解決のためのツール

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相談を受ける時、自分で悩むときも、ただ悩むだけでなく考えるツールを持っていることが大切です。ただし、ツールを使う場合は、ツールに形式的に当てはめようとしてしまうと、個別の事情を無視して形式的な回答になる危険があります。マニュアル的にツールを利用するのではなく、現実に合わせてツールの精度を高める、新たなツールを開発するくらいの気持ちで使うことが大切なようです。


部分的承認

部分的承認

相手の話を否定しないことが、相手との関係において大切なことです。
弁護士と相談者、支援者と非支援者だけでなく、親と子、上司と部下等、自分が受け入れられていると感じるか、仲間として尊重されていないと感じるかの分かれ道になることもあります。部分的承認の技法を身に着けることは、人間関係の摩擦をとる潤滑油になりうるものと考えます。

具体的には、相手の話の中で、肯定できる部分を探すということです。探すだけでなく、時には作り出してでも肯定するという作業をします。

例1
例えば、相談者が、特定の親せきから長年にわたってひどい目にあったという話を聞いていたとします。突然、その相談者がその親せきを「殺したい。」と言ったとします。これに対して、「人を殺してはダメですよ。」ということは単純否定です。相談者としては、これほどひどい目にあってきたのに、「自分がひどい目にあって苦しんでいると話したのにもかかわらず、何にもわかってくれない。」という絶望を抱くかもしれません。その結果、投げやりになり、その人を本当に殺そうとするかもしれません。そうかといって「殺すのもありかもしれませんね。」と単純承認をするわけにもゆきません。
これに対して部分的承認の回答例としては、「そうでしょうね。殺したい『くらい』ひどい目にあってきましたよね。」と結論をずらすことが考えられます。殺したいというのはあくまでも表現方法であり、主眼はそれくらい憎いということを伝えたいということであれば、そこを肯定し、共感するということです。実際の例なのですが、そう言われた相談者は驚いて目を見開いてしばし沈黙をしてから、徐に「そりゃそうだよ。本当に人を殺すなんて恐ろしいことは考えていないよ。家族にも迷惑がかかるし。」と話しだしました。切羽詰まった相談姿勢からすると、本当は殺意が生まれていたかもしれませんが、それを他人の口で言われたことによって、ハッと自分の心に気がついて思いとどまったのかもしれません。

例2 
子どもが幼稚園で、お友達をぶっ飛ばしたと言ったとします。
この場合、「そんなことしたらダメでしょう。」と目くじら立てて、あとは子どもが何も言えなくなってしまうということはよくあることです。これは単純否定であり、子どもは親に何も言わなくなっていく対応です。
びっくりすることはしても良いと思うのですが、「誰をぶっ飛ばしたの」とか、「ぶっ飛ばすってどうやったの」とか「どうしてぶっ飛ばしたの」ということで、おそらく子どもが言いたいことを誘導してあげて、事態を把握しようとするべきでしょう。親子の信頼関係をつなぐ最も大切な質問は、「なぜ」です。しかし、なぜという質問は、開かれた質問なので、幼稚園児には適確に回答する力はありません。順を追って話をさせるべきで、まず「どこで」という場面設定を離させてあげることから始めるべきでしょう。そうするとブランコの所とか答えるのが簡単です。具体的な話から聞いていきましょう。ぶっ飛ばしたといってもどうやら両手で押して、相手が転んだだけのようだと分かってきたら、次の質問です。どうやら、相手は横入りをしていたようです。自分ではなく気の弱い女の子の前に横入りをして、その女の子が悲しそうな顔をしているから、義憤に駆られて両手押しをしたようです。
ここでの部分的承認は、女の子を守ろうとしたこと、弱い者を守ろうとしたことは立派だということを表明するべきだと私は思います。だけど、いきなり両手押しをして転ばしてしまうということはやめさせなければなりません。この時、「どうしてその子は横入りしようとしたのかな」と相手の言い分を想像させることもできればした方がよいかもしれません。そうすると、もともと女の子の前に並んでいたのに、誰かに呼ばれて、ちょっと外していただけで、その子にしてみれば、自分のいるべき場所に入ってきたということなのかもしれません。そのあとは、こうしなさいああしなさいということではなく、一緒に、どうすれば本当は良かったのかということを考える、もちろん親御さんが考えた答えの選択肢に誘導していくということが上策です。きちんと謝るべきところを誤ることがもできるようになるかもしれません。逆に話を聞かないで謝れと言っても形式的に誤ることしか期待できません。その子にとっても、乱暴をしたことに共感してほしいわけではなく、後ろめたいけれど言い分があるということを分かってもらいたいだけだという場合も多くあります。部分的承認をするだけでも、信頼関係は強くなります。

