BILL MAYS
SVENSSON、LA BARBERAという好サポートを得て、水を得た魚のように歌い尽くすMAYSのピアノに万雷の拍手を!
"STUFFY TURKEY"
BILL MAYS(p), MATTIAS SVENSSON(b), JOE LA BARBERA(ds)
2009年12月 スタジオ録音 (FIVE STARS RECORDS : FSY-512)


BILL MAYSというピアニストは、僕にとってはお気に入りのピアニストの一人だ。歌心があって良くスイングする。BILL MAYS名義のアルバムで言えば、"GOING HOME"(JAZZ批評 130.)が素晴らしく、ベースにはMARTIN WINDが参加している。同じくMAYS名義の傑作デュオで、ベースにRAY DRUMMONDが参加している"ONE TO ONE 2"(JAZZ批評 259.)も捨て難い。
ベーシスト、MARTIN WIND名義の"GONE WITH THE WIND"(JAZZ批評 176.)やMATTIAS SVENSSON名義の"HEAD UP HIGH"(JAZZ批評 559.)なんていうのもいずれ劣らぬ傑作だ。
この"STUFFY TURKEY"は"HEAD UP HIGH"と全く同じメンバーで録音されており、しかも、録音スタジオは「湾岸音響スタジオ」だ。2008年の12月録音された"HEAD UP HIGH"から丁度1年後の2009年12月に録音されている。前回がベースのSVENSSON名義で、今回はMAYS名義だ。最近のMAYSはちょくちょく日本に来てはいろいろなメンバーと録音を残しているようだ。

@"WITH A SONG IN MY HEART" 
R. RODGERSが書いた美しいテーマのワルツ。イン・テンポになるとLA BARBERAがブラシでワルツを刻んでいく。素晴らしいアンサンブル。ジャズはこうでなくちゃあ!
A"LUIZA" 
JOBINのボサノバ。こういう曲においてもSVENSSONのベースが果たす役割は大きい。
B"THE LAMP IS LOW" 
C"YOU MUST BELIEVE IN SPRING" 
最初、このイントロを聴いてどこかで聴いたことがあるイントロだと思ったのだけど、なかなかこれが思い出せない。5つ星を与えたアルバムであることは間違いがないと思ったので、「manaの厳選"PIANO & α"」に掲載されたジャケットを丹念に探してみた。そうしたら、TERJE GEWELTの"HOPE"(JAZZ批評 275.)のところではたと思い当たった。このアルバムに挿入された"THE WATER IS WIDE"だと!CHRISTIAN JACOBのピアノによるイントロに何回聴き直しても良く似ている!いずれも素晴らしいイントロでもあり、素晴らしい演奏でもあるのでじっくりと腰を据えて堪能いただきたいチューンではある。ジャズって本当に素晴らしいと思える演奏でもある。このアルバムでは3者のバランスが良くて、打てば響く3人の会話をお楽しみ頂きたい。
D"BLUES FOR FIVE STARS" 
ここでいう"FIVE STARS"とは制作元のレコード会社を言うのだろうか?テーマに続くSVENSSONのベース・ソロが太い音色でグルーヴィに歌っている。
E"POOR BUTTERFLY" 
F"I DIDN'T KNOW WHAT TIME IT WAS" 
3者が渾然一体となったプレイ振りに拍手。ピアノ・トリオはこうありたい。バランスも良くて各々が楽しげに歌っている。歌心満載で軽やかにスイングするピアノ、極太の逞しいベース、思い切りが良くて切れがありながら、決してうるさいとは感じさせない巧みなドラミング。どれをとっても1級品だ。
G"PAVANE/FROM MOTHER GOOSE" 
H"STUFFY TURKEY" 
アルバム・タイトルにもなっているT. MONKの書いた曲。いかにもMONKだと思わせる何かがある。ブルース・フィーリングたっぷりだけど32小節の歌モノ。
I"NIGHTINGALE SANG IN BERKELEY SQUARE"
 SVENSSONのアルコがスローでテーマを奏で、後に、イン・テンポになってピアノがテーマを奏でる。曲の良さ、アレンジの良さで何回も聴いてみたくなる。この曲のアドリブは、MAYSの傑作アルバム"GOING HOME"(JAZZ批評 130.)の中にあるタイトル曲"GOING HOME"のアドリブとよく似ているフレーズが散見されるのも面白い。極太のSVENSSONのベース・ソロ、LA BARBERAのハイハットを使った巧みなバッキング・・・いやあ、素晴らしい!!

先に紹介した"GOING HOME"も素晴らしいが、このアルバムも負けず劣らず素晴らしい。BILL MAYSの傑作中の傑作といっても過言ではないだろう。兎に角、演奏が潔い。スカッと爽やかなのだ。SVENSSON、LA BARBERAという好サポートを得て、水を得た魚のように歌い尽くすMAYSのピアノに万雷の拍手を!これは間違いなくMAYSの代表作になると確信して、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2010.07.21)

試聴サイト : http://diskunion.net/jazz/ct/detail/FSY512




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独断的JAZZ批評 637.