医科領域では、メタボリックシンドローム対策を始めとして様々な予防措置が進められているが、歯科領域に於いても同様である。昭和40年代から50年代頃までは、「歯が痛くなってから歯科医院を受診する」と考えていた患者が多かったが、現在では定期的に歯科医院で専門的口腔ケアを受けている人も増えている。
歯科は予防の効果が高い領域であり、各地方自治体(市町村など)や企業(健保組合など)、各種学校など、様々なステージで対策が講じられている。
厚労省は、都道府県からの報告に基づき、第二期全国医療費適正化計画の進捗状況を取りまとめた。これによると、平成27年度時点での特定保健指導の全国平均実施率は17.5%(前年度対比0.3ポイントの減少)であり、平成29年度の目標値(45%)とは大きく乖離している実態が浮き彫りとなった。この数値を上げるには、メタボ対策の重要性を被保険者等が理解し、協力を得ていくことが不可欠なため、各市町村等の担当者からは「努力はしているが(達成は)難しい」との意見が強く上がっている。
また、同年度の特定健康診査の実施率は50.1%(同1.5ポイントの増加)であり、ようやく5割を超えたものの、目標値(70%)には届いていない。
メタボリックシンドローム該当者・予備群の減少率(20年度対比)に関しても、2.74%に留まっており、この4年間は横ばい傾向。もっとも、都道府県別に見ると、東北地方の一部(山形や岩手)では10%前後も改善しており、この5年間で目立った成果を収めている事例もある。
なお、平均在院日数(目標値28.6日)に関しては、26年度時点で既に達成していたが、27年度はさらに1.3日ほど短縮し、27.9日となった。
文科省や日学歯、日本学校保健会などは、沖縄コンベンションセンターで「全国学校歯科保健研究大会」を開き、学校歯科を取り巻く主要団体の関係者が更なる改善を目指して取り組む方向性を確認した。同大会は、児童生徒の「生き抜く力」をはぐくむ歯・口の健康づくりを展開するため、毎年行われており、今回で82回目。
この間に、学校歯科医の尽力などによって齲蝕歯数は大幅に改善したが、歯肉炎や歯列不正、摂食障害などの課題も山積しているため、文科省や日学歯の代表者らが引き続き連携強化。開会式では、まず柴山昌彦・文科大臣(代読)が「学校と地域医療機関の連携など、様々な課題解決に向けた取り組みを支援してまいる」と挨拶。
続いて日学歯の川本強・会長は、児童生徒の歯科疾患の状況などを踏まえたうえで「一人でも多くの方々が歯・口腔の健康に着目され、生き抜く力を獲得するための役割を担いたい」と語った。
また、今大会の当番県である真境名勉・沖縄県歯会長は、「むし歯や歯肉炎などの疾病対策のみならず、口腔機能の健全育成は今後取り組むべき大きな課題だ」と指摘。日本学校保健会の横倉義武・会長(代読)も「医師会や歯科医師会、薬剤師会などが連携して取組みを進めることが重要だ」と語った。
これに続いて行われた全日本学校歯科保健優良表彰では、特徴ある学校歯科保健活動を継続かつ計画的・組織的に実施してきた7校に優秀賞(文部科学大臣賞)。さらに日本学校歯科医会会長賞(7校)、日歯会長賞(11校)、奨励賞(105校)の各校を表彰した。
この他、シンポジウムでは、明海大学の安井利一・学長を座長に迎え、学校歯科保健活動の持つ教育力について検討。この中で、KAZUデンタルクリニックの平良和枝・院長は「学校歯科の各現場に於いて数値目標を設定し、PDCAスパイラルサイクルの仕組みをどのように機能させていくのかが重要だ」と解説。さらに、領域別の研究協議会も行われ、盛会裏に終了した。
中医協は、平成30年4月からの診療報酬に関し、具体的な点数設定で合意。加藤勝信・厚労大臣に答申した。財源が限られているため、適正な点数水準の確保などの面で課題を残したが、患者に安心・安全な医療を提供していくために必要な費用等に配慮し、院内感染の防止対策をきちんと講じている事を条件として初・再診料の引き上げなどを行った。
