趣味の経済学             
経済学の神話に挑戦します
「ベースマネーの増加により、マネーサプライが増加する」という神話=岩田・翁論争の過ち

TANAKA1942bです。「王様は裸だ!」と叫んでみたいです   アマチュアエコノミスト TANAKA1942b が経済学の神話に挑戦します        If you are not a liberal at age 20, you have no heart. If you are not a conservative at age 40, you have no brain.――Winston Churchill    30歳前に社会主義者でない者は、ハートがない。30歳過ぎても社会主義者である者は、頭がない。――ウィンストン・チャーチル       日曜画家ならぬ日曜エコノミスト TANAKA1942bが経済学の神話に挑戦します     好奇心と遊び心いっぱいのアマチュアエコノミスト TANAKA1942b が経済学の神話に挑戦します     アマチュアエコノミスト TANAKA1942b が経済学の神話に挑戦します

……… は じ め に ………
 「ベースマネーの増加により(原因)、マネーサプライが増加する(結果)」「銀行は日銀からの資金提供などを原資に貸出し、それが信用創造プロセス=トランスミッションメカニズムにより拡大されマネーサプライとなる」「そこでベースマネーをハイパワードマネーとも言う」「日銀は売りオペ、買いオペによりベースマネーを増減させることができる」 「日銀は買いオペによりベースマネーを増加させ、これが貨幣乗数によりマネーサプライが増加する」 「日銀がインフレターゲットを宣言し、買いオペを進めることによってデフレスパイラルから脱することができる」
 最初の神話がインフレターゲット論へと発展していく。かつて小宮・外山論争や岩田・翁論争で問題になった「日銀はマネーサプライをコントロールできるのか?」も根本は「ベースマネーの増減により、マネーサプライが増減する」は正しいのかどうか?になってくる。 したがって、2つの論争や「ベースマネーは増加しているのに、マネーサプライはなぜ増加しないのだろう?」のような愚問や、インフレターゲット論を検討するには「ベースマネーの増加により、マネーサプライが増加する」が神話であることをハッキリさせることが大切なポイントになる。 そうすることにより、「貨幣乗数」「ハイパワード・マネー」「トランスミッションメカニズム」などの言葉は意味がないので使われなくなるだろう。
 ここではアマチュアエコノミストが「ベースマネーの増加により、マネーサプライが増加する」は神話であり、ベースマネーが増加しても、マネーサプライが増加するとは限らない、ことをハッキリさせ、これらの論争に終止符を打とうと思う。日本の経済学の教科書は、金融経済学とかマクロ経済学とかのタイトルの教科書はすべてこの神話に基づいて書かれている。 TANAKAにしてみると、これが神話であることはあまりにも当然なので、どのように説明するか?話の進め方に苦心する。そうした状況で、それでもアマチュアでも納得できるような分かりやすい説明を心がけて、試行錯誤を重ねながら話を進めるつもりです。最後までおつき合いのほど、よろしくお願いいたします。

「ベースマネーの増加により、マネーサプライが増加する」という神話 目次
♣ インタゲ政策でローンはどうなる? 貨幣乗数が流通量を決める、という神話  ( 2005年10月17日 )
♣ 量的緩和政策は不良債権処理支援策だった? そして馬は水を飲まなかった  ( 2005年7月18日 )
♣ あの人も、この人も神話を信じている どのような説明なのか、聞いてみよう  ( 2005年10月31日 )
♣ 経済学の神話はアメリカでも生きていた 次期FRB議長も説明している  ( 2005年11月14日 )
♣ 神話の内容をハッキリ理解しておこう 信用創造プロセスから検討する  ( 2005年12月5日 )
♣ TANAKAの説明する信用創造プロセス 日銀当預は各銀行が増減させる  ( 2005年12月19日 )
♣ 神話が生まれる背景と、新に生まれる神話 教科書の誤った「信用創造」の説明  ( 2006年1月16日 )
♣ 神話から生まれた「岩田・翁論争」 日銀当預と準備率の関係を検証する  ( 2006年2月27日 )
♣ ベースマネーとかマネーサプライとは何か? その増減が経済に及ぼす影響  ( 2006年3月13日 )
♣ 銀行制度が生まれた明治維新時代を振り返る 江戸から明治へ過渡期の金融制度  ( 2006年5月15日 )
♣ 国立銀行という私立銀行が153も設立された この時代のキーマンは渋沢栄一  ( 2006年5月22日 )
♣ 私立銀行という現在の大手都市銀行が誕生 三井・安田・住友・三菱──ほか  ( 2006年5月29日 )
♣ 全国各地で国立・私立銀行が誕生する 金融ベンチャー時代の始まり  ( 2006年6月5日 )
♣ 明治時代の銀行制度を総括する 信用創造プロセスは働いていたか?  ( 2006年6月12日 )
♣ 敗戦直後の経済混乱時期を振り返る インフレ・預金封鎖・傾斜金融──など  ( 2006年7月3日 )
♣ 銀行は預金高と貸出額のバランスを計る キーワードはオーバーローン  ( 2006年7月10日 )
♣ 旺盛な借入意欲に対する資金不足 懸賞金付預金など救国貯蓄運動の実施  ( 2006年7月17日 )
♣ 単純化した経済理論と実務との遊離 実態無視から生まれるあいまい理論  ( 2006年8月7日 )
♣ ゼロ金利・量的緩和という高価な実験 神話理論が崩壊し、そして日銀理論も  ( 2006年8月14日 )

趣味の経済学 アマチュアエコノミストのすすめ Index


インタゲ政策でローンはどうなる?
