歯や口腔の健康を維持していくため、日本では国民皆保険制度が重要な役割を果たしている。歯の疼痛や歯周疾患、欠損補綴などに適切に対応し、患者・国民が安心して歯科医療機関を受診することができる皆保険制度は、今後も堅持していく必要があると言える。
周知の通り、国家財政の悪化を背景として、医療費削減論議が依然として活発化しているが、患者・国民が安心して治療を受けられるよう、政治力を発揮していく必要がある。
日歯は定例記者会見に於いて、未来投資会議の論点の中に歯科受診の促進策が盛り込まれたことを評価するとともに、成人期以降の健診義務化の重要性を強調した。
政府の未来投資会議では、働き方改革とともに国民の健康確保策を重視しており、その一環として、「重症の歯周病を放置すると糖尿病が発生する可能性が指摘されているが、歯科受診が必要な者については、歯科医療機関の受診を促す方策を検討すべきではないか」との指摘が為された。
これについて評価したものであり、堀会長は「適切な歯科治療等が全身の健康維持・増進に繋がることについて、各方面から期待が高まっている。これに応えられるよう尽力する」と要旨語った。
また、根本匠・厚労大臣に厚労関係予算・制度要望を行ったことに関し、「口腔と全身の関係についても理解いただけた」、「引き続き、国民歯科医療をしっかりと行っていきたい」と述べた。
この他、8020運動30周年記念事業の一環として制作され、来春公開予定となっている映画(笑顔の向こうに・仮題)に触れ、柳川副会長は「歯科技工士や衛生士の職業を広く知ってもらいたい」と発言。人材不足が懸念されている技工士などの確保にも繋げていく立場を示した。
日歯は、都道府県歯の専務理事を対象に連絡協議会を開き、最近の歯科界を取り巻く諸課題を説明。この中で堀会長は、自民党等に対して国民歯科医療・保健の充実を求めたことを報告。「口腔機能管理の徹底によって医療費削減効果や誤嚥性肺炎の減少・軽減につながることを説明し、歯科の様々な政策へ理解を求めた」と語った。
座長に佐藤副会長を選出した同協議会は、まず初めに歯科を取り巻く諸課題を各所管ごとに説明。この中で柳川副会長は、スポーツデンティストについて「第1期から4期までに352名、さらに受講者は増えており、各地域においてスポーツ歯科の推進を図って頂きたい」と述べた。
社保担当の遠藤常務は、30年度改定のポイントを解説するとともに、医療機関受診時の被保険者証の確認に関し、「オンラインで即時に行えるようにする枠組みはメリットもあるとされているが、オンライン対応していない医療機関でどのように対応するのかなど、更に煮詰めるべき点がある」と指摘。
地域保健関係では、本年度から段階的に導入される“後期高齢者支援金の加算率見直し”について、「歯科健診の受診者の把握や歯科受診勧奨によってインセンティブが設けられる」と解説。各保険者に説明していく方向性が示された。
また、厚労省・歯科保健課の宮原・歯科口腔保健推進室長も同省所管の施策を解説。「歯科口腔保健の施策を進めるには、その根拠となる統一指標のデータが必要であり、(現状では市町村ごとに異なっている)健診データフォーマットの標準化に向けた検討を進めたい」と発言。これに対し、出席者からは「早急に具現化して頂きたい」との要望も上がった。
厚労省は平成28年度の「保険医療機関等の指導・監査状況」を集計した。診療内容に則した適正な診療報酬を請求・支払するため、必要に応じて指導等を実施するものであり、同年度に個別指導を受けた保険医療機関等は、医科が1,601件(4,986人)、歯科が1,324件(1,979人)、薬局が1,598件(2,326人)。医科と薬局は件数・人数ともに増加した。
また、新規個別指導は、医科が2,154件(前年度対比0.7%減少)、歯科が1,599件(同6.4%減少)、薬局が2,420件(7.5%減)であり、いずれも前年度よりも少なかった。
監査を受けた医療機関等は、医科が28件(同24.3%減少)、歯科が39件(13.3%減)、薬局が7件(12.5%減)であり、いずれも前年度実績よりも改善傾向を示しているが、人数ベースで見ると、医師が103人(32.1%増)、歯科医師が120人(48.1%増)、薬剤師が40人(81.8%増)。相対的に規模の大きい医療機関や医療法人グループが監査を受けると、これに伴って監査を受ける医師等が急増するため、あくまでも目安に過ぎないが、監査の実態は特に悪化はしていなかった。
監査によって保険医療機関の取消処分を受けた施設(取消相当を含む)は、医科が8件(前年度よりも2件減少)、歯科が18件(8件の減少)、薬局が1件(増減なし)。保険医等の取消処分を受けたのは、医師が6人(1人の減)、歯科医師が14人(4人の減)、薬剤師が1人(増減なし)。
返還金の額は、指導によるものが40億8,898万円(9.4%減少)、適時調査によるものが43億5,931万円(42.9%減)、監査によるものが4億4,705万円(52.6%増)。監査に関しては、大規模医療機関等による大がかりな不正請求等が明るみに出ると一挙に返還金が増加するため、年度ごとの変動が非常に大きいのだが、平成28年度に関しては、前年度に引き続いて10億円未満の水準に留まった。
なお、個別指導等による自主返還に関しては、前年度実績よりは改善したものの、医療現場からは、依然として「細部にわたるレセチェックによって厳しく咎められた」、「指導の範疇を超えているのではないか」などの声も上がっている。
