KASPER VILLAUME
ヨーロッパ*2+アメリカ*2=6
"HANDS"
CHRIS POTTER(ts, ss) KASPER VILLAUME(p), CHRIS MINH DOKY(b), ALI JACKSON(ds, percussion)
2005年8月 スタジオ録音 (STUNT RECORDS : STUCD 05122)

2006年発売の話題作だ。1ヶ月ほど前に中古アルバムをゲットしたが、手持ちの在庫消化が進まず遅れに遅れてしまった。
このピアニストは僕の中では、ヨーロッパ若手ピアノの三羽烏の一人。他の二人はSTEFANO BOLLANI とCARSTEN DAHL だ。
こういうストレートなジャズをヨーロッパ勢が演るようになったのと反対にアメリカ勢の演奏にトンとこういう演奏を聞かなくなった。本家本元を刺激して欲しい1枚。テナーを執るCHRIS POTTERは1971年のシカゴ生まれというから、録音時、34歳。これからが楽しみな年齢だ。若さ溢れる生き生きとした演奏に丸。というよりも、プレイヤー全員に丸だなあ。若々しさに溢れてハードでスピード感のある演奏にシャキッとする思いだ。
2006年の6月にKASPER VILLAUME + BOB ROCKWELL(JAZZ批評 343.)のカルテットを武蔵野スイングホールに聴きに行ったのはもう1年も前のことだ。このCDの録音はそれ以前ということになるが、こちらの方が若手の集まりで生き生きとした感じだ。

@"GREEN CHIMNEYS" 
T. MONK の書いた曲をグルーヴィに演奏。テーマに続いてロング・トーンで入ってくるVILLAUMEのピアノ・ソロが実にセクシー。軽やかな左手のバッキングもGOOD!続くPOTTERのテナー・ソロも忘れかけていたアメリカン・サウンズを思い起こさせてくれる。太くて小細工のないDOKYのベースも良いし、多彩なドラミングを見せるJACKSONも良い!最後に見せるVILLAUMEの低音部をガンガン叩く左手に参った!全てが上手く嵌っているし、全ての集約がここにある。そして、全ての曲がこのようにストレート・アヘッドに進んでいく。
A"CAPTAIN KIRKLAND" 
VILLAUMEのオリジナル・ブルース。これもグルーヴィーだ。自由奔放に歌いつくしたPOTTERのテナーが印象的だ。
B"CLOUDY & BLUE" 一転、VILLAUMEのオリジナル・バラード。POTTERとJACKSONが加わることにより、ヨーロッパでもない、アメリカでもない融合したサウンドが聞ける。
C"GONE" テーマが良い。GEORGE GERSHWINの書いた曲。POTTERはソプラノ・サックスで通す。テーマのサビの部分で4ビートを刻む心地良さ。忘れてならないのがDOKYの堅実で奇を衒わないベース・プレイだ。こういうベースがいるからこそ4ビートが生きてくる。ピアノ・ソロにおける左手のプレイがスリリング。渾然一体となったドライブ感が凄い。

D"HANDS" 
ミディアム・テンポのグルーヴィなVILLAUMEのオリジナル。テナーに続いて、ピアノのアドリブが冴え渡っている。粒立ちの良い右手、それをサポートする軽やかな左手のバッキング。
E"THE SNIPER" 
JAMES BONDのファンであるCHRIS MINH DOKYの書いた曲。なるほどね!
F"MEANING OF THE BLUES" 
この曲のみピアノ・トリオで演奏。DOKYのベース・ソロも良く歌っている。KEITH JARRETT(JAZZ批評 321.)の名演もあるので、参考まで。
G"GROOVE STREET"
 VILLAUME、自らが語っているようにここではCHICK COREAの影を認める。若かりし頃のCHICK COREA の大傑作、"NOW HE SINGS , NOW HE SOBS"(JAZZ批評 1.)の中にある"MATRIX"を意識したフレーズがVILLAUMEのピアノから垣間見れる。ALI JACKSONのソロを経てテーマに戻る。

いわば、このアルバムは直球勝負のアルバムである。久しぶりにスカッとしたアルバムでもあった。
ヨーロッパ人*2人にアメリカ人*2人を足してメンバーは4人だが、出来上がった音楽は6に昇華しているところが素晴らしい。洗練されたヨーロッパの空気とグルーヴィなアメリカの空気が混合して、えもいわれぬ空気を作り出した。
久しぶりに味わった爽快感に乾杯して、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2007.05.19)



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独断的JAZZ批評 415.