貨幣乗数が流通量を決める、という神話
<35年固定金利 2.72%の住宅ローン> 銀行のロビーに張ってあるポスターの「35年固定金利 2.72%の住宅ローン」というのが目に入った。ずいぶん安い金利だな、と思い住宅ローンの金利を調べてみた。すると、これは特別キャンペーン中で、普通は「固定金利選択方式2年固定金利で2%程度、5年固定金利で2.8%程度」ということが分かった。 それにしても安い、と思いつつ、「ではインフレターゲット政策が実施されるとどうなるだろうか?」と考えた。インフレターゲットは、「デフレがいかに悪いことか」「多くの諸外国で実行されている」「ハイパーインフレの恐れはない」などと説明するが、実際どのような金融政策が行われるべきなのか?それによって経済がどのように変わってインフレになるのか?その副作用はないのか? 等についてはハッキリ説明しない。そこで今回は「インフレターゲット政策が実施されると、住宅ローンはどうなるか?」という点から切り込んでみようと思いたった。
 初めに現在の住宅ローンがどの程度の金利なのか、銀行のHPから拾い出してみた。平均的な金利は次の通り。
固定金利選択方式 2年=2% 5年=2.8〜3% 10年=3.5%  変動金利型 10年超=3.5〜3.7%  
長期固定 2.71〜2.81%
 支店ロビーのポスターには次のようなメッセージがあった。
ご返済まで金利・ご返済額は変わりません 保証料不要・繰上返済時にも手数料がかかりません 
最長35年のゆとりのご返済期間 固定金利方式 年2.72%
 このポスターを見て「インフレターゲットが実行されたら、この住宅ローンはどのような影響を受けるだろうか?」と好奇心が騒いだ。そこで、住宅ローンを取っかかりとしてインフレターゲットの有効性について考えてみることにした。
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<日銀のインフレターゲット宣言によって最初に何が起こるか?> インフレターゲットを次のように理解して話を進めることにする。
 日本銀行は
 @「インフレ率1〜3%になるよう、金融政策をとる」
 A「このために大胆な金融政策をとる」 
 B「このように宣言する」
 具体的にどのような金融政策を採るかと言うと、「量的緩和政策をさらに一層進めるべきだ」程度しかハッキリしない。しかし、ここではこの点についてはあまり突っ込まず、上記@ABを前提に話を進める。
 インタゲ派エコノミストは、「日銀が1〜3%のインフレ政策を採る、と宣言することが大切だ。宣言することによって日銀も責任が生じるし、だから市場も日銀を信じる。量的緩和を一層進めると同時に、日銀は宣言もしなければならない」と主張する。 そこで、日銀が宣言したら、先ず何が起こるか?それを考える必要がある。インタゲ政策でいろんなことが起こるだろうが、先ず最初に起こることは何か?最初に起こることがその後の状況に影響を及ぼすはずだ。
 日銀がインタゲ宣言をするとすぐにインフレになるのか?そんなことはない。インフレになるには、銀行が企業に多くの融資を行い、それによってマネーサプライが増加し、「インフレはいついかなる場合も貨幣的現象である」が証明されることによりインフレになる。その猶予期間は、ミルトン・フリードマンは9カ月から24カ月程度と言う。日銀が宣言してもすぐにはインフレになるわけではない。
 まず最初に起こる変化は金利上昇だ。上に書いた住宅ローンは日銀発表の翌日には利上げが発表され、3%以上になる。2〜3日でも安い旧金利があれば、銀行の住宅ローン融資窓口は申し込み殺到で混乱する。ぞれに対する銀行の説明が曖昧であれば銀行への非難が集中する。
 なぜ金利が上昇するかというと、銀行は貸出金利を期待インフレ率以上に設定する。もしも期待インフレ率よりも低ければ、実質マイナス金利になるからだ。
 もしも金利が上昇しないとすれば、それはどこの銀行も「日銀は3%のインフレにすると言っているが、インフレにはならないだろう」と、日銀の発表を信じていないからだ。市場から信頼されない政策が効果を上げるとは考えられない。
 コール市場も即座に反応し、金利は上昇しゼロ金利は崩壊する。それによってコール市場での出し手である、生保、地銀などは運用手段の選択肢が増え、経営悪化に歯止めがかかる。ただし、その前に起こること、銀行金利の上昇が何らかの影響を与えるだろう。
 エコノミストの論調は暫く定まらない。抽象的な空論では読者は満足しないし、いいかげんな予想では、外れたときに面目を失う。「ああでもない、こうでもない」と言いながら大勢を見きわめ多数派になろうとする。このため日銀の宣言直後は評論家の見方も定まらない。
 まず、銀行貸出金利が上昇し、これが多くの面に影響を与える。従って日銀のインタゲ宣言による銀行の利上げについて考えてみることが大切になる。この点が曖昧だと、その他のこと、マネーサプライの増加とか為替相場だとか、景気全般について予想が立たない。
<市場金利は「ビルト・イン・スタビライザー」> 景気が良くなると資金需要が増え、物価が上昇しインフレになる。しかしインフレが進み期待インフレ率が上昇すれば、金利が上昇し銀行貸し出しを抑制し、景気の過熱を抑える。景気に対し市場金利は「ビルト・イン・スタビライザー」と言える。
 同じような「ビルト・イン・スタビライザー」として、累進所得税がある。景気が良くなり収入が増えると可処分所得が増え、これが景気を加速・過熱させる。しかし累進課税のため所得が増えると税率が上がり、収入増の割には消費が増大する訳ではない。これが「ビルト・イン・スタビライザー」。
 市場経済にはこうした「ビルト・イン・スタビライザー」がいくつか組み込まれている。インフレターゲット政策はこうした仕組みに目を向けず、経済司令塔として経済を統制できるという、社会主義経済的な発想に思われる。
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<インフレターゲットによる住宅ローン金利の上昇……> 日銀のインフレターゲット政策採用が発表されたとしよう。 そうすると銀行本部の住宅ローン担当者はこのように考える。「日銀がいよいよインフレターゲット政策を採用した。インフレ率1〜3%ということは、固定金利方式の年2.72%は実質マイナス金利になってしまう」 「日銀がインフレ率1〜3%と言うことは、3%を前提に考えた方がよい。いや、もっと高くなるかも知れない。10%になったら批判が集中するだろうが、4%なら誰も文句を言わないだろう。もしかしたら名目4%が実質0%になるかも知れない」このように考えるだろう。 そしてその考えは上司も承認するだろう。しかし、ここでは住宅ローンの最低金利を4%として考えてみよう。
 住宅ローンが最低4%になる。これは日銀が「インフレターゲット政策を採用する」と宣言したらすぐに銀行は公表する。日銀が宣言するとすれば、それ以前から予兆があり、銀行は準備をしているはずだ。もしも、日銀が発表して数日後に銀行がローン金利切り上げを発表するとしたら、大きな混乱が起こる。 賢い消費者が銀行にローン申し込みのために殺到する。銀行はどうするか?「申し訳ありません。現在枠が一杯になっており、近々新たな枠が用意されるはずですので、暫くお待ち下さい」、こんな風に言い訳することになるだろう。そして「日銀がインフレターゲットを採用したために、当行でも金利を上げざるを得なくなりました」と謝ることになる。
 こうして住宅ローンの最低金利が4%になる。そして、長期35年据え置きはなくなる。とりあえず2年据え置きが中心になり、その後のことは銀行でも予想がつかない。こうなるとローン契約が極端に減少する。戸建て住宅もマンションも動きはとまる。実際にインフレになるのか?日銀の言う通り1〜3%になるのだろうか?今まで通りデフレが続くのではないか?あるいは5%6%または10%程度にまでなるのではないか? 消費者も不動産屋もしばらくは様子見となる。2001年3月に量的緩和政策を採用して、4年半たってやっと見直しが議論され始めた。とすると、インフレターゲットも4年ぐらいは様子見が続くことになるだろう。それまでは消費者もサプライサイドである不動産業・建設業は開店休業となる。
 ここまで書いていて「あれっ!」と思った。インフレターゲットとは「デフレから脱却させ、経済を成長させよう」との金融政策ではなかったのか?住宅建設が低迷してどうして経済が成長するのだ!
