vol 24: 続昔話蛇の子編



人間は既にこの世に存在し、あの世には2つの世界がありました。

2つの世界は、天界と黄泉の国とに分かれていて、
お互いの世界が、お互いを神だと認めていませんでした。

此処は黄泉の国の中の蛇の神々の国。
この国を治めて人間を守っているのが白い大蛇の大神です。
この世で死した蛇達はこの国に送られ、修行し神になる者や、
そのままこの国で暮らす者、それは其々。

蛇神の息子、チビ神は今日も森の木に凭れ座り物耽っています。
近頃よく噂に聞く、天の子が気になって堪りません。

神々達の話だと、どうやら天界の子は天界と黄泉の国の統一の話をしに、
黄泉の国に通っているとか。

「チビ神!」

「弥勒・・・」

チビ神の友人の弥勒菩薩です。
彼は今、未来下界に降り多くの人々を救う役割を与えられているため、
いろいろな国で修行している仏である。

「辛気臭い顔して、また天の子の事か?」

弥勒はチビ神の隣に座りました。

「あぁ・・うん。なぁ、弥勒。君はどう思う?」

「あ?・・・噂の事か?今、阿弥陀様の国に来ているらしいぜ。」

「阿弥陀様の国に?」

「あぁ。統一の話をしにかい?」

「統一でもないみたいだぜ?
ただ、お互いの世界を認め同じ神々であるのに行き来できず、
批判しあっているのはおかしいって。
自分の父親は皆の事を既に認めているからって話だとさ。」

「でも、それは黄泉の国じゃなく天界の住人達が、
私達の世界を認めなかったせいだろ?」

チビ神は今になって勝手な意見だと主張しました。
それを聞いた弥勒はチビ神に自分はそうは思わないと言います。

「仮に根源はそうだとしても、それには俺達の知らない深い何かがあるはず。
お前知ってるのか?
天界の父は宇宙から人間の住む地球を守る神に選ばれた神だぞ?
それ程の神が気ままに黄泉の国は神の世界じゃない~とか言ってると、
本気で思ってるのかよ?」

「そ、それは・・・。」

チビ神は言葉を詰まらせました。
弥勒の言う事はもっともだからです。

「神が安易にそんな事を決めるとも思わないし、
その息子が下界で行った事は、そんじょそこらの神が出来る事じゃないぜ?」

無知なちび神は弥勒に天界の兄が何をしたのか聞きました。
弥勒は主が下界で何をして今、天界に戻って来たのか話します。
その話にチビ神は驚きを隠せず、
それと共に自分の無知な事を身に沁みて実感し、
自分への愚かさに涙を溢しました。

「ちょ、チビ神!泣くな!」

涙を見せシクシクと泣く相手に弥勒はオロオロし、

「い、いや、俺だって普通にひとつの国で修行してたら、
こんな話も知らなかったと思うぜ?
俺も下界に行く身だからよ、興味あって調べたから知ってるんだし。」

「しかし私は・・・何も調べず皆の噂ばかりを信じて、
こうなったのは全て天界のせいだと思い・・・うぅ。」

再び泣く相手に弥勒は溜息をこぼすも、釈迦如来の話を思い出しました。

「そうだ。この間、釈迦如来様に教えを聞く為に会いに行ったんだよ。
したらさ、散歩中に天の子と会った話してたぜ?」

「天の子・・・。」

その名前には敏感に反応し泣き顔を上げ、それに気づいた弥勒は、
蜘蛛の糸の話を進めました。

「釈迦如来様は天の子は確かにヤンチャ娘だが、その光は眩く優しさに溢れ、
その言葉は自分を励ましてくれましたって言ってた。」

「しゃ、釈迦如来様を励ました?」

「あぁ。スゲーよな。でもよ、何人かの弟子は騙されてはなりませぬって、
釈迦如来様に言ったわけ。
そしたらさー、その様な事なら私は騙されても良いって笑顔で言ったんだ。
弟子達は陰で釈迦如来様の言っていることは解らんとか言ってたけど、
俺は感動したね。その言葉にどれ程の深い意味があるのか、
弟子は釈迦如来様の真意を見抜けないままでいる。
悲しいねぇ。」

チビ神は胸が暖かくなりました。

「話はさておき、お前・・・天の子に惚れてんじゃね?」

弥勒は満面の笑みを見せて肘でチビ神の腕を突きました。
チビ神は目を見開き真赤になり俯いて、頭から湯気を出しています。

「そ、そんな。何・・・言ってるの・・・。」

「アハハハ!嘘の付けない奴だなぁ。ま、神が嘘つくのもどうかと思うが。
神が照れるのは有りだな。」

弥勒はからかいながら立ち上がり、

「チビ神、天の子の力になってやったらどうだ?」

「私が、天の子の・・・ですか?」

「あぁ。俺も力になろうと思う。彼女さ、
一人で黄泉の国の連中に批判受けながらも、めげずに話をしに行ってる。
天界の神の一人娘で使者も付けずに一人で。
国によっちゃ・・・な。」

弥勒の言いたい事はすぐに解りました。
黄泉の国は人間や動物が死して出来た国です。
国を治めている神は、大体が元は人間や動物だったもの。
チビ神や弥勒と言った黄泉の国で生まれた神が、
国を治める神になる為には、下界で修行して自分の国を作らねばなりません。

そして死者となり、下界で本人の意思とは関係なく神に崇められて、
死して神になった者もいるのです。

もしその国に天の子が行けば、住人だけでなく神からも非難を浴びて、
慈悲のない神は何をするか解りません。
チビ神は立ち上がり、弥勒に問いかけました。

「弥勒!今、天の子はどこに居るか解る?!」

「いや、だから、阿弥陀様の・・・」

「阿弥陀如来様のところだね!解った!」

「ちょ!チビ神っ!」

弥勒の呼び止める言葉も耳には聞こえず人間の形を灰色の大蛇の姿に変え、
地面を猛スピードで這い、
チビ神は、阿弥陀如来の国に向かいました。












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