医療新聞ダイジェスト(歯科版)

国民歯科医療の充実

 健康長寿社会を構築するための基礎となる要素は幾つもあるが、その重要項目の一つとして「歯・口腔の健康」を指摘することが出来る。
 すなわち、国民歯科医療の充実は健康長寿社会を実現するために必要不可欠な要素なのである。

歯科は堅実な伸び率(31年1月メディアス)

 厚労省は平成31年1月診療分の医療費の動向(メディアス)を公表。これによると、医療保険適用分(75歳未満)の歯科診療費は1,715億円であり、前年同月比0.4%の増加となった。
 高齢化の進行に伴い、被保険者数が減少の一途を辿っているが、1日当たり医療費が約6,920円(同1.8%増)と堅調な伸び率を示したため、引き続き増収を維持した。
 今回調査によると、医療保険(75歳未満)の総医療費は2兆54億円(前年同月比0.9%増)。内訳は協会けんぽ・本人が3,302億円(4.8%増)、同・家族が2,249億円(1.1%増)、組合健保・本人2,149億円(4.5%増)、同・家族が1,696億円(1.6%増加)、国民健康保険が8,908億円(2.0%減少)など。直近の数年間は社保・本人分が右肩上がりで推移しており、今回も高水準を維持した。
 また、医療保険(75歳以上)の総医療費は1兆3,749億円(2.9%増加)。5%近い伸び率を計上していた29年度と比較すると鈍化傾向ではあるが、引き続き安定した増加率となった。
 医療保険医療費のうち、歯科の状況を細かく見ると、協会けんぽ・本人は約361億円(2.6%増加)、同・家族は198億円(1.4%増)、組合健保・本人分は252億円(0.6%増)、同・家族分が170億円(1.4%増)、国保が579億円(2.1%減少)など。社保に於いては、全体的に直近6カ月の伸び率を下回っているが、依然として堅調な数値を記録。75歳以上の歯科診療費は468億円であり、同8.1%の増加率となった。

神奈川など33県で減少(歯科医院数調査)

 厚労省は「平成30年11月末時点の医療施設動態調査」の結果を集計。これによると、同時点の歯科医院数は6万8,597件であり、前年同月比で325件の減少となった。大分など11県では前年同月実績を上回ったものの、神奈川を始めとして33都道府県で減少。(3件は増減なし)。
 同調査は、あくまでも新規開業や廃業・転換などを行った医療機関が各県当局に必要書類を提出し、このデータを同省が集計したものであるため、届出を失念した医療機関情報等は反映されないが、「長年続いてきた右肩上がりの傾向に明らかな変化が見られた」との指摘が有力となっている。
 今回調査によると、平成30年11月末の医療機関総数は17万9,158件(前年同月より156件の減少)。このうち医科病院は8,365件(46件の減少)であり、依然として落ち込みが顕著。但し、地域医療支援病院は571件であり、14件の増加となった。
 医科診療所は10万2,196件(215件の増)。有床診療所は6,893件(343件の減)だが、無床は9万5,303件(558件の増)であり、右肩上がりで伸びている。
 歯科診療所は6万8,597件(325件の減)。内訳は、個人立が5万3,589件で最も多いが、前年同月対比で1.3%(729件)の減少となった。一方、医療法人立は1万4,407件であり、同2.9%(409件)の増加。市町村立など「その他」は601件であり、5件の減少。
 歯科医院の増減状況を県別で見ると、最も減少したのは神奈川県(マイナス65件)。この他、北海道(39件)、大阪(34件)、広島(24件)、東京(17件)、長野(14件)、和歌山(同)、兵庫(13件)、愛媛(同)などが特に減少した。
 他方、大分(プラス8件)、茨城(5件)、愛知(5件)、山形(3件)、徳島(同)、熊本(同)などは若干の増加傾向を示した。

永久歯の抜歯原因調査(8020推進財団)

 8020推進財団は「永久歯の抜歯原因調査」の結果を集計。これによると、抜歯の二大原因は従来通り「歯周病(37.1%)」、「う蝕(29.2%)」だったが、「破折」も17.8%に達していた。歯周疾患対策が浸透するとともに、う蝕歯も適切な治療によって抜歯までの年数が長くなっているため、結果的に破折で抜歯に至るケースが増えたのではないかと見られている。
 また、抜歯本数が増加する年代は、60歳代後半から70歳代にかけてであり、前回調査(平成17年)よりも5歳ほど高齢。自分の歯で食事などを行える期間が延びていることが示唆された。
 なお、今回は「喫煙状況と現在歯数の相関関係」も分析しており、現在歯数が28本以上の者の割合は、非喫煙者が20.2%、喫煙者が15.1%。約5%ほどの差があった。
 40~69歳の者の抜歯原因に於いても、「喫煙者の場合は48.0%が歯周病に起因して抜歯」となっていた。非喫煙者の場合は38.7%に留まっており、喫煙による歯周病悪化の可能性が抜歯原因からも指摘された。

山口誠一郎会長を再選(全歯連)

 全国歯科医師国保組合連合会(全歯連)は通常総会を開き、平成30年度の歳入歳出決算など全議案を賛成多数により可決確定した。
 現執行部の任期満了に伴う次期会長選挙に関しては、立候補の届出者が山口誠一郎・現会長のみであったため、投票という形式ではなく、賛成の挙手多数をもって再選された。次期監事選挙(定数2名)に関しても、候補者が松下繁氏(大阪府歯科国保の副理事長)、工藤祐光氏(福島県歯科国保の常務理事)の2名であったため、同じく賛成の挙手多数で決定した。
 主に前年度の歳入歳出決算と会長選挙、監事選挙を目的に開かれた同通常総会は、まず初めに熊澤副会長が開会挨拶。「(日本における)平成30年の出生数は92万人を切ってしまった。同年に20歳となった人は約123万人であり、あと20年後には新成人が約30万人も減少する」、「言い換えると、20年後には歯科医院で働くスタッフの確保が非常に厳しくなるということであり、しっかりと対策をとっておく必要がある」と要旨解説した。
 続いて山口会長が執行部を代表して挨拶。「会員組合(各県の歯科医師国保など)のご協力を得て会務執行している」と述べたうえで、「国庫補助率の問題(削減)に関しては、機会があるごとに厚労省に改善要望している」、「各組合ともに厳しい運営を強いられていると思うが、被保険者(歯科医師など)の健康を守るため、相互に協力し、健全な運営に努めたい」と語った。
 その後、一般会務報告や会計現況報告、各種議案審議などが行われたが、特に質問や異論は上がらず、スムーズに議事進行。三塚副会長が「厳しい現状を打破するには政治力も必要であり、こうした事項を次期執行部に申し送りしたい」と挨拶して閉会した。

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