<プライムレートも上昇する……>
銀行が優良企業に貸し出す金利、長期プライムレートは現在1.4〜1.7%だ。インフレターゲットが採用されれば、日銀が宣言した瞬間に4%以上に設定される。金利が2倍以上になれば企業は借り入れを手控える。設備投資・在庫投資・研究開発投資が冷え込む。
 こうした銀行の金利引き上げに対して非難する人たちが出てくる。「銀行は自分たちの利益だけしか考えていない。これでは中小企業は企業活動をやめなさい、と言っているに等しい。日本全体のことを考えなさい」と。しかし、銀行は奉仕団体ではない。マイナス金利で損失が膨れ上がったら破綻の危険が生じ、再び金融不安が起きてくる。
 企業の投資行動が止まれば景気は低迷する。景気が低迷するということはデフレになる、ということだ。しかし、インフレになる可能性もある。「金利が高くなるのだから」と言って便乗値上げが始まるかもしれない。そうなれば、インフレターゲット主張者の思い通りのインフレになるだろう。しかし、それは経済成長を伴わない「スタグフレーション」になるだろう。 1970年代、多くの先進国で、経済成長を伴わないインフレ=スタグフレーションが起きた。「インフレはいついかなる場合も貨幣的現象である」との経済学の常識によって、マネーサプライを減少させ、これを処理した。あの流れを汲む経済学者の一部が、今度はそのスタグフレーションの再来を期待しているかのように思える。 たとえ本人たちはそのことに気づいてなくてもだ。
 インフレターゲットとはスタグフレーションの再来を期待する政策のようにさえ思えて来る。
<国債の利率も上昇する……>
現在個人向け国債はつぎのようになっている。
 利率   初回の利子の適用利率 年率0.55%
  ・ 適用利率は「基準金利−0.80%(但し、その値が0.05%を下回る場合には0.05%)」として算出されます。
  ・ 初回の利子の基準金利は、本日の10年固定利付国債の入札結果から算出された金利1.35%です。初回の利子の適用利率は、これから0.80%を差し引いた0.55%となります。
  ・ 適用利率は半年毎に見直されます。
 これでインフレターゲットが採用されるとどうなるか?インフレ率が1〜3%ならば、国債の利率は4%以上でなければ消化できない。3%程度であったら実質金利は0%なのだから、買う人はいない。 もしかしたら「日銀やインタゲ派エコノミストなんて信じられない。この政策は失敗するに決まっている。まだゼロ成長は続くに決まっている。良い機会だから国債を買っておこう」このように考える人は国債を買うことになるだろう。
 ではどの程度の消化率になるだろうか?札割れを起こすことはないだろうか?やってみれば日銀とインタゲ派エコノミストの言うことがどの程度信用されているのか、ハッキリする。やってみるのもいいんじゃないですか?