医科歯科連携に関しても、従来の歯科医院内で完結する治療から更に広げ、「患者の治療を地域全体で担っていく体制づくり」が期待されているため、これに関連した点数や適用範囲の充実が図られた。
医科手術を受けた患者のQOL向上にも寄与する周術期口腔機能管理についても、その重要性が周知されてきた事を踏まえ、適用範囲の一部拡大を行った。
感染根管処置や充填、印象採得、有床義歯など、歯科固有の点数についても、不十分ながら幅広い項目で増点が行われた。
なお、具体的な算定要件などに関しては、今後、幅広い意見を聴取しながら通知や疑義解釈を発出していく予定。
政府は、平成30年度の診療報酬改定率を本体部分はプラス0.55%する一方、薬価はマイナス1.65%、材料価格もマイナス0.09%とすることで合意した。このうち薬価は、実勢価格等で1.36%、薬価制度の抜本改革で0.29%引き下げる方針。
診療報酬本体の内訳は、医科がプラス0.63%、歯科がプラス0.69%、調剤がプラス0.19%。政府の財政当局のほか、医療費増加による負担が重くなる企業経営者等からは「医師の収入を増やす必要性があるのか」との反発も上がっているが、そもそも診療報酬は医師等が行う治療行為を評価するもの。安心・安全な医療を推進し、各種疾患などに対する治療をさらに充実させる必要があるため、プラス改定に踏み切った。
また、介護報酬は平成30年度から0.54%アップ。障害福祉サービス等の報酬も同0.47%引き上げる。
東京都歯科医師会は臨時代議員会を開き、平成30年度の事業計画や収支予算、定款の一部改正など全議案を可決確定した。また、山崎会長は日常診療の更なる充実を目指して会務執行する方針を確認するとともに、会立の歯科衛生士専門学校の現状を説明。「歯科衛生士の必要性・重要性が社会的に認知されているにも関わらず、実際に入学したのは定員の約半数に留まっている」とし、協議を求めた。
平成30年度の事業計画では、「都民の健康意識は高まっているが、口腔領域の重要性については未だに浸透しきれていない。このため、都民を対象とした幅広い普及啓発活動、情報提供を実施する」、「事故・災害時における医療救護活動が適切に行えるよう、会員歯科医師等の各種訓練・知識習得に励む」と要旨解説した。
日学歯は加盟団体長会を開き、平成30年度の事業計画案などについて協議した。総会に向け、各県学校歯科医会などの意見を確認したものであり、執行部が示した原案に対して特段の異論は上がらなかった。
齋藤副会長の挨拶で開会した団体長会は、まず川本会長が「日本人の平均寿命は世界有数であり、健康寿命も良好だ」と解説した上で、「学齢期の歯科保健活動が人生後半の生き抜く力に繋がっていると考えている」と発言。学校歯科医やかかりつけ歯科医、保護者、学校関係者、行政当局などが連携して子供の歯科保健対策に取り組み、DMF歯数などを減らしておくことが、一生涯に亘る健康の確保に有益だとの認識を示した。
続いて来賓挨拶が行われ、文科省の三谷卓也・健康教育食育課長(代理)は「学齢期の全ての学年でむし歯が減っており、学校歯科医の皆様のご尽力に感謝している」、「文科省としても、児童生徒の歯の健康づくりにしっかり取り組んで参りたい」と語った。
その後、執行部が会務や会計現況などを報告。この中で日学歯のガバナンスも提示され、①法人法などに基づいた適正な機関運営、②公正な情報開示と透明性の確保、③監事の監査が実効的に行われることを確保、④加盟団体との関係強化などを掲げた。
学校歯科医の生涯研修制度規程および細則に関しては、「(日学歯の正会員か否かによらず)基礎研修を修了した者には、本会より基礎研修修了証を交付する」、「(いわゆる空白の1年が生じないよう)更新研修は基礎研修有効期間終了までに受講する」との見直しが示された。
この他、公益法人への移行に伴う課題や、入会促進対策などが協議され、柘植副会長の挨拶で閉会した。
日本学校歯科医会は臨時総会を開き、学校歯科保健の充実させるための資料作成等に取り組んでいく方向性を示した。また、公益社団法人に移行させるための準備を引き続き進める方針を確認した。