このように、人間の行為は必ず何らかの理由があります。共感できる部分が必ずあると思います。当然のことながら、共感できない部分もあります。単純承認も、単純否定も事態を悪化させる危険があります。承認できる部分を探し出しても先ず承認して、自分が受け入れられていると実感させたのちに、修正する部分を提案すると、素直に修正を考えることにつながるわけです。

支援や相談だけでなく、子育てや会社での人間関係など幅広く応用が利く技法です。

 

プラスワンの技法 落ち込まないですむ悩み方の方法

プラスワンの技法 落ち込まないですむ悩み方の方法

これは、自分が対人関係で悩んでいる場合にも解決に向けて進む思考技術ですし、支援者が支援を受ける人と同化してしまい支援の用をなさないことを防止するためにも有効な思考技術です。

<問題の所在>
人間が対人関係、例えば友人関係で悩むときに陥りがちな誤りは、相手はどうして自分につらく当たるのだろうと考えを進めることができず、ああいわれた、こういうことをされたとただ思い悩んで落ち込んでしまっているだけということです。解決をしたいのですが、解決に向かう行動をとれず、ただダメージを受けるだけの状態になっています。その結果、ストレス反応としての思考の低下が起きてしまい、あるいは感情的な行動をとってしまい、そうすることで紛争が大きくなり、深刻になっていくばかりということがあります。最悪な事態は、相手との関係を修復したいのにもかかわらず、相手の仕打ちに腹を立てて、自分の不愉快だけを理由に相手を攻撃することです。これでは、関係が修復するということはまずないでしょう。
解決に向けた事案の分析をしていないのです。事態を正確に見ていないからです。人間関係というのは、どちらかが一方的に他方に働きかける関係であることはまずないです。こちらだけがやられっぱなしで、相手が無傷ということは通常はあり得ません。イメージ的に表現すると、相手を大きく見すぎていて、その他を見られなくなってしまっている状態です。ここでいう「その他」で一番肝心な人物は「自分」なのです。プラスワンの「ワン」とは本人のことです。

<行動から関係へ>
つまり、相手が自分を攻撃している場合、相手の行動ばかりを見るのではなく、むしろ「相手と自分の人間関係の不具合が発生している」という形で事案を見ることが有効なのです。学校でいじめにあっている場合も、自分がいじめられているとみるよりも、クラスの生徒どうしという人間関係の不具合が発生しているという風に考える、妻が自分に対して執拗に口論を吹っかけてくるというより、夫婦関係の不具合が生じているという具合です。会社で言えば職場の人間関係の不具合が発生しているということですね。

<自分がどのように原因を作出しているかが見えてくる>

こう考えることのメリットは、相手の行動は相手単独の内面から湧き上がる自働的な行動ではなく、自分という存在に対する反応という形で行われていることだということが見えてきます。自分の何が相手の行動を誘引したのかということを考えることができます。そうすると例えば、自分の些細な行動を修正すれば済むことがあり、相手はそれほどこちらに悪意があるわけではなく、ただそれをしてほしい、それだけはしないでほしいというメッセージの表現だったりすることがあるわけです。逆に言えば、こちら側に何らの非がなく、それにもかかわらず相手の意思を察して修正することによって、自分の良いところがだめになったり、自分の周囲に対して迷惑が掛かるならば、相手との関係の切断を考えるということにもつながるわけです。どこを変化させれば、相手との関係を修正できるかという視点が見えてくるわけです。
過剰に自分を責めたり相手を責めることをしないで済むということもメリットでしょう。誰が悪いかということを探すのではなく、関係の不具合がなぜ発生したかということを考えることができるということですね。

<相手の弱さ、小ささが見えてくる>

相手から攻撃を受けてそれへの対処が思い浮かばないと、相手の攻撃が自分にとって致命的に大きなものだと思い易くなります。しかし、対人関係の不具合だと考えると、相手が自分を恐れていることがよくわかります。同時に、相手に対して必要以上に大きなものを感じることはないことが分かり、相手が狡猾なだけの人間だったり、自分のプライドを最優先している気弱な人間であることが本質だということが見えてきます。そうすると、恐怖感を抱き続けることがばかばかしくなることも多くあるようです。相手との接点をなくすという選択もできてきますし、実際の攻撃の効果も限定的であることがはっきり見えてきます。無理に対応する必要がないかもしれないということは心を幾分落ち着かせることができます。