 既に発行された国債はどうなるか?「マイナス金利の国債なんて持っていてもしようがない」と、国債のたたき売りが始まる。それでも売り損ねた企業は資産勘定が悪化する。あるいは、日銀批判が起こるかも知れない。これによって銀行がもっている国債の価値が下がるのだから、銀行の資産内容が悪化する。「日銀は銀行の経営を悪化させるのが目的なのか?」との批判が出てくるだろう。 経済団体も反対意見を出す。それでもインフレターゲット政策を遂行するには当局の強い意志が必要となる。
 国債を多量に保有する企業・金融機関のバランスシートが悪化する。
<便乗金利値上げが追従する……>
住宅ローン、プライムレート、国債と利率が上昇すれば、これに追従して金利値上げが出てくる。消費者金融は現在でも十分高金利になっているが、仕入れの銀行金利が上がれば、これを口実に金利を上げてくるだろう。 消費者金融やカードローンは金利上昇によって利潤拡大が期待できる。今後伸びる業界として話題になるだろう。
 経済が成長しなくても、たとえ便乗金利値上げでも、金利が上昇すれば、物価も上昇する。経済が成長しなくても、物価が上昇し、それによって通貨流通量が上昇すれば、インタゲ派の期待どおりデフレを脱却しマイルドなインフレにになるかも知れない。 少なくともその可能性は生まれる。
 消費者物価の中から便乗値上げが出るだろうが、不動産は買い手が少なくなり値下がりするかも知れない。経済の先行きの見通しが立たず、物価が乱高下するだろう。
<コール市場での出し手企業が潤う……>
国債の金利が上昇すれば長期金利はこれに追従し、この長期金利の上昇に追従して短期金利も上昇する。日銀のゼロ金利政策は放棄される。 コール市場での出し手、生保、地方銀行、などの資金運用先が復活する。これによって短期金融市場が活気を取り戻し、経済の体温計としてのコールレートが注目されるようになる。 株式市場、為替市場、などと並びタイボーが注目され、この市場に参加する金融業界が生きかえる。
<金利が上昇し景気は停滞する……> 経済である条件が変わると、それによってどのような変化が起こるか、いろんな結果が予想される。全く逆の結果も予測される場合もある。 日銀がインフレターゲットを宣言すると、上記とは違って、景気が停滞するとの結果も予想される。なにしろ金利が上昇するのだから、景気が低迷することは十分の予想される。 日銀のゼロ金利政策も維持できなくなれば、企業の投資熱も冷え込むに違いない。
<それでもデフレから脱却し、物価が上昇しスタグフレーションになるかも知れない……> 日銀の量的緩和政策を拡大して、インフレターゲット宣言するといろんなことが起こる。それはいいこと、悪いこと、関係ないこと、いっぱいあるはずだ。具体的になのが起こるか?その議論がない。 インタゲ主張者はプラス面だけ言い、疑問を持っている者は議論したがらない。上に書いた以上に、いろんなことが起こるはずだ。そして、結論的に言えば、デフレではなくなり、物価が上昇し、しかし、経済は成長せず、スタグフレーションになる、との見方が妥当なようだ。
 だとすれば、インタゲ派の主張は一部正しい。デフレをとめることができるからだ。しかし、それでいのだろうか?大変多くの副作用というコストを払って、その結果がスタグフレーションならば、やはり、インフレターゲットは支持できない。
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<「ベースマネーの増加によってマネーサプライが増加する」との神話> インタゲ派が主張するように、日銀が買いオペを進めるとデフレから脱却できる、とはどのような根拠なのか。それにはいくつかの前提がある。 @貨幣数量説を認めている。Aベースマネーの増減によってマネーサプライが増減する。B従って日銀はマネーサプライをコントロールできる。以上3点を信じていることが前提だ。これに関しては、日銀は「日銀はマネーサプライをコントロールすることはできない」と主張するが、あまり積極的に主張はしていない。 @の貨幣数量説には異論もあるようだが、これも積極的な否定論は聞かれない。Aの「ベースマネーの増減によってハイパワードマネーが増減する」に関して反対論はない。TANAKAが経済学の教科書を調べたが、これに対する反対論、批判は見当たらなかった。 つまり。「ベースマネーの増減によってマネーサプライが増減する」は経済学の常識(神話)になっている。下の<参考文献>に上げた文献はすべて、「ベースマネーの増減によってマネーサプライが増減する」との経済学の神話に基づいて書かれていた。
「貨幣乗数」「トランスミッションメカニズム」などの用語を使うことによって、「ベースマネーの増減によってハイパワードマネーが増減する」との神話に疑いを挟まない姿勢になってしまっている。そこで「ベースマネーの増減によってマネーサプライが増減する」が経済学の神話であると、神話を暴いてみようと思うが、あまりにも信者が多いので、しっかりした数字とアマチュアでも判るような判りやすい説明をするために、十分な時間が必要になる。 そこで今回は、その取っかかり程度に挑戦することにした。ということで、「ベースマネーの増減によってマネーサプライが増減する」とは経済学の神話である、との主張を好奇心と遊び心をもって、ほんの入口程度に踏み込んでみることにした。
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<経済学の教科書が説明する、信用創造のメカニズム> 金融経済学で説明される「信用創造のメカニズム(トランスミッションメカニズム)」について書いてみよう。幾つかの教科書を参考に、「信用創造のメカニズム」を易しく書いてみる。
 たとえば日本銀行がA銀行に1000万円を供給したとする。A銀行は1000万円の10%である100万円を準備金として日銀当座預金に預け入れ、 残りの900万円をB社に融資する。 900万円の貸付を受けたB社は、それをC社への支払に充てる。C社は受け取った900万円をすべてD銀行に預けたとしよう。この場合法定準備率を10%と仮定しているから、D銀行は810万円を貸し付けることができる。 D銀行から810万円の融資を受けたE社はF銀行へ全額預けると、F銀行は81万円を準備金として日銀当座預金に入金し、729万円を融資することができる。 このような銀行の貸付行動により、預金通貨が創造されていく。