議案審議では、まず総会議長・副議長の選出議案が上程され、特段の混乱もなく、議長に是澤恵三氏(愛媛県)、副議長に森永和男氏(茨城県)を決定。予算決算特別委員会と議事運営特別委員会の委員(各7名)も予定通りに選出された。
その後、来賓挨拶が行われ、文科省・健康教育食育課の三谷卓也課長(代理)は「むし歯のある人は減っており、未処置歯を有する人も過去最低になった」と評価したうえで、「さらなる学校保健の推進のため努力してまいる所存であり、(日学歯の会員にも)協力をお願いしたい」と要望した。
また、本年度の重要施策として、①学校歯科医師の基礎研修や専門研修の実施、②歯肉炎に関する全国各地の調査研究、③口腔機能の発達段階に即した健全育成の調査研究、④東京オリンピック・パラリンピックに向けたスポーツ歯学、などを検討していく方針を確認。柘植副会長の挨拶で閉会した。
厚労省は平成27年度の「国民医療費の概況」を集計。これによると、同年度の国民医療費は約42兆3,644億円であり、前年度よりも1兆5,573億円、3.8%の増加。5年ぶりの高い伸び率となった。
人口1人当たりでは、約33万3,300円であり、高齢化の更なる進行等によって前年度よりも1万2,200円増加した。
これを診療種類別でみると、医科・入院が15兆5,752億円(前年度対比2.0%増)、医科・入院外が14兆4,709億円(同3.5%増)、歯科が2兆8,294億円(1.4%増)、調剤が7兆9,831億円(9.6%増)などであり、引き続き調剤分の伸び率が堅調。
このうち歯科の状況を年齢階級別にみると、0~14歳の1人当たり医療費は1万4,200円(前年度比3.6%増)、15~44歳が1万5,900円(1.3%増)、45~64歳が2万4,100円(0.4%増)、65歳以上が3万2,700円(0.6%増)であり、若年層の伸びが特に目立った。
また、高齢者のうち、75歳以上の者のみ抽出してみると、1人当たり3万2,200円。65~74歳よりも絶対額は低いものの、増加率は2.5%の高水準を計上しており、残存歯数の増改傾向を背景として高齢者の継続的な歯科治療が定着している状況が示唆された。
厚労省は、各都道府県からの報告に基づき「平成30年8月末時点の医療施設動態調査」の結果を集計。これによると、歯科診療所数は6万8,590件であり、前年同月から373件の減少となった。長年にわたって右肩上がりで推移してきたが、3年前から横ばい傾向。直近の2年は若干の減少傾向も出現していたが、この状況が定着しつつあり、今回調査でも前年同月比0.54%の減少となった。
なお、30年8月末時点の医療機関総数は17万8,977件(前年同月より309件の減少)。この内訳は、医科病院が8,376件(同42件の減少)、医科・有床診療所が6,948件(同394件の減少)、無床診療所が9万5,063件(500件の増加)など。
国の基本政策に基づき、病院や有床診療所は引き続き減少傾向であり、特段の変化は見られなかった。医科・無床診療所に関しても、従来通りの増加傾向が続いている。
歯科の状況を開設主体別に見ると、個人立が5万3,704件であり、前年同月より810件の減少。依然として歯科全体の78.3%を占めているが、その比率は1.6ポイント減少した。
一方、医療法人立は1万4,281件(同439件の増加)。着実に伸長しているが、医療現場には「(歯科医療費が微増となっている状況下で)医業収入が伸びている医療機関も多く、今後もさらに法人化が進むのではないか」との見方と、「依然として経営環境が厳しいことや、財務諸表上の手間などを勘案すると、法人立の増加率はそれほど高くならないのではないか」との両面がある。
また、医療施設動態調査では病床数も集計しており、30年8月時点での病床総数は164万3,084床(前年同月より1万3,962床の減少)。内訳は、医科・病院が154万7,994床(同9,249床の減少)、医科・有床診療所が9万5,029床(4,708床の減)、歯科が61床(5床の減)。
