月末高(除く 小切手・手形・預け金)

数字を見て感じてください   インフレはいつ、いかなる場合も貨幣的現象である(Inflation is always and everywhere a monetary phenomenon.)ということを認めていれば、 「ベースマネーを増やしても、マネーサプライは増えなかったので、インフレ政策は失敗した」ということが分かり、「貨幣乗数が低下している、トランスミッションメカニズムが働かない、どうしてだろう?」と疑問を持ち、仕組みの解明に挑戦するでしょう。リフレ派軍団の人なら当然のことです。好奇心・遊び心のない人はさようなら
 似たような別の経済学教育業界ムラ社会の人の中には「ベースマネーを増やしても、マネーサプライは増えないのではないか?」と神話を疑っていた人がいたのですが、これについては別の機会に扱うつもりです。2つの閉鎖的なムラ社会は全く交流がないようです。
株価・為替が乱高下している  ここでは一喜一憂せずに、貨幣的現象の趨勢的側面に注目していきましょう。
(2013年6月19日)
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数字を読んでみましょう  「貨幣乗数が低下している、トランスミッションメカニズムが働かない、どうしてだろう?」と疑問を持ち始めれば、「マネタリーベースを増やせば、マネーストックが増える」ということが神話であることに気付くことでしょう。日銀の買いオペにより増えた資金が行き場所がなく、金利の付かない日銀当座預金に滞っている。そうすると短期金融市場で借り手の都市銀行が借りなくて、出し手の生保や地方銀行はどうしていたのだろう?という疑問が生まれれば経済学のセンスは上々。
 東短リサーチ取締役チーフエコノミスト加藤出の『日銀は死んだのか?』から引用しましょう。 さらに日本経済新聞社編『ドキュメント 惑うマネー』から<ディーラーが消えたマーケット>もどうぞ。 いずれ量的・質的金融緩和政策の社会的費用が話題になることでしょう。
短期市場参加者の縮小、撤退 量的緩和が一時的なものならば先の弊害も一時的であり深刻になる必要はないだろう。しかし、懸念されるのは、今回の量的緩和策には「強力な時間軸」がセットされている点である。 多くの市場参加者は短期市場で収益が稼げない環境が長期化すると思っている。となれば、短期セクションを維持するよりも、整理縮小によって人件費等の固定費を削減して、余剰資金を日銀当座預金に置きっ放しにする方が、はるかに有利な”運用”になってしまう。
 しかし、市場全体の人員が極端に削減されるとディーラーの金利に対する感応度は急激に低下する。それは既に起き始めている現象だが、例えば、市場レートが跳ねて歪みが生じた時に、有利な運用先があることをブローカーが連絡しても、担当者は会議中であったり、外回りの営業をしていたりして、 つかまらないことが度々ある(リストラの環境の中で皆仕事量が増加しているので、儲からない短期取引は後回しになる)。また、普段、余剰資金を日銀当座預金に眠らせっぱなしにしている金融機関の場合、それが長期化してくると、少々のレート上昇では資金運用に乗り出してこなくなってしまう。少々の利息のために不慣れな事務フローが発生するのを嫌がるからである。
 量的緩和策が実際に3〜5年以上続いた場合、市場機能がどれほど麻痺しているか、想像するのも恐ろしい。 (加藤出『日銀は死んだのか?』 46Pから)             
『日銀は死んだのか?』                          加藤出 日本経済新聞社  2001.11.12
『ドキュメント 惑うマネー』 「お金」が天下を回らない     日本経済新聞社編 日本経済新聞社  2003.03.25
コール市場 日はまた昇った 金利復活 思い万感 2006年7月27日、朝日新聞朝刊10面経済面の半ページを使ってこのような記事がありました。
 五年余り続いた日本銀行の「ゼロ金利政策」が終わり、金融機関同士がお金を短期間だけ貸し借りする「コール市場」が息を吹き返しつつあります。ゼロ金利時代は、100億円を市場で1日運用しても稼げるのは「たばこ1箱分」。取引は激減し、コール市場で仲介役を務める短資会社も泣かされてきました。市場の「黒子」とも言える短資会社のブローカーたちは、どんな思いで「復活の時」を迎えたのでしょうか。
 このようなリード文に続いて短資会社がゼロ金利、量的緩和時代に苦しかったこと、そしてやっと復活したことが書かれています。2001年3月から2006年3月までの量的緩和政策時代を含む、1999年2月から2006年7月までのゼロ金利時代、この間資本主義経済での市場のメカニズムの一部が働いていなかった。市場のメカニズムを活かすよりも戦時中不遇だったマルクス経済学者を中心に作られた経済安定本部のような経済司令塔に重点を置く、社会主義的経済政策が採られていたということです。現在も「日銀法を改定し政府・日銀一体の経済司令塔を作るべきだ」と主張する「隠れコミュニスト」も多くいるようです。
量的緩和政策は不良債権処理支援策だった?  量的緩和政策とは日銀が銀行から国債を買い、マネタリーベースを増やすことです。数字を読んでみましょう。銀行は保有債券を日銀に売りました。では保有債権はどの程度減ったのでしょうか?減っていませんね。銀行は債券市場から買い、それを日銀に高く売って利ザヤを稼いでいました。小宮隆太郎の言葉を借りれば、「隠れた補助金」(implicit subsidies)です。そしてそれは銀行の不良債権処理に使われた、つまり前回の量的緩和政策とは「銀行の不良債権処理支援策」だった、とTanakaは考えています。従って、これからも銀行は日銀の買いオペに応じていくことでしょう。
(2013年6月26日)
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神話から生まれた「岩田・翁論争」 週刊東洋経済1992年9月12日号に掲載された岩田規久男氏の 「日銀理論」を放棄せよ が発端となり、いわゆる「岩田・翁論争」が始まった。岩田論文の主旨は「日銀はベースマネーをコントロールしてマネーサプライをコントロールできる。それなのに、不況のこの時期、ベースマネーを減らし、マネーサプライを減らした。これは誤った金融政策だった。これからは公定歩合ではなく、ベースマネーに注目すべきである。」というものだった。それに対して、日銀の翁邦雄氏は「日銀はベースマネーをコントロールすることはできない」と反論した。
 Tanakaの見方は、どちらも「ベースマネーの増加により、マネーサプライが増加する」という神話の基づいた、空虚な論争であった。そしてその神話に基づいてインフレターゲット論が展開され、現在「2%インフレ政策」が実行されている。 というものだ。そこで、まずは、日銀の金融政策を批判した「岩田論文」から。