日歯連は評議員会を開き、平成29年度の一般会計収支など決算関連の全議案を可決した。この席上、高橋会長は執行部を代表して挨拶。日歯連盟に対する国民からの信頼確保に全力を尽くす方針を強調するとともに、政府の「経済財政運営と改革の基本方針2018」に歯科領域が盛り込まれたことを評価した。
本年の骨太の方針では、前年にも増して国民歯科医療の適正確保が示されており、高橋会長は「国民に向けて歯科口腔保健を提供するうえで大きな後押しとなる」、「かかりつけ歯科医の普及を進める方針が引き続き記載されており、これに則って各施策が為されることを期待している」と語った。
また、来賓出席した島村大・参院議員は「消費税率を10%に引き上げる際に、歯科の受診に影響が生じないか真剣に考えるべきだ」、「医学部の定員は削減しない方針だが、歯学部はどうするのか。みんなで考え、議論を進めさせて頂きたい」と発言。
歯系の石井みどり・参院議員は「(日歯連盟として組織代表は擁立しない方針を機関決定したが)まだ歯科領域で解決すべき課題は多いので、もう一期、この使命を果たしたい」と発言。来年7月の参院選に立候補する意向を示すとともに、「健康増進対策や働き方改革など、重要法案などに全力で取り組みたい」と語った。
この他、女性や若手の歯科医師が日歯連盟に入会しやすい環境づくりを求める声が上がり、執行部は「会費の減額など、ハードルを下げるアプローチを検討したい」との方向性を示した。
日本医師会総合政策研究機構(日医総研)は、厚労省の医療経済実態調査に対する分析と考察を行った。財務省の財政審などは「国公立を除く一般病院の損益差額は改善している」とし、平成30年度の診療報酬改定改定率は前回よりも低く抑えるべきとの立場を示しているが、実際には医業経営が厳しくなっているとの状況を様々なデータから論じたものであり、「このままでは地域医療の維持に支障をきたすのではないかと危惧している」と指摘した。
具体的には、まず医療法人立の一般病院について「黒字ではあるが、損益差額率は1.8%に過ぎず、再生産のための財源を確保できる状況にない」と分析。特に中小民間病院は医業収益が減少しており、小規模り病院においては前回調査時点の黒字から今回は赤字に転落してことを強調。
一般診療所に関しても、「個人立・有床を除いて損益差額率が横ばいまたは低下した」、「個人・有床の収益増加は保険外収入の増による」と解説。
収益性悪化の背景については、「一般病院では、医療の質の確保、患者ニーズの多様化に対応するため、様々な職種の人員が増加しているが、こうした多職種への評価が十分ではないため」と指摘。一般診療所に関しても、「給与費率は上昇しているが、院長給与の伸びは過去3回連続してマイナスだ」とし、これらを考慮した診療報酬の水準が求められると考察した。
保団連は、歯科用貴金属の価格高騰に関する緊急対応を厚労大臣に要請した。金パラなどの材料価格が高騰し、歯科医業経営に悪影響が生じているため、是正を求めたものであり、この要旨は次の通り。
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本年1月の中医協では、金パラなどの素材価格の変動率が5%を超えなかったため、本年4月からの随時改定は行わないことになった。しかし、抜本的な問題点が解決されていない。
まず第一に、随時改定では「合金価格」ではなく、金やパラジウムなど個々の「素材価格」を調査しているため、市場価格と素材価格の乖離に対応できていない(合金価格の方が高騰しやすい状況が反映されていない)。
第二点目は、調査期間が“過去6か月間”または“1年間”となるため、実際の市場価格との乖離がさらに生じているという事である。
現在の金パラの市場価格は、現行告示価格より約37%も上昇している(福岡県歯科保険医協会しらべ)。緊急対策を求めたい。
日本歯科技工士会は「社員総会」を開き、理事19名と監事2名を決定。その後の理事会で杉岡範明理事を会長に選定した。日技の理事者の選出方法は、まず総会にて「選挙区(6地区)」から7名(東海北信越地区のみ2名)、「全国選挙区(定数13名)」の理事を決定。この理事者の中から会長や副会長などを選定する。
このうち選挙区枠は、各地区とも定数内であったため、すんなりと決定(九州沖縄地区は直前に辞退者が出たため空席)。一方、全国枠は、19名が出馬したため、得票数で雌雄を決することとなり、投票総数79票のうち、66名の信任を得た夏目克彦・候補(岐阜県)を始め、上位13名が当選。次点の今瀬候補は37票(13位の者とは4票差)で落選した。
この選挙結果に対し、石川代議員(東京)から「会長には現職の杉岡さんを推薦したい」との要望が上がり、他の代議員からも賛同の拍手が上がった。この意見を参考にし、理事会では会長に杉岡氏を再選。また、専務理事も現職の夏目氏が就任することになった。
衛藤議長(広島)、川﨑副議長(熊本)のもとで議事進行した同総会は、まず初めに杉岡会長が挨拶。「歯科技工士のナショナルセンターのリーダーとして、歯科技工士の明るい未来を目指してきた」、「ところが、ここに来て、歯科技工士を志す若者の減少が危惧されている」と指摘したうえで、「質の高い歯科補綴物を継続的に供給することが困難とならないよう、必要な政策に取り組んでいく」と要旨語った。
その後、質疑応答が行われ、「海外から留学し、日本の歯科技工士養成機関で勉強している学生が国内で就労できるよう対策を講じて頂きたい(注:現行制度では就労不可)」、「認定歯科技工所管理者および認定基準歯科技工所の普及を目指していただきたい」などの意見が上がった。