MARTIN WIND(b)、
ポストGARY PEACOCKを担う逸材として要注意マークだ
"GONE WITH THE WIND"
BILL MAYS(p), MARTIN WIND(b), KEITH COPELAND(ds)
1993年10月 スタジオ録音 (SEPTEMBER CD 5116)

このトリオはベースのMARTIN WINDがリーダーとなっている。このベーシスト、最近ではBILL MAYSの名作"GOING HOME"(2002年録音)(JAZZ批評 130.)でも競演しているが、このアルバムはそれより遡ること9年前の録音で、ドラムスにはKEITH COPELANDが参加している。
ジャケットを見る限りMARTIN WINDは(当時)若いベーシストでピチカートも強くゴリゴリ弾いており、アルコ弾きも上手い。ピアノのBILL MAYSはここでも燻し銀の活躍だ。曲の提供もMAYS:3曲、WIND:4曲、スタンダード:5曲とバランスがとれている。

@"GONE WITH THE WIND" わずか1分間足らずの超高速のイントロ。
A"I REMEMBER YOU" 最近ではANDREA BENEVENTANOの"TRINACRIA"(JAZZ批評 168.)の1曲目で演奏している良く知られたスタンダード・ナンバー。甲乙つけがたい演奏だ。こういう聴き比べをするのも楽しみの一つだ。この曲、BILL MAYSの洗練されたフレーズが味わえるし、ピアノもベースもドラムスもガンガン音が前に出てきて迫力がある。ベース・ソロも良く歌っているし、ドラムスとの8バース(8小節交換)もGOOD!

B"LAGRIMA AGRADECIDA (A THANKFUL TEAR)" ボサノバ調。
C"BLACK JACK" WINDのオリジナル。
D"NAJUL" WINDの書いたスロー・バラード。

実は、このアルバムはここから先が面白い。
E"SOMEONE TO WATCH OVER ME" GERSHWINの書いた名曲。アドリブに入るとMAYSが低音部を効果的に叩き、一転して、ゴスペル調のガッツ溢れるプレイとなる。これは面白いし楽しい!このアルバムのベストだ。最後はベースのアルコ弾きでテーマを奏でる。

F"BORN TO BE BLUE" MEL TORMEの書いたバラード。アドリブに入ると甘さだけに流されない芯の通った演奏を展開する。強靭なピチカートのベース・ソロもいける。
G"HIGH STREET" BILL MAYSのハードな曲想のオリジナル。ピアノとベースとドラムスのインタープレイがあった後、3者の怒涛の演奏となる。
H"SEVILLA" WINDの陰影を含んだボサノバ調のオリジナル。ベースが唸る。

I"I SHOULD CARE" 先ずはドラムスがブラッシュで1コーラス(32小節)のソロをとった後、ピアノがシングルトーンで16小節加わり、その後、ベースも入って16小節。その後は無駄な音を排した演奏で徐々にテンションが高まっていき、力強いベース・ソロへと続く。これもいい!
J"A SAD STORY" 切ないほどに哀しいワルツのバラード。アルコ弾きでテーマを弾くが、僕はこれほどのアルコを聴いたことがない。そん所そこらの付け焼刃のアルコとはモノが違う。アルコ→ピアノ→ピチカートによるベースのテーマに戻る。

K"MIDNITE SONG FOR THALIA" MAYSの曲。
L"GONE WITH THE WIND (BASS SOLO)" ベース・ソロでこれだけ歌えるのは凄い。

このMARTIN WINDというベーシストは若いのになかなかの才能を持ったプレイヤーだ。ピチカート良し、アルコ良しの上に、良く歌うので文句のつけようがない。ポストGARY PEACOCKを担う逸材として要注意マークだ。このベーシスト、もっとフリーな演奏が出来るピアニストを相方に選んだほうが良いのではないだろうか。BILL MAYSも良いピアニストには違いないがアレンジに凝ったり、かなり演奏の決め事が多い。このWINDの才能を活かすのはもっと自由に演奏できるピアニストのタイプではないだろうか。今回はリーダーとして踏ん張った。才能豊かだけに他の選択肢もあるはず。
今後とも、このMARTIN WINDには注意を払って行きたいと思う。なにせ、このアルバムは今から遡ること10年以上前の録音なのだから・・・・
で、このアルバムであるが、やはりに「manaの厳選"PIANO & α"」追加したい1枚だ。特にスタンダード・ナンバーが良い。  (2004.01.24)



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MARTIN WIND

独断的JAZZ批評 176.