<週刊東洋経済の岩田論文=「日銀理論」を放棄せよ>  マネーサプライをベースマネーで割った比率を貨幣乗数あるいは信用乗数と呼ぶ。(中略)
 貨幣乗数が比較的安定していることは、日銀はベースマネーの供給をコントロールすることによってマネーサプライをコントロールすることができることを示している。
 図1にはベースマネーの変化率も示されているが、それは1990年第4四半期から急激に落ち込み初め、最近の三期にわたる四半期についてみるとマイナスである。 この事実と貨幣乗数の安定性とから、マネーサプライの増加率の著しい低下は戦後日本ではかつてなかった事態である。この原因はベースマネーの増加率の著しい低下によってもたらされたことが分かる。
 1年近くもの間、ベースマネーが絶対額で減少するといったことは、戦後日本ではかつてなかった事態である。それではベースマネーが絶対額で減少するといったことが起きた原因は何であろうか。
 表1はベースマネーの変化額を要因別に示したものである。表中の日銀信用とは、日銀による市中銀行貸出や市中銀行保有の手形や国債の買い取りなどを通じて供給される準備(ベースマネーの一部)のことである。
 この表は91年ころから、財政要因のうち国債要因に基づいてベースマネーの供給が大きく減少していることを示している。(中略)
 表1から分かるように、日銀はこの財政要因に基づくベースマネーの減少を相殺するように、日銀信用を増やすどころか、92年第1四半期には、日銀信用をも削減し、ベースマネーの減少を増幅させることによって、0.7%という前代未聞のマネーサプライの増加率の大幅低下を引き起こしている。これが「日銀理論」に基づく金融緩和の実態である。
 それでは、日銀はなぜ金融緩和政策に転じたといいながら、財政要因によるベースマネーの減少を日銀信用の増加によって相殺しようとしないばかりか、むしろ増幅するようなことをしているのであろうか。この不可解な日銀の行動は次ぎのような「日銀理論」に基づいている。
 日銀の『調査月報』や『金融研究』の論文によると、日銀はベースマネーをコントロールできないという。なぜならば、日本の市中銀行は法定準備を超える超過準備を持たないため、必要な準備需要は前の月の市中銀行預金の水準によってすでに決定されており、その準備需要に対して、日銀が準備供給に応じなければ、市中銀行の決済が不可能になり、大混乱が生じてしまうからである。 つまり、日銀は市中銀行の準備需要に応じて準備を供給するしかないというのである。これが「日銀理論」である。
 しかし、日銀が、日銀はベースマネーをコントロールできないと主張することは、「私たちは金融政策の手段を持っておりません」と自ら告白するに等しく、日銀自身がその存在意義を否定する自殺行為である。 最近鈴木正俊氏は『誰が日銀を殺したか』(講談社)という本を出版されたが、「それは日銀である」がこの本の問いに対する正解である。(中略)
 最近1年間のベースマネー供給の増加率だけでなく、絶対額そのものの減少は、従来の「日銀理論」だけに基づくものではないと考えない限り、91年第1・第2四半期におけるベースマネーの増加率の急低下は、日銀が地価高騰に責任を感じて、バブル退治のために金融政策を利用しようとしたからであろう。(中略)
 日銀はベースマネーをコントロールできないという「日銀理論」を直ちに放棄して、ベースマネーを手形や国債の買いオペなどによって積極的に増やすべきである。 ベースマネーを絶対額で減少させて、マネーサプライの増加率を一定以下に抑制するといった危険な賭けに挑むべきではない。(中略)
 金融政策とは「日銀理論」とはちがって、公定歩合を引き下げることではなく、ベースマネーの供給を増やすことによってマネーサプライの増加率を引き上げることをいうという当然のことを強調しておきたい。
 世間も公定歩合の上げ下げで金融政策の状況を判断することを早急にやめない限り、いつまでたっても日銀の金融政策の誤りを見抜くことはできない。今後は、金融政策の是非を判断するうえでは、公定歩合ではなく、ベースマネーに注目すべきである。
<表3 ベースマネーの要因別変化の推移> (単位 億円)
ベースマネーの変化額  財政要因(うち国債要因)   その他   日銀信用 
1987年 26,905 2,965  (▲24,983) 13,344 10,596
88年 44,139 6,087   (2,057) 12,339 25,713
89年 49,597 3,99  (▲3,587)  ▲10,259 55,864
90年 31,163 36,365  (▲50,656) 13,268  ▲18,4706
91年 ▲9,642 ▲192,454 (▲103,357) 153,426 1129,386
91(T) ▲56,116 ▲42,796 (▲22,714) 8,654 ▲21,974
91(U) 8,243 ▲22,581 (▲27,709) 14,139 16,685
91(V) ▲28,666 ▲102,948 (▲31,475) 16,525 57,757
91(W) 66,895 ▲24,129 (▲21,459) 14,108 76,916
92(T) ▲60,313 ▲35,459 (▲26,934) 16,105 ▲40,959
(出所)日本銀行「経済統計年報」、「経済統計月報」
(週刊東洋経済 岩田規久男 「日銀理論」を放棄せよ から)     『週刊東洋経済』  岩田規久男 東洋経済新報社 1992. 9.12
(T注)貨幣乗数が安定していないことは後日扱います。 短期金利ではなくマネーサプライを操作目標にした例としては、1980年前後のFRBの量的引き締めが有名ですが、 これは岩田論文の主旨とは全く違ったものでした。このことも後日扱います。
(2013年7月3日)
*     *     *     *     *     *
準備率の変更による日銀当預の変化 岩田論文の主旨は「不況である1991年には、日銀はマネーサプライを増やすべきなのに、ベースマネーを減少させマネーサプライを減少させた。 今後は、金融政策の是非を判断するうえでは、公定歩合ではなく、ベースマネーに注目すべきである」ということだろう。1991年の金融面でのTANAKAの説明はまったく違っている。「不況でマネーサプライは伸びない。そこで日銀は準備率を下げ、銀行貸出の負担を少なくしょうとした。これによりベースマネーが減少した」だ。 ここでは岩田理論を1つ1つ批判するのではなく、違った方向からみたTANAKAの説明を展開することにする。 先ず表を見て頂きましょう。数字を見て何かを感じて下さい。数字を見て何かを感じるか、何も感じないか、それが分かれ目です。数字にしても、社会の出来事にしても、皆が同じように知っていることでも、そこから何を感じるか、それで問題意識の深さが決まってくる。 ここで使うのは、この表のごく一部です。でもその前後の数字も挙げておきました。イッパイいろんなことを感じて下さい。