 1,000万円の本源的預金によって創造される派生的預金は、
  派生的預金=1000(0.9+0.9²+0.9³+……)
になる。ここで、( )の中は、初項0.9、公比0.9の無限等比数列の和だ。これを計算すれば、創造される派生的預金は9,000万円であることが導かれる。 これに本源的預金1,000万円を加えれば、預金総額は1億円になる。このケースでは、本源的預金の10倍の預金が創造されている。この倍数(ここでは、10)は信用乗数とか貨幣乗数と呼ばれている。
 これを貨幣供給の式として、M ,HM ,D ,Cp ,R ,m をそれぞれ貨幣量、ハイパワードマネー、預金、民間部門保有の現金、銀行準備、貨幣供給乗数とすれば、次のように示される。
  M=(1+Cp/D)÷{(Cp/D)+(R/D)}XHM=m・HM
 この式は、ハイパワードマネーHMが貨幣乗数mを掛けた数字だけ大きくなり、貨幣量Mとなることを表している。
 このように教科書の説明では、「ハイパワードマネーの増減によってマネーサプライが決まる。日銀は日銀当座預金残高を増減させることが出来るので、結果としてマネーサプライを増減させることできる」 となっている。このため「日銀は買い切りオペを増加させ、ハイパワードマネーを増減させ、インフレを1〜3%に調整する政策を取るべきだ」とのインフレターゲット論が出てくることになった。
<TANAKAが説明する、信用創造のメカニズム>
上記、教科書の「信用創造のメカニズム(トランスミッションメカニズム)」は非現実的で、実際は違った仕組みになっている、というのがTANAKAの説明だ。 
 銀行が企業に融資することによりマネーサプライは増加する。その仕組みはつぎのようになっている。 先ずA銀行がB企業に10億円融資する場合を考えてみよう。教科書の説明と違って、日銀の資金提供とか預金受け入れは必要ない。 銀行が企業に10億円融資する場合は、企業の口座に10億円入金する。ただし現金は必要ない。企業の通帳に10億円入金と記入するだけだ。後は銀行の帳簿を操作する。
 A銀行のバランスシートで、
 資産勘定で「B企業へ貸出 10億円」  負債勘定で「B企業の預金 10億円」 と変化する 
 つぎにA銀行は日銀当座預金に準備金を入れなければならない。その金額は10億円の0.1%から1.3%、A銀行の預金総額によって違ってくるが、ここでは分かりやくするために1%として話を進める。 詳しくは 準備金率▲ を参照のこと。
 A銀行は日銀当座預金に次の月の15日までに1000万円を入金しなくてはならない。ただしこれはB企業が1ヶ月間ずっと預金したままの場合で、たとえば銀行営業日数20日の月に1日だけ入金し、すぐに引き出すと、準備金は1000万円の20分の1、つまり50万円となる。 通常、企業は支払の必要から融資を受けるので、長く入金したままにしておくことは考えられない。
 このケースでは10億円の融資に対して、その準備金=日銀当座預金に次の月の15日までに入金すべきは50万円でしかない。
 預金受け入れも日銀からの資金提供も必要とせず、10億円融資してもこの程度の準備金を半月遅れで入金すればいい。そして日銀当座預金は利子が付かないので、銀行はなるべく必要な金額だけにして、余分な資金は入金したがらない。
 もしも、銀行が翌月の15日までに50万円用意できなければコール市場で借りればいい。その金利は年0.001%。ただし50万円を借りる事はできない。この市場での最小取引単位は5億円だからだ。50万円などという、はした金は取り引きすることができない。 このようにベースマネーの一部である日銀当座預金残高は、銀行が行う融資の総額によって決められる。つまり銀行の融資が原因となって、その結果、日銀当座預金残高、つまりベースマネーの額が決まる。 これで、銀行の融資活動の結果決まってくるマネーサプライの増減によって(原因)、ベースマネーが増減する(結果)ことが理解できるはずだ。
 このため「貨幣乗数」という言葉を使うと、ベースマネーが膨らんでマネーサプライになる、と考えがちになるが、実際は逆、マネーサプライの増加が準備率によってその何分の1かがベースマネーとしてして必要になるのだ。
  M=(1+Cp/D)÷{(Cp/D)+(R/D)}XHM=m・HM
 の式は、貨幣量Mの増減によってハイパワードマネーHMが増減し、それが何分の1になったかを貨幣乗数mと表現することを表している。
「貨幣乗数」とか「ハイパワードマネー」とか「信用創造プロセス」「トランスミッションメカニズム」との用語は「ベースマネーの増減によってマネーサプライが増減する」との神話を説明する言葉であって、この神話が崩れると意味をなさなくなる。いずれこの言葉は忘れ去られるであろう。
 なお現在の準備率は1991年に改訂されたもので、1986年から1991年までの準備率は現在の約2倍、0.25〜2.5%。従って上記ケースで最高の準備率を適用すれば125万円必要となる。それでも準備率10%で説明するのは、あまりにも実際とかけ離れ過ぎている。 こうした詰めの甘さが「ベースマネーの増減によってマネーサプライが増減する」との神話を生むことになったのだろう。
日本の銀行はそんなに資金不足なのか?  教科書の説明する「信用創造プロセス(トランスミッションメカニズム)」は日本の銀行が資金不足で、いっぱい預金が預け入れられたり、あるいは日銀からの資金提供がなければ貸出ができないかのように思えてくる。 資金さえあれば、それを原資に貸出し、それが支払われた企業が預金し、そこでそれを原資に貸出が行われと、預金が入金されるたびに貸出が行われる。この考えに従えば、「銀行は貸出資金がないから融資ができない。資金さえあれば企業は金を借りる」となる。
 1980年代、まだ不動産投資の総量規制が始まる前、銀行は不動産担保で積極的な貸出を行っていた。このためマネーサプライの伸びは急激で、「それを抑えなかった日銀の責任でバブルが膨らんだ」との批判もあるほどだ。では銀行の融資の原資は誰が提供したのだろうか? 日銀が提供したのなら、日銀の責任は「マネーサプライの伸びを抑えなかった責任」ではなくて、「銀行に貸出資金を提供した責任だ」と非難すべきだ。そうではない、ということは日銀が貸出資金を提供したのではない、ということになる。 ではどうして、銀行は積極的に融資することができたのか?その資金はどこにあったのか?