<本当の当事者も見えてくる 守るべき人を見落とさない>

夫婦喧嘩なんてして夢中になっていると、相手に対応することで精いっぱいで、それを見ている子どもたちへの影響に思い至らないことがあります。夫と妻の関係を考える時、子どもや子どもの祖父母まで関係図を考えていくと、本来何をするべきか見えてくることがあります。自分のプライドを優先するか、子どもの安らかな日常を優先するのかという選択肢も見えてきます。本当に争うべきことだったのかはっきりと見えてくるでしょう。

<解決の提案が見えてくる>

自分のために頑張るよりも、仲間のために頑張る方が、実は力が発揮できることが多いようです。どうやら人間はそのようにできているようです。自分が攻撃されて、それをやめてと言うときはお願いになってしまい、力が弱いということがありうることです。子どもためにやめましょうということは、力強く言うことができるわけです。多方面での人間関係の修復の提案が見えてきます。

<解決への援助者が見えてくる>

自分が攻撃を受けているからと言って、自分一人で解決する必要はありません。むしろ影響が出るみんなの問題ですから、多くの人たちで解決することが合理的です。また、いろいろな人がいろいろな行動をとることが強力な解決につながることも多くあるでしょう。

<見えるように関係図を作ろう>

おそらくそういう効果を意図的に期待してではなく、これまでの経験からなんとなく便利だなと思って関係図を作る人は相談者には多いです。頭の中で関係図を作っても、作らないよりはよいのですが、やはり実際に書いて客観的に見えるようにした方が良いと思います。ボードに磁石を張り付けるという方法もあると思います。こうしないと、せっかく関係を意識しても、実際は意識する前の悩んでいるだけの状態から抜け出せないことが多いのです。特に、追い込まれているときは、冷静な考えができず、関係図も狭いものになってしまい、メリットが限定的になることもあり得ます。
自分を関係図の中の一つの登場人物としてみることが、自分を客観的に見つめるということの意味なのです。

どうしても解決方法が見つからないという場合、実は志向の袋小路に入っているのかもしれません。その脱出方法として実践している方法です。

オリジナルのブログはこちらいくつか変遷しています。

 

 


心は後からついて来る 対人関係の状態で支援の要否を判断する

心は後からついて来る 対人関係の状態で支援の要否を判断する

自死予防などで「SOSのサインを見逃すな」等ということがもっともらしく言われています。しかし、自死するような責任感が強く、我慢強い人は、なかなかSOSを出さないどころか、むしろ相手に心配をかけないように積極的に明るくふるまうものです。さらに、SOSのサインなんてわかりません。死んでから「あれがSOSだったんだよ。なぜ気が付かなかったの。」と周囲を責める文脈でのみ使われていることが実際です。つまり、SOSのサインに気が付いた時には遅すぎるということが実情です。心の変化に気が付いた時には遅すぎるhttps://doihouritu.blog.so-net.ne.jp/2016-02-25
もう一つ、いじめ自死の子どもたちに、教師は、あなたは「大丈夫か」と尋ねていて、子どもは大丈夫だと答えているというエピソードが紹介されています。大丈夫かと尋ねる状況があれば何とかしなくてはならないのですし、大丈夫と子供が答えるのは、そう答えてほしいという大人の身勝手な願いを見通しているからです。大丈夫かと尋ねる時はもう危ないのです。
心の真実について語る能力はありません。しかし、自死予防や人を支援する時には、その人の心を言い訳に働きかけをしないということはやってはいけないことでしょう。その人の心がどうあれ、対人関係的な危険が生じていれば、その人は苦しいに決まっている、不安を感じているに決まっているという姿勢が必要です。SOSのサインは、本人から発せられるのではなく、本人が置かれた環境から見抜かなければ意味がないということになります。
いじめの問題に限らず、この対人関係的危険の考え方は、相手の苦しみに共感を示すときに大変有効です。「なるほど、あなたは周囲からあなた一人が孤立させられているのだから、あなたは苦しいはずだ。」と言い当てることができるわけです。また、こちらも納得できますので、その納得が相談者に伝わります。
周囲からバカにされて、あなたは苦しいですかという愚問は、相談者から見れば、自分を馬鹿にしているのかと思うだけのことで相談の実は上がらないでしょう。
私たちは、人間がどういうときに対人関係的危険を感じるか、考察と実例の収集を怠らないようにしなくてはなりません。

対人関係的危険は、対人関係学概要のページの概念の所にまとめてあります。できれば、対人関係学概要をお読みいただいて、ご自分なりのの危険の要素をお考えいただくことをお勧めいたします。


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