独断的JAZZ批評 713.

PHIL WOODS & BILL MAYS
酸いも甘いも噛み分けた大人のプレイに酔い痴れよう
"WOODS & MAYS"
PHIL WOODS(as), BILL MAYS(p)
2010年9月 スタジオ録音 (PALMETTO : PM 2150
)

PHIL WOODSの年齢を調べてみたら、1931年生まれで今年80歳になる。さもありなん!僕が学生時代にEUROPEAN RHYTHM MACHINEの"ALIVE AND WELL IN PARIS"(JAZZ批評 52.)を聴いたのはもう40年も昔のことだから・・・。ジャズの世界では80歳は老け込む年齢ではない。90歳まで現役で世界を股に掛けたHANK JONES(JAZZ批評 629.)の例もあるしね。
一方のBILL MAYSは1944年生まれというから今年で67歳になっている。なかなか渋くてスインギーなピアニストで好きなピアニストの一人。リーダー・アルバムとしては今までに3枚(JAZZ批評 259.& 130.& 637.)紹介しているが、どれもお気に入りで5つ星だった。サイド・メンとしてはMARTIN WIND(JAZZ批評 176.)やMATTIAS SVENSSON(JAZZ批評 559.)との競演歴などがあり、数えだしたら枚挙に暇がない。
このアルバムはアルト・サックスとピアノのデュオ。サックスとピアノのデュオというとSTAN GETZとKENNY BARRONの"PEOPLE TIME"(JAZZ批評 231.)やGEORGE ROBERTとKENNY BARRONの"PEACE"(JAZZ批評 147.)、JENS SONDERGAARDとKENNY WERNERの"A TIME FOR LOVE"(JAZZ批評 509.)などの傑作が思い起こされる。

@"ALL THIS AND HEAVEN TOO" 伸びのある艶やかなWOODSのアルトが響き渡る。指でも鳴らしながら、ついでに一口アルコールを口に運ぶとフワーといい気分。硬いことは言わずに、酸いも甘いも噛み分けた大人のプレイに酔い痴れよう。
A"BLUES FOR LOPES" 
なかなか好調にスイング。往年の咆哮とも絶叫とも言えるブローは姿を消したが、熟練した味わいだね。
B"DANIELLE" 
バラード演奏におけるベテランの味。健在なり。
C"DO I LOVE YOU?" 
D"HANK JONES" 
90歳まで世界を股に掛けて活躍したピアニスト・HANK JONESに捧げたWOODSの書いたバラード。
E"I'M ALL SMILES" 
ミディアム・テンポで気持ちよく躍動していく。
F"HOW LONG HAS THIS BEEN GOING ON?" 
GERSHWINのバラード。歌心あふれるWOODSのアルトがいいね。そして、寄り添うMAYSのピアノ!余分なものも足りないものもない、丁度良い加減。
G"THE BEST THING FOR YOU WOULD BE ME" 
二人のアンサンブルが良いね。MAYSの奏でるベース・ラインに乗ってWOODSが軽快に躍動する。このアルバムの中のベスト・チューン。続くMAYSのソロは左手の重低音を多用しガッツあるプレイを披露している。
H"OUR WALTZ" 

改めてWOODSの"ALIVE AND WELL IN PARIS"(JAZZ批評 52.)を棚から引っ張り出して聴いてみたけど、やはり、これはジャズ史に残る傑作だ。30歳代後半の脂の乗った演奏には凄みがある。咆哮とも絶叫とも言えるアルト・サックスによる絶唱でもある。
それから40年。もうじき80歳を迎えるWOODSのアルトは優しさと包容力に溢れたスタイルに変わった。それもジャズ。年齢と共に変化していくのが当たり前。色々な姿を見せてくれて嬉しい限りだ。
80歳のWOODSと67歳のMAYSが織り成す「酸いも甘いも噛み分けた」いぶし銀の味を堪能できるということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2011/08/28)


試聴サイト : http://www.amazon.com/Woods-Mays/dp/B0051V7QV4/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=dmusic&qid=1306497527&sr=8-1



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