KENNY WERNER
ほーら!
ストレートに演奏すればこんなにも良いのに!
"WITH A SONG IN MY HEART"
KENNY WERNER(p), JOHANNES WEIDENMUELLER(b), ARI HOENIG(ds)
2007年9月 スタジオ録音 (VENUS RECORDS : VHCD-1018)

前掲の"A TIME FOR LOVE"(JAZZ批評 509.)に続きKENNY WERNERの登場である。今回はトリオ。録音年月日でいうと相前後する。こちらのアルバムが先で2007年の9月録音。前掲のアルバムが2008年4月の録音だから7ヶ月の時間差がある。
まあ、相も変わらずヴィーナス・レコードのジャケットはヌード路線が改まらないが、もういちいちコメントする気力も失せた。中身さえ良ければ文句も言うまいと思うが、果たしてその結果は?
で、このアルバムであるが、ドラムスに今、話題のARI HOENIGが参加している。最近ではAKIKO GRACEの"GRACEFUL VISION"(JAZZ批評 493.)にも参加しているし、あちらこちらで引っ張り凧だ。
ベースはドイツ・ハイデンブルグ生まれのJOHANNES WEIDENMUELLERが参加している。このベーシスト、過去にはHANK JONESとの共演暦もあるらしい。
ピアノのWERNERは前掲のアルバムでは素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた。デュオという最小のユニットで心通い合うインタープレイは見事であった。

@"WITH A SONG IN MY HEART" メロディ・メーカのRICHARD RODGERSの書いた曲だが、このアルバムにはもう1曲、Cが入っている。後半部に少々大仰なクライマックスがあり、その後、軽いボサノバ調に変化して終わる。
A"NARDIS" 長めのイントロの後、M. DAVISの書いたテーマが現れる。ここでは7/4拍子で演奏されている。
B"AUTUMN LEAVES" イントロなしにいきなりテーマに入る。2コーラスまでは2ビート。3コーラス目から4ビートを刻む。極めてオーソドックスな演奏にびっくり。でも、こういう当たり前に弾くっていうのは実力がないと出来ない技だ。こういう聞き古されたスタンダードというのはアレンジに凝ったり、コケオドシ風な演奏になったりするものだけど、流石、実力者。良いパフォーマンスだ。酒が美味くなる!
C"IF I SHOULD LOSE YOU" HOENIGの軽快なブラッシュ・ワークに乗って4ビートを刻んでいく。スティックに持ち替えてからのHOENIGのドラミングは天真爛漫だ。
D"BEAUTY SECRETS" WERNERのオリジナルだというが、どこかで聞いたことがあるようなワルツ。このアルバム最長の12分と13秒。最後の3分間ではGREENSLEEVES"らしきフレーズが繰り返される。
E"ALL THE THINGS YOU ARE" 変拍子で演奏されていて、ちっとも快くない。むず痒い背中に手が届かない感じ。
F"BALLOONS" WERNERのオリジナル。定型パターンの左手と自由な右手のアンサンブル。
G"26-2" 理屈を捏ね回したような演奏ですっきりしないし、第一、スイングしていないもの。
H"BLUE IN GREEN" イン・テンポになってからがグルーヴィ。ほーら!ストレートに演奏すればこんなにも良いのに!わざわざ変拍子など取り入れる必要は何もないのにね。

プレイヤー同士のコミュニケーションの深さにおいて、前掲の"A TIME FOR LOVE"に及ばない。変拍子などを取り入れた結果、一癖も二癖もあるアルバムとなってしまった。策に溺れた感じ。
何といっても、ストレートに演奏したBとHが出色。   (2008.11.05)



独断的JAZZ批評 510.