<表4 マネーサプライ ベースマネー 日銀当預 関係表>  単位億円
年月 M2+CD BM 当預 準備額 日銀券 預金 銀行貸出 保有証券 借入 保有現金
89-4 4,240,993 322,127 40,388 40,346 281,739 3,647,897 3,792,899 1,025,018 50,790 229,494
5 4,231,214 323,164 39,997 39,969 283,167 3,672,639 3,773,746 1,035,042 47,612 255,840
6 4,268,553 319,346 40,705 40,690 278,641 3,720,990 3,823,709 1,046,290 48,457 253,528
7 4,345,989 334,821 41,760 41,734 293,061 3,718,099 3,866,275 1,056,446 52,397 243,434
8 4,366,927 331,760 41,712 41,677 290,048 3,733,633 3,895,079 1,067,536 48,337 246,109
9 4,402,627 325,676 43,072 43,019 282,604 3,879,789 3,986,275 1,099,374 47,472 295,929
10 4,408,424 325,297 42,448 42,417 282,849 3,768,188 3,951,981 1,102,522 55,249 261,359
11 4,460,570 330,607 43,769 43,738 286,838 3,913,755 4,004,587 1,104,959 36,336 302,035
12 4,627,790 379,218 46,366 46,300 332,852 4,055,023 4,105,723 1,125,861 61,932 328,255
90-1 4,635,014 326,176 46,073 46,030 320,103 3,969,179 4,113,947 1,142,538 49,748 279,667
2 4,667,345 347,859 46,363 46,338 301,496 4,031,783 4,146,793 1,161,298 55,379 282,102
3 4,730,830 356,824 47,888 47,794 308,936 4,195,805 4,243,430 1,211,746 42,534 318,154
4 4,801,061 371,008 48,572 48,541 322,436 4,191,001 4,207,818 1,211,133 39,063 287,601
5 4,790,095 318,272 48,308 48,275 309,964 4,212,155 4,188,058 1,208,872 30,963 316,786
6 4,805,089 350,335 48,446 48,398 301,889 4,271,847 4,258,235 1,215,149 36,293 319,256
7 4,876,335 365,958 48,980 48,947 316,978 4,243,481 4,277,285 1,221,566 38,736 301,130
8 4,886,619 360,535 48,997 48,962 311,538 4,245,531 4,297,706 1,219,027 18,664 299,562
9 4,930,512 354,892 50,635 50,597 304,257 4,414,996 4,341,726 1,230,008 35,317 348,856
10 4,928,423 352,824 48,994 48,968 303,830 4,242,790 4,339,514 1,248,203 31,527 283,468
11 4,900,824 352,739 48,288 48,244 304,495 4,323,226 4,381,429 1,238,739 36,378 307,232
9 4,930,512 354,892 50,635 50,597 304,257 4,414,996 4,341,726 1,230,008 35,317 348,856
10 4,928,423 352,824 48,994 48,968 303,830 4,242,790 4,339,514 1,248,203 31,527 283,468
11 4,900,824 352,739 48,288 48,244 304,495 4,323,226 4,381,429 1,238,739 36,378 307,232
12 5,022,086 402,975 50,283 50,242 352,692 4,362,377 4,411,685 1,240,370 56,290 318,273
91-1 4,978,914 384,482 48,960 48,936 335,522 4,201,728 4,401,901 1,239,302 56,471 265,220
2 4,926,178 360,151 49,080 48,141 311,071 4,202,060 4,414,227 1,225,502 42,197 270,092
3 4,970,366 371,486 52,796 50,107 318,690 4,434,407 4,458,893 1,232,185 41,263 334,525
4 4,985,533 366,883 49,901 49,367 316,982 4,268,130 4,422,034 1,225,858 42,258 277,552
5 4,962,597 362,264 48,367 48,337 313,897 4,324,803 4,430,410 1,228,940 34,753 298,664
6 4,983,634 359,321 48,885 48,848 310,436 4,342,492 4,483,575 1,233,184 50,153 279,741
7 5,040,024 372,140 48,422 48,400 323,718 4,255,138 4,485,904 1,231,377 57,200 231,555
