HELGE LIEN
要は、数えようとしないこと!
なまじ数えようとするからいけないのであって、流れ出てくる音楽にそのまま身を任すのが正解のようだ
"HELLO TROLL"
HELGE LIEN(p), FRODE BERG(b), KNUT AALEFJAER(ds)
2008年2月 スタジオ録音 (OZELLA MUSIC : OZ 021 CD)

前作"TO THE LITTLE RADIO"(JAZZ批評 342.)はスタンダード・ナンバーとジャズの巨人のオリジナルを中心とした構成ながら何回も何回も噛締めたくなるアルバムだった。今も時々引っ張り出しては聴いている愛聴盤だ。
対してこのアルバムはLIENのオリジナル曲集だ。実は、このアルバムが発売になる大分前からネットでこのアルバムの数曲を聴いていた。なかなか面白いアルバムだと思っていたが、入手の順番で今になってしまった。今でもこのアルバムの4曲ほどが試聴できるので興味のある方は一度お試しいただきたい。MySpace.comの「ミュージック アーティスト検索」で「検索キーワード」に"HELGE LIEN"と入力すれば"HELGE LIEN TRIO"の画像が表示されるので、それをクリックすればOK!もしくは"http://www.myspace.com/helgelientrio"に直接アクセスすれば良い。今日時点で@、A、C、Hの4曲がフルに試聴できるはず。

@"GAMUT WARNING" いきなりの変拍子。とても数えていられないほど複雑な変拍子と思えてしまう。こういう変拍子でも躍動していけるのだからプロは凄いと思う。でも、聴いていて楽しいかというとそうでもない。体が、リズムをとろうとするのだが乗り切れないのだ。おまけに、フェード・アウトで終わってしまう。
A"AXIS OF FREE WILL" 
B"RADIO" フリーなイントロでスタートする叙情的なテーマ。イン・テンポになることなく終わってしまう。

C"TROOZEE" これも変拍子のようだ。ひょっとして7拍子?何か忘れたような、足りないような・・・。1拍足りなくても、これはスイングしているね。僕流に言うと、このアルバムはこの曲から聴き始めたらよいと思う。で、前の3曲は最初から無かったものと思えば、結構楽しめるアルバムなのだ。AALEFJAERの見事なブラッシュ捌きが堪能できる。
D"DIVERTED DANCE" 叙情的なピアノのソロで始まる。それが終わると躍動感のあるユニゾンの演奏にシフト。が、これも変拍子?1拍多いような、お邪魔虫がいるような・・・。
E"IT IS WHAT IT IS, BUT IT IS" ふーっと、ため息をつきたくなるような2ビートの美しいスロー・バラード。一息ついた感じ。僕の中では、全身全霊でこの音楽を受け入れようとしている。BERGの良く歌うベース・ソロを経てテーマに戻る。
F"HALLA TROLL" アヴァンギャルド風の出だしで始まる。これまた変拍子!
G"SNURT" 躍動感溢れる変拍子?何が何だか分からなくなってきた!でも、素晴らしい演奏であることは間違いない。要は、数えようとしないこと!なまじ数えようとするからいけないのであって、流れ出てくる音楽にそのまま身を任すのが正解のようだ。そういえば、この音楽、e.s.t.の奏でた音楽を髣髴とさせる。
H"IN THE WIND SOMEWHERE" ひょっとして、これも変拍子?いやいや、数えちゃあいけない!
 
実に面妖なアルバムである。乗りそうで乗り切れない。何といってもこれでもかと次々に出てくる変拍子に辟易する。もっと、素直にシンプルに身を任せたいのであるが、そうはさせてくれないもどかしさがある。しかし、これこそがHELGE LIEN がHELGE LIENである所以かもしれない。   (2008.10.19)



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独断的JAZZ批評 508.