 答えは簡単。銀行は貸出資金に不安はない。沢山の資金を持っている。あのバブルが膨らんでいるときでも、「貸出資金が不足したので、持っている株や国債を売って。貸出資金の原資とした」などという話は聞かなかった。、
 教科書の「信用創造プロセス」は、なにかとてもミミッチイですね。日本の銀行がこんな苦しい資金繰りをしていると考えるなんて。
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<融資の違いを貨幣量と流通速度として考えてみる> 教科書によるマネーサプライの増加とTANAKAが説明するマネーサプライの増加は違う。教科書の説明でもマネーサプライは増加する。その違いを旨く説明できないだろうかと、考えた。
MV=PY ・・・・・・ただし、M=貨幣量 V=貨幣の流通速度 P=物価水準 Y=実質国民所得
 YをT(取引量)と置き換えて、MV=PTという恒等式も成り立つ。これが貨幣数量説だ。
 TANAKAが説明するのは、M=貨幣量を増やす、教科書の説明は、V=貨幣の流通速度を早める。このように理解するとい良い。
 教科書の増え方をよく見ると、「ホットポテト」という言葉が頭に浮かぶ。大勢の人が丸く輪になって立ち、みんな真ん中を向く。1人が熱いポテトを投げる。誰かがそれを受け取る。熱いのですぐに他の人に投げる。それを受け取った人もすぐに投げる。このようにして、ポテトが飛び交う。 遠くから見ていると沢山のポテトが飛び交っているかのように見える。しかしポテトは1つ。
 この言葉は為替取引や株取引に際して使われる。デイトレーダーや機関投資家が多く参加する取引では少ない物件が絶えず取引され、あたかも多数の物件が取引されているかのように見える。それでも、マネーサプライが増加することには違いない。
 教科書の説明する融資方法は、一定の資金があってそれを貸し出す方法だ。それは管理通貨制度以前の、金本位制ではこの方式だった。
田沼意次の財テク ここでは江戸時代に田沼意次の意向で行った幕府の財テクについて書いてみよう。これには老中松平右近将監武元・田沼意次・若年寄水野出羽守忠友・北町奉行曲淵甲斐守それに町人側から町年寄が登場する。
 先ずは明和8(1771)年12月に実施された町人向け資金原資として幕府が町年寄に貸し付けた5万両についてみることにしよう。
 融資の内容は次の通り。明和8(1771)年12月11日に松平右近将監から月番の町奉行(北町奉行曲淵甲斐守)経由で、喜多村彦右衛門、奈良屋市右衛門、樽屋与左衛門の三町年寄に対して、幕府資金(在方御手当)5万両の貸付が次のような条件で命じられることになった。
 元  金 5万両
 利  率 年10%(年間利息 5千両)
 償還期間 5年
 担  保 無担保
 その他  町年寄りに対して年間の利息5千両のなかから250両(元金に対して0.5%)を雑費用として与える。
 これらの融資先は、金吹町家持の播磨屋新右衛門のような両替、浅草瓦町家持の伊勢屋四郎左衛門や浅草新旅篭町家持の伊勢屋四郎兵衛のような札差などの大商人が主だったものだった。そして融資先は家持74名、地借7名、地守1名、家主1名となっている。このように幕府の資金が町年寄を通じて両替商、札差といった当時の町人向けと武家向けの金融機関に融資され、ともに運用されることになった。この5万両の融資話は1771(明和8)年11月に持ち上がり、12月中旬には市中消化が完了した。このように当時の江戸市中の資金需要は旺盛だった。 そして早くも翌年正月には明和8年12月分の利子が幕府に払い込まれた。
 このようにして実施された幕府の民間への融資制度=幕府の財テク、これは5万両を原資として行われた。この5万両をすべて貸し出してしまうと、それで一時ストップとなる。 それでも、タンス預金が活用され、流通速度が早くなって、経済を刺激したに違いない。(これに関しては <幕府の財テクは年利1割の町人向け金融>▲ を参照のこと)
消費者金融 流通速度を速める融資として、消費者金融の融資がある。これも信用創造ではないが、流通速度を速める。消費者金融は銀行から資金を借りて消費者に融資する。資金を右から左に動かすだけだが、これで流通速度は早まる。そして、この場合銀行が消費者金融に資金を融資することは信用創造と言える。 
国債を発行しての財政政策 このような例として、赤字国債を発行しての財政政策も考えられる。10兆円の国債を発行すれば、市場から10兆円を引き上げることになる。従って、「公共投資がGDPを0.5%引き上げる」と言うなら、「その前に、国債が民間資金を引き上げるために、GDPを0.5%引き下げる」と言うべきだ。 それでも、その10兆円が眠っている資金ならば、公共投資によって流通速度が速くなり、それなりの景気刺激策にはなるかも知れない。 (これに関しては 日本版財政赤字の政治経済学▲ を参照のこと) 
<管理通貨制度での銀行の錬金術> 前回の<量的緩和政策は不良債権処理支援策だった?>で書いた <<日銀当座預金での決済とは>▲ は銀行が流通速度を速める融資の方法だった。 「信用創造プロセス」という言葉は不適当だ。貨幣を創造するのではなく、貨幣の流通速度を上げているにすぎない。 金融経済学のポイントは「銀行は資金がなくても融資することができる」だ。 現代の錬金術は銀行が行う。しかし、現代の経済学者はこの錬金術を重視しない。田沼意次時代の融資の方が親しみを覚えるのだろう。この錬金術はいかにも市場経済・資本主義的で「市場原理主義」などという言葉を使って非難する隠れコミュニストに気を使う人は、あまり話題にしたくないかも知れない。 あまり触れずにそっとして置いて欲しいかも知れない。けれどもこれが資本主義経済を刺激する錬金術なのだ。「資金が無くても人に金を貸すことができる、錬金術」。
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<ベースマネーとマネーサプライの寓話>  外国からエコノミストがやって来て、日本の経済学者に言った。
「日本経済のパフォーマンスは素晴らしいですね。それは日本の長期金利を見れば判ります。長期金利が高いので、経済成長が堅実で企業の投資意欲が旺盛だということが判ります」
「なかなか良いところに目を付けましたね。仰有る通りです。わが国では景気が良いので、企業は少しぐらい金利が高くても、今のうちに設備投資・在庫投資をしておこうと銀行からの融資を受けています」
「そこで考えたのですが、わが国でも長期金利を高くすべきです。そうすれば日本と同じ様な成長が期待できます」
「ハハハ!違いますよ。もう一度経済学を基礎から勉強して下さい。経済が好調なのが原因で、金利が高くなっているのは結果です。結果である金利をいじっても原因である経済成長は期待できません」
「そうですか。教えて頂きありがとうございます。国に帰ってこんなことを言ったら、私が恥をかくところでした。もう一度経済学を勉強し直します」
 こんなようなことがあってから、今度の日本の経済学者が外国へ視察に出かけた。
「あなたの国の経済パフォーマンスは素晴らしいですね。それはベースマネーの増加率を見れば判ります。ベースマネーの増加率が高いということは、マネーサプライの増加率が高いということで、貨幣数量説から考えてもあなたの国の経済が好調だということが判ります」