8 5,020,817 364,477 47,937 47,888 316,540 4,274,495 4,519,300 1,221,963 67,849 224,888
9 5,041,125 356,966 48,936 48,884 308,030 4,396,712 4,522,041 1,220,079 49,029 299,162
10 5,031,895 346,487 38,199 38,159 308,288 4,196,316 4,502,566 1,217,595 52,865 182,762
11 5,018,666 339,661 29,153 29,100 310,508 4,265,878 4,555,040 1,210,444 32,066 205,636
12 5,122,051 387,445 29,663 29,626 357,782 4,284,614 4,604,718 1,206,168 93,640 225,385
92-1 5,069,555 371,124 29,433 29,398 341,691 4,132,337 4,577,094 1,203,253 68,557 156,400
2 5,004,632 346,735 28,879 28,823 317,856 4,185,335 4,596,554 1,202,793 54,758 172,460
3 5,057,976 353,520 29,380 29,350 324,140 4,347,814 4,603,939 1,195,264 44,514 259,554
4 5,063,356 350,325 29,299 29,273 321,026 4,163,956 4,570,348 1,194,131 62,473 160,824
5 5,017,338 349,576 28,842 28,818 320,734 4,193,092 4,590,984 1,196,261 79,179 169,275
6 5,030,318 344,328 28,878 28,864 315,450 4,169,204 4,604,621 1,194,664 70,634 150,003
7 5,048,854 359,657 28,769 28,732 330,888 4,125,556 4,614,450 1,179,573 66,064 138,183
8 5,037,325 356,325 28,924 28,897 327,401 4,109,233 4,610,875 1,186,600 73,310 147,570
9 5,020,805 344,832 28,887 28,873 315,945 4,196,024 4,640,044 1,165,276 73,820 192,567
10 5,001,591 346,086 28,582 28,548 317,504 4,092,537 4,631,937 1,183,382 58,886 141,305
11 4,989,166 348,335 28,493 28,466 319,842 4,122,358 4,647,493 1,189,433 64,673 157,824
12 5,099,669 393,917 28,925 28,897 364,992 4,116,081 4,718,206 1,181,147 67,033 125,886
93-1 5,055,340 374,680 28,788 28,759 345,892 4,086,108 4,709,394 1,182,289 68,934 136,144
2 5,011,162 357,042 28,623 28,586 328,419 4,097,511 4,705,565 1,181,130 74,484 141,449
3 5,038,006 362,527 29,052 29,016 333,475 4,262,532 4,726,330 1,174,177 55,478 195,737
(出典)経済統計月報、経済統計年報から集計 
 ここでの銀行とは==都市銀行(11行)、地方銀行(64行)、地方銀行U(66行)、信託銀行(7行)、長期信用銀行(3行)
M2+CD=マネーサプライ平均残高  BM=ベースマネー平均残高   当預=日本銀行当座預金平均残高  準備額=法定準備額   日銀券=日本銀行券発行高平均残高  預金=全国銀行預金月末高   銀行貸出=全国銀行貸出金月末高  保有証券=全国銀行保有有価証券月末高   借入=全国銀行日銀借入月末高  保有現金=全国銀行保有現金月末高(除く 小切手・手形)
(2013年7月10日)
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1991年秋の経済情勢 岩田論文で問題としている1991年秋、当時の経済情勢がどのようであったか振り返ってみよう。 1989年の東証では大納会で38,915円87銭をつけたのを最後に、1990年から下がり始めた。1990年の大納会は23,848円71銭、1991年は16,924円95銭となった。土地の価格は1991年から下がり始めた。 当時の失業者はまだ130万人程度であった。政府が初めて景気対策を打ち出したのは1992年3月31日のことであった。1989年からの日銀の金融引き締め、公定歩合の再度の引き締めが日本経済を痛めつけ、すぐには立ち直れないほどの後遺症を与えたのだが、当時はそこまでは読み切れず 「平成の鬼平」と三重野総裁を褒め讃えるほどであった。公定歩合の推移はつぎの通り。
公定歩合の推移         %
昭和62年(1987)年 2月23日  2.50
平成 1年(1989)年 5月31日  3.25
          10月11日  3.75
          12月25日  4.25
平成 2年(1990)年 3月20日  5.25
          8月30日  6.00
平成 3年(1991)年 7月 1日  5.50
          11月14日  5.00
          12月30日  4.50
平成 4年(1992)年 4月 1日  3.75
          7月27日  3.25
平成 5年(1993)年 2月 4日  2.50
          9月21日  1.75
平成 7年(1995)年 4月14日  1.00
          9月 8日  0.50
平成10年(1998)年 4月 1日  0.50
平成13年(2001)年 1月 4日  0.50
          2月13日  0.35
          3月 1日  0.25
          9月19日  0.10