医科病院のうち、一般病床数は89万1,245床(10床の減少)であり、ほぼ前年同月並みの状況だが、療養病床が32万182床(6,212床の減少)、精神病床が32万9,909床(2,577床の減少)となったため、全体では大きな落ち込みとなった。
日本人の平均寿命から健康寿命を差し引いた値は、男性が約9.0年、女性が12.4年であり、健康上の問題で日常生活が制限されている期間が相当年に上っている。すなわち、健康寿命を如何にして延伸させるかが非常に重要であり、この一方策として歯科対策を指摘することができる。
残存歯数が19本以下の高齢者は、20本以上の者よりも要介護状態になるリスクが1.2倍になる。成人を対象とした追跡調査でも、歯周病と糖尿病、メタボリックシンドロームの発症リスクが高まることが知られている。
こうした調査結果を踏まえ、8020推進財団では「歯科口腔保健に関する普及啓発等に引き続き取り組んでいくことが必要」と指摘している。
厚労省は、平成30年度の補正予算案として、被災地の復旧支援対策など約315億円を計上した。大阪北部地震や西日本7月豪雨、北海道胆振東部地震によって現地の医療提供体制などに影響が出ているため、この対応を行うもの。
このうち、被災した医療施設等の早期復旧対策費は94億円。被災診療所などが一日も早く地域医療を提供できるよう国庫補助を検討。
また、西日本に甚大な被害が生じた7月豪雨の被災住民に対し、医療保険の窓口負担の軽減や保険料の一部免除も追加的に実施する予定。
広島県や岡山、愛媛など広範囲で被害をもたらした今回の豪雨災害を受け、日歯は記者会見を開き、主に歯科領域の被災状況を報告。
これによると、広島県内では、全壊・流出した歯科医院が2件、床上浸水が10件、床下浸水が12件。岡山では全壊・流出が4件、床上が3件、床下が10件。愛媛は床上が10件、床下が11件。福岡は床上3件、床下5件。その他、高知や佐賀、香川、山口、兵庫、京都など多数の府県で床上・床下浸水の被害が発生した。
また、広島などの被災地に現地入りした堀会長は、被災者等にお見舞いを申し上げたうえで、「非常に多くの診療所が床上・床下浸水などの被害を受け、元のように歯科診療を地域住民に提供するのが困難な状況が見られた」、「建物自体は浸水していなくても、エックス線撮影装置などの医療機器が使い物にならなくなってしまった診療所も多い」と報告。「被災された多くの県民の方々に必要な歯科医療が提供されるよう、バックアップしていく」とまとめた。
日学歯は東京・市ヶ谷の歯科医師会館で定時総会を開き、現行の一般社団法人を公益化することを見据えた定款変更について協議。執行部が提案した「代議員会(現行の総会に相当)を年1回に変更する」との方針に対し、出席者からは「それで良いと思う」との意見が上がる一方、「各県等の学校歯科医会の会員の声を会務に反映させるには、6月の決算代議員会だけでは駄目だ。新年度が始まる前に、その事業計画や予算を審議するための代議員会も開くべきではないか」との声が強く上がった。
そのため、議長団が「(執行部は)こうした色々な意見を考えて頂きたい」と指摘。これをもとに執行部で引き続き議論を深める方針。
柘植副会長の挨拶で開会した同総会は、まず初めに川本会長が組織を代表して日学歯を取り巻く情勢を説明。「全国の学校歯科医のご意見を伺いながら引き続き会務執行に努めていく」と要旨語った。
また、来賓挨拶では、文科省・健康教育食育課の企画官が「学校歯科保健に尽力されている先生方には深く感謝している」と前置きしたうえで、「う蝕は著しく改善してきたが、生活習慣に根差した口腔内の疾病(歯肉炎など)の増加が指摘されており、今後も更なるご協力をお願いしたい」と語った。
29年度の基礎研修の開催状況に関しては、「全国32か所で行われ、合計で1,748名が受講した」と報告。この他、①43地域で「生きる力をはぐくむ歯・口の健康づくり推進事業」を実施、②養護教諭に向けた健康診断後の事後措置についての冊子作成を検討、③昨年9月にカンボジアで開催された「学校歯科保健アジア大会」に役員・委員を派遣、などと説明した。