「なかなか良いところに目を付けましたね。仰有る通りです。好景気で企業の銀行からの融資が増えていて、そのためにベースマネーである準備金=中央銀行当座預金が増えています」
「そこで考えたのですが、日本でもベースマネーを増加させるべきです。それには日銀は量的緩和政策をさらに進め、インフレターゲット政策をとりべきです。そうすれば日本も貴方の国と同じ様な成長が期待できます」
「ハハハ!違いますよ。もう一度経済学を基礎から勉強して下さい。マネーサプライの増加が原因で、ベースマネーの増加は結果です。結果であるベースマネーをいじっても原因であるマネーサプライは変化しません」
「そうですか。教えて頂きありがとうございます。日本に帰ってこんなことを言ったら、私が恥をかくところでした。もう一度経済学を勉強し直します。でもこのことは黙っています。自分の恥を公表する必要はないので、この件についてはあまり発言しなようにしておきます。 せいぜいインフレターゲットは日銀に対するいやがらせだ、と言ってインタゲ派からは距離を置くことにします」
 このような寓話はどうでしょうか?でもベースマネーの増減が原因でマネーサプライが増減すると、信じている人には悪い冗談としか思えないでしょうね。
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<融資総額を決めるのは、銀行の資金量か?企業の資金需要なのか?>
教科書の説明では、企業の資金需要があっても銀行の資金が足りない。そこで預金が預け入れられたり、日銀の資金提供があると、銀行はそれを原資として企業への融資を実施する。こうした状況なので、銀行の資金=日銀当座預金残高=ベースマネーの量によって貸出し総額が決まり、マネーサプライが決まる。このような説明になる。 この説明は何かに似ている。それは「供給はそれ自身の需要を創造する」と要約されるセイの法則に似ている。TANAKAの説明は「消費量は総需要によって決まる」だ。 
 「経済学はセンスだ」と思うことがある。教科書が説明する銀行貸出しの仕組みは間違いではないが、現代日本の銀行には相応しくない捉え方だ。資金難の銀行の、とても貧しいやり方に思えてくる。江戸時代の融資や消費者金融の融資とは違うはずだ。
 このホームページの 創刊号▲ で「外形標準課税という名の増税には反対です」と題して書いた。その中で「銀行員の給料は高すぎる、との嫉妬心が正義論として通用すると」という表現を使った。多くの金を扱う銀行員はそれなりに高級取りで良いと思う。 庶民感覚が大切だとの考えは頭から否定することはできないが、多額の金銭を扱う場合は、それに合った生活レベルとセンスも必要だと思う。教科書の説明からは大金を扱うセンスは感じられない。反証不可能な非科学的な発想ではあるが、このような発想も神話に挑戦するときには必要になると思う。
「なぜ、貨幣乗数が下がっているか?」との愚問 ベースマネーの増減が原因でマネーサプライが増減すると、信じている人は「なぜ、貨幣乗数が下がっているか?」との愚問を投げかける。「これほどまでに日銀当座預金残高が増えているのに、どうしてマネーサプライは増えないのだろうか?」 「その原因は、銀行が不良債権処理などでリスクを取らなくなっている。それと………」と話が進んで行く。本当は「マネーサプライがそれほど伸びていないのに、どうして日銀当座預金は伸びているのだろう。銀行にとって他に資金の運用方法はないのだろうか?」との疑問を持つべきだ。
 インタゲ派エコノミストは「量的緩和政策で日銀当座預金残高は25兆円を超している、それなのに、なぜマネーサプライは増えないのか?」に答えなければならない。そこで「いや、方法は他にもある。シニョレッジチャンネルもあるし……」と質問をはぐらかす。本当は「おかしい、ハイパワードマネーは増えている。それなのにマネーサプライは増えない。何故だろう?」 と悩んでいる。ベースマネーの増減が原因でマネーサプライが増減すると、信じている人は何とか理由を探さなくてはならない。誰かが、「ベースマネーの増減が原因でマネーサプライが増減する、というのは経済学の神話ですよ。マネーサプライの増減でベースマネーが増減するのだから、悩む必要はありませんよ」と言ってあげればいいのだが、エコノミスト業界全員が、この神話を信じているので、だれも忠告しない。
 これほどまでに全員一致が徹底すると怖ろしい。TANAKAは以前に <全会一致の怖ろしさ>▲ と題して書いた。 日本のエコノミスト業界が 自家不和合性▲ に陥っているのではないかと心配だ。
どうして神話を疑わないのだろうか? エコノミスト業界の人たちは「ベースマネーの増減によってマネーサプライが増減する」との神話をどうして疑わないのだろうか?実に簡単なことで、難しい理論も、法則も必要ない。実際に銀行でどのようなことが起こるのかを、考えればすぐに分かりそうなものなのだが……
 もしかしたら、準備率の具体的な数字を知らないのではないだろうか?今ではネットで調べれば誰でも簡単に準備率を知ることができる。教科書ではほとんどが「準備率を10%とすると」と話が進んでいる。準備率がたったの0.1%〜1.3%%ということが分かれば、 「銀行は手許資金がなくても貸し出すことができるのではないか?」と神話を疑い始めるはずだ。 そして、翌月の15日が締め切りと分かれば、そして、すぐに引き出されれば準備金はもっと少なくて済む、ということがわかれば、「今までの教科書に書かれている信用創造メカニズムはなにか変だ」と迷うはずだ。 そうして、岩田・翁論争で争点となった、「日銀はマネーサプライをコントロールできるか?」に自ずと答えが出るはずだ。銀行は日銀からの資金提供を受けなくても、需要さえあればいくらでも企業に融資することができる。それが分かれば、 「ベースマネーの増減によってマネーサプライが増減する」が神話で、本当は「マネーサプライの増減によってベースマネーが増減する」と神話を批判するはずだ。
 もう一つの誤りは、「貸出しとは手許現金を企業に手渡しすること」と思わせる文章だ。著者がどのように理解しているのか分からないが、読者はそのように思い込んでしまう。「通貨流通制度での銀行は、錬金術を心得ている」と分かれば、 田沼時代の融資や、消費者金融の融資のような流通速度を早める融資と区別して考えられるはずだ。
 準備率や歩積みに関心を持たずに、銀行でどのようなことが起きているかを考えず、学生時代教わった「信用創造メカニズム」をそのまま教えているのではないだろうか?それ
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<主な参考文献・引用文献>
これらはすべて「ベースマネーの増減が原因で、マネーサプライが増減する」との神話に基づいて書かれている
金融{新版}                池尾和人・岩佐代市・黒田晁生・古川顕 有斐閣      1993. 2.20
マクロ経済学 新経済学ライブラリ=3         浅井和美・加納悟・倉澤資成 新世社      1993. 2.25
入門マクロ経済学                             中谷巌 日本評論社    1993.12.30
金融                                  小野善康 岩波書店     1996. 1.22