1991年秋から金融緩和に転換 中央銀銀行が金融緩和政策をとっているのか、金融引き締め政策をとっているのか、それは公定歩合を見れば分かる。岩田論文では 「金融政策の是非を判断するうえでは、公定歩合ではなく、ベースマネーに注目すべきである」と主張しているが、先進国の中央銀行は公定歩合を主要な金融政策の手段にしている。 (一時アメリカで岩田論文で主張しているような、マネーストックを目標にしたことがあったのですが、その目的は岩田論文の趣旨とは全く違うものでした。このことにして関しては後日扱うつもりです)
 公定歩合の推移を見てみよう。徐々に金利を上げていき、1990年8月30日に引き上げたのをピークに、1991年7月1日から下げ始めた。 1991年秋、岩田論文は「日銀が金融引き締めの政策をとっている」と非難しているが、公定歩合を見て判断すると「日銀はベースマネーを減少させるという<金融引き締め政策>と、公定歩合を引き下げるという<金融緩和政策>の矛盾した政策をとっている」という主張になる。 いくら「日銀不信」であっても、「日銀がそんなバカな政策をとっている」と非難するのは常識外れだ。
 1991年秋に「不況は長く続くだろう」とは予想されていなかった。けれども日銀の金融政策は1991年夏から金融緩和政策に転換している。政府が初めて景気対策を打ち出した1992年3月31日よりも前のことであった。 ベースマネーの減少もそうした日銀の金融緩和政策 で、準備率を引き下げた結果であり、公定歩合の引き下げと矛盾しない政策の結果だと、考えないと筋が通らなくなる。このように、岩田論文をよく考えてみれば「ベースマネーの増減により、マネーサプライが増減する」と言うのは間違えである。ということに気付くはずである。
カール・ポパーも太鼓判  「2001年からの量的緩和政策が失敗だった」と数字をあげて説明しました。別の数字を持ってきて「成功だった」と反証する可能性がないわけではありません。つまりTanakaの説明は反証可能なものです。カール・ポパーも「うん、確かにTanakaさんの説明は反証可能なもので科学的と言っていいでしょう」と太鼓判を押してくれるはずです。翻って「量的緩和も小出しにしたので効果がなかった。もっと大胆に買いオペをしていればマネーストックは増加したはずだ」というのは、反証不可能なもので、信じる人には真実でも、そうでない人には異教徒の教えのように感じるかも知れませんね。カール・ポパーも「リフレ派の主張は反証不可能なもので科学的とは言えません」と断言するでしょう。
科学的とは反証可能なもの ある体系が経験によってテストできる場合にだけ、それを経験的または科学的なものとはっきり認めることにしよう。この考えは、体系の実証可能性(verifiability:Verifizierbarkeit)ではなくて、反証可能性(falsifiability:Falsifiziebarkait)が境界設定の基準として採用されるべきである、と提案するものである。言いかえれば、私は科学的体系がポジティブな意味で一挙に選別できるものでなければならない、とは要求しない。そうではなくて、私は科学体系というものは、経験的テストの手段によってネガティブな意味で選別されうるような論理形式をそなえるべきだ、と要求する。
 すなわち、経験的科学体系にとっては、反駁されうるということが可能でなければならない のである。 (カール・R・ポパー『科学的発見の論理』 大内義一・森博訳 恒星社厚生閣 1971年7月25日から)▲ カール・ポパー
(2013年7月17日)
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<1991年10月16日、法定準備率が引き下げられた> <表2 マネーサプライ ベースマネー 日銀当預 関係表>の1991年9,10,11月の一部色を変えて表示した。1991年10月16日から法定準備率が引き下げられたので、その影響がこの表から読みとれるからだ。 岩田論文では四半期単位で表示されているので分からないが、1カ月単位で表示するとハッキリ分かる。「10月16日から実施」ということは、10月末で締め切って、11月15日に向けて積んでいく準備金から適応される、ということだ。上記表でいうと、 「9月の日銀当預は旧準備率(2.5%)での歩積み」「11月の日銀当預は新準備率(1.3%)での歩積み」そして「10月の日銀当預は前半は旧準備率(2.5%)、後半は新準備率(1.3%)での歩積み」となる。つまり9月の日銀当預に比べ11月の日銀当預は約その半分で、10月はその中間となる。 10月、11月と準備額が1兆円減り、それにより銀行は日銀当預を1兆円へらし、そのためベースマネーも1兆円減った。
 表の「当預」の数字を見ればそれがよく分かる。各銀行は自行の預金総額に準備率を掛けて必要な額を日銀の当座預金口座に入金する。決して日銀当預の増減が原因で貸出が増減するのではない。この表から「従って、準備率が下がれば各銀行は日銀当預を減少させる」と読みとれる。 こうして「預金総額の増減により(原因)、各銀行は日銀当預を増減させる(結果)」が理解できたはずだ。これで 「ベースマネーの増減により(原因)、マネーサプライが増減する(結果)」が神話である、とまでは証明出来たわけではないが、ベースマネーの主要な項目である「日銀当預」は各銀行が預金総額に従って増減させるのであって、 @日銀当預の増減によりマネーサプライが増減するのではない、A日銀当預を増減させるのは各銀行であって日銀ではない。が理解できたはずだ。
 さらにB各銀行は必要とされる法定準備金に対して、ほんの少しだけ予備のために日銀当預に積んでおく。従って日銀当預残高は、銀行貸出残高の増減に従う。
日銀信用を増減させるのは、貸したい日銀? 借りたい銀行? 「○○銀行さん、おたくは資金不足で企業への融資額が伸び悩んでいますね。当方(日銀)からの融資を受けたらどうですか?」と日銀が銀行に融資話を持ちかけて、日銀信用が実行されるのか?それとも「日銀さん、15日の準備金の締め切り日に日銀当預が足りなくなりそうです。○○億円ほど融資してください」と銀行から話があって日銀信用が実行されるのか? 当然、銀行から話があって実行される。もし「○○銀行さん、折角ですが日銀の方針はベースマネーを抑えるのが今日の基本です。これ以上ベースマネーを増やすとマネーサプライが増加し、インフレになると考えられるので、○○銀行さんへの融資はお断りします」なんて日銀が言ったらどうなるか?このように各銀行の事情より日銀の金融政策優先で融資が決まるのなら、民間の銀行はまともな経営ができなくなる。 銀行から融資の申し込みを日銀が断ったり、あるいは銀行からの返済を「まだ返済しなくて良いですよ」と言ったらどうなるか?借入希望のない銀行に日銀は貸し付けるのか?「どこかの銀行さん、日銀融資を受けませんか?」と呼びかけるのか?
