☆ 残せる歯は確実に残し、ダメな歯は抜く!

 

私(古西)が中学・高校の頃は、今よりずっと歯科医院は少なく、反対にムシ歯があふれていて、朝6時から並んで治療の順番を取った・・という話をよく耳にしました。

 

歯科大を卒業して勤務した医院も1日の患者さんの来院が120人という忙しさで、痛みを訴える歯のみを治療することしか出来ず、症状がない歯周病は放置された状態でした。
山間部でしたので、交通手段が今ほど発達していないのと、今のように治療が予約制でないので、通院すればほとんど1日つぶれてしまうような場合が多く、 通院時間が確保できない方は抜歯を希望され、根の治療をあきらめて抜く場合も少なくありません。理想と現実の狭間で悩んだ時期でした。

 

平成に入ると、「8020(ハチマルニーマル)運動」(80歳で20本の歯を残そう)がだんだん広がり以前の様にパッと抜いてしまうのではなく、残せる歯は多少時間がかかっても残す治療へと変わっていき、 「歯をやたら抜く歯医者はダメだ!」とTVや週刊誌で言われるようになったのです。
ちょっと乱暴な言い方ですが、これは記憶に残る言い回しですね〜

 

先日、歯周病の治療を始めたMさんに、残せる歯と抜歯が必要な歯の説明をしました。
歯周病はご存知の通り、歯周病菌が原因で歯を支えている骨が無くなり歯を失う病気で全身にも悪影響を及ぼす怖い病気です。
70代のMさんは、今まで歯周病の事を情報としてどこからも得ることなく過ごしてきたようで、来院された時は既に根の先まで骨がなくなっている歯があちらこちらに認められました。

 

写真@はそのうちの1本のレントゲン写真そのままの画像ですが、骨の上縁に赤線を描き入れたのがAです。 根の先まで骨が無い様子なので抜くとBの写真のように根の先端まで、歯石がついていると思われます。
茶色い歯石は歯周病菌が血液中の鉄分をエサに増殖し固まったもので、表面には生きた菌がベッタリ付着します。
いわばこの歯の根の周りは歯周病菌の巣窟と化しており、ここから全身に菌をばらまいているのです。

 

更新情報 歯周病菌が影響すると報告されている病気は以下です。
   〇心筋梗塞 〇 脳梗塞    〇 認知症  〇誤嚥性肺炎
   〇糖尿病が治りにくい     〇 早期・低体重児の出産
   〇 非アルコール性脂肪肝  〇 心内膜炎

写真の様に悪化すると放置するほうが体のためには良くありません。

 

固い物は噛めないという自覚症状もあるので、Mさんには抜歯を提案しました。
ところが、意外な言葉が返ってきたのです。「やたらと歯を抜く歯医者はダメだって!」 過去に私も耳にしたことのあるあの言い回し・・・Mさんはあの文言だけ記憶していたのです。

 

この状態を放置すれば、隣の歯の骨も無くなるし、近い将来歯の周りが大きく腫れ、1週間満足な食事が取れなくなることも予想できます。

5年後、10年後も元気でやりたい事が出来るように、悪い菌をばらまく歯は取り除いておいた方が良いのですが・・・・ ここはゆっくり、なぜ抜いたほうが良いのかを分かっていただくまで待とうと思います。

 

更新情報 Mさんが働き盛りの30代〜40代の頃は、あまりにも忙しくて、歯科治療に費やす時間の確保が難しかった時代だったと思います。
そんなシニアの方にゆったり、健康に残りの人生を楽しんでいただけるように、「残せる歯は確実に残し、ダメな歯は抜き、全身の事を考えた治療を提供したい」 とスタッフ一同がんばっています。
しばらく通院していないお友達がいらっしゃったら、あなたからも検診を勧めて
          くださいね!