独断的JAZZ批評 714.

HITOMI NISHIYAMA
繊細にして温度感の低い演奏だ
"I'M MISSING YOU"
西山 瞳(p), 原 満章(b), 川内 努(ds), 大谷 訓史(b:H,I,J), 清水 勇博(ds:H,I,J)
2004年8月(H,I,J:2005年12月) スタジオ録音 (MEANTONE RECORDS : MT-001)

このアルバムは西山瞳の再発盤である。2004年に自主制作盤としてリリースされたファースト・アルバムが2007年に完売し、マニアの間で再発が待たれていたアルバムだという。当時、「女PIERANUNZI」という称号を得ていたことも記憶に新しい。
僕はこのファースト・アルバムを聴く機会には恵まれず、2007年に発売された"MANY SEASONS"(JAZZ批評 446.)を聴いているが、あまり良い評価を与えていない。SPICE OF LIFEから発売されているということもあって、メンバーにはHANS BACKENROTH(b)とANDERS KJELLBERG(ds)が参加している。アンサンブルという点で、これが良かったかどうかということは結構微妙だ。
翻って、"MANY SEASONS"から遡ること3年前のこのアルバムは日本人プレイヤーがサイドを務めている。ボーナス・トラックとして最後に3曲が追加されているが、何の脈絡もないトラックを敢えて入れる必要があったのか疑問だ。


@"THIS I PROMISE YOU" この1曲目を聴いてみて、「さもありなん!」と思った。この出だしはまるでENRICO PIERANUNZIだもの。これをもって「女エンリコ」なんて有難くない称号を付けられてしまったのかも知れない。確かに、この演奏を聴けばそんなネーミングもしたくなるかも知れない。早く、こんな呪縛から逃れて、「西山瞳」を確立してほしいと思う。
A"PASSATO" 
リリカルなバラード。耳に心地よくて美しい演奏だけど、もう一歩突き進んで躍動感やスリリングな展開があるといいね。
B"BLUE NOWHERE" 
同様に美しいテーマ。原のベースは上手く噛み合っている。
C"EVERYTIME IT RAINS" 
今回も似たようなテーマ。このアルバム、すべての曲が西山のオリジナル。どんなにテーマを変えてみても雰囲気は似してしまう。端正で温度感の低い演奏がここまで続くと次第に飽きてくるのが人情というもの。BGMでよければ、これで良いのかもしれないけど、そんなことは望んでいないでしょう?!
ミュージシャンとしてひとつのアルバムを全部自分の曲で埋め尽くすというのも大きな夢なのかもしれないけど、結局、自己満足で終わってしまっては意味がないと思うのだけど・・・。
D"BLAST OF WIND" 
一転して、アップ・テンポのモーダルな演奏。その割りに躍動感が沸いてこない。迫力不足。
E"SAND CASTLE" 
BGMとしてなら良いと思う。でなければ「砂上の楼閣」だ。
F"EPIGRAPH" 
またまた、似たような演奏。いい加減飽きるね。
G"I'M MISSING YOU" 
ふーっと溜息。
ここから先は演奏時期とメンバーの違うボーナス・トラック。

H"TOLD AT SUNSET" 
I"EXTREMES MEET" 
J"APRILIS"
 

繊細にして温度感の低い演奏だ。BGMとしては面白いかもしれないけど、ジャズの持つ躍動感やスリリングな展開、あるいは「熱さ」を期待すると裏切られる。全曲、西山のオリジナルということで似たような印象の曲ばかりが集まった。ついでにもうひとつ。このジャケットの写真はいただけない。美人なのだと思うけど、この冷たそうな斜に構えた写真から受けるイメージは温度感の低いものだ。せめて、笑顔であってほしかった。
完全限定生産による再発ということで大いに期待して購入してみたが、見事に裏切られてしまった。   (2011.09.06)


試聴サイト : http://catfishrecords.jugem.cc/?eid=3341




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