 「日銀信用が伸びないのは日銀の責任だ」と言うのは、社会人としての一般常識から考えてもピント外れの理論だ。 経済学者業界の人たちはよく言うではないか「日本銀行は最後の銀行である」と。その意味はどういうことなのか?
マネーサプライとベースマネーの増減、どちらが原因?どちらが結果? 1991年秋の金融情勢について、岩田理論ではこうなる「日銀がベースマネーを減少させたので、マネーサプライが伸び悩んだ」。TANAKAはこのように説明する「マネーサプライが伸び悩んでいたので、日銀は銀行の貸出負担を少なくするために準備率を下げた。そこで各銀行は日銀当預を引き出し、貸出に備えた。その結果ベースマネーが減少した」。
 相違点は「原因と結果が逆立ちしている」と「ベースマネーを増減させるのは、日銀か?各銀行か?」だ。上記<表2 マネーサプライ ベースマネー 日銀当預 関係表>から読みとって下さい。上記表からはその他のこともいろいろ読みとれると思います。頭の体操にどうぞ。
神話を信じる者ほど、日銀の政策転換を評価すべきだ 1991年10月16日、法定準備率が引き下げられたことに対する評価は、神話を信じるものほど評価すべきだ。ベースマネーの増減によりマネーサプライが増減するとの神話を信じる、ということは、 貸出に対して少しでも銀行の負担を少なくすべきだ、との認識があるからだ。そうした考えに従えば、日銀が準備率が引き下げたので、各銀行は貸出に対する負担が少なくなった、これで銀行貸出が増え、マネーサプライが増えることになるはずだ、との評価になるはずだ。 従って、神話を信じる「岩田論文」では「日銀は適切な政策転換であった」と評価するのが筋が通っている。ベースマネーの増減によりマネーサプライが増減する、との立場にたつならば、つまり銀行は貸出資金が足りないから、日銀が資金提供したり預金が増えたりすることによって貸出が増える、との考えだ。 だからその考えに従えば、日銀が準備率を引き下げたのは、銀行貸出が増える要因になるはずだった、との評価になるはずだ。それなのに日銀の政策を批判している。基本的立場と主張する立場とが矛盾している。
 神話を信じない立場ではどうか?企業の資金需要さえ旺盛ならば、銀行はいくらでも貸出を実行する。だから、準備率の変更はあまり影響がない。アメリカのように8%から14%の間で操作すれば、それほど高い利率ならば大きな影響力を発揮するだろうが、2.5%とか1.3%ではあまり大きな影響力は期待できない。 もっとも「アメリカのように高い利率にして、日銀がそれほど大きな影響力をもつのは市場のメカニズムに対する不信感の表れだ。自生的秩序を無視している」との批判も出るかもしれない。
平成の鬼平の「バブル潰し」は凄まじかった 1991年秋の日本経済は、平成の鬼平の「バブル潰し」によってデフレ・スパイラルへの道へ凄まじい勢いで突き進んでいったときだった。 <表2 マネーサプライ ベースマネー 日銀当預 関係表>をよく見ると、そのように読みとれる。 「預金、銀行貸出、保有証券、借入、保有現金」の数字を見ると、そのように感じる。「1980年代、マネーサプライが異常に増加し、バブルが膨らんだ。これは日銀がベースマネーをコントロールしなかった結果で、日銀の責任である」との批判がある。 1980年代に物価は問題になるほど上昇してはいない。1980年代の経済パフォーマンスは良くないものだったのだろうか?少なくとも「日銀が積極的にバブルを膨らました」との批判は当たらない。日銀の政策に余り影響されずにマネーサプライが増加したのなら、放っておけば自然にバブルがはじけたはずだ。 平成の鬼平の「バブル潰し」ほど急激なものではないだろうから、銀行も不良債権をこれほどまでに抱え込むことはなかったであろう。バブルが膨らんだことに日銀の責任があるのではなく、バブルを潰したことに日銀の責任があるのではないだろうか? とは言っても、当時は「バブルは潰すべきである」との主張がマスコミの主流であった。日銀は世論に答えた政策をうったのであった。と考えると、日本国中が目先の混乱に眼を奪われて、冷静に経済を見つめることが出来なくなっていたのだ、と言えそうだ。 民主制度、市場経済では独裁者も、コントロール・センターもない。必要もない。国民大衆が判断を誤れば、経済も誤った方向へ向かう。 「愚衆政治」と非難させる事態が起こるかも知れない。しかし「民主制度」「市場経済」に取って代わる、それより良い制度は考えられない。このように考えると、日銀のバブルによって日本経済はデフレ・スパイラルに陥ったが、民主制度・市場経済では起こりうるリスクでしようがないことだ、と考えるべきなのかも知れない。
金融政策の効果が出始めるのは9〜24か月後 ミルトン・フリードマンは「金融政策の効果が出始めるのは9〜24か月後」と言っています。三重野総裁は直ぐ効果が出ないので、「これでもか、これでもか」と金利を上げて、直ぐには立ち直れないほどの不況にしました。ミルトン・フリードマンの言うことを信じていればれ程の不況にはならなかったでしょうにね。
(2013年7月24日)
改訂前後の法定所要額はどの位なのか?
