厚労省は、平成元年から「8020運動」をスタート。日本歯科医師会等と連携して「80歳になっても残存歯数が20本以上となること」を目指し、目覚ましい成果を収めてきた。
しかし、残存歯数が確保されたならば口腔内の問題が全て解決するわけではない。咀嚼機能を維持し、様々な料理を美味しく食べられるようにすること、口元を気にせず、笑顔でいられることが大切となる。8020運動を契機として、健康長寿社会を実現させる取り組みが進められている。
糖尿病の予防対策の一つとして、歯周病治療が効果的だとの考え方が徐々に定着しており、医療現場では実際に効果を上げている事例が複数報告されている。しかし、全体的にみると、医科と歯科の連携が十分に機能していない実態も浮き彫りとなっている。
また、医師本人は「歯科医師による歯周病治療も組み入れて糖尿病および糖尿病予備群の治療等を進めたい」との認識を有していたとしても、糖尿病患者自身が定期的な歯科受診を躊躇することもある。
「重度の歯周病を放置しておくことは糖尿病患者の心血管病変や腎症を進行させることがある」との意識を如何にして喚起していくのかが大きな課題である。
医療の質向上を図るうえで、周術期に於ける口腔機能管理は極めて重要である。例えば、がん患者などが手術を行う前後に口腔機能の管理を行うことにより、術後の合併症など様々なリスクを軽減する効果も期待される。
そのため、現行の歯科診療報酬では、がん患者等に対して周術期等に行う口腔機能管理を評価した「周術期口腔機能管理計画策定料」を踏まえ、主に入院前後の口腔機能管理を実施した際に算定される「周術期口腔機能管理料(Ⅰ)」、入院中の口腔機能管理である「同(Ⅱ)」、放射線治療や化学療法、緩和ケアの際の管理である「同(Ⅲ)」、さらには歯科衛生士による専門的口腔衛生処置を評価した「周術期専門的口腔衛生処置」などが整備されている。
もっとも、この管理料は依然として十分には浸透しておらず、周術期口腔機能管理計画策定料を算定している歯科医療機関の割合は都道府県ごとに大きなばらつきがある。平成28年5月診療分でみると、広島のように県内の歯科保険医療機関の約1割が算定している県がある一方、約4分の1の都県が2%未満にとどまっているのが実状である。
日本学校歯科医会はこのほど記者会見を開き、最近の会務執行状況を報告。この中で川本強・会長は、マクロベースでは学齢期のDMF歯数が引き続き改善傾向を示していることについて「関係者のご努力によって実現できた」と述べたうえで、「二極分化が進んでおり、未だに多数歯のう蝕のある児童生徒がいる」と解説。今後の重点課題の一つとして、全体の底上げが不可欠だとの認識を示した。
ネグレクト等の具体的な問題が顕在化した際には、その対策の一環としてう蝕の治療などを実施することも可能だが、(未処置歯があるにも関わらず)保護者等が子供を歯科受診させないケースでは適正受診の喚起が難しいため、「こうした壁をいかに打破していくべきか、真剣に考えていきたい」と発言。また、窓口負担がネックになっているとの指摘もあるため、様々な自治体で取り入れられている窓口負担の軽減策を関係省庁などに求めていく方針も示した。
都道府県等からの報告に基づき、厚労省が集計した医療施設動態調査によると、平成29年8月末時点での歯科医院数は6万8,963件であり、前年同月比で53件の増加。依然として右肩上がりではあるが、増加率は0.077%に留まっており、鈍化傾向が顕著に出現した。
これを設立主体別にみると、個人立が5万4,514件(同428件の減少)、医療法人立が1万3,842件(489件の増加)、その他は607件(8件の減少)。個人が全体の79%を占めており、歯科医院の中心的な形態だが、新規開業(主体の変更含む)は医療法人が圧倒的に多くなっている。
また、医科の病院は8,418件(前年同月比31件の減少)、有床診療所は7,342件(同314件の減少)、無床診療所は9万4,563件(750件の増加)であり、従来通りの傾向が継続。
病床数は、医科病院が155万7,243床(同4,267件の減少)、有床診療所が9万9,737件(4,049件の減)、歯科は66件(3件の減)。特に、小規模の医療機関に於いて病床機能を廃止・縮小するケースが目立った。
昭和61年当時、歯科医師の総数は6万6,797人であったが、右肩上がりで伸び続け、平成22年には10万人の大台を突破し、10万1,576人。その後も緩やかにではあるが伸び続けている。
このうち歯科医院の開設者数は、昭和61年当時は4万2,997人であり、平成22年には6万100人にまで伸長したが、全体に占める割合は62.9%から59.2%に減少。他方において、歯科医院の勤務者は昭和61年当時の1万3,906人から平成22年には2万6,185人に倍増している。
健保連は、平成30年度の診療報酬の改定率が決着したことを踏まえ、要旨次の通りの見解を取りまとめた。
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健保連としては、従来から「今後も高齢化により医療費は増加が見込まれるのに対し、医療保険制度を支える現役世代の生産年齢人口は減少するため、国民負担は増大し、結果として国民皆保険制度の崩壊にも繋がりかねない」と分析。このため、マイナス改定とともに「薬価改定等による引下げ分は診療報酬本体に充当することなく、国民に還元すべき」と主張してきた。
しかしながら、結果として、診療報酬本体が0.55%の引き上げとなった。また、薬価等改定分(マイナス1.74%)の取扱いについて、国民への還元という方向性が示されなかったことは誠に遺憾である。