現代マネタリーエコノミックス M.G&K.Gハジミカラキス  石橋春男・関谷喜三郎訳 多賀出版     1997.10.20
現代金融論講義                        藤原賢哉・家森信善 中央経済社    1998. 4.15
初級・マクロ経済学                 鴇田忠彦・足立英之・藪下史郎 有斐閣      1998. 6.20
事典 金融と経済のしくみがわかる                    芹澤数雄 中央経済社    1998.12.30
金融論 増補改訂版                            柴沼武 創成社      1999. 3.31
経済学入門 21世紀型文明をどう築くか                 正村公宏 筑摩書房     1999. 5.25
金融入門                               岩田規久男 岩波新書     1999. 9.20
日本経済学                               永谷敬三 中央経済社    1999.10.15
現代の金融と政策{郵政研究所研究叢書}            小佐野広・本多佑三 日本評論社    2000. 1.15
金融論{新版}                柴沼武・森映雄・藪下史郎・晝間文彦 有斐閣      2000. 2.20
経済学 基礎から実戦へ                         中桐宏文 有斐閣      2000. 4.10
金融                                 岩田規久男 東洋経済新報社  2000. 5.11
金融政策の論点 検証・ゼロ金利政策                 岩田規久男編 東洋経済新報社  2000. 7.13
インフレ・ターゲッティング 物価安定数値目標政策            伊藤隆敏 日本経済新聞社  2000.11.20
金融経済論                               里麻克彦 税務経理協会   2001. 1.15
金融政策の有効性と限界 90年代日本の実正分析      細野馨・杉原茂・三平剛 東洋経済新報社  2001. 3.20
マクロ経済学と日本経済                         松川周二 中央経済社    2001. 4. 1
金融のすべてがわかる事典                        三宅輝幸 日本実業出版社  2001.11. 1
デフレの経済学                            岩田規久男 東洋経済新報社  2001.12.27
やぶにらみ金融行政                            中井省 財経詳報社    2002. 1.18
マクロ経済学入門講義                           田中宏 慶應義塾大学出版会2002. 2. 1
マクロ経済学                              伊藤元重 日本評論社    2002. 2.25
国際金融のしくみ                        秦忠夫・本田敬吉 有斐閣アルマ   2002. 3.20
デフレ下の日本経済と金融政策 中原伸之・日銀審議委員講演録       中原伸之 東洋経済新報社  2002. 3.31
入門 現代日本の金融                         玉木勝 シグマベイスキャピタル2002. 4. 1
金融論入門                          藤原賢哉・家森信善 中央経済社    2002. 4.20
マクロ経済学<やさしい経済学シリーズ>                 浜田文雄 東洋経済新報社  2002. 4.30
入門 金融                               黒田晃生 東洋経済新報社  2002. 5.24
マクロ経済学と金融                     石橋春男・関谷喜三郎 慶應義塾大学出版会2002. 6.20
はじめての金融経済                 花輪俊哉・小川英治・三隅隆司 東洋経済新報社  2002. 7. 4
ビジュアル 金融の基本 日経文庫967                 高月昭年 日本経済新聞社  2002.11.11
最初の経済学 第2版            吉岡恆明・山田節夫・山中尚・大倉正典 同文館出版    2002.11.15 
テキストブック 現代の金融(第2版)                   古川顕 東洋経済新報社  2002.12.12
デフレの罠をうち破れ 日本経済土壇場の起死回生策            新保生一 中央公論社    2002.12.20
金融政策の政治経済学(下)                       北村行伸 東洋経済新報社  2002.12.28
まずデフレをとめよ                         岩田規久男編 日本経済新聞社  2003. 2.10
マクロ経済学パーフェクトマスター               伊藤元重・下井直毅 日本評論社    2003. 3.30
新版 図解 金融を読む事典                   日本総合研究所編 東洋経済新報社  2003. 8.14
マクロ経済学                              明石茂生 中央経済社    2003. 9.20
経済学が面白いほどわかる本{マクロ経済編/経済政策編}        大久保隆弘 中経出版     2003. 9.24
入門マクロ経済学 第2版                        井堀利宏 新世社      2003.11.10
テキスト現代金融                            土田壽孝 ミネルヴァ書房  2004. 1.30
「大停滞」脱出の経済学 デフレに勝つことが構造改革だ!          原田泰 PHP研究所   2004. 2.12
金融論 放送大学教材                         岩田規久男 放送大学教育振興会2004. 3.20
金融論                                 堀内昭義 東京大学出版会  2004. 4. 6
Q&A日本経済100の常識                   日本経済新聞社編 日本経済新聞社  2004. 9.16
新しい日本銀行{増補版} その機能と業務           日本銀行金融研究所 有斐閣      2004.10.30
はじめて学ぶ金融のしくみ                        家森信善 中央経済社    2004.12.10
マクロ経済学のナビゲーター(第2版)                   脇田成 日本評論社    2004.12.20
ベーシック マクロ経済学入門                      井上歳久 プレアデス出版  2005. 2.28
エッセンシャル マクロ経済学                      大住圭介 中央経済社    2005. 9.15
( 2005年10月17日 TANAKA1942b )