1991年10月16日、法定準備率が引き下げられたために、ぞの前後で法定所要額はどの程度違ったのだろうか?経済学の教科書では、法定所要額の計算式は書かれていない。準備率の改訂でどの程度銀行の資金繰りが楽になったのか、そうしたことは教科書では問題にされていない。 折角だからここで計算してみよう。計算例は大手都市銀行、預金総額26兆円で、そのうち10兆円が普通預金と当座預金、つまり「その他の預金」に分類される預金だ。 ここでは、その「その他の預金」に関する法定所要額を計算してみよう。定期性預金や非居住者預金に関しては省略する。先ず改訂前の準備率での計算から。 準備率に関しては 準備預金制度における準備率▲ を参照。

 @ 500億円以下は準備率ゼロ   500億X0%=0
 A 500億円超から5,000億円以下は0.25%  4,500億X0.25%=11.25億
 B 5,000億円超から1兆2,000億円以下は1.875%  7,000億X1.875%=131.25億
 C 1兆2,000億円超から2兆5,000億円以下は2.5%  1兆3,000億X2.5%=325億
 D 2兆5,000億円超は2.5%  7兆5,000億X2.5%=1,875億
 E 合計 2,342億5,000万円
 次に改訂後の率で計算してみよう。
 @ 500億円以下は準備率ゼロ   500億X0%=0
 A 500億円超から5,000億円以下は0.1%  4,500億X0.1%=4.5億
 B 5,000億円超から1兆2,000億円以下は0.8%  7,000億X0.8%=56億
 C 1兆2,000億円超から2兆5,000億円以下は1.3%  1兆3,000億X1.3%=169億
 D 2兆5,000億円超は1.3%  7兆5,000億X1.3%=975億
 E 合計 1,204億5,000万円
 10兆円の預金に対する法定所要額、改訂により約1千億円減ったことが分かった。つまり、銀行の負担は半分になった。法定所要額が定期預金も含めていくら減ったのか?そして銀行にとってどの程度資金繰りが楽になったのか?これは皆さんで計算し、想像してみて下さい。日銀が行った法定準備率の変更が金融市場にどのような影響を与えたのか、それを想像してみて下さい。 経済学者業界の人たちよりも、もっともっと現場に近い所から「マネーサプライ論争」を見ることができるはずです。
1月から6月への数字の変化 2013年1月から6月の数字の変化を見てみよう。(6月は速報値。変更の可能性あり)
マネタリーベース      164.5ー128.8=35.7
マネーストックM3   1,154.5ー1,137.6=16.9
日本銀行当座預金残高     74.1ー37.7=36.4
所要準備額            8.1ー7.9=0.2
超過準備額          66.0ー29.8=36.2
全国117銀行実質預金    618.3ー593.7=24.6
全国117銀行貸出       434.2ー426.9=7.3
 日銀がせっせと買いオペをすすめた結果、マネタリーベースが増え、行き所のない銀行の資金が日銀当座預金に留まっています。マネーストックM3はマネタリーベースの増えた分よりも増えていない。銀行預金は増えたけれど、貸出(信用創造)はあまり増えていない。トランスミッションメカニズムという理論は「ひびの入った骨董品」であることが判る。
 今のところ銀行に資金が増えたけれど、市場には溢れていない。
 貨幣乗数は8.8から7.0に低下。岩田論文では「貨幣乗数が比較的安定している」とあるが、2013年1月から6月は低下している。
 前回の量的緩和政策の時の貨幣乗数は、
2001-03  9.7
2002-03  7.6
2003-03  7.0
2004-03  6.3
2005-03  6.3
2006-03  6.5
 これらのことから、マネーストックが増えない(信用創造が増えない)のは銀行側(サプライサイド)に問題があるのではなく、個人・企業側(デマンドサイト)に問題があることがわかる。
(2013年7月31日)
*     *     *     *     *     *
「岩田・翁論争」はピント外れの論争だった 上に書いたようにTanakaの結論は、「日銀はベースマネーをコントロールできるか?できないか?」はピント外れの議論で、「ベースマネーの増減により、マネーサプライは増減するか?で論争しなければ意味がない」だ。 つまり、両者の論旨を熟読し、意見の相違点を考えると、根本的な違いは「ベースマネーの増減により、マネーサプライは増減するか?」「そうでないか?」になる。
 日銀はベースマネーの増減に影響を与えることはできる、しかし各銀行は日銀とは別の方向へベースマネーを増減させることもある。日銀がオペレーションによりベースマネーを増減させても、各銀行が日銀からの借入を増減させることにより、ベースマネーを増減させることもできるからだ。
 日本の市中銀行は法定準備を超える超過準備を持たないため、必要な準備需要は前の月の市中銀行預金の水準によってすでに決定されており、その準備需要に対して、日銀が準備供給に応じなければ、市中銀行の決済が不可能になり、大混乱が生じてしまうからである。つまり、日銀は市中銀行の準備需要に応じて準備を供給するしかないというのである。これが「日銀理論」である。 という、日銀の「○○である」との論法と「○○べきである」との岩田理論がゴッチャになっている。日銀が「コントロールできない」というなら「そんなことはない、こうすればコントロールできる」と方法を提案するか、「このように制度を変えればいい」と主張すべきだ。 それは <マネーサプライ管理は日銀の責任==中谷巌>▲にも言える。「である論」と「べき論」がゴッチャになっている。議論の仕方がなっていない。まともな議論の仕方を勉強しましょう。
 「岩田・翁論争」の岩田理論は筋が通っていなかった。単なる「日銀に対する嫌がらせだ」と言われてもしょうがない批判であった。それと同時に、それに対する翁論文もポイントが外れた反論であった。そしてそれを見守る経済学者業界の人びとは、結局ポイントを理解していなかった。 それでも、他の業界からの新規参入がないので安穏としていられた。本当は、大学教授で「日銀理論の方が正しいようだ」と書いている経済学者もいたが、主流派からは無視されていた。しかしこれに関して書くと長くなるので、後日頃に取り上げることにします。 ただ、「割合に近い所にいる人でも、この業界では無視され、相手にされないこともある。それほどこの経済学者業界は閉鎖的である」とだけは言っておこう。
そして、その後もピント外れの論争だった 岩田・翁論争、マネーサプライ論争はその後多くの場面で展開され、多くの人が発言した。これらは「日銀はベースマネーをコントロールして、マネーサプライを適正に供給せよ」「日銀はベースマネーをコントロールできないし、現在は適正である」との論争になっていった。 それらの論争では「ベースマネーの増減により、マネーサプライが増減する」が前提となっている。結局神話を前提とした論争なので、決着が着くはずがなかった。経済学の教科書は、「決着が着いてない」を認めて書かれている。だれ一人として、神話を疑おうとはしていない。自分で決着させようとの意欲をみせていない。 臍曲がりも異端者も突然変異も一代雑種もない。自家不和合性に陥っている。マスコミで発表される意見は結局コップの中の嵐、狭い閉鎖社会での同業者同士の論争でしかなかった。 そしてTanakaは、多くのエコノミスト業界の人に対して「王様は裸だ!」と叫ぶことになる。
岩田・翁論争 主な参考文献
週刊東洋経済 1992.09.12 「日銀理論」を放棄せよ            岩田規久男 東洋経済新報社   1992. 9.12
週刊東洋経済 1992.10.10 「日銀理論」は間違っていない           翁邦雄 東洋経済新報社   1992.10.10
週刊東洋経済 1992.12.12 「マネーサプライの『正しい』見方」       植田和男 東洋経済新報社   1992. 9.12
週刊東洋経済 1992.12.26 「政策論議を混乱させる実務への誤解」       翁邦雄 東洋経済新報社   1992. 9.12
週刊東洋経済 1993.01.16 「岩田教授の金融理論はやはり正しい」   原田泰・白石賢 東洋経済新報社   1993. 1.16
週刊東洋経済 1993.02.06 「混乱招く日銀のあいまいな表現」         香西泰 東洋経済新報社   1993. 2. 6
週刊東洋経済 1993.03.13 「初動因」は金利かベースマネーか   岩田規久男・翁邦雄 東洋経済新報社   1993. 3.13
日本経済新聞 経済教室 マネーサプライ論争上「供給量、不足とは言えず」   賀来景英 日本経済新聞    1992.12.23
日本経済新聞 経済教室 マネーサプライ論争下「ベースマネー供給増は可能」 岩田規久男 日本経済新聞    1992.12.24
神話を信じる人たち  岩田・翁論争に関連して発言した人たちは、誰もが神話を信じていた。信者=岩田規久男、翁邦雄、植田和男、原田泰、白石賢、香西泰、賀来景英。そして、次の人たちも信者であった。<主な参考文献>▲
アメリカではサムエルソンだけが神話を信じていないようだ  アメリカの経済学の教科書を調べてみた。この中でバーナンキ、マンキュー、スティグリッツ、ジェフリー・サックス、ドーンブッシュ等が「トランスミッションメカニズム」を扱っているが、サムエルソンだけは扱っていない。よく読んでみるとサムエルソンは「マネタリーベースを増やすとマネーストックが増える」という神話を信じていないようだった。 <経済学の神話はアメリカでも生きていた>
参考文献
マクロ経済学{U}応用編          A.B.エーベル , B.S.ベルナンケ 福地崇生監訳 シーエーピー出版  2002. 1.30
経済学 13版 上                     P.サムエルソン 都留重人訳 岩波書店      1992. 5.15
経済学 6版 上                      P.サムエルソン 都留重人訳 岩波書店      1966. 5.10 
マクロ経済学(第2版)U        マンキュー 足立英之・地主敏樹・中谷武・柳川隆訳 東洋経済新報社   2004. 4. 1
マクロ経済学  ジョセフ.E.スティグリッツ 藪下史郎/秋山太郎/金子能宏/木立力/清野一治訳 東洋経済新報社   1999. 4.15 
マクロエコノミクス  ジェフリー・サックス,フィリップ・ラレーン 石井菜穂子/伊藤隆敏訳 日本評論社     1996. 6.10
マクロ経済学 改訂第4版 日本語版(下)  R・ドーンブッシュ、S・フィッシャー 廣松穀 シーエーピー出版  1996. 2.15
円安の影響は先ず物価高に 円安で輸出産業が儲かって、その恩恵が関連企業⇒他産業⇒給料アップ⇒消費増大⇒経済成長へと進むには時間がかかるでしょう。一方、円安で輸入品(日用品・食料品・エネルギー)が値上げし始めています。(CPIを参照)円安はデメリットの方に先に影響が出て、豊かさを感じるには時間がかかります。順調に経済成長へと進んでくれるといいのですが………。日銀首脳は「2年以内に物価上昇率を2%にする」と言っています。
(2013年8月7日)
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経済学の神話に挑戦します  「ベースマネーの増加により、マネーサプライが増加する」という神話=岩田・翁論争の過ち